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オアシス・ドゥニア防衛戦

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オアシス・ドゥニア防衛戦
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避難開始



 戦禍迫るドゥニア市街では、今日もいつも通りの日常を送るはずだった市民たちが、各々の生活を営んでいた。
 そんな中、街のある場所では重苦しい雰囲気で話し合いが行われている。
 この街の町長的存在である老人と話し込んでいるのは、シビリアンとして市民に紛れ込んだデュオ・フォーリーだ。
 住民の被害を少しでも減らすべくデュオは、自衛マニュアルを参考にロートルデバイスで現地の状況や情報を整理し、避難計画を考えていた。
 それを実行するべく老人に近づいたのだが……、ドーウィン式交渉術虎の巻を踏まえ、プラシーボケアをもって接することで話は真面目に聞いてもらえたものの、なかなか首を縦には振ってもらえずにいた。
 見ず知らずの相手からの、街全体を揺るがす交渉だ。老人も慎重になっているらしい。
 避難後の復興支援や避難民の受け入れ先についてまで話は及び、デュオは一度ルーニャに連絡をとった。

「避難民の受け入れ、ですか……」
 市街へ向かっている途中だったルーニャは、その提案にしばし考え込んでから、こう応えた。
「分かりました。ナティス様に打診しますが、既に条件をお話しされている以上、こちらはその条件を呑まざるを得ないことをご承知ください」


 青井 竜一はシビリアンとして市民に紛れ込み、難なく市街への侵入を成功させていた。
 その傍らには、共に絆のエンブレムを持ち行動を共にするシルヴェリア・ネルソンの姿もある。
「街には入れた。ここからだな、シルヴェリア」
 竜一の言葉に、「そうだな、竜一」とシルヴェリアも頷く。一般市民を装うため寄り添っていることに、どこか心地良さを感じてはいたが、ここからは“戦場”となる。
(心を引き締めないとな)
 とシルヴェリアは気持ちを切り替える。
 竜一はホライゾンウォッチで時刻を確認した。少し早めの到着だったが、もう間もなく皆も動き出す頃だろう。
 二人はまず付近の市民に声をかけ、自警組織や消防団の本部がある場所を聞いて回った。するとどうやら、主だった人物たちがちょうど一か所に集まり、会議をしているらしいとわかった。
 議題は、デュオの提案を受け入れるかどうか、というものだった。
 竜一は一刻も早く避難開始を受け入れてもらうため、その場所へと向かった。

 本部で行われていた会議に参入すると、今度は何だ、と住民たちは訝しげに竜一たちに視線を向けた。しかし、
「俺は“手弄の開拓者”青井竜一。そしてプリテンダーの一員だ」
 と竜一が名乗ると、場の空気が変わる。竜一はオンステージの心構えで堂々たる態度を崩さず、話を続ける。
「市民を避難させるため、力を貸してほしい」
 皆、人々を守るという使命感を持って活動している者たちだ。竜一の説得に後押しされ、心が揺らぎ始めているのがわかる。
 さらにそこに、ルーニャからの知らせが届いた。ナティスから受け入れの許可が下りたのだ。
 それを聞いて、これはもう避難計画に乗るべきだろうという決断がなされたようだ。
 老人たちから街の自警組織や消防団のメンバーへ連絡がわたっていき、ドゥニア市民たちは避難の準備を開始することとなった。


「南側の警備が手薄だ。だから避難は南側に向けて行うつもりだ」
 地元の地理に詳しい彼らの意見も聞き入れつつ、竜一はより良い避難経路について話し合い、住民たちの誘導を手伝った。
 デュオもそれに加わり、励ましの歌を奏でて住民たちを勇気づけながら、テルス馬に足の遅い老人や子供を乗せて避難させていく。
 やがてルーニャも合流し、街の中心部から南側へかけての避難誘導を手伝い始める。
 早めに避難を始めることができたのは良かったが、街のあちこちではアディス・カウンター側の警備隊も少しずつ動き始めている。
 協力者全員が怪しまれずに市街地へと潜入し、かつ敵の警備網をかいくぐって街の外へ逃げるには、やや手間がかかりそうだ。



 ホワイトケープを身に纏った真毬 雨海は、神官として市街に潜入するべく南側の入口に向かっていた。
 しかしそこには既に敵の警備隊が配置されていて、「何者だ」と雨海を止める。
 雨海はそれに戸惑った様子を見せつつも、あくまで敵意は見せず、礼儀正しい態度で「私は神官です」と告げた。
「艦隊を見て、街に何かあったのかと思い人々の治療などでお役に立てるかなと思いました。あなた方の邪魔にはならないので入れてもらえませんか」
「そんなことを言って、プリテンダーの仲間なんじゃないのか」
 と兵士が冷たい視線を向けると、雨海はむっとして答える。
「私だってキュベレー様に使える神官です。その私を冥王軍の仲間だというのですか。あまりにも失礼です」
 信じてもらうため、実際に負傷者を助けて見せようと身構えたが、そこにこの場の責任者らしき警備員が「おい、失礼な態度はよせ」と割って入り、手前の警備員を制した。
 どうやら神官であることは信じてもらえたようだが、責任者らしき警備員は、
「ここはこれから浄化される。神官様は入ってはいけない」
 と雨海が市街に入ることを拒む。

 そうこうしているうちに、成神月 鈴奈モニカ・ヴァネルも、南側の警備隊を減らすべく動きを見せていた。
 鈴奈はホライゾンバギーに乗り込み、南側の入口をかためている警備隊に近づいていく。「今度は何者だ」と警備隊が止めると、鈴奈はシビリアンとして一般市民を装い、答える。
「私はこの街の者です。私たちのために戦っている皆さんに、これを、と」
 鈴奈が差し出したのは、あたたかい手料理だった。行きがけに食料調達をしてバギーに積み込んでおいた材料で、ドルチェ・クッキングを行っていたのだ。
「こんな少人数でこの南門を守っていたなんて……本当に、お勤めご苦労様です」
 などと切り出し、彼らの功績を称え始める鈴奈の様子に、次第に警備隊の警戒も解けていき、彼らは少しずつ鈴奈の料理を食べ始めた。
 しばらくの交流の後、密かに堕天使を憑依させた鈴奈は、真の目的を達成すべくこんな話を始めた。
「そういえば、ここに来る途中、変な人を見かけました。
フードを被っていたので顔とかは分かりませんでしたが、すれ違う際に古代竜がどうのと言ってたような……もしかして、あれがこの街にいた冥王の使いだったとか…?」
 警備隊の面々はそれに、眉根を寄せて顔を見合わせた。鈴奈はドーウィン式交渉術虎の巻による交渉テクを活かしながら、さらにこう続ける。
「もしそうだとすると大変なことに……どうか急いでフードの人を捕まえてくれませんか?
勿論杞憂であればいいのですが、万が一の事もありますし、それに少数精鋭で警備している皆さんなら、簡単だと思いますし」
 手料理で士気も上がり、鈴奈を信用しつつある隊員たちは、そういうことならばと立ち上がる。すると鈴奈は悪魔の会話術を交えて、
「あと、他の仲間には内緒にした方がいいかと……冥王の使いを捕まえれば功績ものですし、目標を逃がしていたとばれたら首が飛ぶだけで済まないですし」
 と付け加える。そして土地鑑を活かし、警備隊の面々を街から少し離れた南西方面へと案内し始める。

 その頃。南西ではモニカが、自分が冥王の使いであるかのように姿を変えて、鈴奈が敵を連れてくるのを待ち構えていた。
 顔がバレないようにフードやマントを羽織り、変装セットにあったメイクやウィッグもばっちりだ。相棒であるフェイ――紅眼の銀翼竜『フェルディ』にもメイクを施して見た目を変えてあり、翼は真っ黒に塗られている。
 鈴奈と警備隊員の姿が見えてくると、モニカは真っ黒なギガントマキアを構え、エイムショットを放って先制攻撃を仕掛けた。そして反撃を受ける前に、フェイに乗って空中へ飛び上がる。
 鈴奈が「あの人です!」と言うと、警備隊たちはモニカに攻撃を仕掛け始めた。
 モニカは錐揉み旋転で回避を優先に立ち回り、どうしても避けきれない攻撃は受け流しながら応戦する。
「ふん、“アディス・カウンター”といえど、このアタシ一人捕まえられないとは底が知れたものだ。
これなら冥王軍侵攻の際には警戒するに値しないね」
 正体がバレないよう声のトーンを抑えながら挑発し、警備隊員たちの注意を引き付ける。



 鈴奈やモニカの活躍によって、一時的に南側の警備は手薄になった。
 今のうちにと、皆は一斉に市街地への潜入を目指し、住民たちの避難を急ぐ。
 しかしいかに手筈が順調であっても、市民の表情は浮かないものだった。それだけならまだいいが、中には困惑や不安から内輪で揉める者や、足がすくんでしまう者もいるようだ。
 より安全な避難のため市民の混乱をおさめたいところだが、街の有力者たちは避難誘導に追われているし、ルーニャのような立場ではあまり目立つ行動もとれないだろう。
 そこで、“文民倒征”の名で知られる西村 由梨が動いた。
 由梨はカームレスピレイションで自身の気持ちを落ち着かせ、冷静かつ堂々とした態度で、混乱する市民たちに声をかける。

「私たちと共和国の戦争は終わった。
でも、また私たちの周りで戦いが始まろうとしている。
始めるのも、終わらせるのも、お偉いさんか軍人さん。

何も考えずただ従うだけの時間はもうお終い。
私たちも、私たちにしかできないことを考え、行動しないといけないわ。

そして今は、私たちが成すべきことのため生き残ることが私たちの戦い。
お偉いさんや軍人に頼り思考放棄しないで、彼らに私たちも共に戦っているのだと伝えましょう。
さぁ、行きましょう。
皆さんの安全な避難は私の名前に誓って保証するわ」

 避難を成功させるためには、避難者の気持ちが同じ方向を向いているかどうかが鍵となる。
 由梨の演説は市民たちの落ち着きを取り戻すと同時に、この状況を乗り切るための強い意志を芽生えさせ、それは無事な避難のための協調性へと繋がっていった。

 街の内側で由梨が行動を起こしていた、その頃。
 ラピスラズリメイドに身を包んだ西村 瑠莉は、由梨を支えるべく外側から作戦に助力していた。
 まずは索敵宝珠改を用いた全方位索敵で、敵の位置や爆弾の位置を探っていく。
 ラピスラズリメイドにセットになっているインカムのおかげで、通信はいつでも可能だ。兵は神速を尊ぶの心得をもってより素早く脱出できるルートを判断し、ファストオペレーションで由梨たちに調べた情報を伝えていく。
 演説を終えた由梨は、瑠莉からの助言に基づき避難誘導に加わっている。グッドフィールやエスケープセンスを研ぎ澄ませて、街の外へ向かって住民たちを導く。

 さらに瑠莉は、得られた情報を通信可能な他のオペレーターとも共有することで、効率的な爆弾解除を目指す。
 隠密行動を徹底して索敵情報に引っかかった相手を縫うように進み、自身が解除すべき爆弾の位置へと向かう。
 市民の無事な避難のためには、あまり時間をかけている場合ではない。速度を重視するため、障害物はバリアオーブで身を守りながら強引に突破し、雨斬で優雅に華麗に駆け抜けていく。



 この頃、街の南西で戦闘を繰り広げていたモニカたちと警備隊に動きがあった。
 警備が手薄になった隙に侵入者が現れ、市民たちが避難を始めていることが、警備隊員たちに伝えられたのだ。それを聞いて警備隊も、鈴奈とモニカが敵であることに気が付いたらしい。
「貴様ら、図ったな!!」
 と刃が向けられると、モニカはすかさず栄光の小瓶を投げつけた。その隙に鈴奈がホライゾンバギーを走らせ、二人は撤退を開始する。
 時間なら十二分に稼げたはずだ。



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