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【毒霧の沼バトルロイヤル4】


 Cブロックの戦いは佳境に入ろうとしていた。すでにここまで懸命に戦ってきたチームの多くはすでに気絶者が出たり、降伏して負けを認める者たちも出てきている。
 その中でもまだ残っているチームがおり、消耗しているチームを撃破。そして、次の戦いへと備えているチームの1つである『ノンクレスト』の面々。
「……残りは――」
 だしかつおこと卯月 浩人が周囲の確認を行っている。最後の一チームになっているのであれば、それで戦いは終わりとなるが――。
「チーム的に言えば後1チーム。ソロでの人が残ってるみたいだよ」
 クラフターのえふやことテレサ・ファルシエが浩人や他の者たちへとそう伝える。
 アヴォイドダッチを着用したテレサは回復を終えた後に周囲の警戒を行っており、まだ残っている者たちの調査を行っていた。そうしたことで見付けたチーム。それは『S4U』チームであった。
 S4Uの基本概念は逃げ続けるというものだった。もちろん、追いつかれて戦うことになることもあったが、消耗しているチームをそれぞれ倒していき、逃げることで自分たちの消耗を限りなく少なくしている。
 多くの者が戦うことを考えて行動していたが、S4Uだけが戦うことを重きにおかず、逃げ続けるという手を使っていたからこそ出来た戦法だ。
「ふむ……残りはあのチームかのぉ」
 ノンクレストが残っているということに気付いたのはまおうちゃんこと柊 エセル。彼女はこのチームの司令塔を行っており、戦況を分析しながら味方へと指示を出しながら逃げ続けるという手を取っていた。
「どうする? 向こうはこちらよりも消耗してるし、正面から戦うこともできるけど」
 サエこと三日月 冴がエセルへとそう聞く。
 確かに様子を見た限りでは向こうのほうが消耗しているように見える。こちらは逃げ続けた結果、誰も欠くことなくこうして立っていられている。
 エセルは少しだけ考えると、すぐに方向性を決めた。
「よし、逃げるぞ。逃げ続けるのじゃ!」
 こんな時でも逃げることを徹底する。残りチームが少ないのであれば追ってくるしか戦う術は向こうにはない。ならば、逃げ続けて向こうを消耗させながら戦うというここまでの作戦を続けるという決定を下した。
 エセルの言葉に皆はすぐに準備をして、向こうがこちらへと向かってくるのを確認するとすぐに逆方向に転進。逃げを再開し始めた。
「ちょ……また向こう逃げ始めたよ」
 S4Uの者たちが逃げ始めたことを見てリコリスこと壬生 杏樹がそう言う。
「……こうなればこっちは追うしかなくなるからな……行くぞ……」
 タンクの浩人がそう言うとS4Uを追うためにノンクレストは移動を開始する。
 移動速度は基本的にジョブや装備にて素早さを上げている者が追い付きやすい。ノンクレスの中で一番先にS4Uへとたどり着けるのはダッチに搭乗しているくろあこと平松 揚羽だろう。
「どうする? ダッチに乗っていれば私が先に行くことができるが」
 アタッカーである揚羽が先に行って攻撃を仕掛けてくれるのあれば、最低でも1人に対してダメージを与えることも可能かもしれない。しかし、向こうにもタンクがいるということを考えると、足止めをされて他の者を逃がしてしまうということも考えられる。それに加えてここまで揚羽はクラフターのテレサを守る護衛として動いていたため、彼女から離れるということに若干の抵抗を覚えていた。
「でも……タンクが残ってくれるなら確実に倒して……守る人がいないほうが倒しやすいかもしれない……」
 いつもは耐えて殴ればいいという考えの浩人であるが、最低限のことは考えている。タンクがいなければ守ってくれる者がいなくなる。前にいる壁がいないのであれば、追いつくことさえできれば倒すことは難しくない。
「分かった。先行して敵に当たる」
 浩人の言葉を聞いて揚羽はダッチを操作。全速力でS4Uの方へと走り始めた。
「1人だけこっちに向かっとる!」
「ふむ……誘導をお願いできるかの?」
 そう言ってエセルが聞いたのはタンクであるロザリアことローゼ・シャルフシュッツェだ。
 彼女はこうして敵から追いかけられた場合に残り、味方を守るために残ることもあったためにお願いをすることを決める。そして、それに対してローゼは特に何も言わずに立ち止まった。
「ええ、任せてください。必ず皆さんを守ります」
 そう言って走っていく皆を見送ると竜眼の宝盾と紫陽花の盾を構えて揚羽を迎え撃つ準備をする。
「やはり、1人だけタンクが残ったか」
「皆さんの元へは行かせません」
 揚羽の紅黒のカーマがローゼの盾へと当たり金属のぶつかり合いでの火花が出るように見えた。ダッチに乗りながらのヒットアンドアウェイのような攻撃を超直感やエスカッションで自身の周辺へと盾を張って防ぐなどの攻防が始まる。
 しかし、武器を持ち合わせていないローゼは徐々に揚羽に押され始めると下がり始めた。しかし、もうすぐでノンクレストの皆が到着することを考えてそのまま揚羽は攻撃を続けていく。
「流石に……!」
「終わりだな」
 S4Uのヒーラーは一緒に逃げているので回復をする術がないローゼ。そのまま追いつかれて一気に決められると思った揚羽だったが、ここで一つだけ予想外のことが起こる。
「なんだ!?」
 突然開けていた場所からワイヤーが下りてくると、それが揚羽の方向へと向かってくる。それによってダッチから落とされてしまう揚羽。それに加えて味方から離れていた2人は毒状態へとなっており、そのまま体力が削られて行く。
「誘導成功ですね」
「下がっていたのはこれが理由か……」
 確かにアタッカーの揚羽の攻撃は凄まじいために下がっていたということもある。しかし、ここへ来たのは冴が仕掛けていた罠へと誘導するためだった。
 そのまま2人はダメージのために気絶。チームから離脱という形になった。
「くろあさんが倒れた……?」
「そっか、向こうはこれが狙いなんだね」
 揚羽が倒れたのを確認した杏樹はそう呟き、それに対してアンジェことアンジェラ・ジラソーレがそれを見て敵の考えを察する。
「みんな毒は?」
 ここまでレメディを多用せずにやってきたアンジェラ。使い続けてもキリがないと考えていたからだ。しかし、この状況では持久戦――いや、超持久戦となってしまうだろう。そうなればしっかりと毒を治療しておき、敵を追いかけた方が賢明だろう。
「皆さん毒霧での状態が多少続きましたから危ないかもしれないですね。わたしも回復お願いしていいですか?」
 インぺリアことリーゼロッテ・ペトレイアスがアンジェへとそう伝える。それを聞いてアンジェラは頷いて皆へとレメディを使って毒を治療。また毒にかかる前にS4Uへと追いつかなければならない。
「流石に罠があることには気付きおったか。そうなれば仕方あるまい」
 逃げ続けたS4Uの皆は1度立ち止まる。
 ローゼがやられたことと、敵側が罠にかかって離脱者が出たことで警戒を強めたことが理由だ。
「1度ここで迎え撃つ方向でいく。皆いいな?」
「分かりました。ミラ、タンクお願いね」
「言われなくても分かってるわ」
 エレロこと白森 涼姫がタンクのミラ・ヴァンスへとそう言うと、竜眼の宝盾を構えて敵側の方へと向ける。
 ローゼがやられたことでタンクはミラの1人だけだ。それに加えてこちらはアタッカーが存在しない。逃げるという作戦は相手を消耗させていくこと。そして、弱ったところを皆で叩くということだ。しかし、こうなっては迎え撃つしか他はない。
「残りはどうじゃ?」
「んー……ほとんどなくなったんやけど――」
 冴がとある方向を見るとエセルはそれを見てニヤリと笑う。
 そして、ノンクレストの者たちは足を止めたS4Uへと追いつくと、すぐにタンクである浩人が前に出る。そして、前衛アタッカーであるリーゼロッテがすぐさま冒険者の剣にてミラへと攻撃をした。
「こんな攻撃……!」
「流石に受け止められますよね」
 そう言ってリーゼロッテはバックステップで少しだけ距離を空けると、剣へと魔力を込める。
「流石に無傷ってわけにはいかないわよね」
 彼女が何をしてくるかを悟ったミラは盾に力が入る。そして、魔力を込められた剣から放たれるゼピュロスブレードはミラへと向けて刃を放った。
 細かい軌道を操作できない技ではあるが、ミラへと向かわせるだけならば可能だ。そんな大技を放った隙を埋めるようにして杏樹がすぐさまゴブリンハントを使ってS4Uのヒーラー、マリアローズこと千桜 一姫へと攻撃をする。
「おっと……! 危なかったですねぇ」
 一姫はその矢をスパイクシールドでどうにか止める。しかし、タンクほどの防御力は備えてないので杏樹へとこのまま狙い撃ちされ続けると危険だろう。ただ、その間でもタンクのミラを回復させるためにメディスンとしての回復を施し、多少の危険も顧みない行動をする一姫。
「近づいたらトゲで攻撃、なんてことを考えてたんですけど……弓からの攻撃じゃ無理ですよねぇ」
 杏樹の矢を盾で受け止めたり、ミラの後方に隠れながらどうにか直撃から逃げている一姫。しかし、このまま杏樹に狙われ続ければ、ミラが倒されて自分も離脱しかねない。
「このまま攻撃しないのであれば、離脱させちゃいます」
「誰が攻撃しないっていったんだわさ!」
 距離が空いているのを詰めるためにラビリンススパーを使って一気に駆け抜け、リーゼロッテへと突撃。しかし、それをサイドステップで躱されてしまう。ただ、回避されて全速力で走る程度の速度が出るのですぐに追いつくことができる。そして、シュートジャベリンを構えると一気に叩きこむ。
「流石にそうきますよね」
 直撃だけは避けたがダメージを受けることとなったリーゼロッテ。
「姉さん、インペリアルさんを!」
「大丈夫分かってるよ」
 すぐにリーゼロッテの回復をするアンジェラ。そして、ここで状況が変わり始める。
 涼姫のプリマベラ・ブリザが放たれるのと同時に再びS4Uの者たちは全速力で逃げ始めたのだ。それに対して多少の動揺はしたが、すぐにノンクレストの者たちも追いかけ始める。
「そんなすぐに追いつけないですよ」
 クラフターの涼姫は準備していたネヴァームーブを使って足止めを試みる。そして、それに合わせて冴も敵タンクへと向けて金属溶解液爆弾を投げて逃走。
「このまま行くとあのチーム危険だな」
 その様子を見ている生き残りの1人。クヨウこと九曜 すばるもまたこの時点での生き残りであった。
 ソロできていたというのはすばるのことで、彼もまた敵から逃げることを重きに置いていた。猫又の特性を生かした素早さや、別チームが仕掛けた罠などを使ってここまでやってきたということ。ソロという立場なので、人数で迫られたら勝てる可能性は限りなく少ないからだ。
 しかし、最後まで残ったという弊害もある。敵の残りが1人になっていたりするのであれば戦うことも考えたが――。
「やっぱりあの動きは誘導だったんだな」
 突然逃げ始めたS4Uは再び仕掛けてあった罠へとノンクレストを誘導して引っかけることに成功。そして、大きな被害を出しながらも数人生き残る形で倒すことに成功していた。
「1、2――アタッカーがいない編成だとしても俺じゃ勝てない、か」
 そう考えたすばるは降参を宣言。ここにCブロックの勝者はS4Uへと決まる。
 チームの中で唯一逃げることを選択したチームであったための勝利とも言えるだろう。皆が戦っている間でも逃げ続け、戦いも逃げながらの戦いをしていた。アタッカーがいない状況だが、タンクでの足止めや誘導。クラフターたちの罠などによってもたらされた勝利だった。
 
 
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