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堕悪のメイプルランド・後編

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堕悪のメイプルランド・後編
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折れない光、倒れた影



 その間にも、直也たちはセーヴィたちと戦っていた。
 銃撃や剣戟、爆音もあったため静寂のカツガに食わせる音には事欠かない。セーヴィはその衝撃波でもって直也を狙った。遠距離からの衝撃波のため直也は勿論避けるけれども、避ける際には攻撃の手も休ませねばならないし、避けた後は衝撃波がホールの壁や階段に亀裂を入れる。長引けば身を隠す場所そのものがいずれはなくなってしまうだろう。直也はセーヴィの手数を減らすためにも、AAライフルの銃口を随所セーヴィに向けなくてはならなかった。
 直也の援護が緩めば、健司と近接戦で戦うクランのほうは厳しくなる。だが、クランはそれでも構わずに攻撃を続けた。
 クランがそこまで健司に食いついていたのは、後衛陣や、リーラ、そして静乃を守るためというのも勿論だが、けれどもそれだけではない。
 クラン自身が、己の意思を、己の剣と言葉で直接ぶつけたかった。
「持っていたもの、傍にあった物を全て捨ててまで、それでもお前らの意思は……ソコに居る事を望むのかよ!?」
 例えそれが、心に通じなかったとしても。
 健司のBlack catにいなされてもいなされてもクランは手数を緩めない。
 けれども、セーヴィの立ち回りにより跳躍を適度に行えるようになった健司にはようやくの余裕が出来た。クランから離れるように後ろへ跳ねた健司は、すぐさま幻創の魔石でクランへと突っ込むような自身の幻影を創り出す。
 更に、幻影と共に影斗が、honest villainを構えてクランへと駆けた。あくまでも映像のようなものである幻影を見破ったクランは怯まずに、突っ込んできた影斗のほうへと剣を叩き込む。
 だが、しかし。
「“幻影だから”と甘く見たねぇ?」
 不透明の幻影、その陰に紛れて隠れるように健司の飛ばしていた陰影星がクランの肩口を大きく裂いた。飛んでいく陰影星に引きずられるように、大きく後ろへ体勢を傾けたクランに、影斗がソウルインテーカーのサドンデスクラックで猛追をかける。
 既にかなり疲弊していたクランはそれを避けることも受けることも出来ずにまともに喰らい、改めて後ろへ弾き飛ばされるようにして倒れる。
「こんどこそ……しょうめいしてやる……!!」
 evill連合【不屈の影】の幹部、トゥルー・ディレクトアとして、ヒーロー達を倒し今度こそ、その強さを。倒れたクランを、まずは一人と見おろしてから影斗はすぐに他の者に目を移した。
「……それで、倒した……つもりか、よぉッ!!!」
 底力で立ち上がったクランの剣、その裏刃が影斗の背中へと打ち込まれる。「……!」影斗は咄嗟にくいっく・しーるどを発動してぎりぎりのところでそれを防いだ。
 だが、それでクランが止まることはない。何度攻撃を受けても、倒れそうになっても、最後の悪足搔きだけはさせてもらう。
 何が何でも連れて帰る、救い出す――そのために想いを込めて。
 守護蒼剣《イノセント・ソウル》を握り込み、クランは全力でそれを振り抜いた。どんな逆境でも臆することのない心があるからこそ放てる、信念を乗せた煌く不屈の剣閃。
 影斗には、剣よりも先に、クランのその心が届いた。折れることのない強い、重いその気迫に、だから影斗は思わずファニーを召喚する。くいっく・しーるどでは防ぎきれないと、影斗が思う程の迫力がクランにはあった。
 影斗を囲う風のシールドが、間一髪、クランの必殺技から影斗を守り、そして出現していたファニーが消滅する。クランはそのまま、力尽きるように前のめりに倒れ伏した。
 咄嗟に影斗のほうへ――いや、それでもまだ辛うじて起き上がろうとしているクランのほうへと健司が跳躍しようとするが、しかしハッとしてそれを止める。健司が振り向いた先で蕃茄が対物砲を隠すような怪しい挙動をした。
 ――俺も隠し玉でお前ら吹き飛ばす用意は出来てるぜ?
 そう言われた気がして健司は警戒を蕃茄に向けてしまった。慎重に慎重を重ね警戒を怠らない健司に対し、蕃茄の囮の案山子は蕃茄の予想以上の効果を示した。
 しかし蕃茄も蕃茄で警戒は怠らない。蕃茄の目利きから、健司がサーヴァント持ちであることは明らかだった。牽制、威嚇、偽攻、そしてまた牽制と、腹を探り合うように互いを意識し合う。警戒はするし、あくまで自身はフォローの立場だと蕃茄は思っているが、決して健司たちに対する加減をする気などはなかった。敵は敵なのだ、全て平等に撃ち尽くすのみである。
 その隙に凛音がクランの元に駆けつけてリンカー☆ヒールRをかける。
 クランから離れるように後退した影斗は、治療の邪魔をしようと再び凛音たちのほうへ向かおうとした。
 だが、しかし、そんな影斗の前に不意に、納屋 妙子が現れる。影斗は思わず足を止めた。
「たえこ……せんぱい……」
 いや、いまはマジカル☆なやりんか――。
「高槻さん……あなたを元に戻す為に、1対1でお話がしたいと思ってやってきました」
 他の者ならばとにかく、相手はDC校の尊敬する先輩だ。じっと見つめられ、影斗は、けれども怯むことのない、固い決意を露にした表情を見せる。
「ぼくは……あくのかんぶで……ううん……【あく】でないと……いけないんです……。じゃなきゃ……ぼくは……かれの……対等な【らいばる】で……いられない……!」
 断固たる決意を表明し、影斗は正面から説得を断った。だが、それを聞いた妙子は静かに首を振る。
「悪の道を選ぶのは構いません。けれど……あなたの今進んでいる悪の道はあなたが選んだ道じゃない」
 妙子は、のーまる☆ワンドを構えて、影斗を見据えた。
「目を覚まして高槻さん!」
 妙子が駆けるとともに、影斗もまたhonest villainを構えて突っ込んでいく。
 ――勝敗は、すぐに決まった。
 擦れ違うように切り抜けた二人のうち、影斗の背後で、妙子だけが倒れ伏す。影斗の、闇を纏った強力な一撃が、妙子の意識を刈り取ったのだ。
 ……影斗の鼓動が、どくんと跳ねる。ソウルインテーカーの切先が小刻みに揺れていることで、影斗は自身が武者震いをしていることに気付いた。尊敬する先輩を倒したのだ。強さに執着した今の影斗は、しかしその高揚に自身で少しばかりの戸惑いを覚える。
 しかし影斗はすぐに我に返りくいっく・しーるどを発動した。発動したそこに、ミニ・マスコットでみにみに☆スイーパーとなったロウレスの闇が降ってくる。
 ロウレスは目立たぬように小さくなり、ダンスホールの天井すれすれをフライングブルームで滑空していた。
「……貴様らはこの箒でまとめて“掃除”してくれる。【スイーパー】……いや、今回限定のヒロイン……み、【みにみに☆スイーパー】……の名にかけて、な」
 飛びながら、ロウレスはちまちまと、しかし確実に影斗へ闇を放っていく。飛行しつつの攻撃であっても、曲芸を身につけたロウレスのそれは安定しており、影斗には反撃の隙が中々訪れてくれない。元より、honest villainや盾があるにしても、飛行能力や遠距離攻撃を持ち合わせていないいまの影斗がロウレスを相手取るのは非常に不利だ。
 更には、復活してホール内に押し寄せた調度品たちを相手に拘束などで対応していたまじかるツインズ☆スターが、掴んだ調度品を影斗に向かって投げてもくるのだ。影斗は守りに徹するより他がなくなる。
「……貴様らゴミを掃除するのは責務だが、evil化したゴミを拾うことも俺のできることだと思っている。……だからいい加減、こちらに戻ってこい……このバカが!!」
 しかし、ロウレスも影斗の隙をあと一歩見出すことが出来ずにいた。影斗の守りは二重三重と用意されており、防御に徹されてしまえばかえって堅牢になる。
 セーヴィを相手取る直也もまた、じわじわと追い詰められていた。元々が隠れる場所のあまりないホール内だ。攻撃を躱し続けているうちに確実に身を隠しにくくなっている。
「せっかくの舞踏会だから、楽しく踊ってくれよ!」
「うるさい、黙れ。そしてぶっ倒れろ」
 と、瓦礫に足場を阻まれた直也に、セーヴィの振るったカツガの衝撃波が迫り来た。避け切れない――直感的に察知した直也が目を見開いて構える。


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