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ユグドラシル

闇に瞬く光 前編

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闇に瞬く光 前編
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夜盗


「神代の神器には、奇跡と呼ばれるような能力を有している品もあるかもしれない」
「なるほどー」
「ドウェルグが発掘した宝物に、そういったものがあるかもしれない」
「うんうん」
「それを見せて貰いやすくするためにも、ビョルンに貸しを作っておこう!」
「そうだそうだ!」
「そのためには……野盗を倒そう」
「そうだそうだ……え?」
 とうとうと語るアレン・オルブライトに、元気に合いの手を入れる時見 のるん
(悪い奴やっつけに行くなんて、アレンってば超偉いよね!)
 今までのアレンの話をどう理解したのか、のるんはうんうんと頷きながら今までに集めた野盗の情報を見る。
 ティンガネスの街で、野盗に遭遇した人間からいくつか情報を聞き出したのだ。
「よし、まずはできることからだな……協力する」
 そんなアレンたちに協力を申し出たのは知桐 鵤壱位 戈星
(野盗さんなら石巨人のこと、何か知らないでしょうか……)
(運が良ければ、秘宝の一つくらい持ってるかもしれないな)
 様々な思惑から、樹郷 雪愛バンディア・レジームも協力する。
「というか、何でついてきた」
「保護者として来ねぇわけには……ってオイ置いてくな」
 鵤の疑問に戈星が胸を張って答えるが、あっそうと先に行こうとする鵤を慌てて追いかける。
 何しろ戈星は初級迷宮勘を持っていない。
 はぐれたら迷子確実だ。
「それはありがたい」
「一緒に、野盗退治しようねー」
 同じく迷宮勘を持ち合わせていないアレンとのるんも、鵤の後に続く。
(さて、ここら辺がいいかな……)
 しばらく進み先が袋小路になっている地点で、鵤はアレンたちと別れ、一人先に進む。
 アレンたちは陰に潜み、その様子を見守る。
 たった一人、心もとない様子で歩いていると……
「へっへっへ、お坊ちゃんが1人でどうしたのかなー?」
「もしかして迷子?」
「俺らが案内してあげようか?」
「もちろん――案内料は前払でな!」
(お約束通り出てくるとは……芸のない奴等だな)
「た……助けて!」
 わざとぎこちなく剣を構えると、じりじりと後退する鵤。
 その先には、野盗退治のため隠れている仲間がいる。
「お、お願い……」
「お願いー? お礼次第で聞いてやらないこともねぇぜ!」
 震える鵤の声に笑いながら答える野盗たち。
「それじゃあ――ここで、やられてくれ」
「は?」
「お前たちぁ、ここでお終いって事だ!」
 戈星が飛び出すと、霜のルーンを放ち、野盗たちの退路を塞ぐ。
「野盗さんたち、聞いてた数より若干少ないかもしれないねー。他の人に捕まっちゃったとか? それか、どっかに隠れてるとか?」
「はぁ、なんだそりゃ!」
 のるんが野盗に指摘してみるが、野盗は聞き流す。
 確かに、のるん達は野盗の情報を集めていた。
 彼らがいつもどのくらいの人数で攻撃してくるかも確認はしていたが、今回は囮である鵤一人に対しての襲撃。
 そう多くの人数で来なかったのも不思議はないだろう。
「はぁあああああっ!」
「あ、待て、これを!」
 アレンがバンディアにパリエスをかけると、バンディアは野盗の集団の中心へと突撃を仕掛ける。
 しかしそれは決して無謀な突入ではなかった。
 バンディアの戦闘スタイルは、多対一を考慮に入れた回避優先のもの。
 相手の攻撃を受け流しながら、すれ違いざまに斬り付ける。
 攻撃方法もこの世界にない侍の攻撃方法を使用し、相手を翻弄する。
「頭数が揃っていたとしても所詮は統率もとれていないゴロツキの寄せ集め…… 場をかき乱してしまえば大した相手じゃあない」
 混乱状態に陥る野盗たち。
 そこに、雪愛が武器や手足を狙って攻撃する。
「てめえっ!」
 激高して襲い掛かってくる野盗の攻撃を見切って盾のルーンで防ぎ、再び魔獣で攻撃する。
「落ち着いてください。お話を……したい、だけなんです」
「話を聞いてくれないなら、聞いてもらえるようにするだけだ……っ!」
 のるんの助言とアレンの支援。
 そしてバンディアと雪愛らの攻撃に、野盗はとうとう取り押さえられた。
「さあ、話を聞かせてもらおうかな」
「つーか喋んねーの、喋んの? 喋らす?」
 鵤と戈星が野盗に迫る。
「わ、わかった、何でも話すから……」
「つーか、俺たちの何が知りたいんだよ……」
 その迫力に青ざめ口を開く野盗たち。
「そうだな。まずはお前らのリーダーに話が聞きたいな。アジトにいるのか?」
「は? リーダー?」
「俺たちゃただの寄せ集めだ。リーダーなんかいないぜ」
 バンディアの質問に口々に答えがかえってくる。
「あの、それでは……」
 次に話しかけたのは雪愛だった。
「石巨人が暴走した理由、或いは暴走させた方に心当たりが無いでしょうか?」
 離しながら、雪愛の周囲には桜吹雪が舞い散る。
 ほんの僅かでも、野盗の心が和むことを祈って。
「……どんな小さな事でもいいのです。何か知りませんか……?」
「石巨人? あぁ、あの化けモンか」
「ありゃあ、ここの守り主みたいもんだろ。多分、お前らが大勢ここに押しかけて来たから暴れ出したんじゃねえか」
「成程……そうでしたか。ありがとうございます」
 野盗の返事に雪愛はぺこりとお辞儀をする。
「それから……よろしければ、この事態の収拾のためにご協力をお願いできないでしょうか?」
「はぁ?」
 雪愛の突然の申し出に、野盗たちはあんぐりと口を開ける。
「野盗なんか止めていただいて、街の方々を護っていただいたり……野盗なんかしているよりも、誰かの笑顔の為に行動する方が、ずっとずっといいと思います!」
「はぁあ?」
「今からでも遅くありません。私達に力を貸してください!」
「はぁ? なんでお前の言うこと聞かねえといけねえの?」
「それで何か俺達が得する事でもあるのかよ!」
「襲撃しろの間違いじゃねえのか?」
「そんな……」
 たまらず笑い出した野盗たちに、雪愛は悲しげに目を伏せる。
「いいか、俺たちはビョルンが気に入らねえのさ。その町を何で守る義理がある」
「それが気になっていたんだ」
「ああ。僕も」
 バンディアと鵤がその言葉に食いついた。
「何故、ビョルンと敵対するんだ?」
 二人は、ビョルンという存在をどう捉えて良いのかまだ決めかねていた。
 彼と対立する野盗の話を聞き、その存在について理解を深めようと考えていたのだ。
「そりゃお前、ビョルンっつーか、ジグムントの奴が信用できないからさ」
「ジグムント王が?」
「ああ。奴ぁ大義名分をチラつかせながら、あちこちで無理な侵略を広げてやがる」
「あー、まあ、征服者がいれば虐げられる奴、反感持つ奴が出てくるのはどこの世界も一緒だな」
 戈星が納得したように頷いた。
「分かってくれたか。それじゃあ、この辺で……」
「ああ、そうしたら、お前たちのアジトに連れて行ってくれるか?」
「アジトぉ?」
「そうだな。僕も知りたい」
 アレンもそれに同意する。
「アジトっつーか、ねぐらに使ってるような場所だけどよ……」
「いいから案内してくれ」
 促され、拘束されたまま渋々歩き出す野盗たちだった。

「本当にこっちなのか?」
「ああ。この突きあたりに隠し部屋が……」
 アレンたちに引き立てられ、野盗は彼らをアジトへと案内する。
「……ってあれ、隠し部屋が開いてる」
 野盗が驚いた様子で立ち止まる。
「何?」
「一体誰が……」
 アレンとバンディアが警戒しながらアジトの入口を覗き込む。
「誰だ!」
「……うわっ!?」
「……あ」
「……あ」
「……あれー?」
 アレンとバンディア達が見たもの。
 それは、アジトの中で食料や消耗品を手にした黄牛 瞳だった。

 少し前。
 抜き足差し足忍び足。
(この先が、怪しいねぇ……)
 瞳は先程耳に挟んだ野盗たちの会話を思い出しながら、一人狭い道を進んでいた。
 彼女が探しているのは、野盗たちのアジト。
 そこにはドヴェルグから盗んだものや、ティンガネスから盗んだ食料、その他迷宮で見つかったお宝があるかもしれない。
 そっそそっと、歩を進める。
 丁度野盗たちは襲撃のため戦闘中。
 物陰に身を隠し、戦闘を避けこっそりと進んでいく。
「ここか……」
 そこは、ただの突きあたり。
 しかしそうっとその壁を押してみると……
 壁はゆるりと動きだし、その先の空間を瞳に晒した。
「……よし!」

 そしてアジトを物色していた時、野盗が特異者をその場に案内して来たのだった。

「……野盗の、泥棒?」
「違うよぉ! アタシは、ティンガネスの人々から奪われたものを街の人に返してこようと思ってただけだよぅー。アタシは善良な市民ですものー」
 アレンの言葉に唇を尖らせる瞳。
「色々見て回ったけど、宝物みたいなモノはなかったし……」
「そうなのか? 何処かに、野盗がこれまで奪った戦利品の秘宝などないだろうか」
「そうだな。隠してあるなら正直に吐け」
「な、ないよそんなモン……」
 その後も瞳とアレン、バンディアたちは野盗のアジトを探して回ったが、瞳の言う通りあるのは食糧やごく普通に装備しているような武具など。
 めぼしい物品は発見できなかった。
 そして、彼らがアジトを物色している間に野盗の数人は数寄を見て逃げ出してしまったのだった……

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