【1-4】界霊ククルビタを討伐せよ
一方、シュヴァリエ・ハイパービショップのクラムに乗った
亜莉沙・ルミナスは、魔法陣の効果によって上空からククルビタに挑もうとしていた。すぐ近くには
バルタザール・ルミナスがシュヴァリエ・ドラゴンロードのユリアーヌスに搭乗して冷静な視線でククルビタを見据えている。
「カボチャ野郎! あんたの進軍はここで止めてあげるわ!」
ククルビタの反応を待たずして、亜莉沙はヴァージングブレスを放った。白銀の光がククルビタの顔面を直撃する──すると、
「ショクザイトシテハ、かぼちゃヨリあさりノホウガシュルイホウフダモノネ!」
とクラムが発言した。
「誰が食材やねん、このチャウダー娘っ!」
すかさず突っ込みを入れる亜莉沙。
「……お前たちのやりとりを見ていると、飽きなくていい」
「あたしたち、別に王様の暇つぶししてるわけじゃ」
不意にククルビタが反応し、炎の攻撃を仕掛けてきた。亜莉沙はブレスのダメージを軽減しながらクラムのヒーリングサークルによる回復も受けて、即座に態勢を整える。
「亜莉沙、お前の実力……存分に見せてみろ。俺を飽きさせないのがお前の務めだ」
「仕方ないなぁ……ここはまかせてっ、王様!」
亜莉沙はバルタザールの声を背にホライゾンハープーンを装填し、対界霊能力を持つ槍をククルビタに向かって突き立てた。そしてプルバックドライブのチャージを開始する。周囲の魔力がクラムを包み込み、たちまちエネルギーが蓄えられていく。
チャージが完了すると、亜莉沙は一気にククルビタの死角へと移動した。そしてダンス・マカブルを舞い始める。
バルタザールもタイミングを合わせてダンス・マカブルを発動、二人の息の合った剣舞が巨大なジャック・オー・ランタンを少しずつ切り刻む。息が合った見事な連携攻撃はククルビタに次々とダメージを与えていった。
「ルミナスの舞、ご照覧あれ!」
ククルビタの巨体がだんだん激しく震え始めたが、二人に向かって燃え上がる嫉妬の炎は更なる猛攻を見せる気配を漂わせていた。
「近づきすぎると危険だ!!」
「……王様って……一応、あたしのこと心配してくれるんですね」
「当然だろう。今さら分かりきったことを言うな」
不愛想な言い方ではあったものの、亜莉沙は改めて自分がバルタザールに守られていることを実感したのだった。
少し離れた位置から亜莉沙たちがククルビタと戦う様子を見ていた
ルキナ・クレマティス。自身も召喚した竜に跨り、ククルビタ目がけて空へと舞い上がる。
「手早く倒して、我々もハロウィンを楽しみましょう……!」
そんなルキナを見守るのは、静かな目つきで武器を構える
コウ・サイネリアだ。コウは地上に留まり、ルキナをサポートするために射撃態勢を整えていた。
ルキナがククルビタの底面──中央部分を目指して飛行を続けてギリギリの位置まで近づいたところで、
「……コウさん、援護をお願いします!」
と、コウに合図を送る。
「──了解、任せて」
コウは迅速に銃撃を開始し、ククルビタの注意を引きながら要所を狙った正確な射撃でルキナの進路をサポートしていった。コウの無駄のない動きはアルコーンとしての高い戦闘スキルを物語っている。
ルキナはファンタジアを展開させると、そこへプレイグフィッシーズを放ち、魔力で構成された無数の魚群がククルビタの体を飲み込むように襲いかからせた。予想外の攻撃にククルビタも驚いた様子。
オベロンの祝福を纏っていることで魔力が強化されているルキナは、ククルビタから生命力と魔力を吸収して自らのエネルギーとして取り込もうとした。しかしククルビタが嫉妬の炎を激しく放ち、ルキナに向けて怒りをあらわにする。
嫉妬の炎の影響を受けないよう防御を固めているルキナは、激しい攻撃にも微動だにせずひたすら攻撃を続けた。
タイミングを見てスケアリーバンケットを発動させると、その冷気でククルビタの動きを封じようと試みる。冷気がククルビタの巨体にまとわりつき、表面の炎の勢いがわずかに弱まったように見えた瞬間を逃さず、
「この調子で攻めていきましょう、コウさん!」
ルキナが呼びかける。
コウは地上から的確な狙撃を続け、ククルビタの弱点を確実に狙っていった。追い討ちをかけるように、ルキナも止まることなく攻撃を続けた。ククルビタはかなり激しいダメージを受けている様子だ。
──やがて、ククルビタは不気味な炎で辺りを妖しく照らし出す。
その様子を、
ミシェル・キサラギと
リリック・レインハルトが注意深く見つめていた。
黒薔薇の鎧とアシストユニットによって素早さと回避率を高めたミシェルの動きにククルビタも思わず翻弄されてしまう。
ホライゾンブラックジャケットを羽織り、リープシューズで空を駆ける準備を整えたリリック。それぞれの飛行手段で空中に舞い上がり、お互いの位置を確認し合った二人はハートトゥハートによってよりいっそう連携を密にする。
ククルビタが二人に向かって燃え盛る嫉妬の炎を噴き出した。すでに精神耐性を高めているリリックは炎による精神攻撃を回避したものの、その威力に思わず表情を引き締めた。
「──油断は禁物だな……集中していこう……!!」
リリックはそう言うと、制裁剣ディカイオシュネを握り締め、「レイバーズオブハーキュリーズ」で素早く連続攻撃を繰り出した。その剣撃がククルビタの巨体に打ち込まれるたび、紫の炎が一瞬揺らぎ、ククルビタの表面に小さな傷跡が刻まれていく。
「いい感じです……!! 私も……手加減はいたしませんっ!!」
ミシェルはリリックの攻撃に合わせ、ルクスブレイドでククルビタに斬り込む。リリックとは以心伝心、お互いの動きを補うようにそれぞれが別の角度から連携攻撃を仕掛け、ククルビタの防御を崩していく。氷刃刀の冷気が体を蝕み、少しずつその巨体にダメージが蓄積されていくのが見て取れた。
だが、ククルビタも負けじと攻撃の手を決して緩めない。嫉妬の炎を撒き散らしながら二人に迫ってくるが、ミシェルは天上人の翼で高い機動力を発揮して軽やかに攻撃を回避する。
リリックも軽快に空を駆け、踵部分の空気噴射で瞬時に体勢を立て直しながら攻撃をかわした。
「これで終わりにしようか、ミシェル! とどめの一撃だ!」
リリックはケージオブレイズをククルビタに向けて放つ──その光がククルビタに命中し、後を追うようにしてミシェルがゴッドベインの構えを取った。
「……皆が楽しみにしているハロウィンを、台無しにはさせません……っ!」
ミシェルは六連撃でククルビタを四方八方から斬りつけ、リリックの光線と合わせた連携攻撃でどんどんダメージを蓄積させる。ククルビタの巨体の表面に無数の傷が刻まれていくが、炎が弱まる気配はなく、なおも燃え続ける。
「どうやら、まだ終わらないみたいね……」
ミシェルが息を整えながら言うと、リリックも疲れを見せずに構えを整えた。
──二人の息を合わせた強烈な攻撃を食らったククルビタは、凄まじい雄叫びを上げる。
噴き出された嫉妬の炎が空を不気味に染め上げる中、
朝霧 垂が鋭い眼差しでその巨体を見上げた。
「その程度の炎で、俺たちがビビると思うなよっ!?」
垂はエレメンタルポゼッションを発動すると、
マグナ ガイアを自身に憑依させて一心同体となる。その瞬間、垂の周囲に凛としたオーラが広がった。マグナの能力によってクロスオーバーで発動したバンダリーラインが垂の身体を包み込む。嫉妬の炎の影響を防ぐこの対策は、ククルビタとの戦いを優位に進めるための準備の一つだった。
「──よし、行くぜ!」
精霊剣を手にした垂は、四精霊機を機動兵器として展開する。飛行を開始するとククルビタへと一直線に向かった。ククルビタが放つ嫉妬の炎が空中に広がるが、垂は赤の深融を使って炎を吸収していく。そのまま吸収したエネルギーをオーラスラスターの動力源に変換し、一気に加速してククルビタへと接近する。
そして精霊剣を構えたままマイティスラッシュ&ガードを繰り出し、強烈な精霊剣の一撃をククルビタの表面に叩き込む。攻撃には細雪の効果が付与され、ククルビタの炎の力を弱体化させていく。
「たった一撃でっ……終わるわけねぇよな!」
垂は柄を軸に身体を一回転させ、勢いそのままに剣を引き抜いて再びマイティスラッシュ&ガードを連続で叩き込んだ。斬撃の衝撃がククルビタに炸裂する。
ククルビタの炎が周囲を焼き尽くさんとするように広がるが、バンダリーラインの防御によって垂は動じることなく戦い続ける。
「少し時間はかかりますが、確実に攻めていきましょう……!」
マグナと魔力共有することで、エレメンタルポットで魔力を補充しながら再び攻撃の準備を整える垂。
「どうやら、こいつはまだやる気みたいだな……界霊よ、いくら嫉妬に燃えようが、イチャイチャする奴等はこっちには来ねぇんだよ、大人しく消えてな!」
垂は剣を構え直し、次の一撃を狙うべく再び空を舞った。マグナとの連携攻撃は、ククルビタを確実に弱らせている。
炎を撒き散らすククルビタに対して、今度は
二階堂 壱星と
二階堂 夏織 キャロラインが静かに立ち向かおうとしていた。
「──夏織、準備はいいか?」
壱星が振り向きざまに声をかけると、夏織は真剣な表情で頷く。
「ええ、いつでも大丈夫!」
二人の視線が交わった。夫婦としてだけでなく、戦闘における最高の連携相手としてククルビタに向き合っている。
推し法被を羽織った壱星は、お互いのオーラが共鳴しているのを感じながら祈雨の陣を展開してククルビタとの距離を詰めた。
「周囲の水は夏織へのプレゼントだ、存分に使ってくれ」
こんな時でも思いやりを見せてくれる壱星に、夏織は微笑みを返す。
ククルビタが大きな口から嫉妬の炎を放出してきた。特異者たちの攻撃によって少しずつ弱り始めているとはいえ、攻撃の手を緩める気配は今のところ見られない。壱星は慮弓プロネシスを構えてメテオリックレインを広範囲に放った。光の矢がククルビタに命中する。
「夏織、油断するなよ……っ!!」
夏織は水属性の術式を活性化させて鋭利な氷の刃を生成しながら、襲いかかってくる炎に立ち向かう。
再びククルビタに狙いを定めた壱星。プロネシスの矢を番えて、嫉妬の炎を浄化する勢いで矢を放った。負のエネルギーを削ぐようにしてまばゆい光がククルビタに命中し、動きを鈍らせた。
「鎮静が効いたか……?」
と壱星が呟いた瞬間、ククルビタが目と口から勢いよく炎を噴き出した。
「夏織、寒極の印を頼むっ……!!」
頷いた夏織は冷気を凝縮し、術式でククルビタの炎を少しずつ弱めていった。冷気が嫉妬の炎を包み込むように広がり、その勢いが収まり始める。
しかし、今度はククルビタが反撃の姿勢を見せた。壱星は即座にメテオリックレインを再発動した。
二人の連携でククルビタを追い詰めつつあるように見えるが、その巨体から溢れる怨念のエネルギーはなおも強大だった。炎が再び勢いを増し、周囲を焼き尽くさんとばかりに広がっていく。
「こいつは仕留めるまでにかなり時間がかかりそうだな……」
「そうですね……でも、危ない時は私が守りますから、どうか安心してください」
「ははっ、それなら俺も全力で夏織を守るよ」
二人は微笑みながらククルビタへの挑戦を続けていく。
嫉妬の炎を燃やしながら迫ってくるククルビタを前に、雪火の二重廻を纏った
春夏秋冬 日向が蝉丸を被った──幽世眼を開眼することで、ククルビタの霊力の流れを探り、弱点を見極めることに集中している。
「行くぞっ……!!」
放たれた炎の攻撃を受け流しながら、日向はククルビタに近づいていく。ククルビタが反撃の態勢を整える前に透伸を発動した。氷刃刀の刀身を伸ばしたり戻したりしつつ、意表を突いてククルビタの表面を斬りつけてみせた。伸縮する刀身に惑わされたククルビタは思わず防御が遅れた様子。
再び嫉妬の炎が激しく放たれると、日向はジェニュインメイルの防御力に頼りながら冷静に距離を取った冬椿の態勢に入る。冷気を放つフリをしながら、実際には霊力そのものを凍結させる技を発動した。ククルビタの動きが明らかに鈍る。
「ここが狙い目だ……!」
日向はククルビタの弱点を正確に狙う一撃を叩き込んだ。ククルビタが放つ炎は、先ほどよりは勢いが弱まり始めている。日向は一旦距離を取って、次の攻撃の準備を整えながらククルビタの次の動きを注視した。
少しでも気を緩めればうっかり炎に巻き込まれてしまいかねない。そんな緊張が続く中でも、日向が自由に動き回って攻撃を継続できるのは、ククルビタの移動速度に関係していた。
これまでの戦いによって、無数の攻撃を受けてきたククルビタは自身も気づかないうちにかなり減速しているのだ。
ここがチャンスだとばかりに攻撃を続ける日向。
「加勢するわ!!」
ここからは、小悪魔の仮装をした
エリカ・クラウンハートと
アイ・S・スプレンデンスが参戦する。日向と協力して攻撃を仕掛けたエリカは、
「見た目はハロウィンっぽくて可愛いけど、街を壊すつもりなら許さないわよ!」
そう言ってアイと目を合わせると、ユニゾンウィングスを発動した。そして翼を広げてククルビタの周囲を翻弄する。ククルビタの目が二人の動きを追うが、即座に攻撃することはできないようだ。──ククルビタはかなり弱ってきている。
エリカは想像の獣を発動すると、無数のコウモリを生み出しククルビタへと向かわせた。
「さあ、Trick or Treat♪ お菓子をくれない子はイタズラしちゃうゾ☆」
更に、エリカはケージオブレイズの光線を次々と放つ。アイもユニゾンウィングスで連携するとククルビタの動きを封じるように攻撃を仕掛けていった。
「アイ、今がチャーンス♪」
「了解ですわ!」
エリカがククルビタを引き寄せた隙に、アイが強力な攻撃を放った。ククルビタはすぐに反撃を始め、大きな目から放たれる嫉妬の炎がエリカとアイを狙うが、エリカは炎を吸収しつつ、ヴィシュヌの護符の効果で嫉妬に囚われることを回避する。
「──界霊の思いどおりになんて……ならないんだからっっ……!!」
エリカはトライアルソーラーガンを構えると、即座に浄化の光線を放った。界霊特効を持つ光線はククルビタの表面を焼き、その巨体を揺らめかせる。コウモリたちもククルビタの動きを封じようと連なって羽ばたいている。
目と口から紫の炎が再び放たれるとエリカは即座にアイギスで炎を受け止め、同時にその炎を反射してククルビタに叩きつけた。巨体が再び大きく傾くが、それでもなお怨念の力は衰えない。
「アイ、もう一息よ!」
「──全力でいきますわっっ!」
エリカは再びケージオブレイズを発動し、波状攻撃でククルビタの動きを封じる。アイもトライアルソーラーガンの光線を直撃させて追撃を続ける二人。
ククルビタの巨大な口から嫉妬の炎が大きく放たれる。エリカはすぐに回避行動を取るが、炎の範囲攻撃が二人を包み込もうとした。即座にアイがユニゾンウィングスの防御膜を広げ、炎の直撃を防ぐ。
「ここが勝負時ですわ!」
エリカとアイは渾身の一撃を仕掛けるべく、同時に飛び上がる。
トライアルソーラーガンの火炎放射モードとケージオブレイズが交差し、ククルビタの巨体がついに低空飛行を始めた。
「せーの……ハッピーハロウィン~♪」
エリカとアイ、もう一度二人同時に渾身の一撃を仕掛ける。ククルビタの炎が一度だけ大きく噴射する。一瞬、エリカは勝利を確信しかけたがククルビタはなおも立ち上がる気配を見せた。
「えええ? まだやるつもりなの……!?」
エリカは小さく息をつきながら、アイと再び目を合わせる。二人の連携攻撃は確実にククルビタを弱らせたはずだ。
「アイ、まだ戦えるわよね?」
「もちろんっ、まだまだこれからですわよ……!!」
二人は再びククルビタに向かって飛び立った。特異者たちの不屈の闘志を前にして、ククルビタはどこまで戦い続けるのだろうか──。