三千界のアバター

≪GOE≫烈火の戦士と聖華の騎士・後編

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第一章―赤熱の猛虎・対アンドレア―

 度々爆音と熱の余波を感じながら、白銀 銭子は『ギア用ドライバー一式』を黙々と動かし続けていた。
 戦闘は苛烈さを増していくばかりなのは、その目で捉えずとも十二分に理解できる。
 それでも焦燥に身を委ねるわけにはいかなかった。
 銭子が行うのはギア調整。
 それも仲間の分――その数、計六つだ。
 『プレシジョンワーク』を会得していなければ、到底やっつけ仕事と化してしまっていただろう。

(……間に合ってくれよ……!)

 銭子は手元に狂いなく、『ギア・チューニング』を用いた調整と、『インクリーズ:3rd』を用いたエネルギー効率を上昇を行う。
 死闘は必須。
 ならば明暗を分けるの要素の一つとして、ギアの調子も当然大きな比重を占める。
 銭子もアンドレアの戦いを見るのは、これが初めてではない。故に手元のギアに手を抜くことなど、到底できはしなかった。
 しかしながら幸い、先陣を切る者達がいた。
 だからこそ、銭子の目の前には十全な状態を整える六つのギアが並んだのだ。
 
「できたぞ……!」

 彼女はまるで雄叫びをあげるかのように、仲間達へと言い放った。
 勝負の舞台は整った。
 
「――全力で仕掛ける」

 仲間達がそれぞれギアを手に取る中、短く言葉が告げられた。
 細かく装飾された言葉ではない、それでもなお千桜 一姫の放った意志は、銭子を含む仲間達へ伝播する。
 ギアを手に一同は踵を返した。
 それぞれの持ち場へ。――アンドレアへ、決着をつけるために。


■□■□■

 
 既に前線では、ぶつかり合う斬撃と炎が、互いの肉体へ迫らんとしていた。
 一方はアンドレアの灼熱。そしてもう一方は『機刀陸式「空刃・隼風』の切っ先だ。
 刃を振るうは一姫達が動き出すより半歩早く、アンドレアへ先陣を駆った草薙 大和だった。

「……どこまでロンバルティアの人々を脅かせば気が済むんだ……!」
「さーな。――狂人にしか分からねえってことよーー!!」

 『ギアストーン:ガスト』にて突風纏う斬撃を浴びせる大和へ、アンドレアは一歩彼の懐へ踏み込み、刃ごと拳で薙ぎ払う。
 大和が発する言葉に怒りの熱は込められてはいるが、彼自身はそれに支配されていなかった。
 強烈な負荷と熱を刀から感じるや、『アクセル:2nd』を加速。吹き飛ぶ方向に身を委ねつつ、綺麗に受け身を取ってアンドレアへ距離を取る。
 そして大きく、そして綺麗に。
 真一文字に刀身を振るうと、その切っ先より躍る『エアーエッジ』をアンドレアへ迸らせる。
 応じて彼女は僅か姿勢を低くし、大きく跳躍。
 不可視の刃をマグマ纏うその脚で文字通り叩き潰した。
 その表情は禍々しく、まるで暴力の権化だ。
 アンドレアはその手から無数に煮えるマグマの弾丸を、容赦なく大和へ向け放出する。まるで横殴りの嵐の如く、大和を飲み込む衝撃と熱。
 しかしながら彼は『方向転換』を駆使した素早い刀身の切り返しで応じた。
 普通に刃を振るい、そして返していたのでは到底間に合わない。しかし現状彼は圧され、負傷を重ねていることには変わらないが、膝を着くに至らなかった。

「師匠、援護する」
「――――来やがったか」

 大和の危機。
 それを打開する声が、彼の耳に届く。
 短く、されど存在を誇示するように明確に、アンドレアの後方へ迫る一姫が声をとばしたのだ。
 師匠――即ち大和は、意識が傾いた緩んだ散弾の嵐から、横っ飛びする形で脱する。
 アンドレアは一切の迷いなく、一姫へ切り返した。
 踏み込む彼女の足元から、煮える流体が弾ける。それと同時に、熱波纏う拳が一姫の眼前に迫った。
 しかし一姫もまた、『熱光式銃砲剣『砲閃華』』より高まる瞬発力が、アンドレアの攻撃に反応することを可能にさせた。
 刀身よりプラズマを迸らせ、身体を捻る一姫はアンドレアの拳へ走らせる。
 拳そのものは、一姫を通り越した。
 真正面から激突しても勝ち目はない。
 故に一姫は拳の軌道を変えて回避を選択。
 そして煮える流体が自身を焼く前に、『疾風式星導器『風華・疾風改』』より『ハイウィンド』による風を放った。
 まるで潜り抜けるように、小柄な一姫の体躯はアンドレアの脇を通り抜け距離を取る。

(――熱い)

 しかしながら、攻撃を逸らしただけで一姫の腕は、焼けるような感覚を覚えていた。
 以前より遥かに、アンドレアは強化されている。
 まるでマグマそのものを相手にしているかのように。

「逃すかこらぁぁーーーー!!」

 追撃。
 アンドレアの両腕から、無数の銃撃が一姫を追従した。
 しかし、力強い熱を帯びる炎の流体が、それを防ぐ。

「私がお相手しましょう」

 その正体は、『フルイドリム』による盾を展開したローゼ・シャルフシュッツェだ。
 アンドレアは見知ったその顔に、僅か好戦的な笑みを向ける。
 しかしながら、それに反してローゼの流体を突き破れなかった。
 凄まじい威力に変わりはないが、先の交戦が彼女の散弾の威力に陰りを見せていることは明白だった。
 その身を以って感じ得たローゼは、真っ赤に彩られた『溶解式星導器『炎華改・熱波』』を翻し、続けて一歩踏み込む。
 直後、『マルチコネクト』によって起動する『地裂式星導器【土竜改】』が、アンドレアへ牙を剥いた。ローゼの軸足を中心に土砂纏う流体が、彼女目掛け波打ったのだ。
 土砂を目晦ましにされても厄介。
 アンドレアは一つ舌打ちをすると、それが視界を覆うより早く、半ば強引に両腕より火炎を噴出させ跳びかかった。
 纏わりつくような砂の流体を殴り落とし、猛獣の如くローゼへ迫る。

(さて……、多少相手の手の内が分かっているとはいえ……、いつも以上に覚悟を決めませんと、ね)

 しかしながら攻撃の軌道はあくまで単調、威力も十分に減衰されていた。故にローゼは引くことなく炎華より赤き流体を踊らせ、まるで鞭のようにアンドレアを押し返す。

「相変わらず、やるじゃねーの!!」

 それでもアンドレアは食い下がらない。
 そこかしこから鮮血とオイルを撒き散らしながら、下段から突き上げる拳をローゼへ放つ。
 応じて赤き流体を盾のようにし、受け止めるローゼ。――が、その表情は僅か歪む。
 その威力たるや、負傷しているとは思えないほどだった。
 受け止めたのも束の間、まるで二段式の射出機の如くアンドレアの拳は天を穿つ。
 巻き込まれる形で、ローゼの身体が後方へ跳んだ。
 『エンハンス:レッド』による強化がなければ、恐らく地面に脚を着けることは困難だったであろう。
 よろめくローゼへ、再び跳びかかるアンドレア。
 しかしその刹那、アンドレアの脳裏に不気味な何かが過った。
 それは“勘”などという、不確かなものではない。
 経験則。
 ――――来る。
 アンドレアの瞳が、上へ向いた。
 刹那。叩きつけるような銃撃が、彼女が視線を向けた先より迸る。ローゼへ向けていた拳を反転、横殴りに振るい銃撃を叩き落す。

「……ヴェノムをそっちに回したか。ははーー!! 対策済みだーー!!」

 アンドレアは黒きマナの残痕を払い、迷わず周囲にそびえる建物の上部へ銃撃を迸らせる。
 おおよそ半円にも満たない範囲であろうか。廃屋となり脆くなっていた建物は、次々とマグマに飲まれ黒煙を噴いた。
 
「相変わらず、やばいウサ!!」

 しかしながら狙撃手――ラヴィ・パンキッシュは、既にその範囲攻撃から逃れていた。
 幾度となく戦った経験から、必ず狙われるであろう自負があった。だからこそラヴィは『ホライゾンホバーボード』を用い、普段以上に離れた建物の屋上へ退避を成功させたのだった。
 アンドレアが天高く上がる煙に口角を上げ、ローゼ達へと向き直った瞬間。ラヴィは自身の握る『ラヴィ・リニアバリスタSD/V』を再びアンドレアへ向ける。
 そして一発。
 『方向転換』を駆使して叩き付けるような狙撃が、再びアンドレアを襲った。

「……まだ生きてやがったか!!」

 苦々しく言葉を吐き、アンドレアは『デトネーション』によって襲い来る衝撃を耐え凌ぐ。
 ――それを見届けるより早く、ラヴィは躊躇なくホバーボードを駆った。
 程なくして、ラヴィが数秒前まで立っていた場所が、一面マグマの床と化す。

「……危うく焼け兎ウサね」

 背筋に寒いものを感じながら、ラヴィは爆風を追い風に次の狙撃ポイントへ着地する。
 しかしながら、ラヴィが武器を構えようとした途端、到底信じがたい光景が瞳へ飛び込んだ。

「…………うそだと言ってウサ」

 アンドレアが一時前線を放棄し、ラヴィの潜む建物に跳びついていたのだ。
 灼熱の拳を壁に沈ませ、常軌を逸した方法で差し迫る。
 そして片手を掲げ、捕捉したラヴィへ今にも散弾を放とうとしていた。

「お前だけは、始末しとかないとなーーーー!!」

 アンドレアが高らかに叫ぶ。
 真っ赤な炎がラヴィへ向かう――が、その軌道は大きく逸れた。
 何者かの重力を纏う『ディフュージョン』による拡散銃撃が、アンドレアの身体を壁から突き放し地へと誘ったのだ。
 間一髪、危機を脱すラヴィ。
 アンドレアの怒気に燃える瞳は、銃撃の術者へ向かう。

「おー。やっぱりお前か」
「今回も支援だけれど、少し品は変えたわよ?」

 瞳の先――そこには『Gスタン・ショットガンCS』を構える緋緋色金 餡子の姿があった。
 ラヴィが後衛ならば、餡子は中衛といったところか。
 故に絶好の位置を取っていた。彼女は再び構える銃口を跳ねさせる。
 拡散する弾丸は、まるで横殴りの雨が如くアンドレアを襲う。以前対峙した時と大きな変化はない攻撃ではあったものの、面のように襲い掛かるこれを躱し切るのは困難だった。
 アンドレアは短く息を吐き、拳を地面へ叩き付ける。
 衝突を起点に、細かい熱の塊が次々と、餡子の放つ攻撃を弾き飛ばしていく。
 回避が無理なら当たらなければいい。
 実に原始的ながら、効果的な防御手段だった。
 『コンフューズ』によるショックを受けている場合ではない。それを予想したアンドレアに餡子の攻撃は届かなかった。
 あくまで――“餡子の”攻撃は。
 次の瞬間、威力と範囲こそ及ばないものの、同様の攻撃がアンドレアの側方から差し迫る。
 
「……ああそうか。忘れてた」

 アンドレアがぽつりと漏らした後、彼女の身体へ散弾が殺到した。
 一瞬軸足は揺らぎ、それでもなお猛獣のような瞳が爛々と向く。
 ――――餡子のギアを投影させ、一撃を沈めた銭子へと。

「今回で何とかなりゃ良いんだが!」
「相手の動きが少しでも留められれば――ね?」

 餡子と銭子。アンドレアの足止めを成功させた二人の視線が向かう先。
 そこには腰だめに刃を据える大和が走り込んでいた。
 その姿にアンドレアは、鈍る下肢で力の限り踏み込んだ。
 
「おおおおおおーーーーッッ!!」

 周囲の魔物達も竦むような、凄まじい怒号が響く。
 それと同時に近づくことさえ憚られる、灼熱のマグマが幾筋も周囲より噴き上がった。
 それでも、大和は足を止めない。あえて、距離を詰めた。
 敵に余裕がないことは、明白だからこそ。
 大和へ狙いを定め、アンドレアは一歩踏み込む。それが近づいただけで、大和の表皮は焼けるような感覚を覚えていた。
 アンドレアが固めた拳からは、太陽と見紛うような熱が迸っている。それは輪のように広がりながら、喰らいつき爆ぜる先を求めて。
 ただ、向かい来る大和だけを狙って。
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