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巌からの挑戦状!

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〈食ラヒ付ク者(9)〉


 秋良が放った渾身の影の刃が巌の頬を掠める。
 何度視力を奪われても巌は怯まないが、直後彼の眉間に人知れず皺が寄った。
「長が渾身で放つ毒、もうちょいその身で味わっておきな」
 そんな台詞が聞こえてきたかと思いきや、殺生石の毒が距離を取っていた筈の巌の直近に漂う。
「むうっ!?」
 巌が毒の発生場所を確認しようと気配を探すと、そこには睡蓮寺 陽介がいた。
 彼の手には一枚の符。
 そして、もう一枚の符は殺生石の傍に放たれている。
 陽介は印を切って殺生石の傍の空間と巌の傍の空間を繋げ、毒を移動させたのだ。
(嫌がらせ程度でも構わねぇ……この毒を奴さんに届けてやるぜ)
「……やってくれたじゃねぇか」
 巌の声に初めて怒りらしい怒りの色が混じる。

 殺生石の毒により確かに鈍った巌を、小山田 小太郎堀田 小十郎が一気呵成に攻め立てた。
 その後方では、八代 優が舞を踊りその場を清める事で仲間たちが身軽に動けるようにサポートする。
「すいませんが、手合わせ願いましょう……返事は結構。不作法ですが、押し通させて頂きます」
 「一刻につき一人を殺める」という巌の非道な行いに対して沸き上がる怒りを堪え、小太郎は心を無にして錫杖を振るった。
「てめぇも存外命知らずだな。いいぜ、気の済むまで掛かってこいよ」
 好戦的な口調でそう言い放つ巌の四つ腕が小太郎に伸びた。
 すると、そのうちの一本をリーチの長い間合いから小十郎が薙刀で払う。
「体は強く、技も上手い……斯様な鎧衣などなくとも、貴方はこの里を破壊し得るだけの力を持つのだろうよ。されど、それを振るう心を貴方は置いてきたようだ。武芸者として、何より修祓隊隊士として……貴方の行いは見過ごせない」
「だから何だよ? 俺を止めたきゃ、俺を凌駕するだけの力で挑んでこい!」
 衝撃波を放つだけが能ではないとばかりに、腕は小十郎の薙刀を掴み、彼ごと振り回した。
 その腕の動きとは別に他の腕が小太郎と小十郎に襲い掛かるが、
「させないわ」
 と八葉 蓮花の矢がそれを阻む。
 彼女の弓から放たれた追跡可能な矢は、的確に四つ腕のうちの一本を追いかけた。
 光属性の弓から放たれた矢では今の巌に効かないが、彼の気を引く事なら十分可能だ。
「いい加減理解しろよ。俺に勝とうとするなら今の俺を超える絶対的な強さを見せてみやがれ!」
 蓮花に衝撃波が飛ぶ。
「ええ、大いに侮ってちょうだいな……その代償は、後で取り立てましょう」
 蓮花は冷静に状況を見極め瞬速で移動して回避するが、そこに別の腕から放たれた衝撃波も入った。
 巌の衝撃波は予備動作もない上にとてつもない高速で繰り出される。
 予期せぬ反撃に強い状態の蓮花でさえも、立て続けに多方向からの衝撃波ではどうしても反応が追い付かない。
(……危ない)
 優もまた冷静に状況を見て大地の精霊の力を借り素早く蓮花の傍に移動し、弓の弦で音を立て防御結界を張った。
 結界はものの一撃で破壊されたものの、蓮花は九死に一生を得る。
(やっぱりこの腕が厄介だな)
 四つ腕をいかに封じるか……これが正面から巌に挑む小太郎を助け時間を稼ぐために重要な手段と感じた陽介は、
「手品も魅せ方次第ってな……ちんけかどうかはその目で確かめな!」
 と岩の獣を巌に突っ込ませた。
「ちんけ過ぎて笑えるぜ!」
 巌は容易く岩獣を蹴散らすが、陽介は今度は浄化の炎を纏った狐の式神を召喚し、巌への攻撃を命じた。
 岩の獣の次は狐の式神という波状攻撃を仕掛け、陽介は懸命に巌の注意を引く。
「いつまでちんけな手品を続ける気だ? ああ?」
 巌は指先で式神を裂き、衝撃波を放った。
 陽介は反射の術式を刻んだ霊符を投げて凌ぐが、衝撃波の勢いは強く完全には凌ぎきれずに吹き飛ばされる。
 自身を含めて五人での攻撃……小太郎は苛烈に攻めながらも、嫌でも巌の注意が自分から薄らぐ瞬間がある筈だと心静かにその時を待った。
 そして、無我の境地に至った彼は巌の精神に生じた僅かな「隙間」を錫杖で突く。
 全力を込めた渾身の一撃。
「たとえ効かぬとも……意味がないわけではないでしょう。貴方の身がその名に恥じぬ頑強さであろうと……意識の外から穿たれる衝撃は中々どうして強烈ですよ? これ以上……その手で尊き命を摘み取るな」
 一瞬の沈黙……果たして衝撃が巌を止めたか……と思いきや。
「……いい一撃だ。だが、効かんな」
 巌はその怪力で錫杖を握り返し、小十郎の動きを封じた時のように小太郎を止めると、小太郎を錫杖ごと己の間合いに引き寄せ強烈な前蹴りを入れた。
「ぐ……っ」
 小太郎は地に足を踏ん張り何とかその衝撃を逃すが、それでも数瞬身動きが出来なくなる程の痛みは残る。
 その数瞬のうちに巌は凄まじい正拳を小太郎に打ち出そうとした。
(これ以上……誰も死なせねぇ……!)
 陽介が立ち上がり再び符を投げ、印を切って殺生石の毒を巌に流す。
「舐めんじゃねぇ! この俺が同じ手を二度も食うか!」
 巌は陽介に容赦なく衝撃波を射出した。
 陽介が使ったこの術は、自分以外のものを移動させている間は自身が動けなくなるという欠点を持つ。
 すかさず優が蓮花を守った時のように陽介の元に素早く移動し防御結界を張るが、蓮花の時と決定的に違うのは守られる側が動けないという点だ。
 防御結界によって威力を削られはしたものの、衝撃波は結界の向こうにいる陽介を直撃した。
「ハッ! ざまぁねぇぜ!」
 嘲る高笑いと共に巌はいよいよ小太郎を仕留めに掛かるが、優と蓮花がそれを許さない。
 蓮花は練った気を一気に膨らませて殺気を放ち、何とか巌の気を引こうと試みる。
 更に、圧縮した空気を放ち轟音を響かせた。
(禁呪がなければ勝てる……なんい甘い考えはしてないわ。柴垣師範に似て、大雑把そうな言動の割には物事を冷静に見据えてるようだし)
「それでも……ここまで好き勝手した代償は払わせるわ。そうでもしないと、犠牲になった人たちに悪いもの」
 一片の迷いなく放った気や轟音だったが、やはり巌は格段に強い相手であり警戒心を抱くにとどまる。
 しかも、属性を持たない圧縮空気と轟音はそのまま蓮花にはね返った。
 それでも優が小太郎の前に滑り込む時間は稼いだ。
 防御結界を張る優の脳裏には、巌と対峙する直前に小太郎たちと交わしたやり取りがフラッシュバックする。

――「自分がやろうとしている事がどれだけ危険な事かは百も承知です。ですが、優さん、蓮花さん、小十郎君、陽介君……自分はこの無茶を通したい……通さねばならないと思うが故にどうか……意志通す力を、自分にお貸し下さい……!」
 決死の表情で助力を請う小太郎を、
「小太郎君が気張ると言うのなら、その道を照らし支えるのが私の役目よ。存分にやりなさい」
 と蓮花が後押しし、小十郎は
「小太郎さん、皆で奴を止めよう」
 と頷き、その小十郎の肩を
「ああ、行こうぜ小十郎! 小太郎さんや皆の想い、俺たち全員で支えて奴さんの度肝を抜いてやろう!」
 と陽介が叩いた。
 かけがえのない仲間たちの決意に触れ、優もまた小太郎の目を真っ直ぐに見つめた。
「……なら、わたしもその無茶を支えます。……わたしにも、護りたい人や想いがあるから」――

(……こんな相手と戦うなんて、普通に考えれば無茶だと思う……。それでも……)
「……小太郎や皆は立ち向かう事を選んだ……だから、わたしは皆の歩みを支えよう……如何なる苦難も、乗り越えられるように……わたしたちは、わたしたちの日常を護るんだ……!」
「守れるもんなら守ってみろよ!」
 巌の拳が優の防御結界に突き刺さる。
 結界を破壊した巌は優を蹴り飛ばそうとしたが、その背後で小十郎が薙刀を大きく振りかぶり、巌の腕に全力で叩き付けた。
 武術の経験を基礎とした動きから繰り出された一撃は、的確に巌の腕に入る。
「たとえ無敵に近い状況でも、楽な戦いなどさせんよ」
「おいおい、それで叩いたつもりか? 笑っちまうぜ」
 巌の四つ腕が小十郎に怒濤の連打を打ち込む。
 小十郎は円の動きで何発かは受け流したが、痛烈な拳打が一発彼の横腹にめり込んだ。
 よろけた小十郎を鷲掴み、地面に沈めようとする巌の腕を蓮花の矢が掠める。
「てめぇも大概だな。そんな矢ごときで俺の……っ!?」
 巌は初めて「痛み」を覚えた。
 彼の腕には細い紅線が走っている。
 蓮花の矢は光属性を持つ弓から放たれたものだ。
 それが微かとは言え巌の腕に傷を付けたという事は……。
「……鎧衣が、剥がれた……だと?」
 巌は半ば信じられないといった面持ちで自身の体を見回した。

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