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巌からの挑戦状!

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巌からの挑戦状!
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水の術者


「禁呪まで持ち出して天下六霊槍を狙うとは念の入った事だ。だが貴様らがどんな策を弄そうと、全て無駄骨に終わる」

 【銀の天秤】のリシア・ハーヴィは自身と心美・フラウィアに神咒をかけ、祓穢警策で守りを強化すると視禍でマガカミの存在を探り始める。
 巌からそう離れていない場所から六禁の鎧衣の術をかけていることは間違いない。
 入り乱れる騒動の中からマガカミの存在を見抜かなければ、千春が殺生石になってまで天下六霊槍の一本を守っているのが無駄になってしまう。
 探すのに時間をかけていられない。

「見つけた」
「禁呪やら人質やら脅迫やら、やりたい放題やってくれるねぇ……! 連中に法とか理とかを説いてもムダなのは百も承知だが、流石に堪忍袋の緒が切れた。タダですむと思うんじゃないよ……!!」

 碧斗の話では今の巌は六禁の鎧衣という結界に守られており、現状倒すのが不可能のようだ。
 まずは六禁の鎧衣をかけている術者を倒し、六禁の鎧衣を引きはがす必要がある。

「全属性無効とかチートもいいとこだけど、そんなのが長続きすると思うんじゃないよ? 無敵モードの効果時間が短いってのは、昔から決まってる事なんだよ」
「神よ。悪しき者に裁きの力を。禍々しい結界を打ち払う清き加護を降り注いでください。清き力で悪しき者に乱された地を清めてください」

 神楽舞を捧げるリシア。
 神咒で精神を、祓穢警策で守りを、神楽舞で術に対する耐性を付与した彼女。
 五星流の流れをくむ巫僧ならではの対策だ。
 耐性による強化は、なにも敵だけの専売特許ではない。

「アンタの“水”を跡形も無く蒸発させてやる……!」

 心美は錆喰を順手に持ち、赤蜻蛉を逆手に持つ双天の構えをとると一織流弐ノ型・紅刃で赤熱させると焔獄で斬りかかる。
 水の盾で受け流す水の術者。
 水色の髪を後ろに流した女型のマガカミ。
 しなやかな見た目はまるで水のよう。
 焔獄で斬られる度に水が蒸発していく中、水圧の高い水弾が放たれる。
 通常ならばここで回避に移るだろう。
 だが、心美は回避行動をとらずにリシアが放つ燐光の払弓で撃ち落としてもらうことでとにかく攻めに攻める。
 錆喰で霊力を奪い、相手の体内水分すら蒸発させる勢いでプレッシャーを与えていく。

 水分が蒸発し目減りしていくはずなのにこのマガカミの霊力は豊富なのか堪えた様子が見えない。
 蒸発されてしまうと分かったうえで盾を生成して身を守り続ける。
 全身を守らず心美の錆喰と赤蜻蛉を受け捌く眼力が長けているのだろう。
 少ない水量で確実に攻撃を受け続けていった。
 その表情は無に近い。
 攻撃が来るのなら受け止めるだけ。
 蒸発の反応も霊力の減りも水の術者には関係ないようだ。

 何度目かの攻防で赤蜻蛉で水の盾を打ち払うと錆喰の焔獄を突きたてるが、術者の身体に当たる前に水の柱を発生させ自身を囲むことで錆喰を弾いてみせる。
 水圧によって錆喰をこれ以上進めないようにしたのだ。

「ガボッ!?」

 そればかりではなく心美の顔の周りに水を纏わせ窒息させにかかった。
 もがく心美。
 水を掴むことはできず錆喰と赤蜻蛉を取りこぼす。
 それを何の感情もなく見つめる術者。
 彼女に息苦しいという感覚も理解できないのだろう。
 ただ、人間は顔に水が覆われると早い者で数秒で動かなくなると経験的に知っているだけ。
 今回もそれをしたまで。

「心美! ……貴様!!」

 燐光の払弓を射るリシア。
 長い水色の髪に矢がかすり一部の髪が短くなるが、それを気にした様子は見受けられない。
 人間の姿をしていても人間らしい感情といったものがまだ芽吹いていないのだ。
 そうだとしても髪を気にする人間もいれば、気にしない人間もいるのだから一概には言えないが。
 激怒するリシアとは正反対の無感情の術者はなにをそんなに怒っているのだろうと思いながらも、矢に当たれば痛いということだけは分かるようで撃ち抜かれる矢を滑るように避けていく。

 矢を避けるために距離をとっても心美の顔を覆っている水の膜は外れない。
 息を吸い込み用意をしていたわけではない心美の肺では長時間は耐えられないだろう。
 矢で水を弾くことはできない。
 水を蒸発させるしか方法は浮かばないが、それができる当人が行動不能に陥っている。
 生真面目でクールなリシアであってもパートナーが今にも窒息してしまいそうな状況では焦りも生じる。
 そんなパニックを救ったのは【水断ちのMAI】の仲間だ。
 影分身と共に東雲 葵が双天の構えで天流大牙鎌を分割し、二本の刀で焔獄を繰り出し心美へ向いていたリシアの意識を断ち切った。
 そう。自分ひとりで戦っているのではない。
 一番初めに見つけたのは自分たちだが、ほかにも仲間がいる。
 そのことを忘れていた。

「どんなにお主が強かろうと我の鎌に適うものなどおらぬわ!」
「では、いたずら開始です」

 影分身の攪乱と本体の焔獄で攻めていく葵。
 彼女の攻撃に追従させるように御子柴 瑞稀の火狐の呼び符で召喚した火狐に体当たりをさせていく。
 瑞稀はその後方にて睦美流壱ノ型・音無で移動しながら土隆起を起こし葵の足場を、回避場所をいくつも作成する。
 チラリと心美の方へ視線を向ければ藤田 一星がカームリッパーで精神と整え慎重に心美の顔を覆っている水の膜にCar.蜥蜴【地噛】を一織流弐ノ型・紅刃で赤熱させ、焔獄による蒸発で窒息から解放させたのが見えた。

「ゲッホッ! ゴホッゴホ! し、死ぬかと思った……」
「熱かったり、火傷はありませんか?」
「ないわ。そんなことを気にする余裕もなかったというか。本当に助かった」

 水だけを蒸発させることに成功した一星もほっとしたようだ。
 心美としても感謝の念しか抱いていない。
 たとえ髪や肌が燃えてしまったとしても、自分を助けるためにしたことなのだから怒ることなどひとつもない。

「本当に良かった。この朱一文字が、師範がここにいるかのように感じさせてくれて力を貸してくれたのですよ」

 鉢巻きにした朱一文字【朱手絡】を指さし笑いかける一星。
 その笑顔に死の恐怖が抜け落ちていくのを心美は感じられた。

「後れを取ったけど、私はまだやれる!」
「はい。鎧衣の維持で強力な攻撃には集中できないはずです。とはいえ火は水に弱いですから、生焼けになるような炎では消されてしまうでしょう。やるなら、それこそ一撃必殺。大丈夫、私たちならいけます」

 一星によって立ち直った心美を見て意識を術者に切り替えた瑞稀は、戻ってきた火狐に球爆の御符を持たせ葵の攻撃に追従するついでに設置してもらうよう指示を出す。
 そして崩れた土壁を土隆起で作り直し、常に葵の足場兼逃げ場として用意しておく。

「ちょっと! 待ちなさい! 自棄になって突撃するのは悪手だわ!」
「いいや! あの巌とか言うチンピラ野郎を吠え面掻かせてやらねば気が済まん! 一秒でも早く水の術者から叩きのめしてやる! 後、汚い物を見た俺の憂さ晴らしだ!!」
「そうよ! 早く六禁の鎧衣を何とかしないと妖怪の里が! こんな時こそ落ち着いて修行の成果を見せる時なんです!」
「落ち着くという意味を一度辞書で調べなおしなさいよ!?」
「大丈夫ですって! 先輩! 一織流の力、見せつけてやりましょう!」
「先輩だと思っているなら、ちゃんと話を聞きなさい!!」

 一橋 朱美の制止を振り払って駆け付けた【神州モデスト】の弥久 ウォークスフレデリカ・レヴィ
 ウォークスは青木乃伊【碧朧】を解放し防御面を強化すると、フレデリカが浄火の大弓に火門の印を施す。
 視線を交わしあいウォークスの差し出した烈閃籠手【烈閃籠手】にフレデリカが火門の印を施してくれる。
 具合を確かめたウォークスは疾の脚で足を駝鳥のように変化。

「いくわよ!」
「応! チーターも早いが、俺は2足歩行にしかならん! 駝鳥ならば初めから2本足だからな。速度を出すのにもってこいだ!」

 フレデリカは一織流壱ノ型・炎心で活性化させた日輪を発動。
 太陽の浄化の光が照らされる中、潜能解放したウォークスが霊子噴進靴を噴出することで加速し一気撃滅する。
 超加速で接近するウォークスに貫通力の強い水弾が飛ばされ青木乃伊の上から貫通していく。
 守りを固めた上でのこの一撃はめちゃくちゃ痛い。

「そんな攻撃が効くかぁーーーー!!」
「やせ我慢のしすぎでしょ!?」

 やせ我慢で走り続けるウォークスを援護するようにフレデリカの火門の印が刻まれた矢が放たれる。
 一織流壱ノ型・炎心で活性化させ一織流弐ノ型・紅刃で赤熱した矢はともすれば火門の印と干渉しあう恐れもあった。
 そこを制御してこその一織流。
 燃え盛る矢を避けていく術者の逃げ道を潰すのは朱美の役目だろう。
 ここまで激しい炎を魅せられては奧伝にまで上り詰めた自分も全力で魅せねばなるまい。

―――纏え蒼焔。燃え盛れ、纏火・刃桜

 蒼焔の炎刃は着弾すると蒼白い爆炎を巻き上げ、術者の水分を一気に蒸発させてしまうとウォークスは勝負に出た。
 烈閃籠手に貼られた火門の印を見せ付ける様に霊力を噴出させた張り手を繰り出す。
 それは確かに燃え盛る張り手であったが、自らの手も燃え上がらせた張り手であった。
 敵である術者に触れた瞬間、火門の印が反応し燃え上がったのだ。

「熱っっっっっっちィ!!」

 弓や刀といったモノに貼り付けることはできても、烈閃籠手のような近接武器の場合持ち主にも被害が及んでしまうのは予想外だった。
 張り手から霊子噴進靴で加速の付いた足払いに繋げるつもりが予想外の出来事にブーストもできないウォークス。
 対する術者もフレデリカの矢と朱美の蒼焔の炎刃による炎で消耗している。
 ついでに自滅ともとれるウォークスの張り手も加わった力は心美ひとりだけではたどり着けなかったことだろう。
 練度的には心美に分があるが、連携による相乗効果によってその差が埋められ術者を追い込んでいく。

「後は任せるよ、皆」

 黒狼転身した葵の背に乗り、瑞稀は束雷の印を発動。
 だが、この一撃で終わらせるつもりはさらさらない。
 火狐に球爆の御符を設置させたのは何を隠そう瑞稀本人だ。
 球爆の御符で拡散させた束雷の印で動けない術者へ、土壁を蹴り上げ空走下駄で跳躍した一星がCar.蜥蜴【地噛】で引き寄せる。

「私の燃える想いと一つになれ! 一刀両断! 一念通天! 藤田一星、ただここに斬る!」
「これで終いじゃ! 我が炎で灰と化せ!!」

 痺れて逃げるタイミングを外された術者を空中に引き寄せた一星は一織流弐ノ型・紅刃から焔獄に繋げて振り抜いた。
 葵も天流大牙鎌を大鎌形態に変化させ焔獄を繰り出す。
 窒息から復帰した心美も赤蜻蛉を突きたて、錆喰を両手持ちに持ち替えると一織流壱ノ型・炎心で活性化させた焔獄で焼き斬った。
 体内の水分を全て蒸発させられた水の術者は干乾びて枯れ果ててしまう。

「情け無用。千春さんや里の人たちが受けた仕打ちは、こんなもんじゃない。干乾びたくらいで終わってよかったんじゃない」

 見下ろす心美の瞳は燃え盛る炎とは正反対の静寂さを帯びていた。

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