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堕悪のメイプルランド・後編

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堕悪のメイプルランド・後編
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ダークプリンセス 2


 何故、人は傷つけあるのだろう――?
 そう考えることがセナリア・ロイルディースにはあった。
 大した感慨を抱いてのことではない。しかし、重要な事ではあった。彼女にとっては、本来、傷つけ合うべきではない相手同士が傷つけ合うのは、見ていて辛いものがある。
 本当なら、笑顔になれたはずなのに。
 笑顔だって、必ずあるはずなのに。
 それなのに――傷つけ合う。それがセナリアには耐えられなかった。
 だから――
「…………」
「セナ姉! 絶対に、諦めないでよ!」
「……っ!」
 セナリアはそのアルト・エンフェリアの言葉にハッとなった。
 そうだ。今は何をしている最中だったのか? それは――あの少女――ダークプリンセス・ティアナを説得するためにここまでやって来たのだ。
 彼女には笑顔がない。いや、実際には、確かに笑顔を浮かべてはいるのだが――それはあくまでも邪悪な笑みだった。あたかも子供が人を殺すことの意味を知らないように。あたかも赤子が玩具を壊して遊ぶように。
 ダークプリンセス・ティアナにとってはそれこそが笑みの理由なのだろう。
 しかし――それは哀しいことだ。
 少なくともセナリアにとっては、哀しい事実に他ならない。
 だから、笑顔を手に入れて欲しいと思うのだ。本当の笑顔を。心の底から友達と笑えるような――そんな笑顔を。
「セナ姉! 私の後ろについてきて!」
 アルトはそう叫んだ。
 彼女はダークプリンセス・ティアナが放つ炎の渦をエネルギシールドで防御しながら、クイックディフェンサーで素早く前へ出た。それは護り抜くという誓いを胸に抱いた防御術である。炎を突っ切って、その向こうにいるはずのダークプリンセス・ティアナを探すアルト。
 しかし、そこにはダークプリンセス・ティアナの姿はない。
 火炎があちこちに放たれ、そのせいで視界が悪くなっているのだ。
「くっ……」
『アルト様! 来ます!』
 その時、アルトに呼びかけてきたのはアニエス・ノーランドだった。
 アニエスはレッグアクセルでアルトを加速させ、バリアシェードを唱える。魔法の膜が身体を包み込んだのを感じると、素早くアルトはその場を飛び退き――瞬間、炎に穴がぶち開けるようにして光の魔法弾が襲ってきた。
 これはそれまでアルトがいた空間を貫いて地面に直撃する。
 衝撃にアルトが目を伏せた時――
『アルト様!』
 アニエスが呼びかけた。
 アルトは反応するが、間に合わない。
 とっさに構えたエネルギーシールドで光弾を防ぐが、アルトは吹き飛ばされ、地面に激突して気絶してしまう。それを横目に見ながら水野 愛須が炎を切り裂くようにして突き進んだ。
「……友の目的のため……力を貸す……」
 愛須はバイタルカットでダークプリンセス・ティアナの急所を狙うつもりだった。だから炎の奥にいるダークプリンセス・ティアナの姿を捉えると、一直線にそちらへと向かう。
 だがその時――
「ふふ、そうはさせません」
 愛須の目の前に立ちふさがったのは柊 エセルだった。
 エセルはそれまでダークプリンセス・ティアナのもとで陰ながら彼女をサポートしていたのだ。
 その喉から発せられる子守歌のような歌声は、ダークプリンセス・ティアナの心を癒やし、かつ傷も回復させている。だが、エセルとしてはそれ以上にダークプリンセス・ティアナに仇成す者から、ダークプリンセス・ティアナを守るのが宿命なのだろう。
「さてッ、それじゃエセルんのサポートはあたしの役目ネッ!」
 エセルの鎧に憑依するダイナマイト・A・A・Aがマシンガトリングを乱射し、これに愛須はダメージを受けるが、構わずに突き進んだ。
 邪魔する者は容赦はしない。
 愛須はエセルの急所をバイタルカットで見極めると、ソウルインテーカーをその身に振り下ろした。一気撃滅の勢い。
 そして――
「……死んだって構わない……それでティアさんが守れるならば。何よりも誰よりもあなたが大事だから……」
 エセルは静かにその場に倒れ伏した。
 愛須の振るったソウルインテーカーの斬撃が、彼女の身を切り裂いていたのだった。 

「リンさんを……ううん、セナリアさんも、二人とも守るために、ボクは戦うよ」
 そう呟いてevil化した魔法少女に挑むのは錆原 アイネであった。
 アイネはプリズミックボウのテッド・スティンガーを射放ち、その魔力の矢で魔法少女を撃墜。空飛ぶ箒から落下し気絶させて、牽制のためにさらに射放った。これを避け、地上に降りてくる魔法少女もいたが、今度はそれをスタンガンで狙う。スタンガンの電撃で魔法少女の一人が気絶するが――他にも、まだ魔法少女は残されている。
 空飛ぶ箒のフライングブルームに乗った魔法少女が炎の矢を放つ。
 これを避けるアイネ。避けきれないものはクロセル・シルバープレートのバリアシェードで防いだ。
『私はマスターであるアイネの目的を遂行します』
 と宣言するクロセルの月光翼によってアイネは上空へと浮かび上がる。
「……飛んできたり撃ってきたり、忙しいな」
 そうぼやくように呟いたアイネはチェレンコフレイを放った。
 それは彼女の必殺技である。視界を埋め尽くす光条が魔法少女たちを蹴散らし、その場に落下させ、気を失わせる。瞑想によって研ぎ澄まされた精神から放たれる光は、魔法少女たちの空飛ぶ箒だけを狙っていたのだ。
 出来るだけ傷つけたくない――そんなアイネの精神が窺われた。
「これで……後はどうかな? セナリアさんは……」
 アイネはそう呟いてセナリアのほうへと視線を送った。

「ティアナさん……お願い……聞いてほしいことがあるの」
 セナリアはそう言ってダークプリンセス・ティアナと向き合っていた。
 彼女の表情は真剣そのものだ。そこには一切の曇りがない。それにダークプリンセス・ティアナはどう思ったのか――くすくすと笑みを浮かべていた。
『話って? ティア、つまんない話は嫌だなー』
「つまらない話なんかじゃないよ」
 セナリアはそう言ってアフェクシオン・レクレール――彼女のオリジナルの結界術を唱えた。
 すると、光が彼女とダークプリンセス・ティアナとの周りを包み込み、その場に温かな輝きが溢れる。あたかも――それはたった二人だけの聖域のようであった。
『ふぅん……ま、回復するならいいけど』
 ダークプリンセス・ティアナはあまり深くは考えてなさそうであった。
「あのね、ティアナさん」
 セナリアはそう言ってダークプリンセス・ティアナに切り出した。
「私……思うんです。ティアナさんは、今のティアナさんのままじゃみんなに受け入れられないと思ったみたいだけれど、それは勘違いだって。私がいま語り掛けているのは、他の誰でもないダークプリンセス・ティアナさん、貴女なの」
『……そうだよ?』
 何を今さら、といった様子でダークプリンセス・ティアナは言った。
「ううん、違うの。そうじゃなくて……」
 セナリアは首を振って、どう言ったらいいのか思案するようにして続けた。
「自分を見てもらえない、存在を認めてもらえない……挙句、表に出る事も許されず、ずっと閉じ込められていて……それって、きっとすごく辛かったよね。表のティアナさんも助けたいけれど、また閉じ込めようだなんて思っていないし、私は望んでいない。私は、貴女を他の誰でもない一人の人間として接したいの」
 セナリアはそう言い終えると、ダークプリンセス・ティアナの反応を窺うように彼女を見つめた。
『……ふーん』
 ダークプリンセス・ティアナは小さく頷く。
『……なんだかよく分かんないけど、ティアと友達になりたいの?』
「うん、そういうことかな」
 セナリアは笑顔で頷いた。
「私の名前はセナリア・ロイルディース。だからお願い。貴女の、他でもない貴女だけの名前を教えて?」
『うーん、でも――』
 ダークプリンセス・ティアナは顎に指を置いて考えるような仕草をする。
 そして――
『――ティア、友達なら遊んでもらうほうがいいな♪』
「!?」
 そう言うと次の瞬間、ダークプリンセス・ティアナは風を巻き起こしていた。
 その轟然たる風は結界を内部から破壊して、セナリアを吹き飛ばす。
「きゃああぁぁ――!」
 はじかれるように飛んでいった彼女を――
「大丈夫!? セナリアさん!」
 とっさにアイネが受け止めていた。
 ダークプリンセス・ティアナを守ろうとしてその場にいたアイネであるが、さすがにセナリアが危機となると、それを守らざる得ないのだろう。
 ダークプリンセス・ティアナはそんな二人を見ながらにやぁと蠱惑的な笑みを浮かべていた。
『ティア、いっぱい、いーっぱい、遊んであげるね♪』

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