クリエイティブRPG

ユグドラシル

闇に瞬く光 前編

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闇に瞬く光 前編
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ドラゴンの尾を切り落とせ!


 紅い髪と対を成す赤い瞳で遠近 千羽矢は戦況を推し量っていた。広角視野と観察眼から、どうも光属性の攻撃の通りが良いようだと推察する。
「……まだ。……この世界の。状況、は。……良く。分かって……いない。
 ……それなら。……まずは。出来る……事を。確実、に。……する。まで、だ。
 少しずつ、でも。……皆と。仲間、と。……一緒、に」
ルーンボウにポイズンアローをつがえ、黒竜の眉間めがけて撃ち込んだ。
「……どんなに。大きく、ても……継続して、のダメージ、は蓄積、する。
 ……それなら。……それを、狙って、撃つ……だけ、だ」
毒による行動阻害を狙ってのことだが、体が大きいが故か、変性した体組織が通常の生物とは違うのか、毒の効果は今のところ見られないようだ。動かずに狙っていれば、今度は自分が的になるだろう。千羽矢は白鳥の鎧で飛翔し、狙撃場所を移し、弓兵の構えで今度は目を狙う。だがさすがに動きが激しいため、ピンポイントで狙うのは難しそうだ。おおよその的を顔に定めると、千羽矢は再び矢をつがえ、ひたすらに撃つ。多少なりとも傷つけられさえすれば、着実にあの巨竜の体力を削ることができるのはわかっているのだから。
「光属性が通りやすい、弱点といえば弱点だけど、決め手には欠ける……」
柚浦 雪華は俊足のルーンで移動力をあげ、白鳥の鎧での飛行を行いながら、ルーンボウ、戦弓『流転』で援護射撃を行ってきて、そのことに気づいていたが、アルヤァーガをはじめとする他のメンバーとの情報交換でも明らかになった巨竜の弱点はそれくらいである。
「アルベルティーナが一体何をしたいのか……なんとしても見届けたいところですし。
 でも、なんとしてもあのリンドヴルムを倒さないと5層にはいけない……。
 炎も危険だけれど、あの尾の攻撃も空中、地上いずれにおいても脅威ですよね」
彼女は戦場の舞で動きながらの高速移動を利用し、斗志也、未雨らが傷つけた尾の中ほどをを執拗に狙い撃ちする。
「流転!」
さらに白の鳥で光輝をまとう白鳥に変化し、体当たりでさらに傷口を広げようとする。
「貫け! 禍月!」
太郎はイノセントを召還し、空を駆けていた。同乗しているパートナーのメリナ・フィッツジェラルドがぽつんと言った。
「守るべき天上が地に沈み、自分さえも真っ黒に染まり、それでもこの場所を守ろうとするのは、どんな心境なんだろうね?」
「さあな……だがなんとなく、だが、他の黒いリンドヴルムたちを見ても、もはや『心』を失っているように見えるな。
 さっき話しかけられてたとき、一瞬何か思い出すようなそぶりはあったけどな。
 ふむ、あの娘は尾を切ろうとしているんだな。いい判断だ。援護させてもらおう」
「……うん、ちょっと気になって、ね。 ……じゃあ、私も行ってくる!」
メリナはイノセントの背に立ち上がり、自由の焔による炎の翼で舞い上がった。英雄を守る者はメリナの保護のために彼女と行動を共にすることになっている。メリナが動いたのを見て、癒しのルーンで無茶しがちなメリナが負傷すれば即回復できるよう、戦闘の様子を見ながら即駆けつけられる位置を確保した。
「熱いって……。
 さて……、ここからは天も地もない三次元の世界だ。大いに乱れ飛ぼうじゃないか!」
メリナの援護にイノセントを駆りながら無差別に光弾を打ち込む。一方のメリナは飛翔時間に限界がある。即座に猛き炎の剣を解放して、高速で飛びながら雪華が狙っていた尾の傷をさらに広げようと一点に集中してヴァルハラスラストを放った。痛みに竜が空中で急旋回し、メリナのほうに体を向けようと翼を羽ばたかせた。
「飛行機は、方向転換する時は否応なく速度を落とす。
 だから昔のレシプロ戦闘機なんかは空中戦する時、なるべく速度を落とさないように円を描くように旋回して飛んだもんだ。スキが大きいんだよ!」
反対方向からイノセントの光弾と、さらにハチェットを投げつけて尾を叩く。雪華が再び白の鳥に変化し、その傷をさらにえぐり、やはり闇の黒さを持つ骨まで傷つけた。
ギァアアアアアアアアアアアーーーーーーーー
竜は長い尾を引く咆哮を上げた。
「うるせぇなぁ。耳障りだぜェ、でかいのよォ!
 細けェこたァ仲間に任せてひたすらてめえをぶちのめすぜェ? 覚悟してろよ、でかいの。
 私もベルセルクになったからにはやっぱ大暴れしてェからなァ?」
コトミヤが飛翔靴で真上を飛びながら顔をしかめた。普段の彼は落ち着いた口調の冷静な普通の医者なのだが、ベルセルクとして戦闘に参加している現在は、テンションもあがっており、普段の彼とは別人のような一面が覗く。
「ああ、そっち行くんじゃねえぞォ、天井に張っついてる神殿があるからなァ。
 面倒臭ェが調査してるる奴もいるみてェだからなァ。巻き込まないようにしたいねェ」
神殿があるという方向に竜が行かぬよう、神殿のある方向からわざと竜の背中にどかっと着地する。竜が首をよじり、食いつこうとするのを軽く避け、太郎のイノセントが光弾を尾の傷に撃ち込むのに合わせ、戦士の叫びとチャージを乗せた渾身のビーストアタックで骨も砕けよとばかりにウィスパードの重い剣戟を見舞う。
「おらァァァアアアアアアアッ!!」
コトミヤの叫びにあわせ、同時にメリナが炎の剣で同じ場所に切りつけた。
「……ここからは炎の舞! 焔剣解放!
 ……貴方をこうした元凶は必ず討つと誓う。だから安らかに眠ってね」
「……自分でぶっとばせるに越したこたァねェが、ま、倒すのが最優先ってこった。
 まずはそのための下ごしらえってわけだァな、あァ?」
コトミヤはメリナに向かってニヤっと笑った。
「若い子は、どいつもこいつも生き急ぐね。まあそうしないとあっという間に年寄りだ」
太郎が呟く。本命の尾から注意を逸らそうと、太郎と雪華、千羽矢が雨あられと遠距離攻撃を竜の顔めがけて打ち込むと、竜は炎で矢を焼き落とす。メリナとコトミヤの攻撃は、竜の尾の骨をも切断し、長いムチのような尾が本体から切り離されて落下し、それ自体が別の生き物のように激しくのたうった。メリナとコトミヤは素早く飛びのき、本体の反撃を避ける。
 黒い巨大リンドヴルムは怒り心頭といった様子だった。切断された尾の断面から瘴気を流しながら、凄まじい咆哮をあげて首を大きく振るいながら黒炎を無差別に吹く。だが、闘志はあっても、今までの戦闘のダメージはじわじわと彼を蝕んでいた。怒りと痛みが駆り立てるが、体の動きは確実にさきまでの敏捷さを失っている。
「おおォ? いいねいいねェ。効いてるようだなァ? おい? 医師として診断してやるぜェ。
 てめェはもう、余り長くは持たねェよ」
コトミヤがそう言って哄笑し、ウィスパードでさらに切り傷を増やしていく。
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