三千界のアバター

サルマティアグランプリ

リアクション公開中!

サルマティアグランプリ
リアクション
First Prev  12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22  Next Last

【毒霧の沼バトルロイヤル3】


 毒霧の沼のフィールドでは様々なチームが戦いを始めている。しかし、その中でもレプリカントのチームがいるという情報を聞きつけ、それを調査している者もいる。
 このブロックに存在しているか分からないレプリカントのチーム。それぞれのチームが注意を払っているが、それを見付けるのは簡単ではないだろう。
 そんな中でキャンバス・エアルの者たちが戦い始めた相手はシュガー☆スポットだった。
 相手のパーティーはヒーラーが多く、攻撃をしても回復をされるという超持久戦の戦い方をしてくる。こちらは早々に決着をつけたいところではあるが――。
「さぁ、おいで」
 相手の攻撃を受けながらポリアナードの騎士盾を構えながら相手に向けてクロネこと紫堂 音羽が受け流していく。攻撃を受け流すだけであればどうにかなるのだが、召喚した小さなねずみに攻撃を仕掛けてもらっているが、ダメージを与えた瞬間に回復を使われてしまい、大ダメージを与えることができない。
「みんなダメージは大丈夫?」
 もう1人のタンクであるシャルル・シャンブラがアイアンヴェールを使い守っている後方へとそう聞く。
 守りを固めつつ戦っているお陰か、それとも相手の力量がそうでもないのかこちら側にも大きな被害はない。ガードスタンスを持って的確に攻撃を受け続けているシャルルも、ヒーラーの皆のお陰で楽にその役割をこなせている。
「こういう相手は何だかんだでやりにくいね」
 リーダー兼タンクであるバルドこと水瀬 悠気が2人へとそう言う。
 攻めることができても回復をされ、攻撃をしなければ相手は大きなダメージを受けることなくヒーラーを基点として生き残るという作戦。悠気はタンクという一番前にいるポジションだからこそ、敵の状況を把握しながら動く必要がある。それは音羽もシャルルも同じ事で、敵の様子を窺いつつこちらもまた牽制を行ったりとダメージを与えてはいるが、やはり負けない戦い方というのはやっかいである。
「受けきれない攻撃じゃないっていうのがまたやっかいだよ」
 竜眼の宝盾と赤眼の魔盾を持っている悠気は、エスカッションなども使って守ることで大きなダメージを受けてはいない。しかし、少しづつでもこうして攻撃を受け続ければ積み重なっていくのは必然であり、上手く動いていかなくてはいけない。
「攻めるためにも使ったほうがいいのかな……」
 シャルルは持ってきているシュートジャベリンを使おうかと迷っている。
 まだ戦いは序盤であり、この先を考えれば残して置いた方が無難だろう。しかし、敵を一気に削らなくては倒せないことは彼も分かっているので迷ってしまう。
「槍や精霊で攻撃し続けても回復されるのであれば……アタッカーに任せた方がいいかもしれないね」
 後方にはいつでも攻撃が仕掛けられるようにとアタッカーのルラキことシオン・ファンタズマメル・アルバート、そしてフリッシュことフィン・フィリッシュが牽制をしながら様子を見ている。
「偵察の時からある程度は予想できていましたが、ここまでやっかいなんて……」
 フィンは戦いが始まったときに先行して偵察をして、今の相手であるシュガー☆スポットの面々を見付けていた。こうして戦っている間に力量はこちらのほうが上なのだということが分かったのだが、こうして回復を優先させて負けないように動いているところを見ると、簡単に勝てないということが分かる。
「一気にやるしかないかな?」
 シオンが2人へとそう言う。
「…………」
「そうですね……回復が追い付かない様にするのが良いかもしれません」
 シオンの言葉にメルは静かに頷き、フィンもまたそれに賛同する。このままタンクの後ろで牽制だけを行っていては埒があかない。
「よーし!」
 Espere etoileを持ったシオンはブラックマジシャンのジョブを生かして、タンクの隙間からゼアルを敵に向けて放っていく。そして、それに合わせて紅黒のカーマを持つ近接タイプのメルとヴライを持ったフィンがタンクの横から前に出て敵へと攻撃を仕掛けていく。
「そのままだったらやられちゃうよ!」
 前衛アタッカーに前を任せて、後方からゼアルを使って後方火力を展開していくシオン。ただ、敵は回避や防御に徹しているのか、攻撃の頻度は非常に少ない。
「…………!」
 紅黒のカーマにて敵を斬りつけることで、自身の体力へとしていくが減った分の体力を敵ヒーラーは回復させてしまう。上手くトリプルアサルトを使って連撃にてダメージを稼いでいくが、なかなか上手くいかない。
「はっ!」
 ヴライを鎖で固定せずにヌンチャクのように操りながら敵を攻撃していくフィン。メルと連携を行いつつ、1人ずつの撃破を狙っていくがやはり防御や回復に徹しているからか、倒すまでには至らなかった。
「ふむ……どうしたもんかのぉ」
 ヒーラーとして後衛にいるちきねこと千稲 志季が前衛の様子を見ながら呟く。
「上手くデバフが決まれば、と思うです~」
 同じくヒーラーのネル・アルベートは天使の歌声を使って相手に眠気を誘い、どうにか行動を鈍らせようとしているが、ヒーラーが多いからか状態異常に長い間することができない。
「……でも、こちらの回復も間に合ってますし……このまま作戦に乗るのも手かもです」
 リーラことシア・クロイツもネルと合わせて眠りの呪歌を使って状態異常を狙っていたのだが、この状況を考えながらそう答える。
 シアの言う通り人数はこちらの方が多い。相手は4人であり、こっちのほうが倍近い人数のパーティーだ。出し惜しみをしなければ一気に決着をつけることも可能だが、ここで全力を使ってしまうとこの先にある戦いが難しくなる。それを皆が理解してるからこそ、一気に叩くことができないのだ。
 アンプルヒールを使いシアはパーティーメンバーの回復と短時間の能力向上を図っているが、短時間の間に倒しきれない。回復に置いてはシアのアンプルヒールと、ネルと志季によるレンジヒールがあれば全然回復が間に合っている状態だ。しかし、少量のダメージで回復をしていては、こちらの魔力が消耗してしまうのでタイミングをしっかりと見きわめていかなくてはいけない。
「全力とはいかないけど、油断していたら逃げられるのがオチだね。ある程度の力を持って攻撃に移ろう」
 リーダーである悠気がパーティーの皆へとそう伝える。このままじりじりと負けないような戦いをされては、こちらの消耗も大きくなるだけという判断だ。倒せるだけの力を持って攻撃をした方が良い。
 悠気の言葉を合図にアタッカーの3人は自身の持つスキルの中で大ダメージを狙える攻撃を仕掛けていく。フィンはヴライでのトリプルアサルトを使って、敵のタンクを潰しにかかる。タンクを倒すことができれば、後はもろい可能性が高いヒーラーだけだ。そうなれば回復も追いつかなくなる可能性も大きくなり、敵を倒せるだろう。
 それに賛同するようにしてメルも剣を構えて攻撃を加えていく。彼女もまたトリプルアサルトで狙っていき、体力を一気に削ろうと試みる。それを敵タンクはしのいでいくが、後方からはシオンのゼアルが迫ってくる。
 レプリカントがいるという情報があるが、実際はどのチームがレプリカントかというのは分からない。その辺りは注意しており、フィンが偵察を行った際にそれらしきチームは見当たらず、たまたまこうしてシュガー☆スポットの面々を見付けることができたために、戦いが始まったと言える。
 悠気のエコーロケーションやフィンの偵察によってしっかりと警戒を行っているので、どこから敵が現れても良いように戦いを行っているキャンバス・エアル。
「リーラさん、もう1回いくです~」
「……分かったです」
 シアとネルの2人は再び敵に眠気を誘うようにして天使の歌声と眠りの呪歌を使って、デバフを狙っていく。アタッカーが先程よりも激しい攻撃をしているなかで眠気にて行動が鈍くすることができれば敵を崩すきっかけにもなる。
「その間はわらわが回復をするのじゃ。ただ、もう1度言っておくがレプリカントには気を付けるのじゃぞ」
「うん、大丈夫だよ!」
「しっかりと心得てるよ。警戒は怠らない」
 一番前にいるタンクからそう返事が聞こえてくる。
 実際に志季は戦闘前にレプリカントには気を付けるようにとパーティーメンバー全員に念を押している。そして、この戦いで忘れたりしないようにと志季は再びそう言ったのだ。
 激しい戦いの最中ではしっかりと思考できなくなる場面がある。そういったことから警戒が疎かになってしまう、ということも少なからず出てくる者もいるのだ。そういったことがないようにと注意を行う志季の言葉はキャンバス・エアルの者たちが油断しないようにするということができていた。
 そして眠りを誘うシアとネルのスキルだが、やはり相手のレメディを持って回復されてしまう。周囲にある毒霧もヒーラーが多いという有利な状況を使って、しっかりと対応しているようだ。
「……なかなか難しいです」
「ヒーラーが多い、というのは大変です~」
 敵にデバフを掛けるために続けてもいいのだが、ヒーラーとしての仕事も疎かにしてはならない。タンクの3人のダメージが蓄積されていき、それを志季が回復を行ってくれてはいるが、彼女だけに回復を任せてしまっては魔力が尽きるのも早くなってしまう。そうならないためにも、シアとネルも再び回復へと入る。
「ごめん、少し下がるよ」
 何かを思った悠気は1度後方へと下がる。この状況ならばタンクが2人いれば間に合うと考えたのもあるが、こうして戦っているうちに周囲が疎かになってはいけない。
 エコーロケーションを使って周囲を確認すると、自分たち以外にも近くに誰かがいるのではないかという反応がある。もちろん、この反応は周囲にあるワイヤーや遮蔽物の可能性もあるが、動いているようにも感じることから、他の参加者という可能性もあった。
 この状況で他のパーティーと当たるのは、シュガー☆スポットを倒すことにもつながる可能性もあるが、共闘ができなかった場合はそちらと戦う必要が出てくる。
 リーダーとしてどうするべきかを悠気は考える。
 アタッカーの攻撃を見ていると、このまま戦い続ければ押し切ることができるだろう。その後すぐに参加者かもしれない者たちと当たった場合はすぐさま戦いになるだろう。体勢を整えることができないまま戦うとなると非常に厳しい。もし、倒しきれないまま当たった場合は共闘することができればすぐに決着をつけることができる。しかし、こちらが消耗していることを知らせることとなり、どちらにしても戦いになるだろう。
 悠気は考えた結果をパーティーメンバーへと伝えることにする。
「誰かがこちらへ向かってきているかもしれない。一度引いて体勢を整えよう。倒しきれないのは残念だけど、この先を考えると流石にこのままってわけにはいかないからね」
 このように伝えると、前にいるタンクと後衛のヒーラーはそれに対して頷く。そして、アタッカーで前に出ていた3人はこちらへと戻り、そのままゆっくりとキャンバス・エアルとシュガー☆スポットの者たちは距離を空けていく結果となった。
 シュガー☆スポットを押しきれなかったキャンバス・エアルの面々ではあったが、レプリカントはシュガー☆スポットではなかったのだろうか。しかし、戦いの中で見付けるのではなく最初から調査を目的としているのであれば、怪しいと感じるチームを調べればいいだけだ。
 
 『穢れ散らす華』チームの中にいるユリこと西村 由梨とラピスティアこと西村 瑠莉がそれを探るために、少しだけ他の仲間たちと離れた場所にて怪しいチームを調べていた。
「シュガー☆スポット、ねぇ……」
「……名前がもう不吉です」
 そう、2人が調べているのはシュガー☆スポットチームの面々だ。
 シュガースポットというのはバナナが熟してくると出てくる斑点のことであり、それが熟していくにつれて広がっていく。最後にバナナは茶色や黒で覆われて腐ってしまうに至るというもの。
 チーム名の時点で危険だと感じた2人はシュガー☆スポットを警戒するに加えて、少しだけ距離を空けることで気付かれないように心掛けている。瑠莉に至っては隠れ身やストーキングを駆使して遮蔽物に体を隠しながら追いかけていく。
「見た限りではヒーラーが多いチームといったところでしょうか」
「確かにヒーラーが多ければ負けない戦いはできるかもしれないわね」
 ここまでの調査でシュガー☆スポットのチーム編成はヒーラーが多く、ダメージを受けたら回復をして勝てなくとも負けない戦い方をするのではないかという推測ができる。しかし、それがレプリカントに繋がるかと言われればまだ分からない。
 2人が見ていて分かったのはチーム編成と名前から来る怪しさのみとなっていた。ここからあのチームがレプリカントだという証拠を掴むためには1度戦ってみないことには始まらないだろう。
「これ以上見ていても分からないかもしれません」
「そうね――ん?」
 1度仲間の元へと戻ろうとした時だった。由梨がシュガー☆スポットへと近づいていくチームがいることに気付く。瑠莉が気配を消し、隠れ身を使っているからか向こうからこちらに気付く様子はない。
「このまま様子を見ますか?」
「様子は見たいところだけれど……」
 このままあのチームが戦ってくれれば、シュガー☆スポットの面々がレプリカントかどうか確かめることができるかもしれない。しかし、そうだった場合はレプリカント化させられてしまう人が出てしまう危険性もある。可能であれば今からシュガー☆スポットと戦おうとしているチームと合流して、レプリカントを殲滅してしまった方がいいだろう。
「1度戻りましょう。それでも間に合うはず」
「分かりました」
 由梨と瑠莉は1度仲間の元へと戻り始めて、ここまでの調査で得たことを共有するべく走り始める。
 そして、シュガー☆スポットとの戦いを始めようとしていたのは『空白の旅人』の者たちだった。
 空白の旅人の中でもレプリカントの調査やデータを欲しがっていたここではミッシングと名乗っている紅紫 司がシュガー☆スポットへと近づいたことがきっかけであった。
「感染者を出す前にレプリカントは潰す。だが悪い、見分ける術がない。だから検疫も兼ねてお前も潰す」
 目の前に現れる敵は全て倒していけばレプリカントへとたどり着くと考えている司。しかし、ただ手当たり次第に戦っても見付けることはできないので、ヒーラーが多く後々戦うのが大変だと思ったチームから倒そうと考えた。
「司さん――いえ、ミッシングさん、私はこのまま情報収集をしつつ支援します」
 普段はドクターエムと名乗っている司だが、ここではメモリアルマゼンタの仮面を被り身元が分からない様にミッシングを名乗っている。それを思い出したスミス・K・レートは言い直してそう伝える。
 それに対して司は頷くと、彼が迷彩へと塗装したアヴォイドダッチを操りながらスミスはこの辺りのマッピングを開始し始める。
 この辺りの地形を把握しておくことで、仲間たちの戦いも有利に運ぶことができるかもしれないというスミスの考えだ。もちろん、クラフターである彼はしっかりと味方達のサポートが出来るように金属溶解液爆弾やスモーグボンブを持ち合わせている。
「地形を把握できたら1度戻ります」
「分かった。それまでは俺らがなんとかしておく」
 すでにシュガー☆スポットの者たちもこちらと戦う意志を見せている。
「タンクやアタッカーよりもヒーラーが多いチームか」
 タンクであるザラーガことルドラ・ヴァリオスがデモンエスクードを構えて敵からの攻撃を防ぎつつそう呟く。
 ヒーラーが多いということは持久戦を考えて、敵を消耗させてくる作戦を取ってくることが考えられる。そうなる前にチームの火力を持って一気に倒していくのが確実だ。それに加えてレプリカントがいるという状況で油断していては、こちらがレプリカントにされてしまう可能性も出てくる。
「回復されるのは面倒だが、受けきれない攻撃ではないな!」
 敵のタンクとアタッカーの攻撃をエルテルンヴァッヘを使って防ぐと、双単戟を使って牽制していく。相手の力量は自身よりも下だと考えられるが、やはりヒーラーが多いというのはやっかいだ。ただ、こうして防ぐことができるのであれば一気に敵へと切り込んでいくこともできるだろう。
 ルドラは敵の攻撃を受けつつ、味方が後方のヒーラーたちを攻撃できるように立ち回る。こうすることで、敵の回復などの妨害できることに加えて撃破にも繋がっていく。
「先手必勝……。突っ込むよ!」
 マギアこと綾坂 春奈がノスフェリオンとマギドラヴァーの二刀を持って一気に切り込んでいく。そして、同じくリョウこと御伽 了も一緒にタンクが抑え込んでいる間に敵へと突撃。
 やはり春奈や了の力量と差があるシュガー☆スポットは、その火力にて徐々に回復が追い付かなくなってきている様子。それに加えて敵側のタンクもどうにか対応しているが、押され始めいつかこのパーティーは崩壊していくことが分かっている。
(このチームはレプリカントではない――)
 司は位置把握や戦況分析を味方へと伝えながらシュガー☆スポットがレプリカントではないという結論を出そうとした時だった。春奈が撃破したヒーラーの2人がゆっくりと立ち上がる。
「え、気絶させたら負けになるんじゃないの?」
 撃破した後に距離を空けた春奈が彼らをみてそう言う。そして、そこで起こったのはヒーラー2人がレプリカント化をして、先程まで味方だったものを攻撃するなど無差別に襲い始めたのだ。
「やっぱりレプリカントだったのね……。レプリカントを倒すまで共闘を願い出るわ!」
 そこへやってきたのは由梨や瑠莉がつれてきた穢れ散らす華の者たちだった。
「……分かった、レプリカントを倒すまでだ」
 司はこの戦況を判断しながら共闘したほうがいいだろうと判断。それも味方達は納得しレプリカント殲滅へと入る。
「周囲を確認しながら罠を仕掛けてきました。位置を教えますのでタンクの皆さんは可能であれば誘導してください」
 その時アヴォイドダッチに身を包むスミスが戻ってそう伝える。先程のシュガー☆スポットといった冒険者の姿をしていた時とは強さが違い、敵の皆がアタッカーの容貌を見せる。
「言っていた通りにこのブロックにレプリカントがいるなんてね……!」
 オブディシアこと漆 耀が敵へと紅黒のカーマを構えて攻撃を加える。タンクなどがいるわけではなく、皆がこちらへ襲い掛かってくるのでダメージを与えることは難しくないが、レプリカント化をしたことで強くなりこちらの対応も難しくなっていた。
 耀は黒曜の盾にて攻撃を受けつつ、タンクの後ろなどへと移動をしながらの立ち回りを続ける。こちらにある利点は皆がしっかりとした役割を持っていること。無差別に攻撃してくる相手であれば、抑えてもらっている内に攻撃をする隙も出てくるのだ。
「ここだ!」
 タンクの上をセレスティアの特性を生かして飛び越えると、レプリカントの背中へと斬りつけ体力を吸い取る。もちろん、ヒーラーの者からの回復よりも少ない量だが、守ってくれている人がいる状況では十分である。
「マギア、武器は大丈夫?」
 前衛にいるアタッカーの春奈へとチェーロこと篠宮 千咲が声を掛ける。
 クラフターである千咲はフォージを使ってアタッカーの皆の武器を見ていた。大きな効果が出るわけではないが、攻撃をし続けていれば塵も積もれば山となるの言葉のごとく使わない時とは差が出てくる。
「大丈夫だよ! 支援よろしく!」
「分かったわ!」
 春奈からそう返ってくると、千咲も自身の準備を始める。
 敵側の行動を阻害するようにしてネヴァームーブを準備。タンクへ攻撃しているレプリカントへと使うことで行動を鈍くさせて、アタッカーの攻撃出来る隙を増やしていく。
 彼女自身もレプラコーンという種族なので、腕力が高く直接攻撃も可能なので近付かれた場合は持っているスケイルナイフも備えている。
「今度はこれ!」
 籠手に仕込んである綾杉をレプリカントへと向けるとそれを発射させる。ダメージは大きくないが、牽制となることで味方の支援として有効だ。
 シュガー☆スポットの面々は全てレプリカントだったとはいっても、現在は皆がアタッカーとしてこちらへ襲い掛かってきている状態。空白の旅人や穢れ散らす華の者たちもそれぞれレプリカントを確実に減らしていく。
 そして、2つのチームはレプリカントだったシュガー☆スポットを撃退。ここにシュガー☆スポットの負けが決定する。
 しかし、まだこの場所の戦いは終わってはいない。2つのチームがこうしているということは、空白の旅人と穢れ散らす華の戦いが始まるということ。レプリカントを撃破するまでの共闘だということも皆は忘れていなかった。
 すでにレプリカントとの戦いで消耗をしている2チームであるが、まだ戦う余力は残している。沈黙の後に戦いは開始された。
「セラは私が守るよ」
 突然セラ・ルシェことラシェル・ロニセラにナイフが投げつけられ、それを防ぎながらラシィことシーラ・ライトノーツが投げてきた相手へとそう言う。
「そんな簡単にはいかないわよね」
 先程のナイフを投擲したのはレイラ・レベンクロン。エイムスナイプを用いて攻撃をしたが、ヒーラーを狙うというところは予想されていたのか簡単に防がれてしまう。
 そうなれば一気に攻め込むのみと、インセクトキラーを構えたレイラはソードマスターの特性を生かし、その強力な一撃をシーラの竜眼の宝盾へとぶつけた。
「っ……。でも、まだ」
 レイラの攻撃は上手くシーラへと受け止められてしまう。ソードマスターは一撃は重く威力があるのだが、デメリットとして次の攻撃までの時間が通常よりもかかってしまう。
 それを狙ってシーラは守護の錫杖を使って攻撃し、そのままレイラを抑え込むようにして盾を押し付けた。それによってレイラはバランスを崩してしまうが、そこに割って入る穢れ散らす華のタンク津久見 弥恵
「月の舞姫、華拍子、天爛乙女の参上です♪」
 ダンシングベールを着てサキュバスの弥恵はきわどい服装となっているが、エスカッションで盾を形成させて攻撃を防ぐ。このまま弥恵が割り込まなければレイラが攻撃された場合に大ダメージを負わされていただろう。
「ありがとう、助かったわ」
「これがタンクの仕事ですから。それに――」
 シュートジャベリンを構えた弥恵はシーラへ向けて牽制攻撃。1度距離を空ける彼女へ向けてもう1度槍での攻撃を加える。
「タンクを崩すことができればこちらにも勝機はあるかもしれません」
「それならやられないようにラシィを守るだけです」
 遮蔽物からラシェルがシーラの回復を行って、ここまで防いできたことで受けたダメージを回復させていく。ヒーラーでありながら、ラージシールドを持って自身の防御力を高めている。それに加えて遮蔽物を使うことで、タンクから守られることも加えて、自身を攻撃しにくくさせている。
 司は現状の状況を皆へと伝えながら、スミスへと伝えてサポートに回ってもらう。すでにレプリカントとの戦いで罠もなくなっており、この状況で更に作ることは難しい。ならばと、金属溶解液爆弾を用いて弥恵のエスカッションの破壊を試みたりなどタンクとしての仕事を崩そうと試みていた。こうすることでラシェルの回復する時間を作ることができる。
 状況を伝えている司はラシェルのほうを見ると、シーラのダメージもそれほど大きくない様子。ラシェルがしっかりと体力を見ていてくれていることが分かると別方向へと戦況を報告する。
「ラシィ、体力は大丈夫ですか?」
「セラのお陰で大丈夫だよ。他の人も見てあげて」
 上手く回復することができたお陰でシーラは持ち直し、再びレイラの攻撃を受けつつも彼女を守り続ける。
 ラシェルは周囲を確認。別方向でタンクをしているルドラのダメージや、春奈などのアタッカーのダメージも気を付ける。チームの皆が大きく消耗するのであればグレーターヒールを使うこともいとわないが、穢れ散らす華の者たちに勝つことができたとしても、その先で戦いが必ずある。ここを勝ち上がるまでは誰かが立っていないといけないので、多用することはできない。
「大丈夫です、皆さん頑張りましょう」
 タンクである弥恵だが、ダンサーとしての職を持っている。そのダンスで味方を鼓舞することも可能で、レイラが上手く戦えているときは魅惑の踊りで味方の鼓舞も上手くやっていく。
 穢れ散らす華は瑠莉や由梨のサポートする職業もいるので、すぐに決着をつけることは難しい。ただ、空白の旅人の方が人数がいるためか、徐々に押し始めていく。
「毒に掛かった方はこちらへ」
 ヒスイこと翡翠・フェアリーテイルが毒にかかった者たちをレメディにて回復させていく。前線にいって戦っている者たちはヒーラーがいる後衛からは回復が届かない位置にいる者もいる。その場合は味方と入れ替わってもらい、こうして回復する必要がある。
「ありがとう」
 短くお礼を言ったラズことラピス・ラズワイドの治療が終わる。
「一応これにも触っておいてね。また前線に出るのだし、回復は大切よ」
 アンプルヒールを使用して、毒以外にもラピスの体力の回復を行う。それに加えてアンプルヒールの効果で短い時間ではあるが、能力が上がることで受けるダメージも軽減させることができるだろう。
「もし、他にも毒にかかった人がいたり、体力が危険な人がいたら声をかけるようにお願いね。私やセラさんじゃ補えない部分があるから」
「分かった」
 そう了承したラピスは再び前線でタンクとして動くためにラージシールドを構えて走っていく。
「回復が必要だったら後ろへ」
「まだ行ける。大丈夫だぜ」
 アタッカーとして穢れ散らす華のヒーラーである由梨を倒すために動き回っている了へとそう伝えるラピス。だが、こちらが押し始めているのと、ヒーラーの2人が上手く回復をしてくれているので了自身のダメージは大きくなかった。
 ただ、穢れ散らす華だけではなく空白の旅人もレプリカントとの戦いで消耗している部分はある。了は大丈夫であったも、他のアタッカーやタンクの体力が少なくなれば皆を回復できるグレーターヒールを使う必要も出てくるだろう。
「それなら、回復に行かせてやろう」
 そこへ大太刀を振りかぶった高天原 壱与が了へと一撃を食らわせる。アサシンの了は先程まで遮蔽物などを使って攻撃を仕掛けていたが、流石に敵にも居場所が分かるようになり猫又の素早さなども生かして戦っていた。それに加えてタンクの弥恵を相手にしていた了は、その後ろから出てきた壱与の攻撃を受けてしまったのだ。
「これで――」
「させない」
 身を翻してもう1撃といきたいところだったが、そこへラピスが入り込んで攻撃を受け止める。そして、その受け止めた隙をついて了が双剣士として紅黒のカーマと冒険者の剣を持って壱与へと攻撃をする。
「大技の後の隙は危険だぜ?」
 2つの剣を振りかぶっての攻撃から素早いファストアタックを仕掛ける了。壱与はそれを受けてしまうが、まだ気絶させられるようなダメージではなく、回復もあったからか未だに立っている。
 そこへアルトことトリア・ローレルが紅黒のカーマと神度剣を用いて追撃。このまま穢れ散らす華のアタッカーを1人倒してしまおうと考えていたようだ。
「直撃とはいかなかったか」
 アサシンの素早さやセレスティアの短時間飛行で壱与へと攻撃を仕掛けたが、直撃はせずに回避をされてしまう。しかし、多少であってもダメージを与えることには成功。これでまた敵を消耗させることができたと言える。
「アタッカーを削れば敵の火力を削ぐことにもつながる。まずはお前を倒させてもらう」
 トリアも参戦して了とのアタッカーが2人に対して、向こうは壱与のみが相手に出来る状態。穢れ散らす華のタンクである弥恵は人数の多い敵からの攻撃を全て防ぐことはできていない。
 このまま一気に撃破をしてしまおうとトリアは二刀を構えると一気に駆けだして壱与へと近づく。それに合わせて了も追従していくと、トリアの高速連続斬りに合わせるようにして、逆側の攻撃を仕掛けていく。
「向こうは――」
 了やトリアは倒れた壱与から仲間たちの様子を確認する。流石に危険だと感じたのかラシェルはグレーターヒールを使っての回復を行っているようだ。
「わたしは向こうへ行く。そっちは頼んだ」
「分かったぜ。任せな」
 了へはラピスのほうへと言ってもらい、トリアはルドラやシーラの方へと向かうことにする。壱与を撃破することに成功したとはいっても、まだ穢れ散らす華の面々は残っている。
「壱与が……。でも、守り切ってみせます」
 犬狼の能力を生かしながら味方を守っている弥恵も限界が近い。由梨や瑠莉がサポートとして動いてはくれているが、このままでは負けることが分かっている。それでも、諦めたくはないという気持ちが強かった。
 レプリカントとの戦いは人数の少ない穢れ散らす華も消耗が大きい。人数が多い空白の旅人はタンクが3人いることでそれぞれダメージを分散させることができるが、こちら側は弥恵のみタンクとして存在している。その影響がここに出てきているのだ。
 しかし、レプリカントがどのチームかを調査し、レプリカントから皆の危険を防ぐ目的は達成されている。しかし、ここまで戦ったのであれば諦めず勝ちに行きたいと誰でも思うこと。
 相手はグレーターヒールを使うことでヒーラーの消耗が大きいはずだ。アタッカーが1人いなくなったとはいっても、こちらにはまだレイラというアタッカーやサポートしている2人が残っている。
 どこまでやれるのか。上手く立ち回ることができるのであれば勝てるかもしれないと穢れ散らす華の者たちは考えているが、流石にこれ以上は無意味だろうという判断を由梨と弥恵が下すことになる。
「降参するわ」
「これ以上の戦いは無意味ですからね……」
 悔しそうな表情をしながら言う2人。
 穢れ散らす華を負けへ追い込むことに成功した空白の旅人。しかし、共闘したとはいえレプリカントとの戦いもこなしていたので、魔力の減りや味方たちの消耗も少なくはない。
 まだこのバトルロイヤルは終わりではなく、まだ戦う必要のある敵は存在する。ここまで消耗している状態でどこまで戦うことができるだろうか。
 
 
First Prev  12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22  Next Last