三千界のアバター

≪フェイタル・ゲーム≫魚座の試練

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4.魚座の海

「闇があって光は輝き、渇きがあって潤いに満たされる」
 戒・クレイルはビーチに集う者たちの喧騒を見つめていた。
「対者を排除するでなく、互いに高め合ってこそ人は育まれます。アル、僕達の在り方・連携力でそれを証明しましょう」
カルロオロチ……強敵と聞くからな。あの2人はきっと決勝に残るだろう」
 アルヤァーガ・アベリアは戒の後ろで灰崎 聖のエアビークルに乗り込みながらそう言って笑みを浮かべる。
「面白い、ああ面白いな。俺と戒の全力で奴にどれだけ食い下がれるか、抗ってみせようじゃないか」
 合図があり、一斉に決闘者達がスタート、【蒼銀のデュオ】 は戦いを有利に進めるべく作戦を決行した。
 まず戒はニエベ・D・パラシオと共にグラビティフリーを発動し、できる限り交戦を避ける方向で動き始めた。
 しかし、狭い足場を競ってゴールへと向かう決闘者達には好戦的な者が多かった。
 周囲には銃弾や水の砲撃が飛び交い、容赦なく魔法も発動される。
 あっという間に場は激戦地と化した。
「的を絞られない様に注意しなければなりませんわね! 早速来ましたわ!」
 ニエベは前方から迫る敵に対し、トラッシュノイズを発動し、声による攻撃を浴びせかけた。
 さらに、ライバルたちの中にいる偉人を狙い、魂礼の呪詛による攻撃を仕掛けていく。
(プラスの感情だけが人を育むとは限りませんわ……逆境から這い上がる強さも時には必要ですわよ!)
 群れ騒ぐ猛者たちの中を遡るように、ニエベは戒と共にゴールを目指す。
 その行程は困難を極めた。
「接近戦と遠距離攻撃の連携か……! やはり、足場の取り合いがあるとは思いましたが……!」
 戒はラーストリガーχを構え、ニエベの能力で妨害をかき分けてもなお遠距離から自分たちを狙ってくる一団への反撃を繰り出した。
 射撃と爆風に遭い、ライバルたちは次々に海へと落下していく。
 だが次から次へと新手が現れた。
「交戦が避けられないなら……こっちからも攻めるしかないな!」
 アルヤァーガは堕雷紋を発動し、足場から足場へと進む者たちを狙って雷の威力を落とす。
 さらに足場へと飛び移ったライバルたちの真下から抗黒槍を突き上げ、脱落を狙う。
 偉脈解放による威力とスピードの強化により、多くのライバルを蹴落とすことに成功した。
 しかし――。
「アルヤ…狙われてる……」
 シュナトゥ・ヴェルセリオスのサーベラインズが背後の足場、そして海から接近する決闘者を察知した。
 自分たちのエアビークルを「的」とみなし、魔法や銃撃による攻撃を仕掛けんと向かってきているのである。
「聖……エアビークルを…守るよ」
「ええ。それと同時に……戒とアルヤを守ったほうが良さそうですね!」
 配者の慚愧が聖にそう、戦況を判断させた。
 自動操縦にしたエアビークルを先に向かった戒やニエベを庇うように横付けし、聖はシュナトゥと背中合わせになった。
 そして、シュナトゥがバリアブルソーンを発動し、まずは足場の上にいるライバルを海へと落下させる。
「アルヤと戒が…あんしんして島をめざせるように…護り届ける…聖と、私で…!」
 あえて紋様を展開する攻撃をすることで敵が回避に離れようとすることも、聖の狙いの一つだった。
 だが、敵の数はやはり多い。
 攻撃の範囲外から飛んでくる銃弾がエアビークルの車体を容赦なく攻撃する。
 ライバル決闘者達の狙いは、エアビークルの破壊のようだった。
「遠くからの攻撃なら…これで……!」
 シュナトゥは海から狙ってくる決闘者たちに向けて、プロミネンスフレアを発動した。
 海上のウォーターバイクの上にいた数人の決闘者の周囲に複数の光球が発生し、爆発が起きる。
 そしてその直後、大波が足場へと押し寄せた。
「今の、効いてますよ……! さぁ、先へ行きましょう!」
 聖は再びエアビークルを動かし、先へ行く戒とニエベの後を追う。
 しかし、2人は先行者を妨害する者たちの攻撃に遭い、苦戦を強いられていた。
「戒! わたくしのうしろへ! 一旦退避しますわよ!」
 ニエベは戒を背後に庇うと、新月の蒼杖、聖人の欠角、雪結晶の指輪を原点回帰させた。
(透月の影護よ……戒を護って!)
 水の砲撃によりニエベを狙っていた決闘者がニエベの姿を見失い、一瞬の隙がそこに生まれた。
 その間に、エアビークルの上にいた深淵の烏が殊勝の言霊により彼の方向感覚を狂わせ、さらに夜凱鳥を繰り出して、その爆発により海へと落下させる。
 敵が大混乱に陥る中、戒とニエベはエアビークルへと退避し、体勢を立て直す。
「戒、アルヤ、島影はもうすぐそこまで近づいています。あと一歩……行けるところまでエアビークルで近づきましょう」
 聖がそう言って車体を発信させる。
 さらに、シュナトゥがショックウェーブにより、近づいてくるライバルたちを攻撃。
 エアビークルへの接近を防ぐ。
「追わせない……!」
 敵の妨害を防ぎつつエアビークルで一気に距離を詰めることで、一行は他のライバルたちとの差を広げ、一気に島へと接近することに成功した。
 しかし、ゴールが近づくに連れ、戦いはますます激しさを増した。
 遠距離からの容赦のない砲撃に加え、乗り物が起こす波がエアビークルへと襲いかかる。
 危険を察知した戒とアルヤァーガはエアビークルを仲間に託し、足場へと飛び出した。
「アルヤ……気をつけて……!」
 シュナトゥが九十九の幸を施し、アルヤァーガを送り出す。
 禍から守ることができるように――アルヤァーガはその思いを受け、ゴールを目指す。
(勝ってこのセクターを勝者敗者関係なく、高きを目指し抗える環境にする……そのためには!)
 遺恨の指輪の効果により、抗黒槍、そして滅身の禊を原典回帰し、アルヤァーガが発動するのは滅身ノ抗槍【アンセルフィシュ・アンチノミー】。
 力を解放し、攻撃力を底上げした状態で杭を敵足元から生やせて攻撃するのがアルヤァーガの狙いだった。
 ゴール目前でのこの攻撃はライバルの決闘者たちにとっては寝耳に水であり、多くの油断した者達が海へと落とされた。
 しかし滅身の禊はその代償として、アルヤァーガの体を毒で蝕む。
 その足元はふらつき、視界が歪んだ。
「アル、まだ倒れてはいけませんよ……!」
 ラーストリガーχを構え、戒は自分たちを狙う決闘者達に爆発する銃弾による反撃を繰り返す。
 エアビークルに残った仲間は自分たちの盾となるべく、懸命に踏みとどまっていた。
 しかしその周囲は多くの決闘者達に囲まれ、もはや身動きできるようには見えなかった。
「ここからは……僕たちだけで行くしかありませんね!」
 もうエアビークルを頼りにすることはできない。
 足場とグラビティフリーの反重力を頼りに、戒はニエベと共にアルヤァーガを支えながらゴールを目指す。
 だが、その時だった。
「波が……!」
 足場が大きく揺れ、3人は思い切り波を被った。
 呼吸は奪われ、視界が眩む――。
 真横をバイオシャークやバイオゼリーフィッシュがすり抜けていくのが見えた。
「……っ、危なかった……」
 戒はニエベと共にどうにか足場にしがみつき、海への落下を免れた。
 しかし、その向こうではバイオシャークやバイオゼリーフィッシュに襲われ、悲鳴を上げる多くの決闘者たちの姿が見えた。
 3人が難を逃れ、海の生き物たちの犠牲にならなかったのは恐らく、アルヤァーガの身に施された九十九の幸の効果だったのだろう。
 惜しくも時間内でのゴールはならなかったが、こうして3人は幸運にも無事に海から戻ることができた。
 決勝には結果的に、ゲームに集った猛者たちの中でもさらに実力を見せた者たちが残ることになった。
 しかし、もしももう一度ゲームが行われる事があればその結果はまた違ったものになるに違いない。

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