クリエイティブRPG

ユグドラシル

闇に瞬く光 前編

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闇に瞬く光 前編
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巨竜の翼を狙え!


 黒鉄 隼人は冷静に怒れる竜を観察していた。アナライズは使用してみたものの、この世界で使ってもさほどの効果が見られず、隼人はもっぱら理性的な考察と観察によっての分析を余儀なくされていた。
「ギンヌンガガプの影響で狂暴化する飛竜か……何者かが秘薬で影響し易くしたのか?
 虚無が飛竜にも影響を起こすなら、ユグドラシルの住む生物にはどの様な影響を起こすのか……。
 飲み込まれたアース神族はどうなったのか……それを知る為にもこの竜を倒し、肉体を調査する必要があるな。
俊足のルーンを使用し、黄金の翼で飛翔しながら、死角から竜に急接近し、尾を切りおとしたメンバーの援護に入る。
「何処を見ている? お前の相手は此方だ!!」
大声で呼ばわり、注意を引き、白の鳥で突撃すると見せかけて鼻先を掠めて飛び、そのまま飛びすぎると、白い姿に気をとられた竜が首を巡らせてこちらを向く。メリナ、コトミヤらから注意を逸らす意味もあるが、本命は翼を狙うメンバーたちの接近から、竜の気を逸らすことだ。
「竜殺しの剣聖”を名乗る以上は竜相手に負けるわけにはいかない。
 さて、お手並み拝見と行こうか……
普段は優しい青い瞳に鋼の厳しさを浮かべ、イルファン・ドラグナは召還した界霊獣イノセントの背にパートナーの“魔弾の射手”を名乗るリコ・ハユハとともに乗り、イノセントの光弾を打ち込みながら、斜めに上昇してゆく。同時にリコが起爆符と氷結符を交互に使い、牽制と爆発による熱と冷気で加熱と冷却を繰り返すことでの組織の弱化も狙う。リコが竜をしげしげと見て感想を漏らした。
「おおー……これがうわさのドラゴン……。……思ってたより……凄く、おっきい……」
「無益な殺生は好まないが……狂ってしまっている上に先へ進むための道をふさいでいるとあってはな。
 ……もっとも、己の意思ではないのかも知れんが……」
イルファンがふと痛ましげな表情で竜を見た。
 地上では霧雨 透乃がパートナーの柚木 椛緋柱 陽子に向かって言った。
「私もまだまだ強くなりたい。強くなるためにはより強い相手と戦うのが一番、そして、やっぱり戦うなら相手が強い方が楽しいからねえ。
 今回の敵はリンドヴルム、宙を飛ぶことができる。対して私には飛行手段がないのよね。
 ということで、飛行手段のある貴女たちに叩き落してもらうのをメインにする。補佐として脚への攻撃をするね。
 落っことせたら、本格攻撃だね」
椛が己の姿を見下ろしながら、しみじみと言う。
「私は元々魔法使いで、他の世界でもマギウスや陰陽師といった後方支援ばかりだったから……。
 ヴァルキュリアのような動き回って戦闘をするアバターは初めてよ。
 まだまだこ の世界に来てからあまり経ってないし……この戦いでできる限り慣れておきたいわね。
 地上より空中のほうが回避方向の選択肢が多いから安全だと思うし……私は空中メインで動くね」
陽子は少々不満げな表情だった。
「なにかあるの?」
透乃の言葉に、陽子は軽く肩をすくめた。
「折角こんな世界に来たのですから、女性のヴァイキングに乱暴されたりしたかったのですが……。
 洞窟で竜退治ですか……」
「……」
椛がまた病気が出たといわんばかりの表情で陽子を見る。陽子はかつて女性に虐められることばかり考えている煩悩の凄まじさゆえ、破門されたという過去を持つのだ。
「今は遊ぶ時間じゃないからね~」
透乃が言うと、陽子は言った。
「あら、別に不満というわけではないですよ? ただ少し残念だっただけです。
 私も『飛翔靴』がありますので、相手の飛行能力を奪うまでは、基本的に飛んでいますね。
 できるだけ 椛さんと敵を挟むような位置から攻撃していきましょう。
 どうしても攻撃時は隙ができるもの。
 敵から見て2人で同じような方向から攻撃するようなことは、纏めて対処される危険が高いので避けたほうがいいと思いますし」
隼人、イルファンらが左の翼を狙うということなので、2人は右の翼を狙おうと話がついた。椛と陽子は周囲を旋回しながら様子を見る。椛が羽ばたきの浮力の邪魔をしようと、飛び回りながらヴェンタを翼めがけて撃つ。思わぬ位置で風が起これば、バランス維持のためにも無駄な体力を使うと考えたからだ。
「さあ、無駄に体力を使いなさい……」
いっぽうの陽子は戦士の叫びで攻撃力を上げ、ハチェットと戦斧双方を振り回して竜の気を引く。重い斧の刃が黒い鱗を砕き、その下の皮膚を切り裂く。
「あとで地面に叩き落してあげますからね」
透乃は下から様子を見て、届きそうな範囲に竜の体がくれば、戦斧で切りつけて気をそらす。多方向からの攻撃に、巨竜はじわじわと体力を削がれているのが誰の目にも明らかとなってきた。無数の傷から瘴気が流れ出し、黒い裂け目が無数にできた体表の鱗も剥がれた箇所がかなり目立つ。

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