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オアシス・ドゥニア防衛戦

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オアシス・ドゥニア防衛戦
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ズルフィカール


 ドゥニアは、東西に通じる街道に沿って、オアシス付近に発達した街だ。そのため、東西に細長く建物が並んでいる。
 アディス・カウンターは爆薬による街の破壊を目論んでいたため、爆発の効果の薄い周辺部ではなく、街道沿いの南北の中央線に爆薬を集中してセットする形を自然と取っていた。
 指令官であるカシムを狙う、傭兵のライトニング部隊が中央部にいたのは正解だとも言える。だが、予想外のこともあった。敵の数が想定した物よりも遥かに多かったのである。そのため、一撃は与えて押し込みつつも、敵後方支援によって押し返されると言うことを何度か繰り返すはめになってしまった。リチャードとその指揮下のトムキャットの動きもあり、特異者たちの能力の高さで数の差を徐々に押し込んでいったが、レベッカ・ベーレンドルフが考えていたほどには前線を押し上げられてはいなかった。
 ただし、カッツバルゲルが主に爆弾設置に動いていたため、やっかいな奇襲をさほど受けなかったのは幸いだったと言えるだろう。
 中央で押し合いをしていた分、左右はどちらも手薄な感じがあった。こちらは、プリテンダーのトムキャットが中心に動き、かなりアディス・カウンターを押していた。そのため、結果的に中央のアディス・カウンター部隊を、南北の周辺部から押しつつむ包囲の形ができあがりつつあった。そのまま、プリテンダー側が終盤圧倒するかに思えたとき、周辺部の部隊が突然瓦解し始めた。
「いったい何があったんだ?」
 ぐちゃぐちゃに破壊されたトムキャットの残骸を見て、“自壊の悪来”柊 恭也がつぶやいた。
『索敵に何か引っ掛かったか?』
 柊恭也が指揮装甲車に乗る伊勢 日向に訊ねた。
『さきほど、シンフォニアが試製シンフォニック・タクトで動きが異常な敵機を発見しました。その近くで、味方の識別信号が次々にロストしています。……プレゼントボマーからの連絡です。ズルフィカールを目視確認しました』
『こちらも、高速で移動する敵機を発見。単機だ。ズルフィカールに間違いなさそうだな』
 スカイライダー小隊からの索敵報告を受けた“砂塵纏う策士”飛鳥 玲人が、チキンレーサーズ部隊に告げた。
 メイベル・グレッセルの空挺戦車に同乗している飛鳥玲人は、エスパーダ部隊とともに別方向から進軍している。
『了解した。予定通り、二方向からつつみ込み、挟撃で撃破する。可能であれば、鹵獲だ』
 連絡を受けた柊恭也がチキンレーサーズの仲間たちと進軍速度を上げてズルフィカールを目指す。
『こちらも進むぞ! なんとしても辿り着け!』
 信道 正義がエスパーダの仲間たちを鼓舞した。
 二つの部隊が狙うのは、ズルフィカールだ。アディス・カウンターのトップがここに来ていると知ったとき、彼――ディッカを倒すか捕縛してしまえば、アディス・カウンターの大幅な弱体化が見込めると考えたからだ。
 二手に分かれた部隊は、カシム率いる部隊の対応を他の仲間に託し、ドゥニア外周部の比較的敵のいない場所を先行していた。遭遇戦による消耗を極力抑えるためと、おそらく指揮官として後方に構えているはずのズルフィカールにダイレクトアタックを仕掛けるためである。
 だが、ズルフィカールは、後方で待機していたのではなく、積極的に遊撃を行っているようだ。もちろん、それも想定内であり、柊恭也たちはたった一機を倒すための包囲殲滅戦を開始した。

★    ★    ★

「なんだ、このやられっぷりは。ここで何があったんだ?」
 多数の損傷激しいMECを見て、“知恵を収めし者”九曜 すばる唖然とした。ほとんどの機体が、一撃で破壊されている。これでは、回復させたとしても、どれだけが動けることか……。
 前線を維持するために、プリテンダーのトムキャットらに大地母神の依代や大地母神の加護でバフを与えて支援してきたのだが、突出した部隊がいると聞いて駆けつけてみればこの惨状だ。いったい、どんな敵と戦ったらここまで酷くやられるのだろうか。
 いや、今は、そんなことを考えている場合ではない。
『すぐに、ヒールサークルの準備だ』
 サイフォスヒーラーのコックピットから、九曜すばるが神官隊の乙女たちにむかって指示を飛ばした。全員が、タンクユニットの後部スペースで待機している。
 損傷したMECを一箇所に集めると、九曜すばるがその周囲に円を描くようにサイフォスヒーラーを動かした。タンクユニットが通り過ぎていった無限軌道の跡に、帯状の魔法陣が描かれていく。さらに、要所要所の文様の部分で、神官隊の乙女たちが一人ずつサイフォスヒーラーから飛び降りて配置についた。
 やがて、ヒールサークルが閉じて完成する。サイフォスヒーラーを起点として、神官隊の乙女たちを繋ぐように複雑な光のラインが魔法陣の上を走った。やがて、光は満ち、サークルの中のMECを暖かくつつみ込む。
 MECの破壊されたフレームや装甲が、何割か修復された。だが、かろうじて動けるという程度だ。だが、運の悪いことに、そこへ敵の小隊が近づいてきた。
『いったん、整備班のいる所まで後退だ。援護する!』
 キュベレー・レイで、近くに脱落していた爆装したパーツを撃ち抜いて誘爆させる。牽制にはなるだろう。さらにタンクユニットを街路を塞ぐようにして乗り捨てると、九曜すばるはサイフォスヒーラーで傷ついたMECに肩を貸しながら後退していった。

★    ★    ★

『それにしても、いくら冥王の使いがいる可能性があるからって、これはやりすぎだよね』
 トムキャットに乗り、マカイラ・ドラグーンベースのマカイラDを随伴させたミシャ・ルメイが、コックピットの中で独りごちた。
『彼らなりの正義と主張があるのでしょうけれど、確かにこれはやりすぎですね』
 そのつぶやきを拾った“ドレイク・ハンター”黒杉 優が同意する。
『正義なのかな……』
 ミシャ・ルメイが首をかしげる。だいたいにして、市井に冥王の使いがいるのであれば、中央にいたっておかしくはないではないか。もしいるとすれば、こんな命令を認めているルトガー宰相だって怪しいと言える。だいたい、元老院でただ一人生き残ったというのも怪しい。
 ラスティア・フェリオの指揮装甲車に同乗しているエラルウェン・アモンスールも、同じようなことを考えていた。疑わしきは殲滅などと言う戦略を実行に移すなど、あまりにも短絡的すぎる。それこそ、ディッカが冥王の使いではないのかと疑ってしまう。バルティカ公国から、一人だけ生きのびてきたなど、あまりに胡散臭い経歴ではないか。
 だが、それを言ったら、エクセリア・ラディアも冥王の使いの襲撃から生きのびてはいる。それも、同じことなのだろうか。だいたい、エクセリア・ラディアは、なぜアディス・カウンターの暴挙を許しているのだろう。ラスティア・フェリオも、せっかく設立された対冥王組織が、民を守るための物ではなく民を虐げるものになってしまっていることが我慢できないでいる。
 こうなると、誰も彼もが怪しく思えてくる。もっとも、それこそが、冥王の目論見なのかもしれないが。

★    ★    ★

「ふむ、偵察機か? うるさいな。落ちろ、カトンボ!」
 上空を見上げたディッカが素早くロックオンを行う。ズルフィカールのショルダーアーマーがスライドし、顎を開いたミサイルランチャーの発射口から、次々にミサイルが発射されていった。
 上空を飛んでいた伊勢日向のプレゼントボマー小隊と飛鳥玲人のスカイライダー小隊が慌てて回避行動を取るも、次々に爆散していく。離れた位置にいた銀色の機体のスカイファルコン隊が、かろうじて回避行動を取るが、三機とも至近弾を受けて砂漠へと不時着していった。
 降り注ぐ破片を厚い装甲で弾き返しつつ、ズルフィカールが爆走する。
 果敢にも、トムキャットの二機小隊が眼前に立ちはだかった。後衛がビームガンで援護しつつ、前衛がビームサーベルを構えて突撃してきた。
 加速したズルフィカールは、前衛のトムキャットがビームサーベルを突き出すのを軽く避け、そのまま左腕のパイルバンカーでコックピットを串刺しにした。そして、なおも加速する。
 後衛のトムキャットがビームを連射するのを、串刺しにしたトムキャットを盾にしてそのまま体当たりで弾き飛ばす。振り抜き様に反転してもはや動かぬトムキャットを回転の勢いで投げ捨てると、転倒している僚機と共にアルケブスガンで撃ち抜いた。
 さらなる敵を求めて移動するズルフィカールの背後で爆炎があがる。
「むう、少しやりすぎか? そうは言うな。しかし、駆除しすぎては、プリテンダーなる逆賊に対する軍備増強の大義名分がゆらぐな」
 爆弾設置のカッツバルゲルの邪魔をしそうなトムキャットは、すでに三小隊ほどズルフィカールによって消滅させられている。

★    ★    ★

「本当に単独行動のようだな」
 あてが外れたようにリリアナ・ヘイズが言った。
 随伴機がいると思ったが、ズルフィカールは本当に単独行動であった。よほど自身があるのか、はたまた奢りによる無謀なだけか。
 小隊による変則的な攻撃を仕掛けられるかと思っていたが、警戒しすぎであったのだろうか。
「いずれにしても、ターゲットが一つであるなら、それを狙うだけだよ」
 ミシャ・ルメイは、オフェンスシフト隊形を取ると、自らは換装パーツガンラックから二つ折りバズーカを取り出し、カチャンとそれを繋いで発射体勢を取った。
 後方に随伴しているラスティア・フェリオの指揮装甲車も、自己の作戦担当の変更を余儀なくされていた。敵のトップの機体である。当然護衛がごちゃまんといると考えていたのだ。しかし、アイリス・フェリオが試作シンフォニック・タクトで索敵しても、周囲にズルフィカールと行動を共にしているアディス・カウンターのMECは確認できなかった。
 だが、これはこれで、戦力をすべてズルフィカールに集中できるということでもあるのだが。
 ひとまず、マジックチャフのデコイで指揮装甲車の場所を特定されないようにしながら、同乗しているアイリス・フェリオが、シンフォニアによる強制通信で、アディス・カウンターがどれだけ理不尽なことをしているのかを訴えてもらっている。これを受信したアディス・カウンターのパイロットが、考えを改めてくれればと思うのだが……。

★    ★    ★

「なんだ、これは?」
 それを聞いたディッカが、コックピットの中で大笑いをしていた。
「戦闘中にこんな戯れ言に、誰が耳を貸すものかよ」
 もしも貸す者がいれば、それは粛清するだけのことだと、ディッカは内心考えていた。それはそれで、内部の軟弱者のあぶり出しに有効だ。アディス・カウンターは、一つの意志の下に統率された集団でなければならないのだ。雑音は無用だ。

★    ★    ★

「出し惜しみはするな。一斉攻撃だ!」
 ズルフィカールを左右から挟むように絶好のポジションを獲得したチキンレーサーズ部隊とエスパーダ部隊が、一斉に攻撃を仕掛けた。
 三好 慶火の指揮装甲車に乗ったツクモ・オウバージーンが、ソルジャーデコイで部隊とは反対方向のダミー信号を送り込んだ。同時に、ラスティア・フェリオの指揮装甲車に乗ったエラルウェン・アモンスールが、ディスターブ・バーンで援軍を呼べないように通信妨害をかける。
 レーダーの反応に即応したズルフィカールが、アルケブスガンをそちらへと放った。もちろん機体にはあたらず、射線にある建物が派手に瓦解した。
 それを合図にして、各部隊が一気に動いた。
 ツクモ・オウバージーンが、さらに閃光弾を発射して敵の目を眩ませる。
 先頭を切るのは、柊恭也の鬼刃だ。深紅の重装甲に覆われた機体は、サシュワータをベースとしたMECだ。
 後方から、黒杉優のイーグルデザートRverベースのイーグルナイトオブシャドゥが、紫に縁取られた漆黒の機体からのびたエネルギーケーブルに繋がれたB.B.(ビームバズーカ)を構えた。アウトレンジから上空にむけて発射した後、拡散するビームをサイコベントで曲折させて文字通り雨のようにズルフィカールに叩きつける。
 さすがに避けきれず、ズルフィカールが全身から白煙をあげた。
 ミシャ・ルメイが、バズーカを発射する。すぐ横では、マカイラDがロングライフルで同時に攻撃をしている。
 それを支援するように、そばにいるリリアナ・ヘイズのトムキャットもアサルトライフルで攻撃を開始した。リリアナ・ヘイズにとって、思っていたよりもトムキャットの使い勝手はよい。
 少なからずダメージを受けただろうと思ったのも束の間、被弾して白濁したズルフィカールの機体表面が、みるみるうちに白銀の輝きを取り戻していく。
「さすがは、オリジナルのキャヴァルリィだと聞いていただけのことはある。侮れない再生能力だ」
 予想通り、いや、予想以上かと、柊恭也が気を引き締めた。

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