■プロローグ■
――自由都市連盟、アエリウス城塞
本来であれば、
アエリウス城塞を守備するソルジャーの一部が暴徒化し、“カウンターソルジャー”
マッシュをはじめ、正気を保っているソルジャーやプロスペクターの機動兵器に攻撃を仕掛けて来ていた。
しかもそれだけではない。アエリウス城塞近くの街の民も護身用のビームガンなどを持って、機動兵器へ攻撃を仕掛けているのだ。
「……原因はあれか」
マッシュはつい最近乗り換えた、アーマードスレイヴ(暗視型)をカスタマイズしたマッシュカスタム改の中から、上空を見上げた。
そこには最近自由都市連盟のアバターアイドルの間で何かと話題の、
『山下アバターアイドルデリバリーサービス(山下AAD)』のデリバリーでやってきたアバターアイドルのホログラムライブが開催されている。
アバターアイドル
“まろん☆ぐらっせ”推しの彼は、『(山下AAD)』の存在や活動は知っているが、デリバリーでやってきたアバターアイドルのホログラムライブに全く興味がなく、マッシュカスタム改の中で今日も“まろん☆ぐらっせ”のライブ配信録画をエンドレスで聞いていたのが正気を保っていられた要因のようだ。
同様に、正気を保っているソルジャーやプロスペクターも、別のアバターアイドルのライブを聞いていたようだ。
「……やはり“まろん☆ぐらっせ”は、俺の天使だ」
改めて“まろん☆ぐらっせ”に感謝すると、マッシュは暴動を指示していると思しき複製機体
ベルペオルに目を付け、Gアームガトリングを掃射する。
同時に
首長都市フリーダムシティにいる
盟主アリス・エイヴァリーに状況を報告した。
『アエリウス城塞近くの街の市民が、アエリウス城塞を攻撃しているのですか!?』
「それだけじゃない。焔生たまが機動兵器を持ち出してる」
ベルペオルはGアームガトリングの掃射を軽々と回避すると、レーザーエッジアサルトガンで応戦してくる。
マッシュは足の裏にローラーホイールで回避する。
盟主アリスと通信している間も、視線は常にベルペオルから離さず攻撃に対応するあたり、彼の技量の高さが伺える。
とはいえ。
(……流石は焔生たまだ。アリスと通信中とはいえ、的確に俺を落としに来ている)
マッシュも素直に『敵の回したくない一人』として認めるところである。
『アエリウス城塞が陥落すれば、
“白き静謐”は
首長都市フリーダムシティを落としやすくなります。応援を送りますので、何としてももたせてください。ただ』
「分かってはいるが、相手が相手だからな、期待はしないで欲しい……とはいえ、俺も焔生たまが裏切るとは考えにくい。
“複製人士”の可能性もあると考慮すべきだろう」
(……焔生たまに、自由都市連盟を裏切る理由が思いつかない。味方であれば頼もしい奴ほど、敵に回ると厄介な、古典的なパターンだな。“複製人士”と見て間違いないだろう)
マッシュは肩にマウントしている4連装ミサイル・ランチャーからスモークディスチャージャーを全弾発射し、ベルペオルの視界を遮る。合わせて他の暴徒化したソルジャーや市民たちもスモークディスチャージャーに巻き込む。
「……この通信が聞こえている奴は、アエリウス城塞の第二砲塔付近まで来てくれ。盟主アリスからの援軍が来るまで、一度そこで体制を立て直す」
その隙に正気を保っているソルジャーやプロスペクターたちに連絡を入れる。
アエリウス城塞は四稜郭形の星形要塞で、第二砲塔は街に近い場所になる。
ソルジャーの暴徒化も厄介だが、市民の方が数が多く、こちらの対処が優先だろうとマッシュはこの場所を選択した。
そこで体制の立て直しを図りつつ、盟主アリスが送ってくる応援を待つ布陣を敷くのだった。
■目次■
プロローグ・目次
【1】棹銅の街の暴徒を止める(皇国・王朝)
・暴動の波を止めるため
・止めるための術を講じて
・護るべき証を示して
・大いなる刃を振るう時
【2】アエリウス城塞の暴徒を止める(連盟・王朝)
・防衛、アエリウス城塞
・歌は高らかに奏でられ
・複製人士との戦い
【3】『山下AAD』の飛空艦を撃墜する(皇国・王朝・連盟)
棹銅の街 上空 その一
棹銅の街 上空 その二
アエリウス城塞 上空 その一
アエリウス城塞 上空 その二
エピローグ