三千界のアバター

≪GOE≫烈火の戦士と聖華の騎士・後編

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第二章―ロンバルディア旧市街区防衛戦線・1―

 ――「おサルさんの相手はあたし達が引き受けるわ。皆はあの魔物をお願い!」

 多くの特異者達が巨獣ギーヴルを相手取る中で、旧街区を蹂躙する魔物達へ対処に動く者達の姿も多くあった。
 その中の一人である八上 ひかりは、ギーヴルを相手取る騎士達へ言葉を残し、旧街区を疾走していたのだった。
 ひかり達の耳に周囲で交戦する、苛烈な音が重なり響く。
 既に《教会》騎士団は各々、旧街区の被害を最小限に抑えるべく、猿型の魔物討伐を行っているようだ。
 しばし旧街区を駆ると、突如として先頭を走る川原 亜衣の足が止まった。
 『戦場の匂い』を体得する亜衣は、すぐ先の未来に来たるであろう戦の予感を察したのだ。
 
「……来るわよ」

 短く、亜衣が言葉を紡いだ矢先のことだった。――正面、二時の方向に建つ家屋の戸が、凄まじい音と共に叩き破られる。
 そしてその先には、猿のような体躯の魔物が姿を現していた。
 獰猛な雄叫びを轟かせる敵は、一気に踏み込むと、丸太のように屈強な腕を亜衣目掛けて振りかぶる。
 しかしながら、奇襲対策は万全。動揺することなく敵の襲撃を受け止める亜衣は、応じて『汽籠手【月輪】』より『ギアシールド』を展開。
 拳がシールドを突き破らんと衝突している隙に、亜衣は周囲へ冷気を吐き出す。
 そしてそれは瞬間的そして局所的に凍てつく息吹――『アブソリュート・ゼロ』となり魔物の身体を凍らせた。

「鳩尾ですわ!」

 動きが止まった瞬間、中衛を担う海原 香より声がとぶ。
 そして直後、香の握る『此世為銃』が跳ねた。
 放たれた銃撃が進む先は、『弱点察知』を駆使した彼女の言葉通り敵の鳩尾だ。
 堅牢な装甲の如き敵の皮膚。
 その中で唯一脆い部分、それを見出した香の攻撃は敵へ深く沈み込む。
 凍結状態の中で、それを叩き割るかのような、獣の苦痛を帯びた叫びが轟いた。直後合わせて亜衣が踏み込み、上段より真一文字に斬撃を刻むのだった。
 魔物はよろめき、片膝を着く。
 しかしながら拳を握りしめると、上体を大きく捻り渾身の膂力で亜衣へ襲い掛かった。
 弧を描く拳は、亜衣へと直撃。
 鈍器で殴られるような衝撃に、亜衣はシールドで防御しつつも堪らず一歩引く。
 更に交戦を嗅ぎ付けてか、周囲の家屋より魔物が二体、猿の如き顔を覗かせていた。
 しかしひかり達は、焦燥などに飲まれない。
 負傷した亜衣は一時的に後方へ跳び、代わってひかりが前へ躍る。

「亜衣、香、おサルさん達が近づく前に、一旦立て直すよ!」

 そして振り上げる『アメノハバキリ』を豪快に振り抜いた。
 一閃、水平に描かれる斬撃の筋は、追撃の姿勢を整えていた魔物の体勢を崩した。
 硬い。
 まるで鋼の装甲を纏うかのような腕。痺れるような手ごたえを感じながらも、ひかりは果敢に返す刃を魔物へと振り下ろす。
 鈍い音が響き、傾く魔物の身体は一歩後退した。
 先の二人による攻撃にて負傷していた魔物は、ひかりが放つ追撃に耐え切れず、再び大きく膝を着いた。
 そしてほどなくして、周囲より睨みをきかせていた魔物達が、拳を固めひかりを襲った。
 金属同士がぶつかり合うような、鈍い音が周囲へ響く。
 ひかりの刀身と魔物の拳は、拮抗していた。
 しかし敵の拳は二つ。徐々にひかりの身体は後方へ傾く。
 互いに一歩も押し寄せぬ中――再び先と同じ香の銃撃が魔物を撃った。
 堅牢な皮膚を有する魔物とは言え、拮抗状態で銃撃を受ければ怯まずにいられない。

「もう大丈夫よ、わたしが代わるわ!」

 直後、香の『ヒーリングケア』にて復帰した亜衣による斬撃が迸り、ひかりと魔物の距離を開ける。
 そして再び前線を亜衣と香へ預け、ひかりは踵を返した。
 数的不利な状況下の中、前線の二人は魔物達を引き付け戦う。
 しばし刃と銃撃、そして拳による殴り合いのような状態が続いた。
 その間ひかりは後方にて詠唱を始め、『ブラックブック』そして『ホライゾンガントレット』によって高められた魔力を膨らませていく。
 地、水、火、風――四つのマナに呼びかけるひかり。
 それは一つの術となり、彼女から解き放たれようとしていた。

「いくよ、二人とも!」

 ひかりの声に応じ、前線を駆っていた亜衣は浴びせた斬撃をバネ代わりに、大きく後方へ退く。
 そしてそのまま踵を返すと、一気にひた走る。
 同じく香もまた、亜衣へと追従する魔物の足元へ銃撃を迸らせ、動きを牽制。
 後退する亜衣と並ぶと同じように、全力で魔物との距離を広げていった。
 ひかりとすれ違うような形となった二人の姿を見届け、彼女は呼びかけたマナを爆発させる。
 ――『レイジオブマナ』。それは、マナの嵐。
 怒り狂う竜巻の如きマナは、道の端から端を埋めるように突き上がる。
 周囲状況へ細心の注意を向け、連携を重んじていたひかり達だったからこそ、仲間への被弾は免れた。
 それでも走り抜ける亜衣と香、二人の背にまるで激流の如き衝撃を感じた。
 そして制御しきれぬその嵐は、渦中に立つ魔物を次々飲み込んでいく。
 まさしく、一撃必殺の大魔法だった。
 マナの嵐がようやく収まる頃には、そこに魔物の姿はなかった。
 作戦の成功に、大きく息を吐くひかり。
 周囲に魔物の気配はなくなった。しかしながら未だ街中から戦いの音は鳴り止まない。
 ひかりは疲弊する身体を奮い起こすように、周囲へ花びらを舞い散らせた。
 『フラワーシャワー』は癒しの力を伴い、三人の精神力を再び癒す。
 そして二人へと視線を向けるひかりは小さく頷くと、再びロンバルディア旧街区を駆って行くのであった。
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