クリエイティブRPG

ユグドラシル

闇に瞬く光 前編

リアクション公開中!

 0

闇に瞬く光 前編
リアクション
First Prev  16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26  Next Last


アルベルティーナ2


 アシュトリィ・エィラスシード数多彩 茉由良らが巨大な竜がいるという場所まで、安全に移動できるよう、初級迷宮勘を使って慎重に道を見極めていた。。
「地下4階はとりあえずその一角以外、道を外れなければはそう危険なこともなさそうですけど。
 ただ、黒色化したリンドブルムが巨大なリンドヴルムの周囲に集まっているというだけで、他の場所にもいるようですし……気をつけて進みましょう」
木々の囁きを使い、時にユグドラシルの気配に気を配ってみるが、懸念に近い気配を感じるのみで、樹は沈黙していた。何か知っているのだろうが、人とは違った物差しと時間を持つ樹、ユグドラシルからすれば一瞬で燃え尽きてしまう人とは見方も世界観も全く違うのだろう。
 その場所はかなり開けた広場になっていた。奥に際立って巨大な黒竜が居座り、そのだいぶ手前ではサイズこそ通常と同じではあるが、漆黒のリンドヴルムたちが特異者たちと戦っている。
「だいぶ駆逐されたようですね。話に聞いていたより少ないですし……」
アシュトリィが茉由良に言った。
「そうですね。ああ、アルベルティーナさんがいらしたわ……」
茉由良は巨大な黒リンドヴルムを倒すというメンバーたちの支援を行うことは決めていたが、個人的には別途気になることがあり、アルベルティーナに尋ねてみたいと、彼女の元へと向かった。ユグドラシルの状況、数十年前におきたという転空という現象や、アース神族の状況など、無数の疑問が渦巻いている。パートナーであるカラビンカ・ギーターチェーン・ヨグらが、補佐として彼女ら側からも質問を出してくれることになってはいる。しかしあまりにあれこれと聞けばこの世界の人間ではないと気取られる可能性もあるだろう。
「お告げなのか? フリッグ様本人から聞いたのか……色々とアルベルティーナさんは知っておられそうな気がするのですけれど、慎重に質問しなくては……ね」
茉由良は呟いた。アルベルティーナは痛ましげな表情でリンドヴルム達を見つめている。茉由良はそっと彼女の物思いを破った。
「アルベルティーナさん、この番をしている……のでしょうか? 巨大なリンドヴルムは何なのでしょうね?
 実力を示すための存在なのでしょうか?或いは……殺すしかないのでしょうか……?」
「あれはもう虚無に侵されてしまっています。倒す以外にないでしょうね……」
アルベルティーナからはため息混じりの返答が帰ってきた。カラビンカが次いで尋ねる。
「もともとはあのリンドヴルムたちも、普通の生き物だったのですよね?
 あのリンドヴルム達に悪影響を及ぼしたのはギンヌンガガプや、その悪霊たちなのですか?」
「ギンヌンガガプの影響はあるでしょうが……あの『悪霊』と呼ばれる存在とは関係がありません」
「悪霊たちとは関係がないのですか……」
「あの悪霊たちは転空の際になくなった方々……多くの人がなくなり……死後もその時の苦しみを抱え続けて苦しみ続けている……。
 彼らがリンドヴルムの凶暴化させたわけではないのです」
「ギンヌンガガプのリンドヴルムたちへの悪影響を取り除く方法……はあるのでしょうか?
 もし、それを取り除く方法があるならば、リンドヴルムたちを助ける方法があるなら……無駄に倒すこともないと思うのですわ」
熱を入れる余り、カラビンカのカラフルな翼に力が入り、半ば広がって紫の髪をヴェールのように持ち上げ、まるでケープを羽織っているように見える。
「いいえ……残念ながらありません……可愛そうですが、今はどうしようもないのです……。
 今私たちにできることは……何も……」
アルベルティーナの瞳が痛ましげに曇る。テェーンが考え込むように言う。
「その、ギンヌンガガプというものは転空と一緒に、何処からともなく現れたものなのかしら?
 それともこの世界に元々在ったものなのかしら?」
「私も転空前の記憶はあまりはっきりしないのですが……ギンヌンガガプは……この世界が誕生する前からあったものです。
 もともとは地上の下にあり、大地がその蓋となっていたものが、転空によってそれが取り払われたため、そこにアースガルドが飲み込まれた……。
 そのように記憶しています」
「昔から在ったなら……ギンヌンガガプと巨人とは、何か関係はあるのかな?」
アルベルティーナは首を振った。
「巨人たちもドゥエルグも人間同様、かつては神々と普通に交流があったように思います……はっきり覚えてはいないのですが……。
 転空で何もかもがおかしくなってしまった……そう聞いています」
「そう……でしたか……」
アルベルティーナと茉由良たちが話している前方で、クロウ・クルーナッハは巨大な竜を仔細に観察していた。
「迷宮の竜が守護するものといえばお宝が定番だが、ここのリンドヴルムが阻んでいるのは何ゆえかな?
 単に縄張りを通過させたくないだけか、或いは何者かの思惑があるのか……」
クロウは万一の事態に備え、ここに来るまでの道のりで、撤退するさい使えそうなルートについても調べてきていた。前線での戦闘はアーフィリカ・アリエス御影 太郎それにコトミヤ・フォーゼルランドらが受け持つことになっており、クロウは茉由良らと後方支援を兼ねて、前衛の補佐行動をと考えていた。
「まあ竜の守護地域……ならばこの周辺に罠はないと思うが……一応は想定して注意しておくか。
 ギンヌンガガプの影響がリンドヴルムだけとは限らんし、床が脆くなってて下の階に落ちるとかなったら洒落にならんしな……。
 思えばギンヌンガガプについても良く知らないんだよな。
 悪霊がいたり、リンドヴルムを凶暴化させたり……あの黒いリンドヴルムを調べて何か分かれば良いが」
いつの間にかアーフィリカが傍に来ていた。
「ギンヌンガガプの影響で暴走してるっぽいとは思うんだけど……。たださ、リンドヴルムって、『秘薬』によって変異を起こす性質もあるとは聞いたことがあるよ。
 もしかしたらだよ? 誰か意図的に彼らにそれを使って……ギンヌンガカプの影響を受けやすくして黒いリンドヴルムになったとか……」
「ウラに何かある可能性……か」
「でもまあ、今はとにかくあれを何とかしないとね。
 凶暴化したリンドヴルムといっても弱点は同じはず。大きな体のバランスを整える尻尾。
 空を飛ぶための翼。でもあいつにだってそれはわかっているはず、簡単には狙わせてくれないでしょうね」」
アーフィリカは言って、巨龍に向かって頷いた。

First Prev  16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26  Next Last