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巌からの挑戦状!

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巌からの挑戦状!
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 包囲を破って・1
 
 自身に縁の深い者たちを助けたいと願う隊士がいた。知人の大切な相手を守りたいと願う隊士がいた。
 罪なき命が殺められようとしていることが許せない隊士がいた。
 思いはそれぞれでも、目的はひとつ。里の妖怪たちを開放するため、修祓隊の隊士たちは立ち上がった。
 
「蘭……すまないけど里に着いたら住人さんの治療と避難の段取り頼むね?」
 リズ・ロビィの言葉を聞いた池田 蘭は、思わず息を飲んだ。それは縫原 千景も同様だったのだろう、驚きの表情を浮かべてリズを見つめていた。
 【和華隊】として短くない時間をともにしてきた蘭と千景だったから、わかってしまったのだ。リズが妖怪たちに降りかかる理不尽に、いつになく激しい怒りを抱いていることを。
 その怒りに共鳴しそうになった千景だったが、自分までそれに囚われてしまっては、大切なことを見落としてしまうかもしれないと瞬時に冷静さを取り戻す。
 蘭もまたリズの怒りに理解を示していたが、同じくらい残された妖怪たちが気がかりだった。
 そうして【和華隊】は、千景の冷静な声に促されるようにしながら妖怪たちを探し出すのだった。
「千景はあいつらを仕留めるのに集中。あたしのことは一切気にかけないで」
 見つけた妖怪たちを主に包囲しているのは、姥ヶ火のようだ。リズは千景に先んじてそう告げると、
「おう、和華隊参上だ。とりあえずお前ら殺してやるからちょっとこっち来いや?」
 潜能解放とともに、自らに注意が向くように声を張り上げる。その声を聞きリズへ体当たりをしようとする姥ヶ火へ受け流しを図ろうとするが、受け流し後の打撃自体は今一つ威力が足りなかったようだ。しかし受け返しに用いた煉獄から流れ込んだ霊力が毒のような苦しみを与えているのか、姥ヶ火は棍棒を忌避するように上空に上がると、火の玉を操って牽制に出る。そこへリズは再び挑発の声をかけると、火の玉を動物のように変化させた脚でひらりと躱していく。
「今……姥ヶ火の動きを鈍らせてみますね……。……桜花よ……清浄なる霧でわれらを癒し悪しき者を阻むようにとかしこみかしこみもうす……」
 リズが攻撃を引き付けている隙に桜花錫杖を空に掲げた蘭は、錫杖から霧のように振り撒かれる霊力で姥ヶ火の動きを鈍らせようとする。さらに悪霊退散を唱えては、姥ヶ火を弱らせることに専念する。
 リズと蘭からの攻撃を受けた姥ヶ火は、迂闊な接近は不利と悟ったか、火の玉による遠距離攻撃を主軸に反撃を仕掛けていく。そこへ他の姥ヶ火も集まり始め、複数の火の玉が一斉に襲いかかろうとする。
 戦況を冷静に見極めていた千景は敵の動きをいち早く察知すると、四季符・冬に風の術式を刻み込んで放った。霊符から巻き起こった風は中心にいた姥ヶ火を起点に突風を起こし、巻き込まれた者たちのバランス感覚を失わせ地面に落としていく。
「リズさん、もう大丈夫よ。あとは私に任せてくれるかしら?」
 リズや蘭が弱体化させた影響もあり、抵抗する力をほとんど失った姥ヶ火を前に千景は告げる。そして今度は凍結の術式を放って自由を奪うと、硬質化した白縹の御符で姥ヶ火を斬りつけ無力化していく。それでも足掻こうとする姥ヶ火もいたが、そこへはリズがとどめを刺すことで倒し切ったようだ。
「池田さん、この方々の治療お願いね」
 戦闘が終わったことを確認した千景は、蘭に妖怪たちのフォローを促す。蘭はそれに首肯すると、
「今治療しますね……。あなたの痛みや苦しみが消えますように癒えますようにとかしこみかしこみもうす……」
 自分たちの素性を伝えて治療に取り掛かる。
「今、修祓隊の仲間が道の開放やあなた達の長を助ける為に動いています……。私達が来た道を封鎖していたマガカミは退治したので、……どうか安心して一緒に避難して欲しいのです……」
 そして治療の合間に里や妖怪たちのために動く存在があることも伝えると、いまだ恐怖が解けない妖怪のために憑清の御守を手渡した。
「里は妖怪さん達がいれば蘇るのです……。今は命大事に避難しましょう……」
 やがて治療が済み、蘭の言葉に促された妖怪たちはそれぞれに避難を始めた。【和華隊】はその意志を支えられるようにと、妖怪たちへ最後まで寄り添っていた。
 
 此度もまた、『私なりの正道』を行くために。
 乙町 空は白く輝く弓から放った矢で、姥ヶ火を射抜いた。貫かれた姥ヶ火は空に反撃の体当たりを当てようとしたが、進路を阻むように現れたブライアン・成田の殴打を受けて倒された。
 空たちが戦う気配を聞きつけたか、水無瀬 徹二も包囲を破る手助けのため駆けつけてくる。
 そこで空は徹二とブライアンに神咒で精神攻撃に備えさせると、後方に控えて矢を構えた。すると、その場には新手のマガカミが襲いかかってきた。
 姿を見せたのは鈴彦姫、赤足、蟹坊主の集団。
「やりづれぇ。が、やるしかないわな。ちょいと、きばるか」
 バラエティに富んだ一団を前に徹二はそう呟くと、蟹坊主の懐に入り込もうと走り出す。そこに鈴彦姫の鈴が鳴り響き徹二の行動を妨害しようとするが、空が施した技のおかげで跳ね除けられたようだ。鈴彦姫への対処にブライアンが動き出したのを見た徹二は、予定通りに蟹坊主まで迫り、甲羅を鷲づかみにして思い切り投げ倒す。そして地面に転がった無防備な胴体に向けて左右からの連撃を叩きつけると、手早く戦闘不能に追い込んだ。
 徹二はすぐさま次のマガカミの相手をしようとするが、その足元に絡みつこうと赤足の綿が伸びていた。それに気づいた空は桔梗印の護符を取り出すと、綿が絡みつく直前で、護符を赤足に貼り付ける。護符の力は猛毒のように赤足へ流れ込み、その動きが不自然に固まった。徹二はその隙に乗じて赤足に接近すると、振り上げた拳で赤足を仕留めるのだった。
 徹二の方は大丈夫だと考えた空は、鈴彦姫と戦っているブライアンに視線を向ける。ブライアンもまた精神攻撃には影響を受けていないようだが、数の多さに苦戦している様子が見受けられる。空は少しでも数を減らす手伝いになるようにと、霊力で形成した槍を矢のように番えて放っていく。空の放った槍に当たった鈴彦姫は、清浄な霊力に触れて苦悶の表情を浮かべ、怯んだところをブライアンが着実に倒していく。そうして気づけば包囲網はすっかり綻び、妖怪たちが次々と避難を開始していた。
 そして空と徹二は、その場に妖怪がいなくなるまで避難を支えようと、マガカミたちをまっすぐに睨みつけ戦う意思を示すのだった。
 
 天下六霊槍を狙う、この事件の元凶たる七難会の巌は決して見逃すことのできない相手。しかし、
(一刻も早く、妖怪さんに、いつも通りの、何気無い平穏を、返して、あげなきゃ……)
 ろぼ子・クロウカシスは妖怪や里の平穏を第一に考え、マガカミの対処に向かっていた。主に狙いを定めるのは、姥ヶ火。早くも火の玉で対抗してきた姥ヶ火の動きに意識を集中し、攻撃パターンをすっかり覚えたろぼ子は、霊子噴進靴で飛び上がって冷気を纏わせた3連撃を浴びせる。最初の一撃が姥ヶ火を斬りつけると、続く斬撃が姥ヶ火を内側から凍りつかせようと蝕んでいく。その攻撃で地に墜ちた姥ヶ火に止めを刺せば、また新たな姥ヶ火がろぼ子めがけて体当たりを見舞おうとする。円の動きから体当たりを受け流したろぼ子は、姥ヶ火を返り討ちに仕留め、何よりも囲まれないことを意識して立ち回っていく。
 しかし、その最中で襲われそうになっている妖怪を見つけたろぼ子は、一目散にその場へ駆けつける。マガカミを倒すことは大事だが、そのために妖怪が犠牲にするようなことがあってはならない。妖怪を背に庇うことで状況は不利になったものの、ろぼ子の表情に後悔はなかった。
 一方で姥ヶ火の方は戦況が覆ったことに勢いづいたようで、火の玉を引き出してろぼ子たちを狙おうとする。
 そこに悪霊退散と唱える声が聞こえると、リーラ・エインセルがその場に飛び込んできた。
「こんな時にこそ、歌わなきゃ」
 リーラはそう言って光と闇の波動をぶつけると、妖怪を癒すための歌を歌い始める。リーラの助太刀に感謝を伝えたろぼ子は、姥ヶ火を引き付けるため派手に立ち回ると、その隙にリーラたちを逃がしていった。
 再び一人になったろぼ子は、火の玉や体当たりを受け流して反撃の隙をうかがおうとするが、姥ヶ火も素早く動くためにその機会を掴みきれないようだ。
 しかし、その包囲を蹴散らすようにして烏丸 凌駕が現れ、1体に拳を振りかざしていく。突然の乱入者に姥ヶ火は動揺を見せるが、すぐに上空で火の玉を引き出し応戦する。凌駕はそれを待ち受けるべく一織流の型で霊力を活性化すると、火の玉の攻撃を受け流し、
「里の連中の方が、よっぽど辛え! こんな火の玉は温いんだよ! お前らに対する怒りに比べりゃあな、まだ白湯の方が熱いってもんだ!」
 姥ヶ火に向かって叫ぶ。その声を挑発に受け取ったか、姥ヶ火は凌駕を直接倒そうと体当たりを仕掛けようとする。それを見た凌駕は、拳を上段に構えた防護の姿勢を取る。そして空気の振動や姥ヶ火の霊力を察知し、体当たりを防ぎ切った。さらに姥ヶ火の羽の付け根部分に指を深々と突き刺すと、そこから霊力を直接流し込んで弱らせ、そのまま地面に叩きつけた。その衝撃に姥ヶ火は倒れ、ろぼ子の方でも残っていた個体を倒し切り、周辺で妖怪たちを苦しめていた脅威は取り除かれたようだった。
 
 倉橋 フミとブライアン・成田は、背中合わせになりながらマガカミと対峙していた。ブライアンが仕掛ける気配を感じ、フミも霊符を放とうと一歩を踏み出そうとしたが、その足元にはいつのまにか綿が絡みついており、それに気を取られたために蟹坊主の接近を許してしまった。しかし、どこからか飛んできた苦無が蟹坊主の脚を切り裂き、フミへの攻撃を阻害した。
 それは西村 瑠莉の援護。濡鴉で膂力を高めた瑠莉の苦無が、蟹坊主の脚を一瞬で切り裂いたのだった。瑠莉は続いてフミに近寄ると、風の霊力を帯びた妖刀で綿を断ち切り足を開放し、妖怪たちの避難誘導を任せる。逃げる道筋は、弓月 水葉が妖幼の風向で霊力の密度が低いと感じた方向だ。水葉はさらにフミの誘導に合わせ、負傷した妖怪たちを救急セットや栄気で回復していき、避難がスムーズになるようにフォローを加える。だが、そうした行動がマガカミの注目を集めてしまったのか、姥ヶ火の火球が水葉やフミたちを狙って放たれた。
 しかし、その火球は突風で行き手を遮られ次々に失速していく。月精 黒狐の結んだ印が、火球の勢いを阻んだのだ。黒狐は周囲に素早く目を向けると、まだまだ数の多い姥ヶ火を減らそうと四季符・春を構える。すると、霊符からは刃のように鋭い花びらが舞い上がり、姥ヶ火を切りつけていく。黒狐は次に周囲へ霊符を放って数多の光る花びらに変じさせると、花びらでマガカミたちの視界が封じられている間に避難を後押しした。
 黒狐の霊力大盤振る舞いな行動によって、妖怪たちはどんどん包囲を突破していき、フミも瑠莉たちに礼を告げながらその場を離脱した。それを満足気に見届けた黒狐は、次に戦うべき敵を品定めするように睨みつける。その瞳にはこの作戦への、強い使命感が宿っているように見えた。まさか高級和菓子につられて大技を連発しているなんて、そんな即物的な事情があるとは欠片も感じられない瞳である。もっとも、そこら辺の裏事情はごく一部しか知らないことだろうから、結局は端から見れば黒狐は立派に戦い抜いているようにしか見えないだろう。
 そんな頼もしい味方を援護しようと、妖怪たちを見送った水葉も歌舞を使って場を清めることで戦いやすい状況を作り出していく。また、歌舞に合わせて錫杖から霊力を霧のように広げることで、マガカミの接近を牽制していく。
 それに威を得たブライアンは、瑠莉が先ほど傷つけた蟹坊主を拳で沈めると、赤足に突き出した指先から霊力を流し込んでダメージを与える。そして弱ったところへリルカ・ハートカラーズの構えた斧が振り下ろされ、赤足は撃破された。
「あなたとは、以前もご一緒しましたね」
 ブライアンにそう話しかけられたリルカは、口元を喜びの形に引き上げる。
(アア、やはりワタシの眼に狂いはなかったか)
 リルカは無言でブライアンを見つめ、ブライアンに宿っている強い色と輝きを放つ心を見せよと目で訴えかける。リルカに見つめられたブライアンが、それをどこまで悟ったかはわからない。だが、ひとまずはリルカの意思を否定するつもりはないというように見つめ返すと、己の力を示すように拳を握り直した。
 リルカもまた、ブライアンの全てを受け入れるというように声を上げて笑うと、高速で迫っていた蟹坊主を動体視力で見切り鋏を弾き返す。そこへ黒狐の火の術式が燃え盛り、怯んだところにリルカが体の内部へ衝撃を流し込んで倒した。
 そうした戦いを繰り返す内にマガカミの数も減少していったが、劣勢にあっても撤退するつもりはないらしい。鈴彦姫が頭の鈴を振り鳴らす気配を察した瑠莉は、睦美流が編み出した歩法で鈴彦姫に存在を気取られないように動くと、2本の苦無を同時に投擲して牽制を加える。瑠莉の動きに気づいた水葉も、鈴彦姫が立て直す前に異能の行使を妨げる発声をぶつけ、鈴の力を封じ込める。瑠莉はその隙にさらに攻勢に転じるため、星華一天の認識をずらす効果を隠形術の気配を絶つ性質でさらに高め、意図しない方向から苦無を投げつけることで鈴を切落とした。最大の攻撃手段を失った鈴彦姫はそれで一気に追い込まれ、最後は斧に霊力を纏わせたリルカが斬りかかることで力尽きるのだった。
 この一帯には、もう逃げ遅れた妖怪はいないようだ。
 瑠莉たちはブライアンに別れを告げると、水葉が探った霊力を辿るようにして、新たな目的地へ走り出していった。
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