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ヒロイックアース・サミット

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ヒロイックアース・サミット
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 ヒロイックアース・サミットも、いよいよ終盤へとさしかかる。

 人質達も、その多くが正常な思考を取り戻してきたようだ。
 これなら全員救うこともできるかも知れない――。



 続く天導寺 朱達は、アルカをステージへ上げようと計画していた。

「辛いことばかり起こって、やっとこれから良くなっていくはずだったのに……ディスカディアが消えるのは流石にノーセンキューなのよ。
 嫌な思い出も多いけど故郷だものね」

 天導寺 紅が、思いの丈をマナPへと投げ付ける。

「美少女アイドルを心から愛する私からすれば、彼女らに不和を生じさせて笑顔を奪うなどおのれマナP許せん……!」

 クールな見た目からは意外な憎悪の感情が、鉄屈 藍 の口から放たれた。
 ちなみに今回の計画は、藍が提案した作戦である。

(「おぉ、生のアルカさんが……近いっ!!
  決して今までグランスタ側であんまり接点がなかった為に
  「生のアルカさんを近くで見たい」とか
  「サインとか握手とかしてもらいたいな」とか
  「なんだったら匂いとか嗅げるかも」とか
  「いやむしろ彼女の吐息が混じった空気が吸えるだけでいい」とか考えてないぞ……!」)

「藍ちゃん、このライブが終わるまでは真面目にがんばろーねー」

 藍の邪な考えを、運命門 琥珀は見抜いていた。
 心のなかでは、藍のお目付役でもあった。

「アルカっちをあのままにしてはおけないのぜ。
 難しいだろうけど、あの子も笑顔に出来なきゃアイドルの名が泣くのぜ」
「うん、絶対にアルカを取り戻すよ。
 朱、アタシはいつでもいいよ!」
「あぁ、いこう」

 示し合わせて、紅が朱の『寵剣イザナミ』のうちの1本へと融合した。
 スタイルやスキルが朱に重なり、いろいろな世界を表現できるようになった。
 【スカイカンターレ】と『【スタイル】ハーフウェイカー』の翼で飛翔すると、踊りながら歌を披露する。
 イザナミの二刀流を【オルトポテンシャル】で操れば、笛と鐘の音が鳴り響いた。
 同時に、舞台に降り注ぐ光を刀身で反射させ、ステージに小さな光をばらまく。
 朱の踊りに合わせて、藍は『ネオクラヴィオン』で、琥珀は『極光のクラヴィコード』で、【エモーショナルプレイ】をおこなった。
 藍の演奏に反応して、『幼生神獣』がノリよく歌い踊ってくれる。
 琥珀も『【スタイル】ミーティアシンガー』の効果で、『≪星獣≫トランペットイヌ』とのアンサンブルも披露する。
 星空のような光とリズミカルに重なる音で、朱と紅は人質達やマナPを楽しませた。

「……」

 しかしながら。
 歌詞の1番が終わってすぐ、藍と琥珀に目で合図を送る朱。
 アルカによる妨害を感じとったのだ。
 妨害を抑えるよう、演奏の曲調をより激しく変えてもらうための合図を送った。

「……」

 静かに頷き、琥珀はトランペットイヌを【≪星獣≫シュテルンヴォルフ】に変身させる。
 ウタの響く特別聖堂の天井に、満天の星空を映し出した。

「……」

 藍も【神獣極光】で夜空にオーロラを広げ、成長した幼生神獣を歌わせる。
 琥珀と藍はミュージシャンだから、アルカの妨害を受けずに済んでいた。

「後半も全力でいくのぜ!」

 紅の『【スタイル】天津剣士』の力で、朱はイザナミに己の魂の力を纏わせる。
 同時に【神威ウズメ】で、美しい女神の幻を顕現させた。
 天地を揺らすほどの激しい舞いを背後に、朱は飛びあがる。
 『天衣夢縫』の推進力で光の羽根を散らしながら、アルカとの距離を一気に詰めた。
 アルカの眼前に、紅がユニゾンしていないイザナミを振り下ろす。
 瞬間、イザナミは【ミラクルトランスフォーム】でマイクに変形していた。
 イザナミの性能は、紅の『【スタイル】マテリアルドレッサー』で確保済みだ。
 アルカの鼻先で寸止めしたマイクを、器用に手のなかでくるっと回転させる。
 持ち手をアルカに向けて、手渡そうとする朱。

「どうせやるんなら舞台の上でやるのぜ、近い方がアルカっちもやりやすいのぜ」
「わ、私は……」
「遠慮しちゃあいかんのぜ。
 ステージの上からしか見えないものもあるのぜ」
「あ、ちょっとっ!?」

 すんなりステージへ上がってくれない可能性も、朱達は考えていた。
 だから手をとり椅子から立たせて、そのまま空中散歩でステージへと戻ってきた。

「アルカちゃんは、すぐ近くに居る友達の顔も見えないぐらいマナPにゾッコンなんだねぇ……」

 琥珀の視線の先には、悲しかったり心配だったり、いろいろな感情の交ざった表情の八咫子がいる。

「親友にあんな顔させちゃだめだよ」
「やっちゃん……」
「ステージの上からは、大勢の観客の顔が見れるのぜ。
 俺の知っているアルカっちは、キチンと「アイドル」だった。
 今まで見てきた色んな世界の観客達の笑顔を、思い出してほしいのぜ。
 そうすればきっと、小世界を消すことに抵抗を覚えるのぜ」

 朱も、アルカの視野を広くさせて、人質達の表情へと注目させる。
 キラキラしていた、アイドルだった……そんなアルカに戻って欲しかった。
 やがて彼らを見つめるアルカの瞳に、かつての光が戻って来たように感じて――

「さぁて、みなさんお待ちかね!
 ゲストもきてくれたところで、それじゃ、ラストいくのぜーっ!」
「承知した」
「オッケー!」

 朱と藍と琥珀は、揃って【閃光キラーチューン】を発動する。
 それぞれが、イメージカラーの赤・青・黄色の閃光を、縦横無尽に駆け巡らせる。
 更に朱が【U.ディヴィニティヘイズ】でSDサイズの藍と琥珀と朱の幻を散らして、一緒に歌い踊る。
 更に更に【U.オーバーシンクロナイズ】の効果で、「みんなを笑顔にしたい」という気持ちを会場中の全員の精神に直接叩き込む。
 更に更に更にそのユニゾン効果で、朱はこれまで自分が見てきた小世界のライブ会場の風景を、皆に見せる。

「この地球から繋がるどの小世界も、魅力でいっぱいなのぜーっ!!」

 人質達もマナPも、暫く小世界の風景に見入っていた。



「イマジネイターの美しさ、そして内なる輝き、徹底アピールしていくね!
 テーマは当然「変身」だよっ♪
 他の人も変身させちゃうくらい素敵なライブ、マナPちゃんに届けるよ♪」

 空莉・ヴィルトールが伝えたいのは、変身する素晴らしさ。

「……みんな誰だって、心のどこかでは変身したがってるんだよ♪」

 優しく微笑み、ステップを踏む。

「【グロリアスマイウェイ】、光り輝くその道の先へ!」

 輝く足場は階段のように、ステージから観客席へと伸びていく。
 空中から、人質達へ手をふりふり。
 ちょっとハラハラさせちゃうくらいスリリングなダンスステップで、しかし確信を持って進んでいく。

「私の行き先は決まってるから、絶対に足は踏み外さないよっ♪」

 そうして辿り着いたのは、観客席の最後尾。
 八咫子の席だった。

「あなたみたいに悲しそうな顔してる女の子を、魔法少女は見逃してあげないよ?」
「なっ……お、おい!」

 軽やかに目の前に降り立つと、空莉は八咫子の手をとる。

「お姫様の場所まで、あなたを導いてあげるのです♪」

 次の瞬間、空莉は仮想体へと変身した。

「私の名前は「あすとらる☆ごーすと」!!
 見ての通り超絶可憐な魔法少女だよー♪♪」

 【トライスターブルーム】の色とりどりの花火が天を彩り、ますます場を盛り上げる。

「ほらほら八咫子ちゃんも「変身」しちゃお?」

(「姿は変わらなくても心の中を、ね♪」)

「はは……調子が狂うよ。やっぱり一人ではないライブは楽しいと思ってしまう」
「そうでしょ? 八咫子ちゃんも本当はもっと一緒にライブしたい子がいるんじゃない?」
「……っそうかもしれないな」

 空莉は八咫子と、空中を踊り、ステージで歌い、笑いあった。

「それじゃ八咫子ちゃん、しっかりついて来てね!!
 私の覚悟に呼応せよ、『ガナシカリバー』レーザーブレード展開!!」

 仕上げは、笑顔を取り戻した八咫子を、アルカのもとへと連れていくこと。
 進行の妨げになるものを斬る、というアピールの殺陣を演じつつ、アルカの隣へ。

「ふふふー♪♪」

 ふたりの仲が上手くいくよう、空莉は【ベストエンディング】で祈りを込めて祝福した。



 こつこつと澄んだ靴音を立てながら、堂々と歩みを進め、ステージ中央で静止する。

(「ふふふ……アルカにヘイトが集まったようだな。
  アルカ相手なら、スタイルは普通でも俺は充分、戦えるぞ。
  ここは俺が何とかしてやろう」)

「安心しろ、八咫子!
 アルカを助けてやる。
 アルカも八咫子も、俺の事が好きだからな!」

「は!?」
「えっ、え?」

 死 雲人は、ステージの中心で、大声で叫んだ。
 アルカに、マナPではなく雲人を信じさせるために。

 武器を持ち、雲人は【正義の鉄槌】を振りかざす。
 勇敢な印象を、人質達には勿論だがアルカへ与えて、アルカの信用を得たいのだ。

「八咫子、アルカを助けるためだ。
 手伝え」

 ステージへと上がった八咫子に、『花形舞芸者の証』から起こる桜吹雪を降らせる。
 舞い落ちる桜のなかで、八咫子は最初こそ顔を引き攣らせていたが……雲人の意図を察したのか笑顔を作った。
 この行為には、アルカに、雲人と八咫子はうまくいってる、ということを理解させる意味があった。

「お、アルカがやりたそうな顔してる。
 上がってこいよ、アルカ」

 これまでの仲間達の活躍で、アルカの心も多少、アイドル達の方へ傾き始めていた。
 まだためらいがちなアルカと八咫子に囲んでもらい、雲人は【激震ビートフュージョン】を発動する。
 ふたりも徐々に身体を動かし始めて、終わりには息も合うように。

「アルカはどうやら、俺等を無自覚に信じてるようだぞ」

 とは、マナPへのひとこと。

「人は、無自覚な部分での影響を受けやすい。
 それはアルカの過去から、充分承知だ。
 産まれた頃から今までまったく人を信じなかったら、大切な人はできない。
 考えを持てない。
 得られるものはないだろう?
 皆もその通り。
 だが、大切な人は絶対に信じるべきだ」

 マナPには勿論、人質達へと、雲人は淡々と語りかけた。

「俺が証明してやる」

 雲人は、アイドルの力を【スターバレット】で物質化させて、3連の流れ星を撃ち出す。
 徐々に力を強くしていくのは、迫力を出してアルカの理解を得やすくするため。
 ひとつめよりもふたつめ、そしてみっつめと、輝きを増していった。

「俺とアルカと八咫子。
 力を併せれば、人は信じられる。
 信じているからこそ、その相手と力を併せられるのだからな」

 そんな雲人の言葉をかみしめるように俯いてから、八咫子はアルカに向かっておずおずと口を開いた。

「アルカ……。お前が誰かを信じたいが故にそうして道に迷っているなら、
 虫がいいかもしれないがまた私の隣で歌ってくれないか。
 お前が私を信じてくれるなら、私ももう一度私を信じられる……そんな気がするんだ」
「やっちゃん……私がやっちゃんの側にいて本当にいいの?
 私も、また私のことを信じていいの……?」

 涙目で笑い合う二人に、雲人は両手で同時に【よしよし】。

「俺達は人を信じられる。
 アルカも八咫子も、お互いを大切だと思っているから。
 勿論、俺もお前達のことを大切だと思っているからな」

 アルカと八咫子は顔を見合わせてから雲人にお礼を言ったのだった。

(「ハーレムに向かうために、一歩前進という訳だ」)



 赤い大きなリボンと、赤い縁の眼鏡が、とても印象的な示翠 風

「本当に、皆さんいいライブをすると思いませんか?
 私は本当にそう思います」

 うっとりと、このヒロイックアース・サミットでのライブを想い返していた。

「人に魅せて、気持ちを動かし、そして変えていく。
 そんなことが出来て、そしてやっていけるのはいろんな世界があるから。
 だからこそ私は届かせましょう、皆さんの歌を。
 風は音色を運ぶもの……さぁ、奏でましょう」

 風は早速【オープニングナンバー】を発動して、ライブを開始する。
 奏でるのは、癒しの音色。
 光でも闇でもない、どちらにも寄れる中途半端な位置で、気まぐれな風の如く音を鳴らす。

 『【スタイル】ハーモナイザー』の効果は、人質達にも歌を届けやすくしてくれる。
 ゆえに風は、これまで演奏された曲のフレーズや歌詞をとりこみ、アイドル達の気持ちをより確実に届けようと試みた。
 ライブの進行に合わせて、今度は【ブルームミュージック】を発動する。
 曲のムードに合わせた花弁と香りを、自分の周りに舞わせた。

(「私の歌を、皆さんと響かせましょう」)


 風はいつもそばにいる
 優しく撫でるそよ風のごとく 背中を押す追い風のごとく
 吹き止まず 常に常に 共に皆の背を押しましょう


 風の曲が後奏に入ると、会場の人質達の多くがハミングをし始める。
 ライブが落ち着いたタイミングで、飛鷹 シンはマナPの席へと赴いた。
 『【スタイル】デスパレード』で迷いを振りきり、危ない橋の交渉事を渡りきってみせると気合いを入れる。

(「世界の統合は、分かれた世界の可能性を摘み取っちまうことになる。
  だから今、俺は立ちはだかって止めて見せようじゃないか。
  どんな無茶でも、かなえられない理想でも……俺はみたいからな。
  何も犠牲にならない、ハッピーエンドをさ」)

 皆が今日このステージで成就させたそれぞれの可能性を、無駄にしてはならない。

「どうだったよ、小世界を基にしたライブは?」
「なかなかに興味深いものでした。
 シヴァ様の目に留まりそうなライブもありましたし♪」
「元芸能神に推されるとは、あいつの人気も笑えねぇな」

(「あいつもアイドル達のライブを見たら、案外変わるかもな……なんてな。
  笑って済んだらいいんだが、そうもいかないのが世の末かね」)

 いつかシヴァにも皆のライブを見せたいと、シンは思う。

「大世界が発展してきたように、小世界も大きく変わる可能性を秘めている。
 それはたまたまじゃあない。
 どんな世界だって、終わらせてしまって可能性が閉じなければ、いま以上にもっと素晴らしいものを見せてくれるぜ?」
「たまたまじゃないなんて、どうして分かるんですか?」
「特異者として数多の世界をめぐってきたからこそ、これだけは断言してみせる。
 だからもうちょっと、多くの世界を見てみてはくれねぇか?」
「うーん、どうしましょう」
「仲間達も言っていたが、奴……シヴァが、完全にひとつにされた世界を渡されても、納得するかはわからねぇ。
 あいつはみたがっていた。
 自分の目指す最善の現実ってやつを。
 だけどそれは、誰かに見せられても、困るんじゃないだろうか」
「シヴァ様が、困る?」
「そうだ、困るんだ。
 だからもうちょっと、プレゼントとやらは悩んでみてもいいんじゃねぇかね。
 最悪、奴本人に訊いてみてからでも遅くはないだろうさ」
「そうですねぇ」
「そういうわけで、ここで一旦手を止めて様子を見るのが、互いにいい結果を招くんじゃないかとは思うぜ?」

 シンの言葉に、マナPは悩む素振りをみせるのだった。

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