クリエイティブRPG

ユグドラシル

闇に瞬く光 前編

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闇に瞬く光 前編
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神殿を探索せよ3


 神殿の中央部は周囲を柱に囲まれた回廊のようになっており、比較的綺麗なまま残っていた。南側の壁に巨大な扉があり、そこには美しい象嵌が施されている。
「この奥にもしや、宝物殿があるかもしれないでありますな」
ひそっと呟く吹雪を見て、コルセアはこっそりため息をついた。
「脱魂術とはいえ、さすがにものをすり抜けるわけには行かないからなぁ」
のんびりとソルティが言った。
「鍵がかかってる。瓦版売り~、ちょっと解錠できるかどうか試してみて」
あやめがシフォンに声をかけた。
「あの天井には、いくらわたくしがスマートで背が高いと申されましても手が届きませんからな。
 あやめ殿に抱えてもらい、空を飛んで頂くしかありますまい」
小柄なシフォンが高い天井を見上げて言った。
「うんうん、大丈夫~」
「しかし、さしものわたくしも、逆さになった扉の鍵を弄ったことなど……わわッ! あやめ殿?! 
 だからといって、わたくしまで逆さに抱えなくてもいいでありますから!!」
「……そう?」
「もしも鍵が開かないようでしたら、ホライゾンランスで壊して中身を確かめましょう。
 あまり遺物を傷つけたくはないけれど、この際仕方ないわ……」
フィーリアスが万一なにか敵意のあるものが潜んでいた場合に備え、ランスを構えながら言った。だが破壊の必要はなかった。なんとかシフォンが鍵を開け、扉が開く。あやめは召現の槍を手にし、ころも万一に備えて戦闘態勢をとる。
 内部は明かりのない真っ暗な広間だった。奏が白色のケミカルライトで明かりをとった。
そこは3方の壁一面が美しい象嵌細工で覆われており、扉の正面突き当りには祭壇があった。その向こうにはビョルンの話しにあったものだろう、かすかな灯りでもそれとわかるほど巨大なフリッグのレリーフが飾られていた。6枚の翼を持つ金髪の美しい女神の姿。そして、そこには姿のおぼろげな多数の悪霊たちがそのレリーフに向かい、祈るような動作や、泣き声、金切り声を上げて集いていた。
「あれが神々の……宝でしょうか……?」
夜々が呟くと、ソルティが首を振った。
「もしそうなら、ビョルンがこれを見たと言っていたし、持ち帰ってるんじゃないかな?」
フィーリアスがラクスの唄姫に指示し、部屋の写真を何枚も撮る。ジェノが部屋の様子を見てああ、と唸った。
「嘆き悲しむ群集に囲まれた後姿しか見えないフリッグの夢……あれはこのことを示唆していたのか……」
全員がゆっくりと室内に踏み込み、件のレリーフをもっとよく見ようと祭壇のほうへと向かう。
 と、そのとき悪霊たちの1体がこちらの接近に気いた。警戒の叫びを上げ、レリーフに集いていた悪霊たちがいっせいにこちらに向かってくる。吹雪がまず動いた。そこは腐っても(?)傭兵である。コルセアがサポートとして俊足のルーンを発動し、素早さを上げる。猛き炎の剣を掲げ、悪霊に切りかかる。夜々は盾のルーンを展開し、イノセントを召還、その背に飛び乗って襲ってくる悪霊をシールドバッシュで強打する。
「できるだけ傷つけないであげてください、3層にいた者たちも害意を持って集まっていたわけじゃないのですし」
奏が叫んだ。
「でも、襲ってきているから、とにかく被害を受けないように撤退しながら防御はしないと!」
涼姫がスカイボートの櫂を悪霊に向かって威嚇をこめて振り回す。
と、ころが突然叫んだ。
「あおーんっ!!」
「ほえてる場合じゃないであります!」
吹雪が突っ込むと、ころは平然と答えた。
「『戦士の叫び』だよ~。え? それは戦士の叫びじゃなくて狼の遠吠えだって? ま、細かいことは気にしない!」
言いながらヴェルデとシフォンを扉のほうへ押しやる。あやめがしんがりで槍を構えながらじりじりと後退してゆく。悪霊たちは彼らがレリーフのほうから後退しているのに気づくと、襲い掛かるのをやめ、再びレリーフの周囲へと戻ってゆく。
「無差別に襲い掛かってきた、というわけではなさそうですね」
奏が考え深げに言った。
「ああ、なんだか……あのレリーフを護っている、そんな印象だな……」
「そうだね。私も同じ印象を持った。でも、あまり近づけなかったけど、あのレリーフ自体になにかの力は感じなかったわ」
涼姫が言った。
「そこは同意だな。写真は撮れたか?」
ジェノが尋ねると、フィーリアスは当然といった感じで言った。
「そりゃあもう、ばっちり!」
とりあえずの収穫は、この神殿に神器のようなものはないが、ビョルンが以前言っていたレリーフに、この層のほかの場所に目撃情報がない悪霊たちが集き、どうやら護っているようだ、ということだった。
「まあ、あとは鑑定結果次第かな……。
 しかし確かにビョルンが言ったように、フリッグの顔、アルベルティーナにちょっと似てたな」
ジェノが呟く。吹雪は今回、瓦礫の中から比較的損壊の少ない、当時のごくありふれた工芸品などを、どうやらこっそりと転売目的で入手したらしい。一人でにまにまするパートナーを見て、コルセアははーっとため息をついたのだった。

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