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巌からの挑戦状!

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巌からの挑戦状!
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 包囲を破って・3
 
 脅迫のために無関係な妖怪を殺めることなど見逃せない。
 九曜 すばるは少しでも早く妖怪たちを見つけ出そうと、他の隊士から得た情報を元にホライゾンホバーボードを走らせていた。そこで妖怪たちを包囲している姥ヶ火に狙いをつけると、凍結の術式で取り囲んでいく。姥ヶ火はすばるの攻撃に気づいて反撃しようとするが、その体は徐々に凍り付いて動きが鈍り出した。その間に妖怪たちを逃がしていったすばるだが、姥ヶ火を包んでいた冷気が解かれ再び活発になってしまう。すばるは妖怪たちが狙われることのないように鉄の壁を生み出し姥ヶ火を阻んでいくが、あまり長くは持ちそうにないようだ。
 それを再び冷気の中に封じたすばるだが、戦闘に気づいた他のマガカミたちが押し寄せる気配に気づく。
 周囲を見れば、妖怪たちは安全圏まで退避できたようで姿が見えなくなっている。ならば長居は無用と判断したすばるは、最後に地面から泥の手を出現させて進攻を鈍らせると、ボードに乗ってその場を飛び去った。
 
 「ガラの悪い客は及びじゃねーんだ、帰りな」
 妖怪たちを取り囲んでいた蟹坊主に向かって、何者かの声がかかる。蟹坊主が声の方を振り向けば、【おとぎ組い班】の一浜 希が銃を構えて立っていた。蟹坊主は威嚇するように鋏を鳴らすと、高速移動で希に迫っていく。希もまた相手取るように弾を撃ったが、蟹坊主は素早い身のこなしで躱してしまう。だが、次の瞬間、どこからか飛んできた弾丸が蟹坊主に命中していた。
 それは、希が霊力で生み出した分身が撃った弾丸だった。自身と分身とで挟み撃ちするような立ち回りをしていた希は、それで蟹坊主を仕留めたのだった。
 だが、蟹坊主は後からも次々現れてくる。希の背後から忍び寄ろうとしていた蟹坊主を見つけた一浜 華那他は、天華無想に霊力の炎を纏わせると一閃。
「まずは一発。すぐに落ちてくれると嬉しいな!」
 その言葉の通りに伏した蟹坊主を見て、不敵に笑った。そしてその後ろからまた現れた蟹坊主の鋏を、強化した動体視力で見切ると、刀に霊力で作った細かい刃を纏わせ振るう。刃から身を守ろうと蟹坊主は鋏で防御姿勢を取るか、それは鋏に触れた途端に爆発し鋏を吹き飛ばした。
 そこへ刀を納めた状態で一気に駆け寄った華那他だが、緩い抜刀を見せながら蟹坊主の前に立つ。
「どりゃあ! 切れろ!!」
 しかし、その声とともに踏み込んだ瞬間、高速の振り降ろしが蟹坊主に打ち込まれた。直前の緩慢な動作からの一太刀は防御や迎撃のタイミングを見誤らせ、蟹坊主はなす術もなくその刃に倒れた。華那他は再び得意げな様子を見せるが、視線の先に囚われていた妖怪を見つけ、すぐさま都筑 紗南を呼び寄せた。
 駆け付けた紗南は妖怪たちを安全な場所まで避難させると、まずは自分の心を落ち着ける。そして櫨染ノ杖で怪我の程度が軽い妖怪たちを癒すと、集中して手当てする必要のある妖怪たちに目を向けた。彼らの瞳には、痛みよりも不安や恐怖の色の方が濃いように感じた紗南は、今一度身体と精神に負った傷はどちらの方が苦しいのか思いを巡らす。
 そうした時、やはり心に負った傷の方こそを癒してあげたいと考えた紗南は、治療の手を休めないまま妖怪たちの心を和ませようと口を開いた。
「さすがですね!」
 すると、周囲には何を指してすごいと言われたのかというような、明らかに戸惑っているような空気が流れる。この後は続いて「知らなかった!」「すごい!」などと話しかけようとした紗南は、一瞬で言葉の選び方が間違っていたことを悟る。そのままどうしようかとオロオロしていると、その様子がおかしかったのか、誰かが溜まらず吹き出す気配があった。そこから徐々に緊張の和らぐような様子になると、
「最後まで諦めないことが肝要です!」
 紗南もまた笑顔を見せてそう告げるのだった。だが、そこに偵察を終えた猫丸参式が帰ってくる。どうやら、この場所にもそろそろマガカミが近づきつつあるらしい。
 紗南は素早く避難を促すと、戦闘を仲間に託してその場を離脱した。
 その紗南たちを追うように蟹坊主がやって来るが、機巧霊時計の力で追いついた希が立ちはだかる。そして蟹坊主に弾丸を撃ち込めば、睦美流の型によって霊力をかき乱す猛毒も流し込まれていく。それに怯んだ蟹坊主を凍結の術式で凍らせたところに華那他も追いつき、刀の一閃で蟹坊主を倒した。
 これで、周囲の敵はひとまず一掃できたようだ。
「ふー、次はどこへ向かうべきやら……」
 戦闘の緊張から解放された希は深く息を吐き出すと、すぐにまた精神を集中させ周囲に響かせるように声を出す。その時に生じた反響で何らかの存在をした希は、華那他と一緒にその場に向かうのだった。
 
 マガカミを倒し続けてきた拳を労わるように撫でながら、ブライアン・成田は周囲をさっと見渡す。その様子が何かを、もしくは誰かを探しているように感じた【黎明班】の天峰 ロッカは、この里の出身だという友人を探しているのかと考え近寄る。そして本格的に捜索したいというのなら、協力したいと申し出るのだが、
「それには及びません。今はまず、里の窮状を救うことに専念しなければ」
 ブライアンはロッカの言葉にかぶりを振ると、マガカミの気配を探ることに集中し始めた。
 他らなぬブライアンがそう言うのなら、これ以上の干渉はしない方が良いと考えたロッカは、ブライアンの側を離れることにした。その時、霊子端末壱号で仁科 碧斗と連絡を取り合っていたクロエ・クロラが、仲間に声をかける。皆の注目が集まったところで、クロエは先ほどの通信で得た、妖怪たちのいそうな場所や避難に適した場所などの情報を話し、包囲されている妖怪たちを連れ出した後に合流する地点を提案する。そして必要な情報を全て共有し終えたクロエは静寂のカツガを振るって音を消し、霊力の隠ぺいも行うことで潜入する用意を整えると、はるかを見通せる眼で自身と妖怪たちとの位置関係の把握に努める。その間にロッカは神咒を口にすると、それを先行するクロエをはじめとした仲間たちの加護になるように計らう。
 こうして全ての準備が整ったクロエは妖怪たちのいる場所に先行し、その動きを気取られないようにとロッカ、桜・アライラー天峰 真希那はマガカミに向かって派手な立ち回りを演じ始めた。
「状況は良くねぇ……。一気に包囲を突き破るぞ!」
 先陣を切るのは、真希那。冬霧を構えてマガカミを間合いに取り込めば、寒さに耐性のないマガカミたちは、たちまち動きを鈍らせる。しかし、それをかいくぐるように姥ヶ火が反撃を始めたため、真希那は地噛の力を開放してその体を強引に引き寄せる。そして霊力の炎を纏わせた刀で姥ヶ火を斬りつけ弾くと、
「いまだ、ロッカ!!」
 素早くロッカに指示を飛ばした。後を託されたロッカは、
「真希那、任せて!」
 その声に応じると、山葡萄に霊力を通すことで姥ヶ火の力を削ぐための渦を生み出す。そして機巧霊時計で体感速度を上昇させると、狐百合に霊力で作った光の槍を番えて引き絞り、狙うべき部位を見極め放った。槍に込められた清浄な霊力は姥ヶ火を正確に射抜いて地面に落とし、真希那とロッカはその戦果をたたえ合うように視線を交わす。
 しかし、すぐに蟹坊主が近づくのを察した真希那は冬霧を構え、今度は桜と左右の進路を塞ぐように回り込もうとする。戦闘に先駆け潜能解放していた桜は、自身やその周囲のエネルギーに干渉して加速を得ると、蟹坊主の背後を取る。回り込まれた蟹坊主は高速移動して離脱しようとするが、その頃には既に真希那にも立ち塞がられ逃げ場を失う。
「その殻、ぶっこわさせてもらいますよーっ!」
 自分たちの優位を悟った桜はさらに蟹坊主に近づくと、その拳から連撃を打ち込む。左右の連撃は同じ個所に打ち込まれ、さらには籠手から噴射した霊力で非常に重い衝撃となったため、蟹坊主の固い甲羅は細かいひび割れを起こし剥がれていく。甲羅が剥がれてむき出しになった部分に目をつけた真希那は、冬霧に自身の霊力に由来する冷気をも纏わせ斬りつけることで、その体を内部から凍らせる。痛みを覚えるほどの冷気に耐えきれなかった蟹坊主は、凍り付いたまま力尽きた。
 その頃、妖怪たちの元にたどり着いたクロエは、彼らが怯えないよう、助けに来たのだと伝えていた。そして端末を通じてロッカや碧斗に妖怪たちを発見したことを報告すると、霊視グラスと音の反響を利用し周囲の霊力に探りを入れ、ロッカたちの待つ場所へ引き返そうとした。その道中で目敏くクロエたちを見つけたマガカミに、その攻撃をそのまま跳ね返す術式で対抗しながらひたすらに最短距離を走り抜けていくと、多数のマガカミを引き付け戦いを続ける仲間たちの姿があった。
 クロエと彼女が連れてきた妖怪たちに仲間は気づいていたが、声をかけられる余裕はないようだ。特に赤足の綿に足を絡みつかせる隙を作ってしまった真希那が危ない局面に立たされていたが、真希那はそれに乗じて襲いかかろうとするマガカミたちを動じることなく冷静に見つめる。
 追い詰められた状況の中で、真希那は考えていた。これまでの戦いを通じ、手数だけではどうにもならない相手がいることを思い知った今、二刀流で何がなせるかを。それに一つの結論を導いた真希那は、この場で答え合わせをしようとしていた。
 龍篭手の力を開放し全身に光を纏った真希那は、さらに二振りの刀身に霊力で細かい刃を纏わせる。そして二刀を同時に振るって刃を拡散させ、マガカミが刃に触れた側から爆発を起こさせる。そこへ追い打ちするように、間合いに入ったマガカミを凍てつかせ、磁場への干渉で弾き飛ばしていくことで、一気にマガカミを蹴散らしてみせた。
「妖怪達は今のうちに退避を。俺がいる限りマガカミは近づけさせねぇさ」
 そして最後に絡みついていた綿を冬霧で斬り捨てると、ようやく真希那はクロエに言葉をかけるのだった。
 真希那がそうして戦っていた近くでは、桜とロッカが鈴彦姫の相手をしていた。ロッカの事前の対策で鈴の音に耐性を得ているとは言え、その攻撃に決して慢心はできない。弓に再び光の槍を番えたロッカは、鈴彦姫の動きをつぶさに観察する。この一撃で狙うべきは、異能を行使する元となる鈴。舞を見せるかのように奔放な動きをじっと見つめていたロッカは、その動きがわずかに止まった瞬間を狙って槍を放った。槍は狙い通りに鈴を貫き、周囲にうるさいほどに響いていた音が消え失せる。
「今だよ、桜ちゃん!」
 そこへロッカが声をあげると、桜は加速をつけて鈴彦姫に迫る。
「自分の芸をそんな風に使うなんて、芸者が聞いて呆れますねー?」
 そして拳に霊力を込め瞬間的に硬化させると、鈴彦姫の顔面目掛けて拳を振り下ろして吹き飛ばした。
 真希那、ロッカ、桜の奮戦により、マガカミの包囲網は瓦解した。クロエは妖怪たちに避難場所を伝えて走らせると、引き続き彼らを守るように走り去っていった。
 
 すでに包囲網を抜け出していた妖怪たちと出会い、その避難を守るため殿を買って出たのはデュオ・フォーリー
 近づいて踏みつぶそうとしてくる赤足を前に、地面に手をついたデュオは、そこを起点とした土の壁を出現させて接近を阻む。土壁を回り込むようにして高速で接近してきた蟹坊主に対しては反射の術式で対抗し、妖怪たちを攻撃から守り続けていた。
 だが、負傷している妖怪はどうしても避難が遅れがちになるため、思うようにマガカミとの距離を稼げないでいる。
「皆さん大丈夫ですか、怪我をしている人はいませんか! いたら返事をしてください!」
 そこへ仲間の隊士と思しき声が聞こえ、すぐに羽村 空が姿を見せる。
 デュオは負傷した妖怪がいることを伝えると、駆け寄ってきた空は彼らに応急処置を施し始めた。デュオは空たちが狙われないようにと狐の式神を操り牽制していくと、蟹坊主が飛ばしてきた鋏を風の術式で生んだ突風に巻き込み地面に落としていく。
 その間に応急処置を終えたのか、空も同じく風の術式でマガカミに対抗していく。だが、術式をすり抜けた攻撃が空に当たり、その体が地面に叩きつけられてしまった。しかしそれは空の姿を模した幻影で、その後ろにいた無傷の空は再びマガカミの攻撃を阻害するように立ち回っていく。
 空に妖怪たちと先を行くように促したデュオは、その場に新たな土壁を形成すると、壁を駆けあがってマガカミの攻撃を引き付ける。そして厄介と考えていた鈴彦姫を氷漬けにして動きを止めると、すっかり遠ざかった妖怪たちの後を追いかけるようにして離脱した。
 
 マガカミへの対処に妖怪たちの避難、やることはいくらでもあるようだが――。
 その中でも、自分たちにできる事を確実にこなそうと、幾嶋 衛司は里を蹂躙しようとする蟹坊主の対処に乗り出た。
 まず鈴彦姫の攻撃に対処できるよう、マガカミを祓う清めの言葉を口ずさむと、隣のブリギット・ヨハンソンもそれに倣って霊力の間合いを生み出していく。
 そうして準備を整えると、ブリギットは刀に光を帯びた状態で蟹坊主の側面へと回り込もうとする。接近に気づいた蟹坊主は、回り込まれる前に対処するべく鋏を飛ばして応戦するが、ブリギットもまたそれを察知して空走下駄での飛び上がりを見せながら避けていく。そして刀に纏わせた霊力で斬撃を加速させると、金属や岩石すら断ち切る一閃で甲羅を砕いた。衛司は甲羅を砕かれ、さらに浄化の光にさらされ弱った蟹坊主を、自身が生み出した光の槍を矢のように飛ばすことで追撃していく。しかし、蟹坊主もしぶとく立ち回り、ブリギットの刀をハサミで弾いて距離を開けると、高速移動で離脱しようとする。
「まだ動いてる……エージくん、あとお願い!」
 ブリギットが咄嗟にそう叫ぶと、衛司は霊力で形成した足場から空中へ飛び上がる。
「オッケーブリギットちゃん。カッコよく決めちゃうよ♪」
 衛司はブリギットにそう返すと、ひび割れた甲羅を狙って矢を放った。蟹坊主に残された体力はほとんどなかったのだろう、衛司の矢を浴びた蟹坊主は地面に縫いとめられるようにして倒れ込み、そのまま動かなくなった。
 そうして二人で連携していけば、蟹坊主の姿はどんどんまばらになっていく。霊子端末壱号で他の隊士から蟹坊主の情報を受け取った衛司は、周囲を警戒していたブリギットに声をかけて次の場所へ向かおうとした。
 が、その前にという感じで、
「おつかれさま。いつも通り、イイ感じに連携が決まったね♪」
 愛するパートナーにねぎらいの言葉をかければ、
「エージくんもおつかれ! この調子なら次も安心だね」
 ブリギットもまた、花のような笑顔でそれに応えた。
 
 マガカミではなく、苦しんでいる妖怪たちの気配を探ろうと感覚を研ぎ澄ませていた天廻 陽樹は、第六感に従って目的地を目指す。向かった先にはやはり包囲された妖怪たちがおり、蟹坊主が周囲をうろついている。
「さて渚沙、いつもの」
 そこで陽樹は籐杜 渚沙に何事かを促すと、
「妖怪の里の者達よ、この籐杜 渚沙が貴方達を助けに来たわ!」
 周囲には渚沙の口上が高らかに響いた。
「ハイハイ、助ケニ来タネー」
 それに続くのはセレスティア・シマー。ちなみに、こちらはひどい棒読みである。とりあえずの段取りが終わったところで改めて敵の姿を見た陽樹は、何となく自分には海を連想させるマガカミばかり縁があると感じてしまうが、今は戦いに集中する時である。
「渚沙、鋏に気をつけて……髪どころか体がバッサリやられるよ」
 神妙にそう告げると、その瞳を紅く染めあげていく。一方で陽樹にそう言われた渚沙は思わず自身の髪の毛を抑えてしまったが、
「体はともかく髪くらいまた伸ばせばもんだいないでしょ」
 とあっさり言ってのけるセレスティアの態度に落ち着きを取り戻すようにして、紫電の霊符を構えた。
 陽樹たちの雰囲気が険しいものに変わったからか、蟹坊主たちも敵意をみなぎらせ襲いかかってくる。その前に出たセレスティアは、霊力で作った分身と蟹坊主の挟み撃ちを目論むが、その体が鋏で切り裂かれる。衝撃の光景に渚沙は悲鳴を上げるが、切り裂かれた方は分身だったようだ。分身に気を取られた蟹坊主の背面に回り込んだセレスティアは、鋭い棘を持つ植物の壁を形成し、その蔓で蟹坊主を絡めとる。そして身動きできなくなった蟹坊主に蒼炎小太刀を抜くと、節を狙った貫きを見舞う。蒼い炎に包まれた蟹坊主は、そこから辛くも逃れ反撃に転じようとするが、その目をくらまそうと陽樹が刀をきらめかせる。
 しかし、直前までセレスティアと戦っていたこともあってか効果が弱く、蟹坊主の狙いはセレスティアに向けられたままだ。そこに鋏が射出されようとするのを見た渚沙は、セレスティアの前に割り込んで土の壁を形成し、さらに反射の術式を発動して蟹坊主の攻撃を弾く。
 その隙に蟹坊主に接近した陽樹は、岩石をも切る技の元に蟹坊主の鋏を断ち切った。それで一気に劣勢に追い込まれた蟹坊主に向かって、渚沙は雷の術式を放つ。複数の霊符から生まれた雷は、四方から同時に蟹坊主を穿とうと力を溜める。霊符と術式の相性も良かったためか、雷は大きな威力を伴い蟹坊主に落とされ、稲光の収まった後の蟹坊主はすっかり黒焦げになっていた。
 そうして周囲のマガカミを払い、セレスティアは妖怪たちを救急セットで手当てして逃がしていく。だが、先ほどの戦いでショッキングな光景を見せつけられた渚沙はずっと涙目だったようで、仕掛人であるセレスティアと、実は察していたにも関わらず黙っていた陽樹は、
「サッキハ心臓二悪イ事ヲシスギタネ……帰ったら甘いもの作ってあげるから」
「これが、実際ありえるのが戦いなの……こんな伝え方しかできなくてごめんなさい」
 やりすぎたことを、必死に詫びていた。
 
 水野 愛須は素早く周囲を見渡し、手近の赤足へと狙いを定めていた。
 数に物を言わせ里の妖怪たちをいたぶるマガカミに、愛須はこの上ない怒りを覚えていて、
(……ぶちのめします)
 今まさに、その思いが行動に結びつこうとしていた。赤足に接近する直前で瞬間的に霊力を遮断して詰め寄ると、邪魔な綿を溶断する。そして即座に刀を納めると、愛須を踏みつけようとした赤足に、抜刀とすると見せかけ柄からの打撃を見舞う。続けて今度は確かに抜刀すると、霊力で高めた剣速で斬撃を当ててみせた。
 立て続けに不意を突かれた赤足は、愛須の変化に富んだ動きを封じようと綿を絡みつかせようとする。しかし、愛須は空走下駄で空中に飛び上がって綿から逃れると、地噛を振るって赤足を引き寄せようとする。
 乱れた磁場の影響で愛須に吸い寄せられた赤足は、まるで自ら愛須の刀に飛び込むようにして切られ果てるのだった。
 
 (なかなか、思うように物事は運べねぇ)
 ふと、今まで歩んできた道を振り返った飛鷹 シンは、脳裏にそんなことを思い浮かべる。だが、里や妖怪たちを踏みにじるマガカミを前にすれば、そんな後ろ向きな思いなどあっさり吹き飛んだ。
 そして自分のやり方を貫き、誰も殺さず敵すらも救ってみせると己に誓い、シンの戦いが始まった。
 現状でマガカミたちの注意は、妖怪たちに引き付けられている。その注目を自分に引き寄せようと考えたシンは、ホライゾンオーラを起動させる。それは特異者の能力全般を引き上げると言われている装置だが、オーラを発生させる際の音がうるさいことが課題とされている代物だ。シンはその音を利用してまんまとマガカミの注意を逸らさせると、構えた刀から風の刃を放っていく。それでいよいよマガカミたちの注意はシンに集中していき、シンはその間に妖怪たちが逃げ出す隙が生まれることを願って防戦を展開していく。
 接近してきた赤足に刀を振るうと、そこから遅れて霊気の炎で追撃したかと思えば、刀に岩石を纏って槌状にして振り下ろしていく。広範囲を薙ぐように振るわれた槌は、赤足のみならず蟹坊主も巻き込んだものとなり、蟹坊主の固い甲羅はひび割れ無残な姿となった。
 マガカミたちは数を減らしながらもシンを囲むようにじりじり近づいていくが、シンはすっかり岩石の剥がれた地噛の力を開放すると、飛んできた火の玉を跳ね返す。そして今度は自ら接近を図ると、電流を帯びた刀を振り下ろして麻痺を誘った。
 やがて、その戦いに隊士たちも気づいたか、シンに代わって妖怪を逃がす者や加勢する者が現れる。シンは彼らの力を借りながらも、初めに誓った思いを貫くための戦いを繰り広げていった。
 
 隊士たちの願いや怒りは、単なる思いとして終わるのではなく結果に結びつき始めているようだ。
 マガカミの数が明らかに減っているのを感じた仁科 碧斗は、それでも最後まで気を抜くことのないよう精神を研ぎ澄ますと、隊士たちの戦いを支えるために奔走するのだった。
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