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ユグドラシル

闇に瞬く光 前編

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闇に瞬く光 前編
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リンドヴルムを探すものたち2


「凶暴化したリンドヴルムが複数いるなんて、危険すぎでしょ……。
 この階層……取り敢えず、慎重に探索した方が良さそうね。3人しかいないのにリンドヴルムと戦闘なんてゴメンだわ」
オリヴィア・アルテシアは周囲の枝葉を見渡して言った。
「ですね。凶暴化したリンドヴルムが多数住み着いているなんて、危険すぎます。二人共、十分注意して探索しましょう」
ニルフィ・ヴァーミリオンも頷く。
だが暁 刹那はそんなパートナーたちのの慎重論など全く聞いてもいなかった。
「ここにはリンドヴルムが住み着いてる……ほー、虚無の影響で凶暴化。
 そんで体色が黒い? でもって極めつけはエインヘリアルでも手懐けられない、か。へぇ~、そっかそっか……」
上の空でそう言うと、カンナ、詩乃らが発見したというリンドブルムの巣があったという方へ勇んで駆け出してゆく。
「……! 待ちなさい、刹那!! 貴方何でリンドヴルムの巣に向かっているのかしら?!
 ちょっ!!待ってて言っているでしょうッ!」
「え? ちょっ、そっちはリンドヴルムの巣があるって……な、何をする気ですか、刹那?!!」
駆けてゆく刹那の後を追う二人。
「あ、相変わらず……はぁ……あ、足速いわね……貴方……はぁ……はぁ……」
 ……ま、まぁいいわ……で、刹那!貴方こんな所に来て一体何するつもり?!」
「……や、やっと……はぁ……お、追い付いた……そうですよ……刹那?
 私さっきから凄く、すっご~~く嫌な予感がしてならないんですが……」
「ん? よぉ、遅かったな……お、居た居た! 黒竜見~っけ」
ようやく立ち止まった刹那。枝葉を重ねた巣の中に、黒いリンドヴルムの姿があった。
「何って、決まってんだろ? ……おい、単刀直入に言う! 黒竜よ、俺の相棒となれ!」
刹那はリンドブルムを見据え、両腕を胸の前で偉そうに組む。
「はいっ??!!!」
あまりの展開にオリヴィアとニルフィの顎がガクンと落ちた。
「ん? どったの?」
「いや貴方馬鹿ですか?! いきなり何言っちゃてんのよ!! あるわけないでしょ、そんな可能性!!! 」
「情報ありましたよね?! ここのリンドヴルムはエインヘリアルでも手懐けられないって!!」
口々に叫ぶオリヴィアとニルフィを手で制する刹那。
「うん、あったな。けど”絶対に”っては言っていなかったろ? なら万に一つの可能性だってあるんじゃね?」
「軽い……あまりにも……で、大体、何でよりにもよって、ここの凶暴化したリンドヴルムを選んだのよ?!」
オリィアが詰め寄った。
「だって黒いし」
その返答を聞き、ニルフィが目を吊り上げた。
「色?! 色だけで決めたんですか?! それだけで?!」
「あ、お前、色を馬鹿にすんな。結構重要なんだぜ? さて……悪いな、話を途中にしちまっ―――」
世間話でもするように振り返った刹那めがけ、漆黒のリンドブルムが敵意をむき出しにして襲い掛かる。
「刹那ッ!!」
「せ、刹那あああぁぁーーーーーーーーッ!!」
オリヴィアとニルフィが異口同音に叫んだ。
「ハッハー、強さも申し分なさそうで、ますます気に入ったぜ……なるほど。従えたければ俺を倒してみろ、そう言う訳か?  イイねぇ、実にいい、解り易い」
素早く飛んで避けた刹那に向かい、飛竜がすさまじい唸り声をあげ、漆黒の炎を吹きかける。
「お前が勝ったら……俺を食うなり殺すなり、好きにしていいぜ?
 そんぐらいの覚悟がなきゃ、竜なんて生き物を従える事なんざできねぇよ。二人は手ぇ出すなよ?
 これは俺とコイツの、人生賭けた決闘なんだからなぁっ!!」
刹那は剣を握り、リンドヴルム目掛けて駆ける。
「だ、ダメよ刹那!! 戻って!!」
オリヴィアとニルフィが悲鳴に近い絶叫を上げた。

 藤原 千寿は憂わしげな表情で、4層を彷徨っていた。長い褐色の髪をヴェールのようにまとい、アーライルの歌声を低くかすかに響かせて謡う。
(私が憧れた『友』の理想……今はもうあの人が捨ててしまった理想……。私が憧れた『友』の居た証。
 そう、人の為に生きること……人のために事を成す事……『友』が捨ててしまった理想……。
 その理想がかつて存在したことを、私だけでも忘れない為に、私はそれを受け継ぐ……。
 傷ついた探索者全てにに癒しのルーンや癒しの唄を使って助けていこう。今の私にできることはそれしかないから)
「痛ぇ……」
そこここに傷を受けた刹那。傍らにはパートナーたちの全力攻撃と、刹那の剣戟に息絶えた黒いリンドヴルムが亡骸を横たえている。千寿は静かにその傍らに歩み寄り、癒しのルーンからパワーを引き出す。同時に低く癒しの唄で刹那の傷の回復を試みた。
「このまま、しばらく休んでいれば大丈夫でしょう。ですがここは飛竜の巣が固まる場。
 早めに立ち去られることを提案しますよ」
それだけ言うと、つとその場を離れる。たしか地球のオンラインゲームだと辻ヒールとか言う行為だったかしらと千寿はもうかなたのように思われる記憶を呼び起こしていた。
「……さぁ、踊りましょう。永久の輪舞曲を……」

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