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巌からの挑戦状!

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巌からの挑戦状!
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光の術者


 光の術者は逃げる。
 とにかく逃げ続ける。
 捕まってなるモノかとひたすら逃げていく。

「佐門さん、そっちに行ったよ!」
「承知」

 妖幼の風向を見ながら祓行灯の反応で危険性を測ることでマガカミの位置を探っていた【九真門】の薄桜 舞は、霊子端末壱号で佐門 伽傳と連絡を取り合い光の術者の逃亡方向を絞っていた。
 伽傳は碧斗から光の術者が逃げやすい方角があるのか、己の推測である陽の方角に向かうのか、六禁の鎧衣の術の中心である巌から最長でどれ程離れられるのか尋ねた答えの返事を舞と共有していく。
 共有といっても伽傳の推測は外れ、はっきりとした答えはもらえなかったことから、地道に舞の妖幼の風向による方角と祓行灯の反応で調べ続けるしか策はないのだが。
 それでも光の速さとも言える速度で逃げる術者を発見できたのは幸いだろう。
 それに追いつくことができなくても輝麗錫杖【輝麗錫杖】による霊力の散布で僅かでも素早さが落ちればいいと伽傳は考えた。
 そして紫千早で効果を高めた八乙女舞を舞い始める。

「舞殿。援護が入りましたぞ。光の術者に追いすがれそうな者が」
≪本当!? ここで逃がしたら、また振り出しに戻っちゃう! そんなことにならないようにね≫
「分かっている。私の八乙女舞の範囲から外れることがあろうとも、逃げる先を見失わないよう気を配っておこう」
≪お願いね! 私は九鬼さんと鶴永さんを拾ってくる≫

 光を形にしたような黄金色の髪をふたつに結んだ少女は光の速度で逃げていく。
 跳ねるような、自由に折れ曲がれる一筋の線を引くマガカミはそれが自慢だった。
 誰も自分に追いつけない。
 いつも置いていくのは自分の方。
 早く、もっと早く。
 速さだけが自慢のマガカミはそれだけの意思しか持っていない。

 九鬼 苺炎としては障害物の多い場所に陣取れたらいいと考え舞と伽傳に頼んでいたが、術者を追い込めるような速さを舞と伽傳は持っていなかった。
 それでも霊子端末壱号で連絡を取り合い、伽傳の方へ近づいた術者へ空走下駄を履き疾の脚に変化させた風間 瑛心が追いすがっていくのを目撃することはできた。
 だが、瑛心には誤算があった。
 疾の脚で変化した足では空走下駄で走れる以上の速さを得られなかったのだ。
 飛行速度は人間の足でも変化させた足でも変わらない。
 ならば、素早さをとるにはこの空走下駄は足枷でしかない。
 障害物を飛び越える滑らかさを捨て、術者に食らいつける速度の方を取った瑛心。
 直角に曲がれる術者に対し、瑛心自身は止まれず空を掴む状態が続いたが、人間の足ではとうてい追いすがれない状態に食らいついていく。

「せや!」

 瑛心から逃げる術者の前方に現れたのは跳流駆で障害物を乗り越えてきたクロウ・クルーナッハ
 進行方向から奇襲を仕掛けると鎖を伸ばした状態の鎖螺奏呪を振り抜いた。
 それを避けることも想定済み。
 逃げ先に向かって口に含んだ常夜煙管の毒煙を吹きかけそのまま落下していく。
 落下していく人間に興味はない。
 そのまま逃げようとした術者へクロウは霊子噴進靴を噴射させ空蹴で再浮上してみせた。
 振り抜き伸ばしていた鎖螺奏呪を広げ、影分身を出現。
 影分身と挟み込んだ状態で雷切の術で急加速すると常夜煙管を突きつけるが、鎖螺奏呪の網目を掻い潜るように術者はこのまま逃走していった。
 常夜煙管が当たらなければ毒を注ぐことはできない。
 速度が落ちることなく術者は逃げ続ける。

 次に追いかけたのは雷切の術で加速し空蹴したキョウ・イアハート
 このような状況を作った巌のワガママが気に食わないキョウにとって理不尽に人の命を奪う様が認められるはずがない。
 下手な圧制よりもたちが悪い……だけで話はすまない。
 本当ならこの手で仕留めてやりたいくらいだが、自身の非力さが歯痒かった。
 なればこそ、ワガママな巌の雁首を切り落とすための一助となってみせる。
 毒物こそ睦美流の得意分野だ。
 要は役割分担だということ。
 キョウは一度決めたやるべきことをキッチリこなす人だった。

「こちとら時間がねえんだよ。あの馬鹿に無用な殺しをさせんためにゃとっととケリをつけねぇとならんわけで」

 そのプライドで術者に向かって雷切の術による最高速度で追いすがり、そして機巧霊時計で体感時間を加速させると黒南風【蘭乃迅】を疾刀し睦美流弐ノ型・朱砂切を流し込んだ。
 30秒という長くて短い時間の中で空蹴の消耗を押しやって流し込めるだけの毒を流し込む。
 あらゆる攻撃に耐性があろうと毒に弱いこの術者。

 僅かながら毒により微細に速度が落ちたところを、厄除懐中合羽で霊力を隠蔽し睦美流壱ノ型・音無の状態で閃歩した芥川 塵が接近する。
 昇力の秘薬を飲み、春風【蘭乃迅】を解放することで刀身を不可視化させた状態で睦美流弐ノ型・朱砂切を繰り出した。
 その不可視の状態でも光の術者はしっかりと間合いを読み、それを回避。
 逃げに転じるが、塵の攻撃はこれだけで終わらない。
 空振りに終わったかのように思わせた一撃を羽返したことで一度外した攻撃を捻じ曲げ睦美流弐ノ型・朱砂切を確実に体内に流し込んだ。
 二連続の睦美流弐ノ型・朱砂切に苦しそうに顔をゆがめた術者であったが、それでもなお逃走を図った。

 自分さえ生き残れれば巌にかけた六禁の鎧衣は解除されない。
 攻撃よりも逃げる方が大事だ。
 毒は苦しい。
 どんなにあらゆる属性に耐性をつけたこのマガカミであっても毒の苦しみは耐えられない。
 だから逃げる。
 生きてさえいれば術は解けない。
 だが、この先は嫌な気配がする。
 急転回してその場を離れた。

「あれ。気づかれちゃったかな」

 光の術者が急転回した先では舞が狩鈴蘭を展開していたのだ。
 火狐の呼び符に後を追いかけさせれば、今度は輝麗錫杖を振りまき八乙女舞を踊る伽傳に突っ込んでいく。
 周囲に貫通力の高い光の弾を発生させ、自分の身体をじわじわと蝕む憎き相手である伽傳に向かって放つ。

「させないもん!」
「させないわよ!」

 舞が土隆起を起こし、貫通していった光の弾を苺炎が赤蜻蛉で受け止め守る。
 苺炎は狩鈴蘭の花粉を風視術で流れを把握することで最短距離を走り伽傳の前に入り込んだのだ。
 そして一織流壱ノ型・炎心で身体能力を持ち上げると霊子噴進靴を噴射させ踏み込む。
 腐蝕の凶刃を塗った錆喰を疎速してくる刃に当たりたくない術者は目つぶしのように閃光を放つとその場から逃亡した。

「薄桜さん! 足場頼んだよ」
「うん!」

 視界は白くなっているが、障害物のあった場所くらいは覚えている。
 勘で舞は土隆起を起こし、跳流駆と空走下駄で走ってきた鶴永 真白が霊子噴進靴【霊子噴進靴】を噴射させ土隆起を足場に逃げる術者を追いかけていく。

 逃げ足の速いこの術者を早いところ仕留めねば六禁の鎧衣を解除できない。
 このままだと被害は大きくなる一方。
 早急に手を打たねばなるまい。
 巌に挑む仲間のためにも、できるかぎりの最速で。

 渦巻霊羽織をはためかせ真白は周囲の環境すら味方にして走っていけば、目つぶしから回復した苺炎も追いついてくる。
 舞の火狐と苺炎と真白に追いかけられた術者は狩鈴蘭からも逃げねばならず逃げ道が埋められていくことに気づいた。
 それでも自分の速さがあれば掻い潜れる自信がある。
 狭い場所であろうと絶対に捕まってなるものか。
 舞の土隆起を足場に跳流駆をしていく真白と苺炎に伽傳から霊分を受け取り挟撃態勢に入ったのを視野に入れ、まずは苺炎の疎速された腐蝕の凶刃を避ける。
 見たこともない毒々錆喰を避けられたことにホッとするが、それは苺炎の陽動。
 本命の一撃は真白の睦美流弐ノ型・朱砂切。
 杭撃で背後に回り込み毒を流す。
 大嫌いな毒を受けた術者は蓄積される毒に侵されながらも、死にたくないという思いだけで閃光を放つと再び逃げ出した。
 その様子を見ているひとりの女性。
 霊断し睦美流壱ノ型・音無の状態でヒルデガルド・ガードナーは観察を続ける。

「……Oh……思ったより早い。追いつけないわけでもないけど、躱されたら同じよね」

 速度を上げる手段もなくそう言える自信はどこから来るのか。
 それはヒルデガルド自身にしか分からないが、このまま追いかけ続けても埒が明かないのは確かだ。
 だったら待ち伏せすればいいじゃないか。
 観察していた状態のまま【九真門】が逃げ道を封じたことによる逃げ先を逆算し待機することにした。
 目の端では【金蓮花】が打って出るのが見えたが、彼女たちの攻撃まで見ていては待ち伏せができない。
 もっと動きが鈍くなっててくれれば仕留めやすいのだが、果たしてどう転がるか。

 閃光の中、【九真門】から逃げていくと今度は舞の狩鈴蘭と同じ臭いを感じ取った術者。
 方向転換しようとしたが、今度の臭いはアイ・フローラが放った狩鈴蘭だけではなかった。
 シャーロット・フルールが睦美流弐ノ型・朱砂切を仕込んだ夜桜キセル【常夜煙管】で毒を散布していたのだ。
 夜桜キセルの毒霧の方が狩鈴蘭の花粉が広がるよりも早い。
 瞬く間に毒霧の中に閉じ込められた。

「むー……自分が無敵状態だからってやりたい放題し過ぎだよね、あの岩男とかいうマガカミちゃん! 華麗にこっそりボコってドカン♪ として気づいたら大ピンチになってて無様に慌てふためけばいいんだよ☆」
「六人の術者を倒さない限り厳はほぼ無敵、と……小さいからってなめてかかると痛い目見ますよ?」

 アイと光の術者はそう変わらない身長だが、光の速度で移動できる方からすれば身長など関係がない。
 アイは狩鈴蘭の花粉と夜桜キセルの毒煙が充満する中、一ヵ所だけ穴を開けた状態で3体の岩駆狗と大蛇の呼び符で召喚した大蛇をけしかけ逃げていく術者を出口から逃げないように追いかけさせる。
 大嫌いな毒の霧を突っ切るくらいなら出口を目指す。
 だが、その前には岩駆狗と大蛇がいる。
 光の弾で貫通させてもアイの霊力によってすぐに復帰してきた。

「無くなった命はどうしようもないけど、今から救うことはできる。さぁさお立合い! 妖怪の里を襲う大災害……彼の者を見事な道化に変じられましたら盛大な拍手を! 奇跡の拍手を待っているよ! ちっちゃくて可愛くて大好きなフレンズ、アイちゃんと2人でやっつけてみせましょう!」
「行く手を阻むのは毒や式神たちだけじゃありませんよ」

 逃げれば逃げるほどに霊力を吸い上げられる場をと計算をしたアイであるが、四季符・秋は岩駆狗を作るのに利用しているので霊力を吸い上げる力はない。
 岩駆狗の持続時間は伸びるので、それを利用して術者を追いかけさせていき、さらに碧水干で強化された氷牢の印を刻んだ四季符・秋で速度低下を狙う。
 ならば式神を操る主を狙えばいいと考えた術者は光の弾を掃射。
 跳返の印で跳ね返そうとするが、貫通力は予想外に高く跳ね返しきれない。

「うっ……でも、ここは通しませんよ」

 出口に立ちふさがり跳返の印を展開。
 身を挺してこの場から通さない気概を見せるアイ。
 猫丸参式から霊力を受け取り陣取っているが、光の弾を跳ね返しきれないのは先程からみても分かる。
 式神たちの速さも術者には届かない。
 今度こそ強引に突破してみせる。
 体当たりでアイを吹き飛ばしそのまま毒の空間から突破した術者を待っていたのは、マシラの草鞋を履いた灰崎 聖
 忍びの歩法の状態で機巧霊時計で加速させ睦美流壱ノ型・音無で接近し毒の習熟で塗った黒時雨で斬りかかったのだ。
 毒自体は睦美流弐ノ型・朱砂切よりは弱いが、これまで幾度となく睦美流弐ノ型・朱砂切を流し込まれてきた術者にはこの毒も苦しいもの。
 機巧霊時計が回りきる30秒間、光を弾く黒時雨によって傷が増えていく。
 術者の不運はさらに続く。
 今まで追いすがっていた真白の渦巻霊羽織によって集中力が途切れてしまった。
 距離を測るため、攻撃される気配を感じるため、無意識のうちに渦巻霊羽織を見続けていたようだ。

「ごめんなさいね」

 そのわずかな隙を突くように待ち伏せしていたヒルデガルドが虚霊の翻刃を裏葉で投げてくる。
 幸いだったのはヒルデガルドが自分よりも遅い相手だったことだ。
 裏葉であろうと避けてしまえばどうってことはない。
 人間というのは遅い存在だから。
 ヒルデガルドにとっての素早さで接近しても光の術者にとってはスローモーションにも等しい。
 毒に侵されて動きが鈍くなっていてもそれくらいは避けられる。
 睦美流弐ノ型・朱砂切から逃げるが運もそこまで。

「光は急には曲がれない☆ 逃げ道が限定された時点でキミの負け。スピード対決なら負けないよ」

 隠蓑笠で気配を、霊断で霊力を隠し隠れていたシャーロットが閃歩で間を詰め杭撃、夜桜キセルを突き刺した。
 それだけではなく瑛心が霊子噴進靴でブーストした閃歩で間を詰め、勢いのまま睦美流弐ノ型・朱砂切を流し込まれたことが致命的だった。
 幾重にも重なった毒に耐え切れず、毒に溶かされるように光の術者は溶けて消えていった。

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