三千界のアバター

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【1】VS ヒツジン兵団

『Aブロック、試合開始です!』

 司会者の声が響き渡り、Aブロックの試合が始まった。
 会場内に散らばる参加者達は各々行動を起こし、すぐにあちらこちらで戦闘が勃発する。

 特に中央付近は乱戦状態だ。複数のチーム入り乱れての戦闘に加え、マップ中央の穴から湧き出した針蟲モンスターが出場者達に迫っている。

「ああもう邪魔ねこいつら! 姫香、お願い!」
「おう、任せろ!」
 白雪 姫香がガーナーライトを使う。
 彼女の頭上で眩い光が発生し、周囲の針蟲がそちらへと視線を向ける。
「今ね、行くわよ!」
 司聖 まりあはソードマスタージョブの特性であるチャージを行い、目一杯力を溜める。
 そして、姫香の周りに集まった針蟲へゼピュロスブレードを放った。
「纏めて吹き飛べっ!」
 炎剣プロメテウスの一閃で数匹の針蟲が切断され、続けて発生した風属性の刃が離れた場所に居る針蟲と、さらにその近くに居た別のチームのプレイヤー達を襲う。
「キャッ!」
 チーム【ヒツジン兵団】の一人が風の刃を真っ向から受け、纏っている巨大な着ぐるみが大きく裂けて中の人間が覗き見える。
「もー! 私のヒツジンになんてことするのよ!」
 愛用のヒツジン28号を傷つけられて、中に居る女性ヒーラーが激昂する。
 破れた着ぐるみを身につけたまま、のしのしと大股でまりあに接近した女性ヒーラーはその巨大な羊の腕を振り上げた。
「これでも喰らいなさい!」
 羊28頭分の威力というその一撃を、姫香が前に出て竜眼の宝盾で受け止める。
「うおっ、結構重いな」
「誰が重いですって!?」
「いやあんたじゃねーよ!」
 女性ヒーラーは怒りに任せて何度も蹄を振り下ろす。それを姫香がアイアンヴェールとガードスタンスで全て受け止める。
 その間にまりあが女性ヒーラーの脇に回りこむ。だが攻撃を仕掛ける前に、別のヒツジン乗りの男性が光魔法を放ってきた。
 攻撃を諦め、一度下がるまりあ。男性は油断無く杖を構えており、まりあが女性ヒーラーを攻撃しようとすればすぐに邪魔をするつもりのようだ。
 さらに、残り二人のヒツジン乗りが攻撃に加わる。
「くそっ!」
 姫香はエルテルンヴァッヘで全ての攻撃を受け止める。ヒツジン乗り達は休み無く攻撃を加えてくる。
「まりあ急げ! このままじゃMPが持たない!」
「ええ、もう終わるわ……よし」
 姫香の背後でチャージを行っていたまりあは飛び出すと同時にゼピュロスブレードを放つ。
 だが敵も警戒していたらしい。ヒツジン乗り達はバラバラに分かれて斬撃と風の刃を避ける。
 避け切れなかった刃がいくつか傷を負わせるも、すぐに仲間のヒールで全快する。
 
 ふいに、眩い光が彼女達を照らす。
「さぁて、その正体見極めさせて貰おうか」
 ガーナーライトを照らすリズ(リーゼロッテ・ベルンハルト)の脇を通り過ぎ、ココミ(黒瀬 心美)はヒツジン兵団へ攻撃を仕掛ける。
 二つのチームに挟撃される形となったヒツジン兵団は戦力を分けざるを得なくなる。
 一撃を加えたココミがリズの背後へ下がる。その後を二人のヒツジン乗りが追う。
 リズがヒツジン乗り達の前に立ちはだかりその攻撃を受け止める。その頭上では、時折ガーナーライトの光が放たれている。
 光が灯るたび、釣られて針蟲達が集まってくる。
「邪魔っ!」
 ヒツジン28号の大きな腕が針蟲を纏めて薙ぎ払う。だが、針蟲は次から次へと湧き出し襲ってくる。
 リズは光で針蟲を集めはするものの、ある程度針蟲が近くまで来ると光を消し、自身は針蟲の気を引かないように極力動かずにいた。
 その為、動くものに反応する習性を持つ針蟲達は、攻撃の為に大きく動くヒツジン乗り達へ針先を向ける。
 針蟲を払いのけつつ、リズへ攻撃するヒツジン乗り達。彼らの意識が針蟲へ向いた隙を突き、ココミが仕掛けた。
 リシア(リシア・ハーヴィ)がプロパーフィルムをかけ直し、ココミの速度を僅かに上昇させる。
 ココミはヒツジン乗りの背後へ回り込む。
「おっと」
 ココミの行動に気付いたヒツジン乗りの一人が振り向きながら腕を振り回す。体長6メートルを超えるヒツジン28号はその分腕も長く攻撃範囲は広い。 一旦下がって相手の攻撃を避けるココミ。
 彼女の慎重さは、相手がレプリカントではないかという疑惑から来ていた。Aブロックに参加したのも着ぐるみや鎧で姿を隠しているチームが居る事からレプリカントが潜んでいるとしたら彼らの可能性が高いと、そう考えたからである。
 攻撃を受ければ侵食の可能性がある。故に、一撃でも貰うわけにはいかない。
 だが彼女の持つインセクトキラーは相手より射程では劣る。攻撃を当てるためには、その長い腕による攻撃をどうにかいなし懐に潜り込む必要があった。 ココミは振り回される腕を避けつつ隙を窺う。
 射程こそ長いものの、相手の動きは単調だった。瞬刻の見切りで攻撃動作を見切ったココミは、剣で蹄を受け流す。
 そうして出来た僅かな隙を逃さず、無防備な体勢となった相手へビクトリースラッシュをお見舞いする。
「いたたっ!」
「ちょっと、大丈夫!?」
 もう一人のヒツジン乗りが負傷した味方へヒールをかける。負傷している方はというと滅茶苦茶に腕を振り回しながらココミから離れていた。
 追撃しようとするココミへヒールを止めたヒツジン乗りがホーリーライトを連射し、味方の退避を援護する。
 リズがその射線上に割り込み竜眼の宝盾で光を受け止める。その隙に、ココミは目標へ接近を果たしていた。
 身を屈めてヒツジン28号の腕の下を潜り抜けようとした所で、ふいに相手が動きを止める。直後、眩い光がココミの目を焼いた。
「ぐっ……!」
 至近距離でホーリーライトを喰らったココミは、僅かに怯んだもののそのまま攻撃態勢に入り二度目のビクトリースラッシュを叩き込む。
 ヒールを受けた時間も僅かだった為、殆ど回復していなかったのだろう。相手は体力が0になったようで、地面に倒れ動かなくなった。
 ココミは自分の身体を確認する。特に侵食を受けた様子は無い。ほっと一つ息をつき、ココミはもう一人のヒツジン乗りへ視線を向ける。
 仲間をやられたヒツジン乗りは慌てた様子でホーリーライトを連射するが、リズが盾になりながら距離を詰めたココミが攻撃を当て、そう時間も経たずにに倒された。
「ココミ、大丈夫か?」
「ああ、どうやらコイツらじゃなかったみたいだね……」
 リシアがココミにヒールをかける。その間ココミはもう一組の疑わしきチーム、【†殺戮の熾天使†】を探して視線を彷徨わせる、が。
「喰らえぇぇっ!!」
 ふいに聞こえる風切り音。リズがアイアンヴェールの構えと結界で回復中のココミ達を庇う。
 まりあの放ったゼピュロスブレードの風刃が、針蟲を切り刻みながら迫っていた。受け止めたリズが数歩後ずさる。
「他の参加者か……別に優勝とかには興味ないんだけど、話を聞いてもらえるような状況でも無いしね。やるしかないか」
 ココミ達はまりあ、姫香の二人と戦闘に入る。
 
 
 結果、勝ったのはココミ達だった。
 ヒツジン兵団との戦いでまりあ達が大きく消耗していた事と、ヒーラーのリシアが居た事で体力的にも精神的にも余裕が生まれた事が、勝敗に大きく関わっていた。
 とは言え、被害が無い訳ではない。怪我はヒールで治せるが、ヒツジン兵団との戦闘中からリズにヒールを掛けたり、グローライトで援護をしていたリシアはかなりのMPを消耗していた。
「蘇生はまだ使えるが、どうする?」
「……殺戮の熾天使の方は他のチームが戦ってくれているし、アイツらがレプリカントかどうか確認できたら棄権しようか。元々トーナメントに参加するつもりは無いしね」
 彼女達は戦闘に巻き込まれない場所へ移動する。そうして、殺戮の熾天使の戦いを見守った。
 
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