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オアシス・ドゥニア防衛戦

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オアシス・ドゥニア防衛戦
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【数の欺瞞】

 ロウブリンガー艦内で己の出番をじっと待ち続けていた“寡黙な護人”卯月 浩人は、艦の速度が落ちたことを体感的に悟った。
 傍らでは“黒衣の貴婦人”ラズセリア・ディズマディアも訝しげな表情を浮かべて、浩人の視線を正面から受けている。
「バトルシップ級のどてっぱらにぶち込んだ……という訳でもなさそうだな」
 浩人は待機場所である狭い船室を抜け出すと、手近の壁に設置してある艦内通信用のスピーカーホンのスイッチを押した。
「何か、あったのか?」
『……敵の護衛艦隊に、行く手を阻まれました』
 応じてきたのは、マジックミサイルポッドで対空砲火に備えていたボルジャーノン・アイアスだった。
 アンソニーやミシェルらが巨大火力でこじ開けた突破口を突き進んだアサルトリベルタ艦隊だったが、敵の防衛線は中々にしぶとく、一気呵成の突破はならなかったのだという。
 これも戦争だ、そういうこともあろう──浩人はラズセリアに向けて小さく肩を竦めた。
「桜の奴は、ちゃんと仕事をしておるのか?」
 ラズセリアがわざわざ舷側付近の通路へと足を運び、船窓から外の風景を眺めた。
 丁度目の前に、大華 桜ヘビークルーザー級サンクカリスの巨大な艦影が見える。サンクカリスはアサルトシスターのマジックチャフ散布と、甲板に陣取る“破砕の兵刃”リーゼロッテ・ペトレイアスイーグルデザートRver『グランディア・グルゥH』の火力で接近する敵スカイライダーを蹴散らしている最中だった。
 眼下に視線を向けると、地上でも敵味方のメタルキャヴァルリィが激しく火花を散らしていた。
 サジーのムスペル・スルトルとその僚機が幾分手酷い損傷を受けているようにも見えたが、魁 弾率いるブレイブアイ小隊(ちなみに今回は、アサルトリベルタ第二小隊、と名乗っている)が合流し、何とか盛り返している最中だった。
 その弾は乗機スクラマサクスブーストの操縦席内で、困った様子でかぶりを振った。
「こいつぁ一体、どういう手品だ? 敵だけじゃあなく、味方機の数も合わねえなんて話は、聞いたこともねえぞ」
『おまけに、機体識別番号の信号解析も無茶苦茶じゃ。何がどうなっておる』
 ハイサイフォスから、禿山 拳の同じような呆れ声が返ってくる。
 サジーの隊を救援し、敵メタルキャヴァルリィを蹴散らしたまでは良かったが、その後がどうも良くない。
 というのも、敵影は肉眼ではまるで見えないのだが、しかし索敵結果上ではまだまだ周囲に敵部隊が数多く展開しているように思えるのだ。
「このままじゃあ埒もあかねぇな……一旦、コンカラーに戻るか」
 拳も弾に賛意を返してきた。弾はファイアヘッズに連絡を入れ、コンカラーの着艦用ハンガーワイヤーを自機に引っ掛け、拳ともどもコンカラーの格納庫内に引き返した。
 格納庫では、トリップ・デュランダルバレット・ファイアーがそれぞれの乗機のコックピットハッチを開放したまま、訝しげな表情を並べていた。
「もしかして、お前達も妙な索敵結果に悩んでるって訳か?」
 弾が問いかけると、トリップもバレットも妙な顔つきで頷き返すばかりである。
「敵はロウブリンガー正面の艦隊ばっかの筈なのに、索敵はもっと敵が居るっていってんだもん。訳分からないよ」
 トリップがお手上げだといわんばかりに、肩を竦めた。
 視界の中にはコンカラー周辺を襲う敵は居ない。これでは迎撃したくても出来ない、というのがトリップの弁であった。
「見たところ膠着状態の筈なんだけど、索敵上は派手にどんぱちしてるってことになってる。一体全体、どうなってんだろうね」
 バレットがいうように、索敵機能はまるで何か別の物に踊らされているように思えてならない。
 しかしこの索敵結果は全くの嘘ではないらしく、時折その分析結果が示した辺りで爆発が起こっている。
 これでは自身の目を信じれば良いのか、索敵結果を信じれば良いのか、判断に迷うのも仕方のないところであった。
「兎に角、一旦甲板に出て迎撃態勢の維持に戻るよ……あんまり意味無いかもだけど」
 いってから、トリップはハイサイフォスの操縦席内に消えた。バレットも仕方なしにスクラマサクス先行型のコックピットハッチを閉じた。
「……さて、どうしたもんかいのう?」
「どうもこうもねぇ。オレらも甲板に戻るぞ。ちゃんと仕事せにゃあな」
 拳にはそう答えたものの、弾も正直いって気乗りしていない。
 アサルトリベルタ艦隊は完全に当初の勢いを失って、バトルシップ級左翼側敵旗艦と、その麾下のヘビークルーザー級護衛部隊との間でお互いに足踏み状態に陥っている。
 このままでは敵艦内への突入はいつになるのか、分かったものではなかった。


     * * *


 混乱は、ドゥニアの北側だけではない。右翼側敵旗艦を迎え撃つ南側でも同様に生じていた。
 ナハティグァル隊の支援を受けて、敵バトルシップ級一隻を確実に撃沈することだけに集中していたシルヴァー・グローリー隊は、戦闘開始当初から発生し始めていた謎の索敵混乱状態に、各員が頭を悩ませ始めていたのである。
 今はまだナハティグァル隊が右翼側敵旗艦への活路を切り開こうとしている最中であり、直接最前線に出て敵の主力と相対する段階ではない。それでもアディス・カウンター側の小型艦や戦闘機、ミゼットサブマリンなどが巨大艦影の合間を縫って接近戦を仕掛けてくる為、ある程度の防戦は避けられない。
 問題は、その防戦の最中に起きた。
「ちょっとこれ……どういうことッ!? 実際の数と索敵結果が全然合わないんじゃないッ!?」
 シルヴァー・グローリー隊の旗艦シールドクルーザー級『アズールコール』の艦橋で、“火葬の白姫”焔生 セナリアの声が裏返っていた。
 返す刀でセナリアは、オペレーター席のリィーツェ・アドラスティに振り向く。リィーツェはというと、ジャミングカットは実施済みだといわんばかりに困惑の表情を浮かべ、小さくかぶりを振った。
 と、そこへフリゲート級『バルガ』から、“獅子奮迅の粘り”アルト・エンフェリアがセナリアとリィーツェの混乱を見透かしたかのようなタイミングで、通信回線を開いてきた。
『ねぇ、やっぱりそっちも何かおかしい?』
「その口ぶりだと、ベテルギウスやヴィラ・アイリスも怪しいわね」
 セナリアはリィーツェに命じて、シールドクルーザー級『ヴィラ・アイリス』とシールドクルーザー級『ベテルギウス』の両艦に対してもカンファレンス式通信回線を開かせた。
 すると間もなく両艦の艦橋の様子が前面のホログラム式モニターに映し出され、柊 紫緒莉“静と動の要塞主”永澄 怜磨の困惑と疑惑の色が入り混じった表情が同時に並んだ。
「多分そっちでも起きてると思うから手短に訊くわ。目視と索敵の誤差はどれくらい?」
 セナリアの問いにいち早く答えたのは紫緒莉でも怜磨でもなく、ベテルギウスにオペレーターとして乗艦している七崎 詩穂だった。
『索敵結果の方が30から50パーセントほど、多いよ』
 さくっと何気ない調子で答えた詩穂だが、その数的隔たりは決して小さくない。実際の敵が少ない場合は問題無いが、逆の場合は下手をすれば命取りになることもある。
 そのことをよく理解しているのか、ヴィラ・アイリスのオペレーターフィア・アクアマリナスが緊張した声を無線に乗せてきた。
『特に誤差が大きいのはスカイライダーや直掩機のメタルキャヴァルリィ。次点がミゼットサブマリンやフリゲート級など……つまり、サイズが小さければ小さいほど誤差が多くなるといったところです』
 この現実が一体何を意味するのか、まだ誰にも明確な答えはない。
 ベテルギウスでは詩穂の他に、ソルフェ・セフィーラ篠宮 千咲のふたりもオペレーターとして乗艦しており、現在生じている索敵機能の全艦隊的不具合に対して鋭意分析中であった。
 だが結果が出るまでには、まだ少し時間がかかりそうだ。
 今のところは襲い来る敵の火力もこちらの防御力に比べれば随分と軽微な為、然程大きな問題には至っていない。だがこれがいざ右翼側敵旗艦との戦闘時にも継続しているとなると、これは非常に厄介な事態に発展することであろうことは誰の目にも明らかだった。
『結局、自分の目を信じれば良いって結論なのかい?』
 ベテルギウスの甲板上で砲台としての役割を担っている綾坂 春奈が、通信回線に割り込んできた。彼女が搭乗しているサシュワータ『ガーネットBS』は可能な限り敵を引き付けてから応戦している為、索敵機能の弊害は受けていない。
 それは春奈と肩を並べる格好でベテルギウスの甲板上に陣取っているルドラ・ヴァリオスマカイラ『ターフェアイト』も同様だった。
『怖いのはミゼットサブマリンの奇襲だな。ただでさえ見つけにくいのに、完璧に位置が読めないとなると、一か八かの出たとこ勝負になってしまう』
 ルドラが声だけを回線に乗せてきたが、操縦席内の困り顔が誰の目にも容易に想像出来た。
 その時、解析を進めていた千咲がどうにも納得いかないといった様子で怜磨の後ろから顔を覗かせた。
 曰く、ジャミングカットは矢張り有効に機能している、というのである。
『かといって、恐ろしく強力なマジックチャフ、などというものも考えづらいです。そんなことをしたら、向こうも自軍の索敵能力を潰すような結果になりますから』
 千咲に続いてソルフェも、同様に要領を得ない声を発する。つまるところ、千咲もソルフェも解析に失敗したというところであろう。
 だが現実として、索敵機能がほとんど有効な結果を出さないという現実がある以上、ある程度のところで腹を括る必要があった。
「アニエス、ひとつ頼まれてくれる?」
『はい……わたくしで宜しければ』
 セナリアはアニエス・ノーランドシールドクルーザー級『アルメンタム』に、新たな指示を与えた。高度を上げて全体を俯瞰しつつ、敵の攻撃があればひたすら全速回避に専念せよ、と。
 即ち、索敵機能ではなく高空からの映像で敵味方の配置を把握しようという訳である。
「右翼側敵旗艦との接近戦が始まるまでの間で良いわ。それまではこちらの損害を最小限に抑えたいから」
『かしこまりました』
 答えるが早いか、アルメンタムは一気に上昇を開始した。
 追いすがろうとする敵艦影は、春奈とルドラがその都度牽制を加え、追跡の脚を鈍らせている。
 ここからしばらくは、我慢比べのような戦局が続くだろう。
『己の身は己で守るべきだな。流石に護衛までナハティグァル隊の世話になる訳にはいかん』
 それだけいい残して、怜磨はカンファレンス式通信回線から離脱した。
 紫緒莉もどこか浮かない顔ではあったが、方針が決まった以上はすぐに頭を切り替えた模様。だがこの時、紫緒莉はふとあることに疑問を抱いた。
『でも……どうして索敵だけが、おかしくなったんだろうね。連絡用の通信回線なんか、全然問題ないのに』
 そのひと言に、セナリアは一瞬考え込んだ。
 いわれてみれば、確かにおかしい──だが今は、余計なことに思考力を注ぎ込む余裕は無かった。
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