三千界のアバター

サルマティアグランプリ

リアクション公開中!

サルマティアグランプリ
リアクション
First Prev  13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23  Next Last

準決勝

【キャンバス・リエータ】 対 【汝電気羊為りや】


『試合、開始!!』

 準決勝戦が開始される。
 Aブロックを勝ち抜いた【キャンバス・リエータ】とBブロックを勝ち抜いた【汝電気羊為りや】による戦いだ。
 
 クロエが味方ヒーラーとクラフターの近くに屈みこみ、彼女等を守る為のブービートラップを作り始める。
「先手は頂くです!」
 ブレイクルドとウラスベが風計を使用する。相手チームの遠距離攻撃を妨害しつつ、飛行する敵を叩き落す狙いだ。
 だが、キャンバス・リエータの面々は空は飛ばず、地上を走って汝電気羊為りやチームに迫る。
「ローザ、しっかり掴まって!」
 メルツはラースタチカ(ローザ)と一緒にアサルトチャリオットに乗り、戦場を大きく迂回して敵後衛を狙う。
「敵が側面に回りこんでいるわ! 注意して!」」
 マーヴィが叫び、味方に迎撃の用意を取らせる。
「スイレン、あんた二人から狙われてるから早くしまっちと合流するし!」
「分かったのん、急ぐのん」
 フウカはピクシーの特性を生かして空を飛び、上空から戦場を観察して味方に警告を飛ばす。
「あと敵がヒーラーの後ろに何か設置してる! ヤバそうだから近寄っちゃ駄目だし!」
 ブービートラップを設置しているクロエに気付き、それも警告。他に異常がないか辺りを見渡す。
 
「狙いはヒーラーか……!」
 クロエは罠を作る手を止め、メルツを阻止しに行く。行く手を遮るように立ち、紅黒のカーマを手に待ち構える。
「邪魔よ! どきなさい!」
 メルツはグレートランスでクロエを薙ぎ払うと強引に押し通る。狙いは固まっている相手ヒーラー達だ。
「通しません!」
 カラスバがグリッドバーンを放ち、正面から衝撃波をぶつけることでアサルトチャリオット減速させる。流石に静止させるまでは行かないが、竜眼の宝盾で衝突に耐えその場に押し留めることは出来た。
「おお、止めやがった!」
「やるわね。でも……」
 メルツの背後から人影が飛び出した。
「なっ……!?」
 彼女の陰に隠れて追従していたシンデンは、カラスバの脇を通り過ぎてその先に居るヒーラーを狙う。
 カラスバは振り向こうとして、しかしメルツから攻撃が来た為そちらを防ぐ。
「あなたの相手は私よ。さあ、私の槍捌き見せてあげる!」
 
 シンデンは敵ヒーラーへ近づく。ヒツジン28号に乗り込んだユーリが彼を迎え撃つ。
「ヒーラーだって……戦えない訳じゃない……!」
 ユーリはヒツジンの長い腕を振って、シンデンを牽制する。その蹄を使ったパンチは羊28頭分の威力があるといい、侮れない。
 しかし相手は戦闘専門のアタッカー。自分より火力も速度も上回っている。大技こそ撃ってこないが、それでも少しずつユーリの体力が削られていく。
 ユーリの背後にいるブランがメディスンの技能で彼女を回復させていた。回復量は十分だが、長引けばMPの消費が気になる。
 ダンサーのマーヴィは誘惑を試みる。しかし、暫く続けてもシンデンに効果が出た様子は無い。
 シンデンの所持しているコンポージャーは平常心を保ち、精神が不安定にならないようにする効果がある。それが誘惑に対する耐性となっていたようだ。
「ユーリさん!!」
 中衛にいたアルジェントがユーリを助けに駆けつける。シンデンに近寄ってその斬撃を盾で受け止めながら、ユーリ達を背に庇う位置へ移動する。
  
  
 カナデとネージュは別ルートから敵ヒーラーを狙う。フウカも飛行したままその後を追う。
「行かせないよっと!」
 ヴェールが彼女等の行く手を遮る。
 カナデがチャージして飛び掛かり、トリプルアサルトを放つ。ヴェールはそれをいなし、攻撃直後の硬直を狙ってバリアランスを突き出す。
「くっ……」
 槍の穂先が脇腹をかすめ、カナデは一旦下がる。
 入れ違いにネージュが前に出る。ラビリンススパーで加速し、両手の盾を使ったウォールアタックで相手の体勢を崩しに掛かる。
「回復は任せるし!」
 フウカがアンプルヒールでカナデを回復させる。
「ロータスさんは相手タンクを!」
「ええ、了解よ」
 コタローとロータスが戦闘に加わった。コタローがカナデを、ロータスがネージュをそれぞれ狙う。
 
 
 ノワールとアスールは蘇生杖を持つヒーラーを狙っていた。
 狙われているスイレンをしまっちが庇う。軍馬に乗ってポリアナードの騎士盾を構え、スイレンを狙う攻撃をエルテルンヴァッヘで全て受けきり、邪魔をすることで相手の注意を引き付ける。
  
 しまっちの軍馬に乗っていたブレイクルドは、コロポックルの能力を使って姿を消す。
 元々小型のサイズを生かして盾の裏に隠れていた為、姿が消えた事に誰かが気付いた様子は無い。
 透明に慣れるのは僅か数秒のみ。その間にブレイクルドは近くの敵の背後に回る。
 移動しながら、向かう先に地突の計で穴を作っておく。辿り着くと同時に透明化が切れた。ブレイクルドは急いでトラップクラフトを行う。
 落とし穴の底に金属溶解液爆弾を投げ入れ、敵が穴に落ちれば装備を溶解させる罠を作成する。
 しかし、その様子を見ている者がいた。
 相手チームの戦力や行動方針を探っていたクロエは罠を作成するブレイクルドを目撃する。
「アスール、後ろに落とし穴だ!」
「っ!?」
 敵の攻撃を受け下がりつつあったアスールは寸でのところで留まる。
 ウラスベがやや大振りに攻撃を行い、アスールを落とし穴へ突き落とそうとする。アスールは横に飛んで避け、落とし穴を回避する。
 クロエは落とし穴に近づくと武器を叩きつけ、穴が目に見えるようにしておいた。そのまま近くに居るアスール達の所へ向かい戦闘に加わる。
 ブレイクルドはしまっちの所に戻っており、風計で攻撃を行っていた。
 しまっちは盾で敵の攻撃を防ぎ、その反動で下がるように見せながら徐々に移動していた。そうして、他の味方から距離を取る。
 
 
「カナデ、上!」
「っ!」
 フウカが鋭く叫ぶ。すぐにカナデが横へ飛びのく。
 壁役のヴェールの頭上を飛び越え、ロータスが天斬を放つ。だが、カナデの回避が間に合い攻撃は外れた。
 フウカは敵の攻撃が届かない高さで滞空しており、上空から敵の動きを見てカナデ達へ指示を出している。
 ヒーラーである為、カナデやネージュがダメージを受ければ回復も行う。
 ネージュがラビリンススパーを使って急加速し、コタローの攻撃に合わせて突進しウォールアタックを行う。
 姿勢を崩したコタローへカナデが斬りかかる。
「やらせるかぁ!」
 ヴェールがバリアランスを突き出す。身を捻って避けたカナデへ盾を叩きつけ、そのまま押し込んで下がらせる。
「これでも喰らえっ!」
 ヴェールはラストダークを放つ。狙いはカナデではなく、彼女を庇うように前に出たネージュだ。
 闇の球体が、ネージュが構える盾に命中する。闇が触れた箇所が腐食され、盾は能力強化を受け付けなくなる。
 続けてもう一度放ち、もう一つの盾も腐食させる。
「うわ……」
 ネージュは盾を確認する。使えなくなった訳ではないが、腐食により削られ少しサイズが落ちている。
 ふいに、頭上から唄が聞こえ始めた。
 ヴェールが空を見上げると、フウカが空中に浮いたまま天使の歌声による唄を歌っていた。
「眠ることはないと思うけど……何があるかわからない、止めないと!」
 ヴェールはラストダークの球を発射する。フウカは歌いながら空を飛びまわり、ヴェールの攻撃を避ける。
「私が行きます!」
 ロータスが【レイス】鴉天狗の翼で空を飛び、フウカを狙う。フウカは歌うことをやめ、逃げ始めた。
 速度はロータスが上だ。しかし、レイスの操作性はフウカのピクシーの方が良く、加えて眠りを誘う歌声を聴いていたロータスは、僅かながら動きが鈍くなりつつあった。
 どうにか追いつくも、フウカが素早く身を翻してロータスの天斬を避ける。
 すぐにロータスは飛行時間の限界が来て、地上へ降りる。
 
 
「ブランさん、ロータスさん達をお願い!」
 戦況分析を行っていたマーヴィはロータス達の危機に気づく。そして唯一状態異常回復を行えるブランへそちらの援護を頼んだ。
 カラスバについて回復していたブランはロータス達へ視線を向ける。
「不味いね、急いで行ってくる!」
「そちらが落ち着いたらマスター達の所へ行って頂戴。少しずつ距離が離れてる、これ以上離れると回復が届かなくなるわ」
「了解っ。ユーリさん、ここは任せるよ!」
「頑張る……」
 ユーリが頷き、この場の回復役を一人で請け負った。
 ブランは近くで戦っている敵味方を迂回して、ロータスの所へ向かう。
 
 
「【バード】の本気見せてあげる。私の美声に酔いしれるがいいっしょ!」
 フウカは空で歌い続ける。その手には静謐のリュート。演目は再び『人間になりたいと願ったサキュバスの、甘く暗い愛を描いたバラード』だ。
 コタローとロータスは飛んでいる相手への攻撃手段を持っていない。ラストダークを放てるヴェールがフウカを撃ち落とそうとする。
 だが歌声を聴き若干ながら気分が浮ついた彼女等をカナデ達は放置などしない。今が好機と、二人は猛攻を仕掛ける。
「倒れろ……っ!」
 ネージュがヴェールに肉薄してアイアンヴェールを使い、フウカを狙った魔法を防ぐ。そのままウォールアタックを行い突き飛ばすようにヴェールを押す。
「ここで……ボクが倒れるわけにはいかないの……ッ!」
 ヴェールはたたらを踏むも、立ったまま留まった。カナデがその側面に回りこみ、武器を振り上げる。
「ハッ!」
 コタローがヴライで突きを行い、カナデの攻撃を阻止する。さらに追撃を行い後退させ、ヴェールから離れさせる。
 コタローの攻撃にあわせ、ロータスがチャージしながらカナデへ近づく。
 カナデは大降りに刀を振るう。だがその一閃はロータスには届かない。そのままロータスが間合いを詰めてきた所へ、即座に刃を切り返した。
 カナデの雲払が当たった直後、ロータスは天斬を放つ。攻撃後すぐに下がっていたカナデは、僅かに剣閃が掠めただけで済んだ
「ぐっ……!」
 反撃に出たカナデがトリプルアサルトを放つ。
「これで……仕留める!」
 三度の剣閃がロータスの身体を切り裂く。
 体力が全快なら耐えられたかもしれないが、先ほど一撃を受けていたロータスはその連撃で体力を削りきられた。
「次は貴方です」
 ロータスが倒れると、カナデはすぐに次の標的を狙う。
 狙われたコタローはヴライを構えて待ち受ける。ふいに、その思考が澄み渡った。
「遅くなってごめんね!」
 近くまで来たブランがレメディを使い、コタローの状態異常を回復させていた。すぐにヴェールへもレメディをかけ、眠気を吹き飛ばす。
 コタローはカナデの攻撃を避けると攻撃後の隙を突いて一撃を叩き込む。
 急に動きの鋭くなったコタローの攻撃にカナデは対応しきれず、強打を受ける。すぐにネージュがアイアンヴェールを張って彼女を守る。
「もう、これじゃ歌っても意味ないし! 邪魔しないで欲しいんですけど!」
 フウカは歌を止め、マジックポーションを飲む。その後は空から味方を回復させる事に専念する。
 コタローは攻撃の手を止めず、相手を背後へ押しやる。ヴェールが倒れたロータスの所へ行き、駆け寄ってきたブランが蘇生を終えるまで守る。
「感謝します、ブランさん」
「回復、間に合わなくてごめんね……」
 アスクレピオスの杖の効果でロータスが生き返り、戦闘に復帰する。ブランはメディスンの回復技能を使って皆を回復させる。
 キャンバス・リエータ側の反撃が始まる。
 ロータスがネージュに肉薄し、休み無く攻撃を仕掛ける事でその場に押しとどめる。
 その間にヴェールとコタローがカナデを倒しに掛かる。
 ヴェールが攻撃を受け止めながら、フロラシオンやフレックスカウンターで相手に隙を作る。
 そこをコタローが突き、ブロウクンポイントを狙った拳による強打で撃破を狙う。
「ちょっ、威力高すぎじゃん。マジやばくね?」
 フウカがアンプルヒールで回復させるが、ダメージに対して回復量が足りない。何度か耐えさせたものの、やがて回復した分ごと体力を一気に削られカナデは戦闘不能となった。 
「一旦クロエ達の所に行って回復させてくる。すぐ戻るから、それまで耐えられる?」
「大丈夫だと思います。相手の魔力もそう余裕はないでしょうし、もし歌ってきてもすぐに効果があるわけではありませんから」
 敵の数が減った為、ブランはこの場をロータス達に任せて移動する。
 
 
 メルツはグレートランスで猛攻を仕掛ける。それらを全ていなすカラスバ。
「少しこっちを見てもらいましょうか」
 マーヴィがメルツを誘惑する。耐性を持たないメルツは誘惑状態になり動きに異常が見られるようになる。
「ほら、しっかりしなよ!」
 メルツの後ろにはラースタチカが控えている。彼女は即座にレメディを使い、メルツの誘惑状態を解除する。
「せっかくだしお返しといこうかね!」
 今度はラースタチカが誘惑を行う。
「まずい……っ!」
 カラスバに耐性はない。すぐに誘惑の効果を受け思った通りの行動が出来なくなる。
 マーヴィが誘惑を止めようとするが、メルツがラースタチカを庇い攻撃は通らない。
 ならばと、ラースタチカへ誘惑を試みる。だがラースタチカはコンポージャーを所持しており、精神攻撃系統に耐性をもっていた。
 メルツは槍で薙ぎ払い、カラスバの盾を弾く。そうして狙えるようになった無防備な胴体へ、連続でグレートランスの突きをお見舞いする。
「駄目……間に合って……!」
 ユーリがグレーターヒールでカラスバ含む周囲の味方を回復する。
 回復自体は間に合った。だが、メルツの連撃が回復した分の体力をも削りきり、カラスバを戦闘不能まで陥らせた。
「カラスバさん、すぐに……!」
 即座にマーヴィがカラスバを蘇生に掛かる。だが、それを許すメルツ達ではない。アスクレピオスの杖を構えたマーヴィを、槍で薙ぎ払って止めさせる。 マーヴィは勝利のポーズを取り、防御判定を発生させてメルツの攻撃を微ダメージに抑える。だがモーション直後は僅かながら硬直があり、そこへ攻撃を喰らう。
 杖をつかってどうにか槍をいなし、マーヴィは耐える。
「マーヴィ、こっちに……!」
 ユーリがマーヴィを回復させようとする。だが。
「おっと、回復はさせないよ」
 ラースタチカはユーリへ魅了をかける。
 ユーリが魅了で行動を封じられている間に、メルツはマーヴィを倒していた。攻撃の矛先はすぐにユーリへと向けられる。
「やらせないっ!」
 アルジェントがアレストチェーンでメルツを捕縛する。そしてシンデンの攻撃を盾で強く弾いて下がらせ、その隙にユーリの下へ。
 ユーリの誘惑が解けるまで、アルジェントはエルテルンヴァッヘで全ての攻撃を受け止める。誘惑も極力盾をラースタチカへ向け、視線も合わせないようにしてかからないようにする。
 誘惑状態はすぐに解け、ユーリは自由に動けるようになる。
 人数差もあり劣勢だが、まだ諦めはしない。ユーリは隙を見て味方の蘇生をするつもりでいた。
 
 
 アスール達は他の味方からかなり離れた場所に居た。
 相手が距離を取りつつ攻撃してくる為、それを追っている内に徐々に距離が開いてしまったのである。
 だが足を止めたり下がろうとすれば、敵の遠距離攻撃で一方的に攻撃される。その為、肉薄して接近戦を続けるしかなかった。
「蒼き風よ……切り裂け!」
 アスールがゼピュロスブレードを放つ。
 しまっちがエルテルンヴァッヘで風の刃を受け止める。そこへノワールが接近、インセクトキラーで切りかかる。
 しまっちの馬に同乗しているブレイクルドが身を乗り出してエネルギーシールドを展開し、ノワールの攻撃を防ぐ。
 韋駄天の靴の効果に加え犬狼であるノワールはかなり敏捷性が高い。素早く動き回って攻撃をかわしつつ、アスールの攻撃に合わせて自身も技を出し相手にダメージを蓄積させていく。
 軍馬に乗るしまっちは走れば速度は出るが、小回りはきかない。馬上でブレイクルトと共に盾を動かし攻撃を防ぐが、時折間に合わずダメージを負っていた。大技だけはエルテルンヴァッヘで確実に防いでいるが、小さなダメージの蓄積は無視できる物ではなくなってきている。
 クロエが彼らの脇を駆け抜け、スイレンに迫る。
 ヒツジン28号に乗ったスイレンはしまっち達にグレーターヒールをかけていた。近づいてきているクロエにはまだ気付いていない。
 突然、クロエの周囲にカマイタチが起こる。
「恨んでいる。全てを……」
 ウラスベが風計でクロエの妨害をしていた。スイレンがクロエに気付き、そちらに向き直って蹄を構える。
 身体を切り裂かれながらもクロエは足を止めず、スイレンに近づいてトリプルアサルトを放つ。
 スイレンは腕で身体を庇う。ヒールブレイサーが斬撃を受け止めてダメージを抑えた。
「ヒツジンパーンチ」
 すぐにヒツジンの腕を振り回し、クロエへ叩きつけて吹っ飛ばす。
 受身を取って衝撃を緩和し、無事着地したクロエは起き上がる。
 その頭上から雷が落ち、彼女に直撃した。
「ぐっ!!」
 ウラスベの雷計だ。
 感電して身体が痺れているクロエにウラスベが接近し、紅黒のカーマを使ったサウザンドレイヴをお見舞いする。
「その命、我が糧に……」
 大ダメージを与えつつ、剣の能力で生命力を奪い自身の体力を回復する。
 麻痺が解ける前に追撃を放ち、ウラスベはクロエを戦闘不能へ陥らせる。
 ウラスベはしまっちの援護に入る。風計を使ってノワールをカマイタチで攻撃し、その猛攻を止める。
 ブレイクルドも風計を使ってアスールを牽制している。
 アスールは風を避けながら接近し、僅かに切り傷を負いつつしまっちへ肉薄。エッジストームを放つ。
 しまっちはポリアナードの騎士盾で防ぐが、衝撃を殺しきれず姿勢を崩した。軍馬からずり落ち、地面に身体を打ち付ける。
 すかさずアスールが追撃する。
「イカズチよ……!」
 ウラスベが雷計を使ってアスールを阻止する。雷に撃たれ全身が痺れるが、アスールは無理矢理腕を振ってゼピュロスブレードを放った。
 起き上がったばかりのしまっちを幾つもの風刃が切り裂く。スイレンが回復しようとしていたが間に合わず、しまっちは体力が尽きた。
「復活するのん。守ってほしいのん」
 スイレンがしまっちの蘇生を試みる。無論、アスールとノワールはそれを止めようとするが、ブレイクルドとウラスベが彼らを全力で押し留める。
 ブレイクルドはアスールへ風計を使う。痺れの抜けない身体を動かし、ゼピュロスブレードを放つアスール。だが放たれた風の刃は風計のカマイタチにより軌道を逸らされ、あらぬ方向へと飛んでいった。
 金属溶解液爆弾を投げつけ、アスールの攻撃力低下を狙うブレイクルド。アスールはエッジストームでブレイクルドを攻撃する。
 攻撃直後でエネルギーシールドの展開が間に合わず、ブレイクルドは連続で斬りつけられて体力を0にされ、戦闘不能となった。
 ウラスベは雪結晶の盾から冷気を放ち、ノワールの動きを鈍らせていた。それでも元々素早さがあるノワールはウラスベの攻撃を掻い潜ってスイレンの所へ辿り着く。
 だが、既に蘇生は終わっていた。起き上がったしまっちがエルテルンヴァッヘで攻撃を受け止める。
「ちっ!」
 ノワールはもう一度倒そうとしまっちへ攻撃を仕掛ける。だが、ウラスベが雷計を使ってノワールを攻撃する。頭上で低く轟く音が聞こえ、飛び退いたウラスベの前に雷が落ちる。
「ん?」
 アスールは急に身体の痺れが抜け、自由に動けるようになる。
「二人とも、今回復するよ! グレーターヒール!」
 ブランが駆けつけ、レメディでアスールの麻痺を解いたのだった。すぐにグレーターヒールを使って体力も回復させる。
 アスクレピオスの杖は既に一度使っている為、クロエを生き返らせることは出来ない。
 状態異常と体力が回復したアスール達は、一気に攻め込む。
 その時、しまっちが右手を高く上げた。
 ウラスベとスイレンが耳を塞ぐ。
 途端、辺りに無数の囁き声が満ちる。しまっちが召喚した界霊獣ウィスパーによるものだ。
「ぐぅっ……!」
「頭が……っ!」
 その声は周囲にいる者たちの精神を蝕み、心を乱す。
 蒼銀翼のチャームを身につけていたアスールはウィスパーの囁きを聞いても多少頭痛を感じた程度で済んでいた。だが、耐性の無いノワールはそうはいかない。
「うぅぅ……」
 ロッカも囁きが聞こえる範囲内にいた。距離が離れていたからか他二人よりは効果が薄く、すぐに動けるようになる。
 だが彼女が行動するより先に、囁き声で混乱したノワールにウラスベが連撃を加えていた。
 アスールは助けようとするが、しまっちがその前に割り込んで邪魔をする。
 ウラスベの攻撃でノワールは倒れ、戦闘不能となる。
「ウラスベ、ヒーラーを狙え!!」
 しまっちがアスールを抑えている間に、ウラスベがブラン目掛けて駆ける。
「ブランさん、逃げて!!」
 アスールが叫ぶ。
 ブランには攻撃の手段が無い。ブランは背を向けて走り、他の味方と合流しようとする。
 ウラスベは風計のカマイタチでブランの足を攻撃する。そうして移動を阻害し、そこへ一気に接近して飛び掛った。MPが残っていない為、紅黒のカーマで何度も切りつける。

 ブランがやられ、残るアスールも一人では長く持たなかった。やがて体力を削りきられ、戦闘から脱落する。
 しまっち、ウラスベはスイレンに回復してもらうと、共に他の味方の所へ向かう。
 
 
 しまっち達が離れて戦っている間に、ネージュがコタローに倒されていた。
 だが逆に、シンデンとメルツ、ラースタチカがアルジェントとユーリを戦闘不能にしていた。
 今は残った者同士で戦っている。
 しまっち達三名が加わった事により、戦況は【汝電気羊為りや】が優勢となる。
 
 ここまでの戦闘で皆魔力を消耗しており、中には一切スキルを使用できなくなっている者もいる。
 フウカは回復技の連射で魔力が尽き、上空から戦いを見守っていた。
「ローザ、回復お願いだし!」
「あいよ!」
 それでも戦況を確認し味方に指示を飛ばす位はできる。指示を受け、ラースタチカがグレーターヒールで味方全員を回復させる。
 スイレンは魔力が尽きたのでヒツジン28号で前衛に参加していた。その隣でメルツが槍を振るっている。
「倒れるわけには……っ!!」
 一身に攻撃を引き受けるヴェール。コタローとロータスがその両脇を守るように位置取り、隙を見て反撃している。
 だがこの人数差ではそうそう反撃の機会は無い。
 メルツが薙ぎ払った槍をヴェールの盾が弾く。弾かれた隙を突いてコタローがヴライを突き出し、頭への攻撃で昏倒を狙う。
 だがその側面に回りこんだシンデンが静寂のカツガでコタローを切りつけた。
「くっ!」
 すぐにヴライを引き、狙いをシンデンへ変えて突き出す。棒の先端がシンデンの頭部を直撃した……筈だった。
「……!」
「殺られた……と言うとでも思いましたか?」
 プロテクション・ブルーが発動し、コタローの攻撃を防いでいた。シンデンは即座に静寂のカツガで反撃する。
 戦闘中に喰らっていた音が衝撃波として発射され、コタローの姿勢を崩す。
 ヴェールが庇いに入るが、メルツが横からグレートランスを叩きつけて強制的に下がらせる。
 倒れたコタローへシンデンとスイレンが攻撃を叩き込む。
 コタローは戦闘不能になり、残るはヴェールとロータスのみ。
 ロータスはしまっちとウラスベの攻撃を受けており、既に瀕死の状態だ。ヴェールも魔力が尽きており、もうスキルは使えない。
 二人は最後まで意地を見せる。ヴェールは反撃を喰らう覚悟でバリアランスを突き出し、スイレンを道連れにする。
 最後に残ったロータスはウラスベの攻撃に合わせて天斬を放ち、その体力を大きく削り取って力尽きた。
 
 
 
 試合終了の合図が会場内に響き渡る。
 
 Aブロック代表対Bブロック代表の一戦。
 勝ち残り決勝へ進むのは、チーム【汝電気羊為りや】に決定した。


First Prev  13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23  Next Last