・指揮官機討伐(全GA&その他)
苺炎・クロイツはヴェロシティ・ノヴァ(王朝)を駆り、ただひたすらルーンセレスティアルのみを追い求めていた。
『王朝に協力するべグライターが居てもいいでしょう? 肩入れする勢力は違えども、今は味方なのだから』
ここはそういう戦場だ。
自分が斬りたい敵を斬るため、苺炎はここにいる。
あちこちで感じる魔力反応は、おそらく周囲で戦う味方の機体や、敵であるルーンラプター、ルーンファイターらのものだろう。
『……見つけた!』
ルーンセレスティアルの特徴的な白い機体を発見した苺炎は、ヴェロシティ・ノヴァ(王朝)に射撃姿勢を取らせた。
ヴェロシティ・ノヴァ(王朝)に反応し、ルーンセレスティアルが加速して突撃してくる。
激しく撃ち合いながら行われた間合いの取り合いは、ルーンセレスティアルが制する。
間合いを離せないと判断した苺炎も、逆に自身の魔力をチャージの加速力に載せて突進し、互いにマジックミサイルアックスとセレスティアルソードをぶつけ合って格闘戦に転じた。
ヴェロシティ・ノヴァ(王朝)がマジックミサイルアックスを振り下ろせば、それを掻い潜ってルーンセレスティアルもセレスティアルソードを横薙ぎに薙ぎ払ってくる。
しかしどちらも当たらず、両者回避姿勢からほぼ同時に放たれた、至近距離からのマジックミサイルとルーンチャージャーすら、共に回避しきってみせた。
二機とも尋常な反応速度ではない。
ルーンラプターやルーンファイターを主に相手として戦っていた瑛心は、苺炎と戦いながら上空を移動するルーンセレスティアルを偶然発見した。
どうも、ルーンセレスティアルは瑛心の存在に気付いていないようだ。
『……狙ってみるか』
シールドと推進器を兼ねる翼を狙い、弩で矢を射かけた。
しかし、寸前で避けられる。
『隙を見せたわね!』
モノクルターゲットで照準を定め、後退しながら苺炎が放ったミサイルは、ルーンセレスティアルに直撃して爆発する。
煙の中から飛び出てきたルーンセレスティアルにそのまま追い縋られ、再び斬りつけられるものの、回避した。
単純な最高速では飛行速度に制限がないルーンセレスティアルが上のようだが、技量による反応速度自体は互角か。
瑛心の大鐵神・野武士に気付いたルーンセレスティアルが、攻撃対象を変更した。
撃ち合いになり、瑛心はたちまち不利になっていく。
しかしその間に苺炎がたて続けに攻撃をヒットさせ、それ以上瑛心を狙うことを許さない。
『……無理はできんが、味方を残して撤退もできんな』
付き合うことを決めた瑛心は、苺炎と力を合わせてルーンセレスティアルの相手をした。
各所で戦っていた全GAの面々が、ルーンセレスティアルに気付いて加勢を始める。
戦場全体で、所属の垣根を問わず、力を結集させた協力戦が始まった。
『俺が追い込んでやる! 合わせられる奴は合わせてくれ!』
潤也がルーンセレスティアル目がけて、試製蜂巣砲の弾幕を浴びせかけた。
狙うのは徹底して翼だ。
そこが敵機の推進力の要であることは疑いようもない。
しかし同時に防御の要を担うシールドの役目を持っており、凄まじく耐久性のあるものだった。
回避機動を取りもせず、ルーンセレスティアルはルーンチャージャーを撃ちながら潤也目掛けて急降下してくる。
セレスティアルソードに持ち替えるルーンセレスティアルへ潤也も試製蜂巣砲の対空射撃を撃ち込むも、強引に突破されて斬りかかられた。
『何の!』
咄嗟に機体の腕で斬撃を受け止め、全力で後退しつつ、前方で弾幕を展開してルーンセレスティアルからの追撃を牽制する。
一度ルーンセレスティアルが距離を取り、神速の加速を見せて再突入を試みる。
ルーンセレスティアルの動きに気付いたのは、フォーゼルだった。
死角に頼らない感知に、反応が引っかかったのだ。
『攻撃が来るぞ! 北側だ!』
仲間に警告を飛ばしつつ、フォーゼルは自らもサイフォスキャノン(皇国)に回避行動を取らせる。
ルーンチャージャーによる一撃が、機体のすぐ傍を通過していった。
指揮官機であるルーンセレスティアルが相手でも、カッキンチームの戦略は変わらない。
十字砲火で墜落させ、袋叩き。これに尽きる。
しかしルーンセレスティアルは、優やリーネではなく、その背後にいる生身のレニを狙っていた。
『小癪な真似をしおる!』
気付いたリーネが土の壁を作り出し、レニに向けて放たれたルーンチャージャーの到達を遅らせ、回避する時間を稼ぐ。
本当は、近接戦闘を仕掛けてくるタイミングに合わせて使い、転倒を誘いたかったのだが、ルーンセレスティアルは射撃戦ばかり行っているので、中々機会がない。
* * *
中々決定打を与えられない展開が続くが、ついにルーンセレスティアルが決定的な隙を見せた。
ずっと、一夫は手薬煉引いて待っていた。
ルーンセレスティアルに一撃を加えることのできる瞬間を。
『今ですな』
のんびりとした声音とは裏腹に、その狙いは恐ろしく正確で。
空気の砲弾を受け、かまいたちのように切り刻まれたルーンセレスティアルが、墜ちた。
一斉攻撃が始まる。
『攻撃を開始します』
スループ型飛空艦から、桜花の砲撃が叩き込まれた。
『この好機、逃すものか』
サイフォスキャノン(皇国)を走りこませたフォーゼルが、ルーンセレスティアルに新刀を振るい、一呼吸で刹那の斬撃を浴びせた。
ルーンセレスティアルへ、優の大鐵神・宮毘羅も攻撃する。
飛行能力とスラスターを失って地上に落ちてくる瞬間を狙おうと、下腹部搭載型無誘導弾による牽制射撃を続ける。
『しぶといな……! いい加減落ちろ!』
十字砲火にはウォークスも加わり、ルーンセレスティアルへの攻撃を加えた。
『この一撃を、見切れるか!』
天喰刃の衝撃波が地上を疾駆する。
襲われた直後でも、レニは臆せず自らの役目を果たした。
「この程度で臆さないわ……! 修理するわよ!」
前線でルーンセレスティアルと戦っていた優、ウォークスらを順番にを呼び寄せ、機体の整備を行い小さな損傷、各所に生じていた些細な動力系の不具合などから、中破程度の損傷まで幅広く修理を行った。
猛攻を受けたルーンセレスティアルが、ついに攻撃を諦めて反転する。
飛んでいった先のはるか遠くには、ライトニングの追撃を振り払ってどこかに消えた敵大型飛空艦がうっすらと見えた。
しかしその姿は、ルーンセレスティアルと共にすぐ見えなくなった。
状態が良さそうなものがあれば回収して帰りたいと思っていたアリーチェは撃墜したルーンラプターやルーンファイターの残骸を漁るものの、激戦だったせいかどれも損傷がひどく、見つけたのはガラクタばかりで使えそうな残骸はなかった。