クリエイティブRPG

巌からの挑戦状!

リアクション公開中!

 0

巌からの挑戦状!
リアクション
First Prev  16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26  Next Last


〈叩ク者(1)〉


 ここまでの隊士たちの足止めが遂に実を結んだ。
 辺りを見ると里の妖怪たちはすっかり避難しており、巌の「六禁の鎧衣」も大半が剥がれている。
「この俺をここまで食い止めるとはな……てめぇらもそこそこやるじゃねぇか。だが……!」
 直後、臓腑を揺さぶる程の巌の雄叫びが轟いた。
 鎧衣こそ消滅したものの、その殺気、その胆力、全てにおいて巌は個々の隊士たちの上を行っている。
 巌の雄叫びは、隊士たちにとってここから先も熾烈な戦いとなるであろう事を予感させた。

 鎧衣が剥がれた巌に、
「帝都華撃団、参上! ここからはわたしたちのステージです!」
 と成神月 真奈美諏訪部 楓が仕掛ける。
「わたしの野望のため、糧になっていただきます!」
 まずは真奈美が独特な発声と立ち居振る舞いで巌の気を引こうとした。
 殺生石の毒で苛立っているであろう巌の集中力を削ごうとしての事だ。
 だが、巌の眼光は「帝都華撃団」の者たちを鋭く射抜きながらも、この戦場全体を見渡している。
「俺を倒そうなんざ、滑稽甚だしいぜ」
 巌は真奈美に腕から衝撃波を飛ばしたが、真奈美は靴の霊子噴射の加速を駆使し三次元を意識したトリッキーな動きで衝撃波から逃れると、巌の視界の外に回り込み扇から風の刃を飛ばした。
 真奈美らの後方には、同じく「帝都華撃団」のルキナ・クレマティスが控えている。
「仁科流奥伝、ルキナ。貴方の首を頂きに来ました」
 ルキナは冷ややかに巌にそう告げて歴戦の特異者たるオーラを纏うと、式神召喚の符を取り出した。
「行け、玄武!」
 放たれた符から出現した式神はルキナの一声で巌に立ち向かう。
 巌は身を捩って真奈美の風の刃を避けた後ルキナを鋭く睨みながら式神を衝撃波で粉砕したが、その後彼女は即座に次の符に凍結の術式を刻んで放った。
「凍れ!」
 水を触媒とした式神を召喚出来る符に刻まれた凍結の術式は通常よりも威力を増しており、強烈な冷気が巌を包み込む。
 並のマガカミなら凍結してもおかしくはないだろう。
(玄武を粉砕した時に多少なりとも濡れている筈……そこに冷気を当てれば凍り付くだろう)
 しかし、巌は冷気に軽く身震いこそしたが凍り付く様子など全く見せない。
「生憎、てめぇにとっちゃ俺は相性が悪いと思うぜ? 己の身ひとつで戦うからこそ、俺は繰り出す全ての技の機微を心得ている。己の力がどれ程及ぶか、その予測も手応えも全てこの身で感じ取った上で俺は動いてる。だが、術に頼るてめぇら符術士はそうじゃねぇだろ?」
 凍結の術式を強化出来るのはあくまで強い霊力を秘めた霊符や術者の技量であり、地上にありふれた物理現象ではない……濡れた場所に術式を放っても凍るかどうかは自他の力量次第であり濡れている事は何ら影響しないという事を巌は暗に示しているのだろうか。
 とはいえ、式符によって強化された凍結の術式が巌を震わせ動きを鈍らせた事は間違いない。
 この機を無駄にはすまいと、楓は体をリラックスさせて集中力を高めた後、眠る潜在能力を呼び覚まし身体能力を大幅に向上させる。
 そして、
「柴垣師範! 三井流の私ですが! 一人の付喪神としてこの場に立ちます、私の一撃ご覧ください!」
 と声を上げ、巌に突撃した。
 身に付けている布の霊力を全て解放し碧い炎のような光を纏った楓は、靴の力で加速し一気に巌に接近する。
「ぶん殴ることしか出来ないのですが、生憎速度には自信があります!」
 繰り出された拳は風と雷の力を纏い巌の懐を狙った。
 だが、「ぶん殴る」事は巌の領分でもあり、彼は「速度」もその巨躯に似合わず心得ている。
 巌は腕一本で楓の拳を受け止めた。
 それでも、巌の腕は楓の攻撃で痺れた上に、籠手から噴射した清浄な霊力が衝撃波となって巌に伝播する。
 これにはさすがの巌も瞠目しながら後ずさったが、すぐに体勢を立て直し楓に衝撃波を放った。
 靴の霊子噴射に頼りながら逃れる楓だったが、巌はすぐに楓に追い付き距離を詰めると、目にも止まらぬ速さで蹴りを食らわせる。
 更に巌は重量そのままに楓を踏み潰した。
 身に付けている布の効果で巌の術を減衰出来ると踏んでいたが、巌の攻撃にその兆候は全く見られない。
 巌の攻撃は術にあらず……物理属性の攻撃が入らないのも属性を持たない攻撃を反射させるのも彼が生まれ持った能力であり、「術」ではないのだ。
 とはいえ、布の霊力は楓の防御力を高めており、彼女は致命傷になってもおかしくない巌の攻撃にどうにか耐える。
「しぶてぇ奴だぜ」
 巌は楓の息の根を止めようと拳を振り下ろそうとしたが、そこに真奈美が突っ込んだ。
 靴で加速し、壁走りのように直近の木の幹を足場にすると、踏み切って風と電気を纏わせた扇で巌の間合いに飛び込み一閃した。
 巌は四つ腕の一本で扇を止めたが、鎧衣のない彼には当然衝撃が入る。
「ちっ!」
 巌は痺れる腕をぶんと振って真奈美をはたくが、その威力は柴垣流の基本型で体を頑強なものに変化させていた彼女が辛うじて耐えられる程度に落ちていた。
(そろそろ此方の戦力も限界か)
 ルキナは真奈美と楓に
「お二人とも離れて下さい」
 と退避を促すと、行灯の霊力を解放する。
 加えてアバターの持つ魔力を増幅させ、外套を翻した彼女が手にしたのは最初から雷の術式が刻まれた数枚の霊符。
「五行相生、水生木。五行相克、木剋土。雷霆よ、打ち砕け!」
 印を切り投げた霊符は巌の四方から同時に雷を放ち、更に霊符そのものの力で一撃加わり、五方向からの雷攻撃となった。
「くそっ!」
 多方向からの攻撃に退路を阻まれ、巌は電撃を浴びる。
 巌の表情は見えないが、彼が苦痛に苛まれている事は明白だ。
 しかし巌はこれに耐え、術の発動中で動けないルキナに腕を向ける。
 衝撃波を予感し、真奈美は全速力で走った。
 そして、直撃する寸前でルキナの盾となるべく頑強な体ひとつで立ちはだかる。
 身を挺した防御でルキナは助かったが、真奈美の方はやはり無事では済まなかった。
 攻撃を受けて痺れた腕からの打撃と、本気の反撃として繰り出される衝撃波とでは殺傷力に雲泥の差がある。
「な、仲間を守るためなら……いくらでも身体張ってみせます……よ」
 その一言を最後に、真奈美の意識は途切れた。

First Prev  16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26  Next Last