マンゴーステージ二回戦
二回戦第一試合は
戒・クレイル、
京・ハワードの二人と、
コトミヤ・M・フォーゼルランド、
ソッソルト・M・フォーゼルランドの二人による勝負だ。
「相手はいきなり回避不能の範囲攻撃をしてくるぞ。どうする、王様」
「そうはさせないわ……と言いたいところだけど、そこからが始まりよ」
一回戦の戦いを見ていたコトミヤとソッソルトは、身の毛もよだつ京の大爆発に警戒するが、自分たちでは対抗する手段はなく、気合で乗り切るしかないと判断する。
「向こうもいいコンビネーションでしたが……」
「こちらも負けてはいません!」
対する戒と京は、コトミヤとソッソルトの連携能力に最大限の警戒をし、崩しにかかる戦法を取るようだ。
二回戦第一試合が始まる。
やはり先手を打ったのは、京。京は一回戦と同様に『ビッグバンアサルト』を実行し、戦場に大爆発を起こす。あまりの威力にコトミヤとソッソルトが召喚した『リヴィルバレット』の人形は即座に消え失せ、二人もまた大きなダメージを受ける。が、予想された展開だったため、二人とも防御が間に合い倒れることはなかった。
コトミヤとソッソルトが次に予想したのは、戒の急接近だ。
「もらいますよ……!」
「下がって、臣下!」
大爆発とともにやはり距離を詰めていた戒の強襲を、ソッソルトは『カヴァーチャ』の力を解放することで受け止める。
そして、後退したコトミヤは慌てることなく『楽土幻想Ⅱ』を実行。開幕で受けた大ダメージを回復させ、戦況を五分に戻す。そしてそのまま、一人突出した戒を仕留めるべく、連携攻撃を仕掛けた。
「く……!」
コトミヤとソッソルトは『フォーフォールド』、『マルティプリケイション』で武器の数を増やした状態で、戒を挟み込むように猛攻を繰り出す。
戒は上手く回避、防御しながら『チェーンズリッパー』などを放つが、コトミヤとソッソルトの連携は崩れない。
「それなら……!」
そこへ、京が遠距離から『ジャスティシアブレイド“ジャスティシアブレイド・虹”』による光弾を放ち、牽制することで連携を崩しにかかる。そして少しずつ距離を詰め、戒と接近戦の連携を取る。
僅かに生じた余裕の間に、戒は『エナジーマンゴーグミ“芒果グミ”』を食べることで体力を回復し、すぐに連携攻撃に戻る。
だが、そここそが連携力の差だった。戒と京はどちらかが消耗すればどちらかがその間に奮戦する形で対応しているが、コトミヤとソッソルトは『連星の両雄』で偉能力、魔力を共有しているため、入れ替わる必要がほぼなく、互いの消耗度も常に把握できているため連携が途切れることがない。
もっとも、体力はその限りではないため、これ以上戦闘の長期化が進むのはお互い同じ状況だ。
しかし時間が経つにつれ、連携力の差は徐々にはっきりし始め、コトミヤとソッソルトが優勢となる。その優位を見逃さず、相手が態勢を崩した瞬間、コトミヤは二つの『ヤルングレイプ』、『雷仁拳』と『義風拳』の力を解放し、巨大な拳を京、戒へと続け様に繰り出し、打倒した。
二回戦第一試合の勝者は、コトミヤとソッソルトの二人となった。
第二試合は
信道 正義、
納屋 タヱ子の二人と、
桐ヶ谷 遥、
ロワ・エレマンの二人の対決だ。
例の如く正義とタヱ子は『カモフラージュスーツ』を纏い、リング上で姿を消して戦闘を開始する。二人は一回戦での遥、ロワの戦いぶりから、勝負は短期戦、どころか瞬殺しなければ勝ち目はないと踏み、すぐに仕掛けた。
だが、そんな正義とタヱ子の初手よりも早く、遥は諸々の準備を整えると、『ロストエリア』を実行。再びリング状を灼熱地獄に変えてしまった。そして『ソリッドスクロール“不動”』で防御を固め長期戦の構えを取った。
(攻め放題だ……! どっちが先に倒れるか、勝負……!)
正義は守りを固めた遥に対し、『ビームバスターショット』による猛攻を加えながら接近し、近付いたところで『デュアルビームソード』に持ち替え斬りかかる。
だが、全ての攻撃を受け続けるつもりで動かないわけではない遥は、正義の攻撃をよく見定め、身を守ることに注力。『復讐の牙』による反射効果や『恨炎のロザリア』による自動反撃を織り交ぜながら、正義の猛攻に対応する。
攻めている正義のほうが、圧倒的に消耗が激しい。このままではただ立っているだけよりも早く決着がついてしまうと判断した正義は『サイコハイパワー』を実行。リミッターを解除した身体能力を以て、遥の守りを崩しにかかる。
この猛攻に、遥は徐々に押されていき、確かなダメージを全身に受け続ける。それでも倒れないのは、耐えれば勝ちだと信じているからだ。
そんな防御一辺倒になった遥に、タヱ子が接近する。
「この熱は、消させてもらいます」
そして、『オールディスペル』を実行した。
全ての強化効果が一気に無効化されたことによって、状況はリセットされる。
勝負はここからだ、という状況になるのがタヱ子の理想だったのだが、消耗率は明らかだった。
強化効果を無効化されても、ほぼ十全に動ける遥、ロワの二人と、捨て身の猛攻を行ったために行動不能となってしまった正義、これまでに蓄積されたダメージが回復できていないタヱ子の二人。その体力差が最後まで覆ることはなく、遥とロワは身動きの取れない正義をまずは仕留めると、次いでタヱ子を連携攻撃で打倒した。
二回戦第二試合の勝者は、遥とロワの二人となった。
第三試合は
佐門 伽傳、
シャブダ・ボーディの二人と、
優・コーデュロイ、
ルージュ・コーデュロイの二人の勝負だ。
伽傳はシャブダを武器に憑依させることで、優とルージュはそれぞれ原典回帰を行うことで準備を整えると、すぐに衝突した。
(物理攻撃力を下げる領域、厄介であるが……)
優の展開した『魔女の夜宴』による特殊な領域は、武器による手数で攻める伽傳にとってはあまりに不利な空間だ。しかし、やってみなければわからないとし、伽傳は『依代装備:黒蓮乃戈』と『鬼面金剛杵』を、『カラリの使い手』と『羅刹鬼眼王』によって巧みに操り猛攻を加える。
しかしやはりその攻撃力は明らかに落ちており、簡単にいなされた挙句『サダルスウドの覚醒』によって全ての攻撃が魔法攻撃と化した優の『空狐剣・改』の斬撃で反撃されてしまう。
(このまま押し勝つつもりで攻めましょう……!)
後方で構えるルージュに出番を回すまでもなく、このまま攻め切ろうと優は空狐剣と『殺生鏡』による狐火で伽傳に猛攻を加え、追い詰めていく。
この猛攻に対しても、伽傳は武器による防御や回避以外の対策は打てておらず、反撃の隙は見出せない。
だが、まだ勝負は決していない。
伽傳は賭けに出る心づもりで、シャブダに『神霊化』を実行させ『試製AAツクモデバイス』を取り込むことで全身にAA効果を持たせる。
(まずい……!)
アバターへの特攻を得た伽傳を見て危険と判断したルージュが、機先を制するために『星光の鍵』による魔力のレーザーを放つ。もし何かがあって対策されたとしても、伽傳をその場に固定することはできるはず。それだけやれれば、優ならば十分に伽傳を仕留められるだろう。
そうして放たれたレーザーは身動きの取れなくなった伽傳に直撃する。そして、ルージュの攻撃開始に合わせて動いていた優が、追撃を加えるべく肉薄する。レーザーを受けて倒れないまでも、ダメージは確実なはず。ここで倒し切るにはもう一手必要と考えたからだ。
そんな優の予想通り、伽傳は耐えていた。その理由は、動けないままで『電光石火』を実行し、協力効果による防御結界が展開されていたからだ。星光の鍵による固定効果が切れた瞬間、伽傳は狙い澄ましたように優へと突撃。神霊化で取り込んだ『雷水仙』の効果を乗せた一撃を、回避不可能なタイミングで優に見舞った。
「く……! う!?」
強烈な一撃ではあったが、やはり威力は特殊領域の中で落ちている。しかし、その拘束効果は発揮されていた。
「終わりだ」
そして動けなくなった優に対し、『レイヤーオブアバターズ』を纏うことで巨大化した『金剛砕破』のオーラを見舞った。
魔法攻撃の威力が向上する領域内での攻撃だったこともあり、伽傳の一撃は優の意識を一瞬で刈り取り、優はその場に倒れる。
「まだっ……!」
ルージュはすぐに伽傳を攻撃しようとしたが、すぐに神霊化による霊力の波動で反撃され、続く伽傳の猛攻で優と同様に意識を手放した。
二回戦第三試合の勝者は、伽傳とシャブダの二人となった。
二回戦最後の試合は、
ルキナ・クレマティス、
オリヴィア・アルベルトの二人と、シード枠として一回戦を免除されたリュドミラ、ハイネの二人の勝負だ。
ルキナは『ディープユニゾン』でオリヴィアと同調すると、やはり一回戦と動揺に炎と熱のフィールドを展開した。
「ぬうう! 服装を間違えたのだ! 耐火服でも着てくるべきだったのだ!」
「真夏の海でそんな恰好してくる人、いませんよ……!」
リュドミラはその俊敏さを活かし、何とかルキナの懐まで潜り込み、この領域を解除しようとしている。
そんなリュドミラを少しでも十全に送り届けるためハイネは氷の魔術をリュドミラの周囲に展開し、彼女を守ろうとする。
だが、その程度の氷は一瞬で解け、熱を緩和する助けにもならない。リュドミラ自身はパイロキネシスと使い手と言っても、熱や炎に強力な耐性を持っているわけでもない。
(近付いて来るのはリュドミラさん……となると、相性は良さそうです。このまま押し切りますよ!)
更に悪いことに、ルキナは自身の展開する炎熱の領域への耐性を得るために、身に着けた『アダプトメイル』に耐火処理を施していた。仮にリュドミラがルキナに辿り着いても、得意のパイロキネシスでは大ダメージは見込めないだろう。
戦況的にも精神的にも優位に立ったルキナは、炎熱に加えて『ライトニング・タイ』から電撃を放ち、後方でリュドミラを支えるハイネを攻撃する。
「くっ……炎だけでも厳しいのに……!」
ハイネは必死に防御するが、続け様に放たれる電撃を受け、その場に倒れる。
「こ、ここまでか……!」
炎熱の領域を解除したあとを任せようと考えていたハイネが倒れたことでリュドミラの心もそこで折れ、同じく倒れ伏した。
勝者はルキナとオリヴィアの二人となった。