クリエイティブRPG

巌からの挑戦状!

リアクション公開中!

 0

巌からの挑戦状!
リアクション
First Prev  17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27  Next Last


〈叩ク者(3)〉


「フン、無駄な足掻きをしやがって」
 巌は足を振り垂の血を払う。
 確かに、屈強な巌にはそこまでの毒性を与える事は出来ていないが、全く効いていないわけでもない。
 言葉では嘲るものの、面の内側の顔には嘲笑めいたものが浮かばなくなっていた。
 気を取り直したかのように、巌は拳を上げ堅牢な防御の構えを取る。
「次はどいつだ?」

 安易に仕掛けてくる雰囲気は今の巌には微塵もないと悟った騎沙良 詩穂が一歩出た。
 巌の巨体に挑むには、詩穂の体は決して大きくない。
 体格で劣る詩穂はきっと刀を上段に構える事が多くなり相応に疲弊するだろうと考え、ロザンナ・神宮寺は自身の霊力を込めた霊符を詩穂の背中に貼る。
 それから、
「頑張って」
 と詩穂の背中を軽く叩き、詩穂の霊力を増強させた。
(いくら柴垣流と技が似ていようと、ボクにはあれが武人のする事とは思えないんだ……仮に、たとえ誰かの入れ知恵でああした事をやっているとしても、この場は止めないと!)
 ロザンナは強い決意を胸に秘めながら錫杖を振るい清浄な霊力を撒き散らす。
 錫杖の音を背後に聞きながら、詩穂は巌に仕掛けた。

* * *


 味方の隊士が巌に挑む中、葵 司もまた援護に動いていた。
 ここまでの戦いで、毒による攻撃が多少なりとも巌に効くのが分かっている。
 巌が詩穂と戦っている間に、司は雲外鏡を連れて巌の視線に捕まらないよう動き回った。
 巌からなるべく距離を取り、雲外鏡に命じて秘かに毒花を咲かせる。
 一方、ノーネーム・ノーフェイスは殺生石と貸した千春の元に向かった。
「それにしても……」
 ノーネームは殺生石を守るように合羽を被せると、
「これが長のなれの果てかい? こんな体たらくで里を守ろうなんて、身の程知らずもいいとこだね!」
 と冷たい言葉を浴びせる。
 当然殺生石は何の反応も返さない。
 泣いているのか、それとも怒りを覚えているのか……殺生石からは何も感じ取れない。
 だが、ノーネームはそれで構わなかった。
 辛辣な言葉ほど、良くも悪くも心に刺さり、思考を拘束する。
 たとえどう思われようと、巌の乱暴な言動よりも自分の言葉に気を取られてくれれば少なくとも巌の言葉でこれ以上千春の心が傷付く事はない。
(ともすれば、巌の言葉は呪詛になりかねないから……)
 合羽を被せた後、ノーネームは秘かに殺生石に回復魔法を施した。
 そして、
「この戦いの後に、何をされどう責を問われようともアタシは構わない。けど……泣くのだけは待ってほしい。アンタのために命を張った連中は、アンタの泣き顔を見たかったわけじゃない筈だから。長としてこれからやるべき事はいくらでもある。それら諸々が済んで、静かな日常が戻って、それでもまだアンタの涙が行き場を探すようなら……」
 と殺生石に声を潜めて告げ、軽くさする。
「……その時は、アタシが付き合うって約束するから」
 回復魔法が効いているかどうかなんて、殺生石を見ただけでは分からない。
 その言葉が、慈愛が届いているかも。
 だが、きっと千春は何らかの思いを巡らせている……そう信じてノーネームは殺生石に寄り添った。

 巌が詩穂の刀を弾くと、司は今だとばかりに霊符に風の術式を刻んで投げる。
 真正面から直接巌を狙っても躱されるだけ……そう考えた司は雲外鏡が咲かせた毒花の花粉を煽って飛ばせそうな位置に符を放ち術を発動させた。
 使った霊符は元々強力な術式が刻まれたもので、司が刻んだ風の術式と相まって毒花の花粉は一気に舞い上げられる。
 しかし、毒の効果は届きはしたものの、巌は僅かに鬱陶しそうに鼻息を荒げただけだ。
「まだ悪足掻きをする奴がいたか」
 巌の殺気を感じ、司はその場に手を付き土壁を起こした。
 巌は衝撃波で土壁を一瞬で打ち砕いたが、司はその隙に雲外鏡と共に退避する。
 すると、司の風の直後に七種 薺が巌に斬り込んだ。
(腕の一本なんて言わない、せめて半分くらいでも……!)
 薺の妖刀には彼女の霊力が注ぎ込まれており、剣閃が入れば巌は炎に焼かれじわじわと力を削がれていく筈だ……が。
「見え見えだぜ」
 薺の動きは全て巌に見切られ、巌は薺の懐に入り掌底を突き当てる。
 躱せない強烈な一撃は薺を意識ごと弾き飛ばすが、薺は間際に意地で刀の切っ先を巌の手の甲に掠らせた。

* * *


 巌は忌々しげに手の甲の炎を払ったが、その眼光は鋭く詩穂に向けられる。
 隊士たちの攻撃で少しずつ消耗しているとはいえ、油断している様子も一切見られない。
(人質作戦なんて……武道の道に進んだ者とは思えないよ。もしかして、誰かに唆された? 六禁の鎧衣も入れ知恵? ううん……今は気にしてもしょうがない!)
 膠着状態を打破しなければ戦局は動かない。
 その一手として、詩穂は秘薬で内面の霊力を限界まで高めた上で、己の持つ刀の間合いまで巌との距離を縮めて抜刀する……と見せかけ鞘ごと巌に打撃を入れる。
 ロザンナは異能の行使を妨げるような特殊な発声で詩穂の戦いを援護しようとしたが、ローザリアのそれが巌に作用しなかったように例外なくロザンナの声も巌に変化を生じさせる事は出来ない。
 祈るような面持ちでロザンナは詩穂を見守る。
 その間にアーニャ・エルメルトは冷静に辺りを見回すと、所々に生える草花の間に霊符を撒き毒花を咲かせた。
(ここの皆さんと同じ気持ちではありますが、こういう時こそ冷静にならないと相手の策に嵌まりますからね……! それに、頭を使えばチャンスを作れるかもしれません……)
 アーニャの視線は殺生石に向く。
 巌は力押しで勝てる程甘い相手ではない。
 勝つためならこちらも手段は選んでいられないのだ。
 アーニャは殺生石に近寄ると、半分ほど出ている天下六霊槍に火の術式を刻んだ符を貼り付けた。
(この術は色々と扱いづらいですが、必ず敵が触れそうな場所に仕掛けておけば敵だけを攻撃してくれます……この技が弱いわけないです。トラップとして使わせていただきます!)
 巌が自身の優勢を確信したら、恐らくこの天下六霊槍を無理やり引き抜きに来るに違いない。
 そう考えを巡らせて霊符を貼り付けた直後、
「てめぇらのそれは、新手の遊びか? 馬鹿にすんじゃねぇ!」
 と巌の怒声が響いた。
 巌は防御の構えから流れるように攻勢に転じ、まずは四つ腕から繰り出す拳で容赦なく詩穂を嬲る。
 そして、別の腕でアーニャとロザンナに衝撃波を浴びせた。
 ロザンナは咄嗟に錫杖を鳴らし防御結界を展開させるが、巌の衝撃波は威力を奪われながらもやがて結界を突破し、二人に直撃する。
「大方、俺がさっさと天下六霊槍を抜いてずらかるとでも考えて罠を張るつもりだったんだろうが……ちょいと俺を舐め過ぎてるぜ。てめぇらが俺に牙を剥く以上、俺は徹底的にてめぇらを迎え撃ち、完膚無きまでに潰す。全てを潰し終えない限り、俺は絶対に油断はしねぇ」
「成程……六禁の鎧衣もそのためのものだったのでしょうか……」
 ロザンナの結界がなければ今頃立ててはいないだろうアーニャが、痛みを堪えながら問う。
「巌さん、あの鎧衣は一体誰が考え出したのですか? 私のような符術士――いつぞやの湊さんのような――ではないですか?」
「てめぇにゃ関係ねぇこったぜ」
 巌は冷たく言い放ち、駄目押しの衝撃波でアーニャをロザンナと共に彼方に吹き飛ばした。
 一方、詩穂は今度は影の刃を飛ばす。
 鞘ごと叩く先程の技が巌にさしもの傷も付けない事など重々承知、膠着している状況を動かせればまずはそれで良かった。
「視力を潰しても意味がねぇって、てめぇらにゃ何度も教えてやった筈だぜ?」
 巌は詩穂の気配を察知して、素早く間合いを取り衝撃波を放った。
 巌の言動に対し、詩穂は努めて冷静に、冷静に……内なる怒りを炎に変える。
 間合いが広がったのは好都合、詩穂は刀に細刃を纏い巌に向けて拡散させた。
 巌は防御の姿勢を盤石なものとして細刃を受けるが、霊力を限界まで高めた彼女のそれは鎧衣を剥がされた巌の腕を鋭く斬り付け小爆発を起こす。
 四つ腕のうち一本がいよいよ悲鳴を上げた。
 鮮血滴る腕に、巌が舌打ちする。
(ここからが本命――!)
 詩穂は今度は全速で間合いを詰め刀を振った。
 巌は詩穂の剣閃を躱すが、中空にふっと湧いた霊気の炎が巌に襲い掛かる。
「うぐっ!」
 巌は咄嗟に上体をのけぞらせたが、傷めた腕は動きが遅れ炎に包まれた。
「二つの怒り火は、詩穂とこの里の分だ、よ……」
 巌の腕を一本潰し、詩穂は秘薬の副作用で甚大な疲労感に苛まれその場に頽れる。

First Prev  17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27  Next Last