三千界のアバター

サルマティアグランプリ

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【1】VS †殺戮の熾天使†

「同志達よ! 我等の相手は天使! 漆黒の熾天使達よ!
 我等の言の葉を紡ぎ! 響かせよ!
 そして天使よ! 汝らの言の葉もしかと刻み込もう!
 行くぞ好敵手! これは心踊るラグナロクとなろう!」

 チーム【†殺戮の熾天使†】と相対するのは、カグラ(ショウ・カグラ)の属する【黒銀の輝跡】チーム。
 更にはチーム【クラン・クロウ】の姿も有り、ここでは三つ巴の戦いが行われていた。

「瞬風一閃!」
 殺戮の熾天使のメンバーは、スキルを使用する際に独自の技名を叫ぶ。今繰り出したのは素早い一閃……ファストアタックだ。
「わぁい……本当に技名とか叫んでるぅ」
 それを見てなんとも言えない表情になるアイナ・カグラ。反対に仲間のカグラは喜々として殺戮の熾天使の言葉に反応する。
「フフフ、己が使う力を予告するとは……良い! 良いぞ! だが我が魔眼にはお見通しだ!」
 そう言うと片手で顔を覆い、指の隙間から紅色の片目を覗かせる。
「ほう。貴様、紅の魔眼使いか」
「何? 魔眼を知っているだと……貴様もしや……!」
「ふふふ、そうとも。我もまた魔眼の使い手。我は金色(こんじき)の魔眼使い、業瑠弩(ごるど)!」
 そう言ったアタッカーの男性は兜を持ち上げ、隠れていた金色の瞳を見せる。
「よもやこのような場所で新たな魔眼使いと出会えるとは……だが、相手にとって不足は無い!
 我が名はカグ……いや違う。我は深淵を覗きそして開くもの、アビスゲート!! 金色の魔眼使いよ! 此度の戦、存分に楽しもうぞ!!」

 ……と、二人が話をしている間も、周りでは戦闘が行われている。
「カグラ! ふざけるのはその位にして真面目にやって頂戴!」
 アイナが話の長引いている相方を叱咤する。
「俺……我はカグラではない。アビスゲートだ!」
「あーはいはい、分かったわよもう……」
 カグラもといアビスゲートは二つの盾を手に前へ出る。敵の攻撃を一身に引き受けるアリス(ルイーザ・キャロル)の脇に立ち、共に味方の盾となる。
 アイナはタンク二人が攻撃を受け止めている内に、相手の側面へ回り込もうとする。
 それをアビスゲートが制した。
「アイナよ、不意打ちなどという卑怯な行為で天使を貶めてはならぬ。彼らとは正々堂々、正面から戦うのだ」
「は? 本気で言ってるの!?」
 まさかと思いアイナが視線を向けるが、アビスゲートは至極真面目な表情だ。それを見て本気と悟り、表情を引きつらせるアイナ。
 渋々と正面から攻撃を仕掛ける、が。
「アイナ、技を放つ時はその真名を叫ぶのだ」
「イ! ヤ!! ペースが狂うわほんとにもう……悪いけど付き合いきれないから、勝手にやらせてもらうわよ!」
 アイナは敵チームの側面に回りこみ、ゼピュロスブレードを放つ。すぐにタンクが飛び出し、斬撃と風の刃を防いだ。
 敵タンクが反撃として盾を叩きつけてくる。アイナは頽れた巨石の腕輪を使用し、盾状のバリアを使ってそれを受け流す。
 
「にゃはは、虫なんかに邪魔はさせないのよ」
 みずのん(水野 愛須)が針蟲を切断する。彼女は味方の邪魔をしようとする針蟲の駆除をしていた。
 ソードマスターの特徴である剣の攻撃力増加を生かすために、装備は片手剣の紅黒のカーマを使用している。
「斬れば斬るほど回復できるし、HP気にしなくていいのは楽だにゃん」
 大して強くはない針蟲だが、こう数が多いと攻撃を回避しきれず時折針が身体を傷つける。
 ヒーラーが他の味方にかかりっきりな現状、斬りつけた相手の生命力を吸収する紅黒のカーマの能力はかなり有用だった。
 一匹一匹倒していてはきりが無い為、トリプルアサルトで纏めて薙ぎ払う。
 しかしそれでも、針蟲の湧き出る速度が速く対処しきれない分がみずのんの仲間へ近づこうとしていた。
「少し気合入れていくのよ」
 みずのんは霊技【イノセント】を使用する。これにより、短時間ではあるが身体能力が向上する。
 針蟲が群れている場所へ向かい、ビクトリースラッシュを放つ。複数の針蟲が纏めて切り払われる。
「まだまだいくのよー」
 休み無く斬撃を繰り出し、仲間の邪魔になる針蟲を一匹残さず駆逐していく。
 
 そんなみずのんの様子を時折窺いながら、シルキー(水野 ミルキー)は蛮勇の舞いを踊っていた。
 戦闘が激しくなると、後衛として戦いに加わる。猫又の特性を生かして素早い動きで敵の攻撃を回避しつつ、魔法で味方を援護する。
「……ん?」
 ふいに影が差し、シルキーは頭上を見上げる。殺戮の熾天使とは別のチームのプレイヤーが空を飛び、剣を構えていた。急いで味方に警告を送る。
 
 シュヴェルトライテの鎧を纏うヒルデガルド・ハルバースタムは、その背に生える黄金の翼を羽ばたかせ上空を旋回していた。
 室内型の会場ではあるが、天井すれすれを飛べば針蟲にも襲われず近接職の攻撃が届かない程度の高さがある。
「さて、誰を狙うか……」
 広角視野で戦況を確認し、誰かが隙を見せるまで待つ。
「……見つけた」
 隙が見当たれば即座に動き、敵の頭上から急襲する。
「光よ――!」
 合わせてラヴィニア・クロウフォードがスターライト・フラッシュを放つ。眩い光が周囲の敵プレイヤーの目を焼いた。
 ヒルデガルドは一気に敵との距離を詰めると両手に持った武器を使い、エッジストームを放った。
 目にも留まらぬ高速の連続斬りが、鍔迫り合いをしていた殺戮の熾天使チームのアタッカーとアビスゲートに命中。ほぼ直撃だったアタッカーの体力を特に大きく削られる。
 離脱の際もラヴィニアが援護する。アフーム=ザーの息吹で極寒の冷気を送り、敵を凍えさせて動きを鈍らせる事でヒルデガルドへの反撃を抑える。

「未雨さんはショウさんの回復を……ミルキーさんは援護をお願いします……!」
 リリー(リリアン・プロモート)は遮蔽物の陰に隠れながら戦況分析を行っていた。
 アビスゲートの負傷を確認したリリーはすぐに味方へ指示を飛ばす。
 敵味方の位置と戦力、さらに味方の体力や魔力の残量にも気を配りつつ、彼女は別の遮蔽物の陰へと移動する。
 その際、トラップクラフトを用いて遮蔽物の陰に罠を設置しておく。会場に設置してあるフックを使い、足を引っ掛ける程度の軽い物である。
 時折、トラップクラフトより強力な、刃を使ったベア・トラップを混じらせる。
 こうして弱い罠ばかりと甘く見た敵を本命の罠にかからせ、大きなダメージを与える狙いだ。
 戦いを観察し戦況を把握しながらの作成な為、あまり罠作りには集中できない。作れる個数はそんなに多くないが、せめて使用されやすい大きな遮蔽物や、なるべく近くにある遮蔽物を選び罠を設置していく。
 
「アビスゲート、下がって!」
 冷気を受けた味方を守るべく、シルキーが風の魔法を放つ。
 風の刃がラヴィニアに命中。鋭さは無いが、叩きつけられるような衝撃にラヴィニアの身体が浮かび数メートル吹き飛ばされる。
 倒れた所へさらにクラックによる追撃が襲う。地面が棘状に隆起し、ラヴィニアに更なるダメージを与える。
「ラヴィニア!」
 ヒルデガルドは急降下して援護に向かおうとする。だが、その眼前を炎が通り過ぎた。続いて横合いからも炎。回避して視線を向ければ、熾天使チームの魔法使いが遮蔽物の陰から顔を覗かせ、こちらに杖を向けていた。
「ちっ……!」
 邪魔を受け、中々地上へ降りられないヒルデガルド。その間、地上ではサーシャ・クロウフォードが懸命にラヴィニアへヒールを掛けていた。
 ヒールの射程はそう長くない為、敵の攻撃を避けるために動き回るラヴィニアを走って追いかける形となる。
 しかし、動いていれば針蟲に狙われやすくなる。一匹二匹程度なら無視もできるが、徐々に数が増えて囲まれる形になり、サーシャはヒールを中断し、対処せざるを得なくなる。
 ドラグボーンワンドを針蟲に叩きつける。ヒーラーの彼女でも、数度殴れば倒せる程度には針蟲は弱い。
 だが、そうしている隙を他のチームの者達は見逃さない。すぐに魔法が飛んできて、サーシャはそちらの回避にも意識を向けなければならなかった。
 炎を掻い潜ったヒルデガルドがラヴィニアの元へ辿り着く。ラヴィニアはあれから何度か攻撃を受けたものの、サーシャのヒールで回復したお陰で戦闘不能には陥らずに済んでいた。
「一度安全な場所まで下がって回復するんだ」
 ヒルデガルドはシルキーへ接近し、攻撃して魔法を止めさせる。
 その隙にラヴィニアは遮蔽物の陰まで退避。足を取られるトラップがあったが、アフーム=ザーの息吹で凍らせた後に魔導書で叩き壊した。
 少し遅れてサーシャが追いつき、再びヒールをかけ始める。回復が終わるまで、ヒルデガルドは一人で戦い敵の接近を防ぐ。
 
「ショウさん、これ使って下さいな。多分ヒールだけより早く回復できると思います」
 マキガるう(未雨・カグラ)はアビスゲートにキュアポーションを手渡す。
「ありがとう。これでまた天使達と刃を交えられる」
「ショウさん剣持ってないんやない?」
「フフ……言葉の綾という物だ」
 回復の間も周囲の警戒は怠らない。周囲に目を向け、敵からの攻撃や流れ弾に注意する。
 軽く動いて避けれるものは避けるが、難しい場合はアビスゲートが盾で防ぐ。
 暫くすると、キュアポーションとヒールの効果でアビスゲートはほぼ全快する。
「それじゃ、頑張ってくださいね」
「ああ、行ってくる」
 アビスゲートが前線に戻っていく。マキガるうはその背に向けて、ファストレポートで元気の湧く唄を歌いやる気を引き出す。
 
 殺戮の熾天使チームはアタッカー3名、タンク1名の構成だ。
 アタッカーの一人、刀を使っている浪人ジョブの男は現在、ヴィオレル(ヴィオレッタ・プレザンス)が相手をしている。
「さあさあ、共に奏でましょう! 狂想曲<カプリチオ>? それとも貴方達の鎮魂歌<レクイエム>? もしかして笑曲<スケルツォ>? 何だっていいわ。共に奏でるなら、悦しい<たのしい>舞台となるでしょう!」
 重き言葉を紡ぎ、ヴィオレルは踊る。正確には舞うように動きながら攻撃魔法を放っていた。
「私のステップは母<大地>の嘆きに、怨嗟の疾風。闇の力携えし者よ、貴方はこの演舞に耐えられるかしら?」
 ヴィオレルは風の刃で攻撃するウィラルと地面を棘状に隆起させるクラックを交互に使って攻撃する。
 相手は風の刃を刀で受け流し、地面の棘を跳躍して回避する。
「この程度、漆黒の塵刃と呼ばれし某には避けるのも容易き事」
「素晴らしいわ。さあ、漆黒の塵刃。今度は貴方の奏でる言の葉を聞かせて頂戴!」
 その言葉に応じてか、浪人は姿勢を低くすると納刀状態のまま加速し、一気にヴィオレルとの距離を詰める。
「S-violet」
 そして彼女が間合いに入ったところで、高速の二連撃を繰り出し再び納刀する。浪人ジョブのスキル、燕子花だ。
 その攻撃はヴィオレルには当たっていない。彼が接近を始めると同時に、アリスが前に出てヴィオレルを背に庇っていた。
 竜眼の宝盾が二度の剣閃を受け止め、盾を持つ手に振動が伝わる。
 浪人は続けて数度刀を振るう。対応し辛いように異なる角度からの攻撃だ。アリスは守護の錫杖を使って結界を構築し、防御を強化する。
「全て……私が受け止めます……。仲間には……かすり傷一つ……負わせはしません!」
 攻撃の手を止めた浪人が紅砲へ下がる。宣言通りアリスは相手の攻撃を全て受けきりヴィオレルへのダメージは0だ。
「ああ、いいわ! とても美しい舞ね! 
 そうだわ。アリス、リリー、貴女達も共に言の葉を奏でましょう?」
「えっ……私達も何か……言うのです!?」
「ええ。せっかくの仮面舞踏会<サルマティアグランプリ>だもの。同胞と共に舞い踊り、言の葉を交わしてこそ、心満たされるというものだわ」
「ええっと……どうしよう……」
 あたふたしながら、アリスはヴィオレルの真似をして言葉を紡ぐ。
「えと……あの……我が秘術に依る……堅牢たる我が意思と……盾がですね……えと……その真髄がですね……えっと……うぅ……難しいです……」
 肩を落とすアリスだが、相手が攻撃を再開したので慌てて気を引き締める。
 ヴィオレルはちらとリリーへ視線を向ける。
「私も……? えーと……我が魔眼に捉えられし……この舞台は……既に我が掌中……全ては私の操り人形……だよー」
 発言しつつ、リリーのプレイヤーは恥ずかしさで顔を赤くしていた。同時に、こういった台詞を次々思いつくヴィオレルは凄いな、とも思う。
「ヴィオレルさん下がって!」
 アリスが鋭く叫び、アイアンヴェールの構えを取る。
 すぐに強烈な冷気が襲ってきたが、盾の陰になる事で背後のヴィオレル共々ダメージを最小限に抑える。
 どうやら他の誰かを狙った攻撃らしいが、射線上に自分達がいたようだ。複数のチームが入り乱れた戦闘のため、時折こうして流れ弾が飛んでくる。
 

 混戦は続き、やがて一人また一人と脱落者が現れる。
 最初は殺戮の熾天使チーム所属の魔法使いと、みずのん。
 魔法使いは攻撃を受けて遮蔽物の陰に避難したところ、そこに設置されていたベア・トラップに引っかかりそれが止めとなった。
 みずのんは霊技【イノセント】の反動で身体能力が半減し、その状態で針蟲に囲まれた為、やがてHP・MPが枯渇して戦闘不能になった。
 続けてクラン・クロウにも脱落者が出る。
 タンクに守られていないサーシャを狙って、熾天使のアタッカーが飛び出す。仲間を助けにヒルデガルドが降下するが、それは相手の罠だった。
 ヒルデガルドの行動を読んでいたアタッカーは振り向きざまにビクトリースラッシュを放ち、彼女に直撃させる。
「まずい……!」
 混戦状態では、弱っている者ほど狙われやすい。一人でも敵の数を減らすために、シルキーが負傷したヒルデガルドへ追撃する。
 クラックの棘でダメージを与え、空に逃げた所をウィラルの風の刃で攻撃する。
「ああもう、惜しい……」
 どうにか高く飛び上がったヒルデガルドは飛行して距離を取ろうとする。
 そこへ、先程のアタッカーが雷の魔法を放った。まだ距離が近かった事もあり、雷は直撃する。
 近接技がメインで、魔法はあくまで非常用なのだろう。雷魔法の威力自体は低かった。
 だが、既にかなり消耗していたヒルデガルドは、その一撃でついに体力が尽きる。
「チャンス!」
 アタッカーの方も無理に飛び出して攻撃していた為かなり体力が減っていた。ヒルデガルドを狙った隙を逃さず、シルキーが魔法を放って止めを刺す。
 
 その後、長くヒールを使い続けていたサーシャがMPを枯渇させ、ドラグボーンワンドを振り回して応戦するが敗北。
 一人残ったラヴィニアも奮戦したものの、回復なしでは長くは持たなかった。
 さらに、アビスゲートが真正面からの正々堂々とした戦いを貫いた為、回復を受けず敗北。
 その相手となった熾天使アタッカーも瀕死になっていた為、すぐに後を追う。
 
 最後に残った熾天使チームのタンクは諦めず戦闘を続けていた。
「地神(ガイア)の轟き!」
 タンクが技名を叫ぶ。アイナはその技名から攻撃系のスキルと予測し、後方へ飛びのく。
 予測通り、タンクは地面に武器を叩きつけて衝撃波を放った。腕輪のバリアで衝撃を緩和し、アイナは前に飛び出してタンクの懐へ潜り込む。
「これで終わりっ!!」
 突進の勢いそのままに、ゼロ距離からのゼピュロスブレードを相手の胴体へ叩き込む。発生した風の刃までも直撃させ、その一撃でタンクの残りHPを削りきった。
 
 結果、この場に残ったのは黒銀の輝跡チームの6名だけとなった。
 他チームと遭遇する前に、マキガるうが全員にヒールをかける。途中でMPが尽きた為、マジックポーションで補給。全員をほぼ全快まで回復させる。
 ヴィオレルは持っていたマジックポーションをマキガるうに渡し、次の戦闘に備えてなるべく回復用のMPを蓄えてもらう。
 一方、リリーはマジックポーションをアリスに渡す。アリスは防御系スキルを何度も使ったため、MPをかなり消耗していた。

 態勢を整えた一同は、次の敵を探して移動する。
 
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