三千界のアバター

≪GOE≫烈火の戦士と聖華の騎士・後編

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第一章―赤熱の猛虎・対アンドレア・2―

 大和がアンドレアと交戦を始めたばかりまで、時は遡る。
 彼のパートナーである草薙 コロナは、激闘を隠れ蓑に好機を窺っていた。
 その隣では同じく雪神 白羽もまた、潜みながらもコロナのギアへ『ギア・リチャージ』を行っていた。
 全てはこの先仲間達が見出すであろう、一筋の突破口を大きくこじ開けるため。

「……どこの世界にも、この手の非道な輩はいるものだな」

 手元のギアから意識を離さず、白羽は苦々しくも言葉を吐いた。
 同じく、コロナもまた眉間を寄せた。

「何としてもわたしたちの手で、あの人たちを止めるですよ!」
「ああ。罪無き者を徒に脅かすその所業、決して見過ごすわけにはいかぬ」

 想いは強く、されど自身らを勘付かれぬよう慎重に。
 白羽は『ギア用ドライバー一式』の工具を手に、作業を進め続けた。
 その後も――勝負は苛烈さを増していくばかりだ。
 しかしまだ、好機は訪れない。
 それでも白羽の『インクリーズ:1st』によって高められる自身のギアが、運命を分かつ事を自負しコロナは静かに戦いを見守り続けた。
 大和、一姫、ローゼ、ラヴィ、餡子、そして銭子。
 数々の仲間達がアンドレアと対峙し、仕掛けていく中。
 遂に“時”は訪れることとなる。
 大和がアンドレア目がけ駆け、大振りな一撃を放つ瞬間が。
 アンドレアの視野が狭くなっていることは、火を見るよりも明らかだった。
 白羽が緊張漂う面持ちで小さく頷き、コロナの『機刀漆式「瞬刃・鷹風」』を手渡す。
 力強くそれを受け取ったコロナは、自身の全てを賭しアンドレアへ疾走するのだった。

 ――――「おおおおおおーーーーッッ!!」

 アンドレアの攻撃が、今にも大和を喰らおうとしている。
 その背後に、コロナは迫った。
 『アクセル:3rd』。自身が持ち得る最高速度でアンドレアへ詰め寄ったコロナは、『ブーストチャージ』にてギアの力を最大まで引き出す。
 まさに目にも留まらぬ早業だった。
 振り上げたコロナの刃は、視認することも困難な速度でアンドレアへ迸る。
 既に攻撃の動作を中断させることはできないながら、アンドレアはコロナの存在、そして加速する刃に気づく。
 一瞬、躊躇が生じた。
 攻撃は止められない。しかしながら、大和だけを葬る選択をすれば無事では済まない。
 振り抜いたはずの煮える拳は、数コンマ遅延した。
 その隙に、大和は上体を捻る。
 次の瞬間には大和の身体は業火が襲い、刀身はマグマに飲まれ後方へ吹き飛んだ。――しかしながら、一瞬の躊躇を掻い潜り致命傷には至らない。
 そしてアンドレアは既に振り抜こうとしているコロナの一刀へ応じるべく、振り下ろした拳から全身を捻って迎撃する。
 下段からの振り抜き。アンドレアの最も得意とする型。
 乱気流を纏うようなコロナの刃が、アンドレアの拳と衝突した。
 ほとんどコロナは振り抜く直前まで体勢を整えている。明らかな優勢を取った。
 熱波が、周囲へ数度も輪を描く。
 振り下ろすコロナ。そして突き上げるアンドレア。それでも鍔迫り合いの形で拮抗する。

「わたしの全てを凝縮したこの一撃で……アンドレアさん……あなたを倒すです!!」
「そう言われて……何人もこの拳で葬ってきた……ッッ!!」

 アンドレアの腕に更なる熱が宿った。
 そしてコロナの刃を強制的に叩き上げ、その身体ごと吹き飛ばしたのだった。
 これでも届かないか――大和とコロナ、そして白羽が胸中を締め付けられる思いを浮かべた。
 その途端、あまりにも唐突に。
 勝利者の如く掲げたアンドレアの腕から、大量のマグマが溢れ出す。彼女の腕を滴り落ちる熱の流体は、まるで戦意を喪失した老兵のようであった。
 猛々しく溢れたのではない。壊れたのだ。

「……最高だ」

 アンドレアはいつか汽化した自身の腕を眺め、ぽつりと呟いた。
 そしてもう一方の腕より、灼熱の流体が凄まじい熱気を帯びて蜷局を巻く。

「おらおらーー!! トドメ、さしてやるぜーーーー!!」

 アンドレアは吼える。
 その視線の先には、いつしか彼女の宿敵となった一姫の姿があった。
 一姫は躊躇なくアンドレアへと迫り、二つのギアを『ブーストチャージ』する。

「換装」

 そして砲閃華が銃型へと姿を変える。
 応じてアンドレアは、迷わず生きている拳を地へ這わすように構えた。
 最も得意とする型。
 故にそれは一姫への挑戦状でもあった。
 煮える拳は地面にマグマの筋を残し、大きく飛翔する。
 同じくして一姫は、風華の身軽さと『ハイウィンド』を追い風に全力疾走。――吶喊する。
 激突の瞬間、アンドレアの拳が一際爆ぜた。
 圧倒的なほどに彼女の射程範囲。
 しかしながら一姫は一人ではなかった。
 側方より突如として一撃、熱を帯びるローゼの流体がうねり迫る。

「一瞬でも、動きを止められれば――勝機はある筈です!」

 傷つくローゼが解き放つかのように言った言葉、その文字通り一撃を受けたアンドレアの身体は一瞬動きを止めた。
 たった一瞬。されど――
 一姫はアンドレアの拳が点を目指すより前に、砲閃華の銃口をぴたりと着ける。まるで刺突のように打ち込んだその先から、『ギアストーン:プラズマ』による光熱が燻っていた。

「ぶっとべ」

 そして、炸裂。
 零距離から放った一姫の一撃は、周囲を熱と光で染め上げる。
 しかし直後、アンドレアもまた、その腕を全力で振り上げたのだった。
 激突は数十秒にも渡った。
 互いに一歩も引かぬ押し合いは、離れた家屋へプラズマそしてマグマを迸らせるほどに広がっていく。
 それはまるで二人が激突してきた因縁を、一気に解き放つかのようだった。
 炎と光が終息してもなお、二人の体勢は変わらなかった。
 ――しかしながら突如として金属音を奏で、遥か後方へ一姫のギアが転がった。
 完璧なまでに調整されたそのギアは、次々と各接合部から熱の流体を噴き機能不全に陥る。

「…………なるほど、これが――――――か」

 ゆっくりと膝を折る一姫の姿に、拳を振り上げた姿勢のまま動かないアンドレアが何かぽつりと零した。
 ――“敗者の気分”。
 それが聞こえたのは、目の前にいる一姫のみだ。
 荒々しく、彼女らしく。アンドレアのギアは――その腕ごと瓦解する。
 それはアンドレアを相手取った全ての特異者へ、勝利を告げる光景だった。
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