三千界のアバター

サルマティアグランプリ

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【2】駆けるダッチ



 ――Bブロック会場、果て無き闘争。
 正方形のシンプルなステージの四隅では、一定時間ごとに魔法弾を発射する四種の装置が、バトルロワイヤルの参加者たちを睨んでいる。
 そんな場内では開始早々、数匹のダッチが駆け回り参加者たちを混乱させていた。
 ダッチに乗っているのは、「空猫の旅団」の面々だ。
 元々「空猫の旅団」として活動していた弥久 ウォークス日長 終日弥久 佳宵、アリサ(今井 亜莉沙)とアデル・今井、アシュウイン(カズ・アシュウイン)とファルシード(レイナ・ファルシード)に加え、今回は構成員一名のクラン「ねこのあしあと」のグレイ・ロマンス(藤原 経衡)が参加している。
 言うなれば、猫同盟である。
 そんな猫同盟にグレイは、
「お役に立ってみせます」
 と深い恩義を感じている様子だ。同盟を受け入れてくれた面々への恩義に、戦いの中で報いることを誓う。


 タンクとして最前で行動するアリサは、全員がダッチに乗っているという機動力を活かして、戦う相手をある程度絞ろうとしていた。
 機動力でこちらが有利であること、こちらと同じか少なめの人数であること、そしてタンクが多いこと。それらが優先して狙う条件である。
 タンクを翻弄することができれば、その隙に後方の相手を狙い、相手パーティの戦力を削ることができる……という作戦だ。
 となると、真っ先に標的となったのは「タンク至上主義」というチームだった。四人という少人数で、メンバーはタンクばかりである。

 ダッチに乗ったウォークスは縦横無尽に場内を駆け、敵に接近すると飛び掛かってトリプルアサルトを叩き込んでいく。
 ヤハタのクナイとショウキのクナイの力を借り、アサシンとしての能力も活かすウォークスの動きは素早く、相手に逃げる隙を与えない。
 アーチャーであるグレイは、ダッチの足を借り弓騎兵として動いている。
 節制のガントレットを装備して節制のダヌルを構え、一度に四本の矢を放つことを可能にし、その弓矢で接敵する仲間たちの支援を行っていく。
 ウォークスたちは、一斉に攻撃しては一斉に引くスタイルで、敵の戦力を着実に削っていく。防御のかたいタンクの集団とはいえ、人数ではこちらが勝っているし、永久には耐えられないだろう。


 ヒーラーとして参加している佳宵は、皆のサポートも引き受けている。
「気休めですが、プロパーフィルム!」
 と佳宵は、ウォークスたちアタッカーに近寄り、皆が少しでも早く動けるよう幕を作る。
 さらにシンクロ・アイによって、味方の命中力を高める。グレイの弓やウォークスの遠距離攻撃など、命中力が重要となる技を扱う味方は多い。
 基本、攻撃からは仲間たちが守ってくれているが、佳宵は自分自身でもラージシールドを構えて行動している。

 終日は主に、敵を妨害するためのトラップクラフトに奮闘していた。
 ただダッチで移動するだけでなく、体を大きく傾けてアースシャベルを床につけることで、溝を掘りながら駆け抜けていく。そうして掘り返した際に出た石を、マキビシの如く溝に投げ込む。
 さらにオートマッピングでしっかりと罠の位置を把握しながら、ネヴァームーブも駆使してあちこちに罠を仕込んでいく。

 揃ってダッチに乗り込む空猫の旅団の中でも、特に高い機動力を発揮しているのがアシュウインだった。
 バトルサポートユニットを装備し、3Dホロデバイスを操りブラインドタッチを行うなど、一見シンプルだが汎用性は高い。
 アシュウインは界霊剣プロシュネー/ゼロを手に、最前にいるアリサの背後で攻撃の機会をうかがう。そして敵が迫りくると飛び込んでいき、雲払で相手を引き込むと、トリプルアサルトで畳みかける。
 敵が反撃を仕掛けてくれば、機動力を活かして受け流して、また後退して機会を窺う。チーム全体の方針であるヒット&アウェイを意識して、相手を翻弄していく。

 メディスンでありサキュバスであるファルシードは、回復と攻撃両方を、臨機応変に行っていく。
 佳宵やアデルたち他のヒーラーと連携を取り、隙の無い回復を心掛けながら、手が足りている時には攻撃役にも回っている。
 SG:BlackPhantomで魔力を弾丸として撃ち出し、味方の火力を支援していく。

 ヒーラーとして動くアデルは、戦況を見渡せるよう後方に位置し、しかし皆に置いていかれないようにと、程よい距離を保つ。また敵に目標を絞らせないために、乗り込んだダッチで足を止めず動き続けるよう意識している。
 回復を行える者はチームに何人かいる。早急に回復が必要な者のもとへは、一番迅速に駆け付けられる人に託すのが効率的だ。
 アデルは全体を見て、自分の助けを必要としている仲間のもとへと向かう。ヒールをかけるのはもちろん、マカロンやマジックポーションも持っているし、誰かが毒を浴びればサクションも扱える。準備は万全だ。
 さらにアデルは、回復以外のサポートも行っていた。
 相手の弱点を察知し味方に伝えようと、周囲を観察していく。と、アデルは魔力弾がこちらに向かってくるのに気づいた。
「姉様、後ろに……!!」
 アデルの警告に、すかさずアリサが反応する――。

 ――タンク至上主義は、場内の一角を拠点とすることで、魔力弾が撃ち出される砲台のひとつを有効に活用していたのだ。
 続けざまに、四方の砲台からも魔力弾が飛び交って、場内は一時混戦状態となった。

 アヴォイドダッチの機動力を活かして、極力敵の攻撃を回避しながら行動していたアリサだったが、アデルの警告を受けてすぐに魔力弾の対処へと動く。
 水属性の魔力弾が発射されると、コールドカットで後方のメンバーを護る。そのために敵の攻撃を回避できない時には、竜眼の宝盾で受け止め対処していく。
 が、ダメージが蓄積されると盾の魔力が失われるため、盾に頼り過ぎないようにしなければならない。エスカッションも併用しながら、徹底した防御を行っていく。
 風属性の弾が接近すると、風の衣を纏ったグレイが割って入り、ダメージを最小限に抑えた。
 なるべく魔力弾は避けるつもりだったファルシードも、全てを回避するのが難しいと判断すると、光属性の魔法弾の側へと逃げ込む。
 少し魔法弾が掠る距離だが、光属性ならばアース・スプライトによってダメージを軽減できる。

 各々対処を行ってはいるが、戦闘しながら四属性全てに的確に対応するのは、至難の業だ。それならば、避けれるものは避けるしかない。全てを完璧には回避できなくとも、ヒーラーとして同じチームで動く仲間もいる。
 空猫の旅団は、しばし魔力弾への対応と、タンク至上主義との交戦に追われた。


 多くのチームはそれなりの人数で組んでいるようだが、中には少人数のチームや単独行動を行う者も、僅かながらに存在している。
 単身このバトルロワイヤルに挑んでいた羽村 空は、混戦状態で飛んでくる攻撃をなんとか受け流しつつ、場内を奔走していた。
 竜眼の宝盾を構え、ガードスタンスで身を護ることを最優先に動く。
「あ~これ、やっぱりチーム戦なのに一人で参加はきつかったかな?」
 皆がそれなりの人数でチームを組んでいるのは確かだった。ある程度人数が減るまで、誰かに協力を仰ごうかと周囲を見回す空の目に、四隅に設置された装置がうつる。
「上手いこと魔法弾を発射する装置を利用しないと、あっさりとやられちゃうね」
 魔法弾による攻撃で、うまく敵を巻き込めるように、意識しながら空は動く。
 せっかく予選を勝ち抜いたのだ。例え厳しい状況であっても、できるところまで粘るつもりだ。


 何やら少人数のチーム同士で、痴話喧嘩を始めているところもある。
 場内の片隅で何やら揉めているのは、ミシェル・ウォンセレナ・スプレイグヨウ・ツイナとその肩にとまっているピクシー姿のミカン(ミカン・クーラー)の四人だ。
「あいつの方が良いなんてホントに趣味悪いよね~♪」
 セレナが煽ると、
「あの人のほうが誠実じゃろうが!」
 とヨウが反論する声がする。
「あの人は私のものですよ! 貴方達には渡しません!」
 とミカンもなかなか勇ましい。
「例のあの人こそ至高! 分からず屋はこの剣の錆にしてさしあげるわっ!」
 ミシェルの怒る声が聞こえてきたかと思えば、次の瞬間にはもう、四人は戦闘を始めていた。
 「其方に死を!」「ぬるい!」などと叫びながら、ヨウが刀を振るっている。あとの三人も負けじと声を張り上げていて……これはもう、あまり近づかない方が良さそうだ。


 防戦メインとなっていた空は、混戦状態に紛れて反撃を仕掛けようとしていた。
 この状況のおかげで、空が誰の味方で敵なのかという認識が、曖昧になっているようなのだ。
 付近の相手にホーリーライトを浴びせ、相手が怯んだところをナイトハルバードで突くと、牽制するように払っていく。
 途中、タンク至上主義のメンバーの一人が目ざとく空に攻撃を仕掛けてきた。空はそれに、ホーリーライトで目くらましをすると、バランスを崩した相手の攻撃を受け流し、そのままウォールアタックで押し返す。
 跳ね除けられた敵と飛んできた魔力弾を衝突させ、空は難を逃れた。



 一方、空猫の旅団。混戦状態の中、あえて魔力弾を引き受けた仲間の体力は少しずつ減り、その他のメンバーも消耗が目立ち始めていた。
 それを見た佳宵がすかさず、グレーターヒールを発動して皆の体力を回復させた。
 絶えず味方にヒールをかけられるよう、佳宵は自身の魔力がゼロに近づけばマジックポーションを一気に飲み、また回復に戻る。
 ゲームの中だからといって、油断は禁物だ。佳宵は味方を誰一人リタイアさせまいと努めていた。
 そこに終日も助太刀し、キュアポーションで回復する。もちろんアデルも、周囲の仲間たちにヒールをかけて回った。空猫の旅団の面々は、三人の回復によって態勢を整え直す。
 また、ウォークスは自分自身でもヒールを扱うことができたし、キュアポーションも所持していたため、状況を見て自分でも回復を行っていた。
 サバイバル能力を見る大会でもある以上、最後までしぶとく生き残ることが鍵となる。小まめな回復は重要だ。
 ファルシードも、自身のダメージが回復するとすぐさま「今治癒します!」と味方へ駆け寄り、その傷を癒していく。


 単独行動にも関わらず、見事ここまで生き残っていた空は、混戦の中で魔力弾を避けきれず、ついに敗れてしまった。
 しかし空がタンクたちに抵抗したかいもあってか、魔力弾による攻撃は、徐々に落ち着きつつあった。

 さらにその直後、一角から「ぎゃあーーーっ!!」と悲鳴が上がった。見ればタンク至上主義の面々が、セミヌードのような格好で項垂れている。
 敵の盾や鎧などの装甲に対処するため、終日が持っていた金属溶解液爆弾を投げつけたのだ。終日の的確な攻撃で、彼らの装甲は少しづつ、しかし確実に溶けてしまっていた。
 盾や鎧に並々ならぬ思いを持っていたらしい彼らには、セミヌードよりも敗北の危機よりも、相棒を無くしたことの方がよほどショックだったようだ。
 この分では直にリタイアするか、戦いを続行しても、防具がないためすぐに倒されてしまうだろう。

 空猫の旅団は、次の標的に狙いを移す――。



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