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【1】ゲーヒンノム VS 導きの翼【フィデス】B

 Aブロック会場内を好き勝手に移動する針蟲。
 その内の一匹が急に動きを止める。いや、正確には何かに足を取られて動けなくなっていた。
「よし……」
 ネヴァームーブで針蟲の足止めに成功したユウ(リュナ・ルキュル)は、後続の蟲が近づいてくるのを待ってネヴァームーブの薬品を追加する。
 待っている間はトラップクラフトを行い、会場に設置されているフックを利用した罠を作る。
 ワイヤーを使った、足を引っ掛けて転ばせるだけの簡単な罠だ。
 だがもしここで転べば粘性の液体に動きを止められ、さらに足止めされている針蟲達の集中攻撃を受けることになる。
 
 近くではユウも所属するチーム、【導きの翼【フィデス】B】と【ゲーヒンノム】との戦闘が始まっていた。
 タンクのティルナ(テスラ・プレンティス)が相手のヘイトを稼いでいる。
 アヴォイドダッチに乗った状態でナイトハルバードを構え、リーチの長さを生かして相手の間合いの外から攻撃する。
 反撃はポリアナードの騎士盾で受けとめ、一度距離をとって再び同じ攻撃方法を取る。
 相手はハウメア(焔生 セナリア)だ。ジョブ双剣士の素早さを生かして敵の側面に回りこんで攻撃を仕掛ける。
 速度はダッチに乗るティルナも同程度だが、ハウメアの方が小回りが利く。
 急接近からの急停止など変則的な動きを取り入れ、ティルナの盾を避けて攻撃。時には騎乗しているダッチの方を狙う。
 ティルナは攻撃を受け止めながら下がる。彼女は徐々に押されている……ように見えた。
 奇襲を警戒し周囲の物音に耳を澄ませていたハウメアは、キィキィという甲高い鳴き声を聞いた。それも複数の声が重なっている。
 ハウメアは攻撃の手は緩めず、しかし周囲を十二分に警戒する。
 ティルナの姿が障害物の陰に隠れる。その後を追うハウメア。
「……!」
 遮蔽物の陰に隠すようにして、何かの薬品がばら撒かれていた。針蟲が足を引き剥がそうとしているのを見て、それが足止め用の物だと理解する。注意深く見れば、周囲には足を引っ掛けるためのワイヤートラップもあった。
 その背後に、クロト(アルヤァーガ・アベリア)が迫っていた。クロトは奇襲をしかけ、敵を罠の方へ押しやる。
 ハウメアは双剣で相手の攻撃を受け流しながら罠の無い方向へ移動しようとする。対するクロトはその邪魔をするように行く手へ回り込みながら攻撃する。
 シン(飛鷹 シン)がハウメアを庇いにいく。二人の間に割り込んで盾でクロトの攻撃を受け止める。
 受け止めた後の隙を狙ってシュートジャベリンで攻撃。そのままフロラシオンで勢いよく盾を押し付け、相手のバランスを崩させる。
 すかさず飛び出したハウメアが剣を振り上げ、ビクトリースラッシュを叩き込む。
「それ以上はやらせない」
 ユキ(狐塚 雪)は魔法でクロトを援護する。ウィラルの風で敵を押しやる事でクロトへの攻撃を止め、さらに針蟲地帯へ嵌めようとしていた。
 その足元が変形し、棘になって飛び出す。サキス・クレアシオンが遮蔽物の陰からクラックを使用していた。
 ユキは近くの遮蔽物に隠れる。しかしその足元から再び棘が飛び出す。クラックは任意の地点を狙える為、サキスはこうして安全圏から魔法で攻撃していた。
 もう一度ユキが隠れた場所へクラックを使用するサキス。相手が移動したか確認する為に生命感知を行う。
 だが分かったのはその方角に誰かの気配がする、というざっくりとした物で、人数も、どの遮蔽物の陰にいるかも把握できなかった。
 遠距離攻撃は諦め、サキスはヴァイスシュヴェルトを構えて敵を追う。アヴォイドダッチに指示を出し、慎重に遮蔽物の陰から陰へと移動する。
 逃げた敵を探していると、急にその足元が変形し、サキスはダッチと共に跳ぶ。
 即座に周囲を見回すサキス。すると視界の端に遮蔽物の陰からこちらを覗き込むユキの姿が見えた。すぐに同じクラックで反撃し、相手を遮蔽物の陰から追い出す。
 今度は見失わない。サキスはダッチを全力で走らせてその後を追う。
 ユキは逃げず、迎撃態勢をとっていた。手を突き出し、クラックを使ってサキスの足元に棘を作る。サキスはそれを飛び越して距離を詰めてくる。
 同じ姿勢を取り、同じ技を使うと見せかけて今度はウィラルを使う。幅の広い風の刃が真っ直ぐにサキスへ迫る。
 サキスはダッチを急旋回させて避けようとするが間に合わず、風の直撃を受けて地面に落とされる。乗り手のいなくなったダッチが急には足を止められないのか、ユキの隣を駆け抜けていった。
 すぐに起き上がったサキスはヴァイスシュヴェルトを構えて突進する。相手に近づきながらゼピュロスブレードを放ち、いくつもの風の刃を飛ばす。
 ユキは自身の前方にウィラルを放ち、直撃しそうな風の刃のみを相殺する。
 二人の距離はかなり縮まっていた。サキスが再びゼピュロスブレードを使用するとユキは羽織狐を抜いてサキスを薙ぎ払う。
 サキスは胴体に一撃を受けて吹き飛び、ユキはゼピュロスブレードの剣閃こそ掠っただけですんだが風の刃の一つが直撃する。
 起き上がったサキスはすぐに三度目のゼピュロスブレードを放つ。ユキも至近距離でのゼピュロスブレードを放ち全ての風の刃を直撃させようと狙う。
 両者の攻撃が終わり、立っていたのはサキスだった。
 使った技は一緒でも、これまでのダメージの蓄積とレベルやパラメータの差が勝敗を分ける。
 サキスはアヴォイドダッチを回収すると急いで仲間の下へ走る。
 
 
 その頃。
 アルシエル(焔生 たま)はチーム【ゲーヒンノム】には所属していないものの、同じクランの仲間として彼らの手伝いをしていた。
 とは言え、合流して共に戦うようなことはしない。遠くから、彼らが決勝リーグへ残れるようにほんの少し援護をするだけだ。
「パーティコンテンツにソロ参加ってのも悪くないな」
 そう言う訳で、アルシエルのは針蟲の駆除を担っていた。
 まずはファイアバードを召喚して遠距離から針蟲を攻撃する。ファイアバードの羽ばたきに合わせて炎が放たれ、射線上に居た針蟲を何匹か纏めて燃やし尽くす。
 近くに居た針蟲がキィキィと甲高い声を上げて逃げ出す。アルシエルは逃げる針蟲は放置し、仲間チームの方へ向かおうとする個体だけを狙う。
 単体で居るものへはデスサイズを振るい、一匹ずつ確実に倒していく。群れている場合はファイアバードを使うが、急に遭遇した際はエスカッションの盾で針を防ぎ、反撃にデスサイズで薙ぎ払った。
「あんまり美味くはなさそうだが、頂くぜ?」
 かすり傷を受けた場合は、軽く叩いて動きを止めた針蟲を掴んで押さえつけ、サキュバスの吸精を行う。こうして時折体力を回復しながら、アルシエルは戦闘を続けた。
 
 
 ハウメアが相手の側面に回りこんで双剣を振るう。それをダッチに乗ったティルナが盾を突き出して受け止める。即座にシンの背後へ戻るハウメア。
 両チーム、互いに前衛にタンク、その後ろにアタッカーとヒーラーという布陣だ。ティルナのチームには加えてクラフターのユウもいる。
「ティルナ、回復するよ!」
 テスラ(シュナトゥ・ヴェルセリオス)はティルナにアンプルヒールをかける。ティルナ自身と、そして乗り物のアヴォイドダッチにも、だ。
 回復しつつ、残りMPには常に注意する。必要なときに回復が出来ず、味方が倒れる何て事は避けなければならない。
 まだ余裕がある為マジックポーションは温存しておく。あまりぎりぎりになって使うのは危険なので、ある程度余裕を持って使用する予定だ。
 味方の背後から全員のHPを確認し、一人ずつアンプルヒールを使用するテスラ。光球が現れ、それに触れた味方の体力が回復すると同時に力を湧き上がらせる。このスキルには回復だけでなく、短時間ステータスを上昇させる効果もあった。
 適宜回復と援護を行いつつ、もし個々にヒールをかけても間に合わないような時は、出し惜しみせずグレーターヒールを即座に使用。全員の体力を一気に回復させる。
 
 クロトはアーチャーの能力を使い、敵に向かって矢を放つ。
 ヘッドショットを狙ってはいるが、距離が開いている上にそこまで正確に狙うだけの技量は無い。
 しかし牽制としては十分だった。下手に飛び出して隙を見せれば矢で体力を削られる。これにより、相手は迂闊な攻撃をできなくなる。
 ハウメアがダメージ覚悟で攻撃を試みる。飛んで来た矢を払いのけながら進み、しかしそうしている間にティルナは万全の状態で構えている。
「うまくいかないわね……」
「私があの弓使いを止めてみます。ハウメアさんは相手のタンクを抑えていてください」
「分かったわ。気をつけて」
 ハウメアが再びティルナへ攻撃を仕掛ける。それを見て、フィオ(叉沙羅儀 ユウ)はクシャトを使う。狙いは敵後列に下がったクロトだ。
 フィオの手から発射された光球がクロトの頭上で止まり、そこから真下に向かって光線を発射する。
 クロトはその場から飛びのくが、光は地面に当たって拡散し、クロトとその仲間にダメージを与えた。
 フィオは続けてもう一度、クシャトの光球を放つ。今度はクロトの頭上を通り過ぎ、その背後に居たテスラを狙っていた。
 全体回復を行おうとしていたテスラの頭上から光線が降り注ぐ。
「くっ……!」
 頭上からの攻撃を防ぐのは難しい。ティルナは下がって味方を守ろうとするが、それをハウメアが肉薄して動きを止める。
「撃たせませんよっ!」
 追撃を止めるために、ユウがスモークボンブを投げる。フィオの目の前で爆発がおき、同時に煙幕がその視界を覆った。
「テスラさん、今の内に回復を!」
「う、うんっ!」
 テスラはグレーターヒールを使って自分と味方を回復する。その後マジックポーションを使って魔力を補充しておいた。
 一方ハウメアはティルナへ猛攻を加えていた。剣を振り上げると、斬り下ろしから斬り上げへ繋げるビクトリースラッシュの動きを取る。
 大技後の硬直を狙ってティルナはナイトハルバードを突き出す。
 しかし先ほどのハウメアの動きはフェイクモーションによるもので、彼女は身を捻って回転するように槍を避けるとその勢いのまま全力の回転斬りをお見舞いする。
 盾を構えていたティルナだが、勢いよく剣を叩きつけられた事で大きくバランスを崩す。
(今だ……!)
 シンは盾を構えてティルナへ突進。そのままタックルの要領で盾を押し付け相手をダッチから落とす。
「しまった!」
「まずい……!」
 走っても間に合わない。クロトは駆け出すと同時にゼピュロスブレードを放つ。
 ユウは急いでスモークボンブを投擲する。シンとハウメアは爆発と風の刃を喰らい大きなダメージを受けるが、止まらない。このチャンスを逃さずに二人でティルナを攻撃する。
 シンがシュートジャベリンで攻撃し、ハウメアはエッジストームの連続斬りを叩き込む。
 ティルナのHPは0となり、戦闘不能となった。すぐにフィオがグレーターヒールを使ってシンとハウメアを回復させる。
「タンクは潰した。後は……!」
 シンは盾を掲げる。スモークボンブが命中し、煙幕がその周囲に広がる。
「まだです……まだ負けと決まった訳ではありませんよ」
 ユウはネヴァームーブの薬品を投擲。煙幕で視界をふさがれたシンの足元へ命中させ、その動きを阻害する。
 動きの鈍ったシンを避け、クロトはヒーラーのフィオを狙う。フィオはクシャトを放ってクロトの体力を削る。クロトは構わずにそのまま接近する。
 その目前にハウメアが立ちはだかる。
「邪魔だぁぁ!!」
 クロトはゼピュロスブレードを放つ。ハウメアは回避しようとして、避ければフィオに当たる事に気付いて逡巡する。
 その一瞬でクロトの一撃はハウメアに届き、体力を大幅に削り取る。
「ハウメアさん!!」
 フィオがすぐにヒールをかける。だがすぐにクロトが追撃を行い、ハウメアの残り体力を削りきった。
「ぐぅっ……!」
 しかしハウメアも死に間際にエッジストームを放っており、クロトに傷を負わせていた。
「クロト、これ使って!」
 アンプルヒールは射程外で、グレーターヒールは一人に使うにはMPの消費が大きすぎる。テスラは咄嗟にキュアポーションをクロトへ投げる。
 ポーションを受け取ったクロトは即座に使用する。フィオがクシャトを放つ……が、回復が間に合ったようで光が消えてもクロトはまだ健在だった。
 剣を振り下ろし、ゼピュロスブレードを放つクロト。
「間に合った……っ!」
「くっ!」
 足を粘つく薬品に取られながらも必死に駆けたシンが、フィオの前に立っていた。エルテルンヴァッヘで風の刃含め全ての攻撃を受け止めている。
「わぁっ!?」
 後方から悲鳴が上がり、クロトが振り向く。テスラが魔法の攻撃を受けて倒れていた。
 シンは遮蔽物の陰に隠れているサキスの姿に気付く。追っていた相手を倒して戻ってきてくれたようだ。
 サキスはテスラに止めを刺すと、武器を手にユウへ突撃する。
 ユウはスモークボンブを投げるが剣で払いのけられる。近くでの爆発に多少ダメージを受けるが、サキスは気にせず接近を続けゼピュロスブレードを放つ。
 横に飛びのいて避けたユウはグラシアルエイジでサキスを凍らせる。しかしそれは僅かな時間だけで、すぐにまた動き出したサキスが攻撃を再開した。
 クロトは助けに行く余裕は無かった。シンに庇われながら、フィオがアスクレピオスの杖を使ってハウメアを蘇生していた。
 一対三。それもかなり消耗した今の状態では、勝ち目は無かった。
 せめて最後に一太刀、と。クロトは残りの魔力を使い切るつもりでゼピュロスブレードを連射する。
 それも全てシンに防がれ、やがてハウメアの攻撃を受けてクロトは倒れた。
 その時には既に、ユウもまたサキスの攻撃で倒されていた。

 フィオは味方全員にヒールをかけ、マジックポーションを使って次の戦闘に備える。

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