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海辺のグミグミ、タッグトーナメント!

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海辺のグミグミ、タッグトーナメント!
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【3】海辺でグミ作り―5

「忙しい中来てくれてありがとね~キョウちゃん」
「まぁ息抜きは必要だからね。で、これが件のグミ坊主か」
 紫月 幸人キョウ・サワギを連れて浜辺を訪れていた。
 キョウは周囲に広がるグミ坊主を興味深げに観察している。
「攻撃するなり食料を渡すなりすれば味を変化させるのだったか。何か準備はしているんだろうな?」
「もちろん。まずはこれかな」
 幸人が取り出したのは抹茶のチーズケーキ。グミ坊主の上にそっと置いてみると、みるみる内にケーキはグミに吸収され、その周囲だけ緑色のグミに変化する。
「毒見役をお願いできるかな?」
「はいはーい」
 白みがかった緑色のグミを幸人が一口千切り、食べる。口の中にコクのあるチーズの風味が広がり、後から抹茶の苦みがほんのり感じられる。
「問題は無いようだね。ふむ……なるほど。これは今与えたケーキと同じ味かい?」
「そうだね。チーズ味のグミなんて珍しいでしょ? キョウちゃんどう? これ好き?」
「別に悪くは無いが、個人的にはもっと機能性のある物を作りたい所だ」
「それじゃ次はコレ使ってみよっか」
 幸人は境屋印のWH栄養ドリンクをグミ坊主に与える。チーズ味と混ざると美味しく出来るか怪しいので、別の場所でグミを製造する。
「疲労回復効果のある栄養ドリンクだから、食べたら元気になるグミが出来るんじゃないかなぁ」
 一口サイズのグミを二つ作り、片方をキョウへ渡してから自分が先に食べる。想像通り、栄養ドリンクの味のグミだ。
「ふむ、疲労回復が可能なグミか。飲料とはまた違った需要があるだろうね。だが似たような物は他にも存在しているし、何よりグミ坊主に気に入られなければすぐに消滅するのだろう? ただ栄養ドリンクを吸収させただけでは気にいってもらうのは難しいんじゃないかね?」
「それもそっかぁ。まぁ、キョウちゃんが少しでも元気出たならそれでいいかなぁ?」
「まあせっかく作ってくれた事だし、無駄にするのは忍びないからね。残りは後で頂くとするよ。それで、今日はグミを作って終わりかい?」
「んーどうしよっか。せっかく海に来たんだし何か遊びたいよねぇ」
 幸人は暫く悩んだが特に案が浮かばない。とりあえず、何か思いつくまで二人で散歩することにした。
 
 
「グミ作り、翔くんは何味にする?」
「んー、とりあえず持ってきたコーラでいいか。そっちは?」
「私は『空京タワーチョコ』と『アイスティー』と『空京カフェオレ』混ぜてチャレンジ。翔くんも何か混ぜてみない?」
「混ぜる……か。何か持ってたっけな」
 調理場を借りてグミ作りを開始する桐生 理知辻永 翔
 理知は材料をそれぞれ別のグミ坊主の欠片に投入し、三色のグミを作る。それを捏ねたりくっつけたりして綺麗なマーブル模様を作ろうと試すが、綺麗に同化してしまって中々うまくいかない。
 試行錯誤した結果、チョコレート味のグミに少しずつ紅茶とカフェオレを加えていくと、3色でグラデーションになるグミを作る事が出来た。
「出来たよ。翔くんの方はどう?」
「こっちも出来てる。そこで買ってきたラムネを混ぜてみた。色は濁ったが味は悪くない筈だ」
 これから試食、という所で。理知は遊び心で自身にレビテートを使い、浮かんだ状態で暫くグミに触れてみる。
 その状態で暫く念じていると、想念に影響されるグミ坊主から出来たグミ達はふわふわと宙に浮かび始めた。
「出来た! 見て、ふわふわして面白いよ」
「へぇ、こんな事もできるのか。……これ、食べたらどうなるんだ?」
 翔は浮かんでいるグミを一つ掴んで食べてみる。
「翔くん、美味しい?」
「ああ、味は普通だな。美味いよ」
 理知も自分が作ったグミを食べる。続けて、翔が作った方も一口。どちらも味の方向性は違えど、美味しい。
「そうだ、グミを切ってパーツを組み立ててイコングミ作れないかな。ちょっとやってみない?」
「へぇ、面白そうだな」
 理知はグミをイコンのパーツの形にカットしていく。翔も乗り気のようで、理知とは別のパーツを真剣に作り始めた。
 ついつい熱中してしまい、部品の数は細かく、多くなっていく。ふと理知が視線を上げれば、目の前にはグミに集中している翔の姿が。気づかれないようにそっと席を立ち、その背後へ移動する。
 音を立てないようにウォーターガンを構え、そのまま翔の背中へ水を発射した。
「うぉっ!?」
 肩を跳ね上げた翔が慌てた様子で振り向く。
「隙あり! だよ」
「お前なぁ……」
 ジト目で睨みつけられた理知が小さく舌を出す。翔はやれやれといった様子で肩を竦め、元の作業に戻る。理知も一しきり笑った後、同じようにパーツ作りを再開する。
 グミの粘着力ではうまくくっつかないので、プラモデルのように凹凸を作って組み立てる形にする。組み立てて遊んだ後は、分解しながらカット時に出た破片も纏めて美味しく頂くのだった。
 
 
「さて、グミ作りだが……生憎と作る方は専門外でな。ペシュカよ、何か希望はあるか?」
 黄泉ヶ丘 蔵人ペシュカ(Pe-2)を連れて浜辺に来ていた。
 グミ作りに使えそうな物はいくつか持ってきているが、可能ならペシュカの好みに合うものを作りたい。その為、先に何か入れたい物、作りたい味が無いか尋ねておく。
「ペシュカちゃんもそんなに詳しくない……というか、作り方も普通じゃないみたいだし今回はお任せするわ。美味しい物作って頂戴ね」
「ふむ、そういう事なら任せてもらおう」
 グミ作りを一任された蔵人はペシュカも気に入りそうなグミを考える。
 まずはアーモリーから持ち込んだ瓶ラムネをグミ坊主へ投入。青く爽やかなラムネ味グミに変化させる。
「愛がどれだけ熱く滾り迸ろうとも、残暑を乗り切るスイーツの刺激は冷たきものでなければならん」
 続けてグミ坊主へ向けてメイフライキャノンを発射。着弾地点のグミを凍り付かる。さらにフロストブロウの冷気で追撃し、冷気でグミを完全に冷凍すると共に雹を命中させていく。
「ククク……残暑も吹き飛ぶクールなグミの完成だ。名づけるなら『クールラムネグミ』といった所か」
「へぇ、美味しそうね。でもこれ、ちょっと食べ辛いかしら……ってあら?」
 凍っていたグミは小さなグミ坊主に変化し、本体のグミ坊主から分離する。冷気を放つ青いグミ坊主は一口サイズのグミを二人へ差し出した。
 蔵人が先に味見をする。氷のように冷たい、ラムネ味のグミだ。凍らせている分歯ごたえも強めになっている。
「ふぅん、悪くないんじゃない? 身体の中から冷やせるし、夏のビーチにぴったりね」
「ほう、ペシュカも気に入ってくれたか。愛する者と味の好みを共有できるというのは、何とも喜ばしい事だな」
「あら、調子に乗らない事ね。ペシュカちゃんの胃袋を掴みたいならこれの百倍は美味しいものを準備しないと駄目よ」
「ならば百倍思いを込めて作らねばな。さあグミ坊主よ、我が冷気、受け止め切れるか!」
 蔵人はグミ坊主をさらに美味しくするべく、ラムネの量を調整し冷気を放ってさらに冷たく冷やしていく。
「そんなに頑張ってもお礼なんてしないわよ?」
「構わんさ。ペシュカの可憐で可愛らしい反応が見られるだけで俺は満足だ」
「嗚呼、ペシュカちゃんの可愛いさって罪よね」
 ふふんっ、と自分の可愛さに自信ありありとばかりに胸を逸らすペシュカだった。


 砂原 秋良桔梗院 桜華を誘い、グミ作りをするためにビーチを訪れていた。
「グミどすか……作る物は決めてはりますの?」
「はい、とりあえずのイメージは虹色フルコースという感じですね」
 秋良は虹色れしぴ≧∀≦とフルコースを組み合わせ、色とりどりのグミのフルコースを作る予定だ。フルコースだけでは毒や爆発といった危険な要素が付加されてしまうが、それを虹色れしぴとグミ坊主の特性で抑えるか、せめて危険を伴わない要素に抑えられないかと考えている。
「せっかくなので、桜華さんも何か作ってみませんか?」
「んー、あては秋良はんのお手伝いをしましょうかね。その方が面白そうやわぁ」
「そうですか……それでは下ごしらえの方お願いしてもよろしいでしょうか?」
「ええよ。任しとき」
 二人はグミ坊主から切り取ってきた欠片を使ってグミを作っていく。調理中も勝手にグミが性質を変えてしまうので苦労したが、試行錯誤の末どうにか完成にこぎつけた。
 出来上がったのは虹と同じ七色のグミ。だが異なるのは色合いだけではない。
「ほぉ、全部味も食感も違うんやねぇ」
 桜華がグミを試食する。七色のグミはそれぞれ違う味になっており、さらに口に入れるとパチパチと弾けたりシュワシュワと炭酸のような感覚がしたりと、様々な食感を楽しめる。
 複数のグミを一緒に食べてもまた違った味がし、食べていて楽しい。毒の類は感じられない。グミ坊主がこちらの意図をうまく汲み取ってくれたようだ。
「良かった、美味しく出来たみたいですね」
「あてはこの紫のが気に入りましたわ」
「私はこちらの赤い方でしょうか……組み合わせても美味しいので悩みますね」
 色とりどりのグミをつまみながら、桜華は愉快気に呟く。
「ふふっ、菓子作り……というには少々珍妙なもんが混ざってはりましたが、たまにはこういうのもええもんやね」
「楽しんで貰えたなら何よりです。この後は、せっかくお互い水着になっているので少し海で遊びませんか?」
「ほなら少し移動しましょか。ここらの海はグミで埋まっとって遊べへんからね」
 遊びに行く前に、残っているグミを全て食べきる。一つずつ食べたり、二種類一緒に口に入れたり。組み合わせを変えながら楽しく食べ終えたのだった。
 
 
「ふむ……この位あれば十分でしょう」
 スレイ・スプレイグは浜辺に乗り上げているグミ坊主の欠片を採取していた。必要な量が集まると波打ち際から離れ、海の家の調理場に向かう。
 調理場ではエーデル・アバルトが紅茶の準備をしていた。
「お帰りなさい。グミは集まったのかしら?」
「ええ。特に抵抗してくる事もありませんし、思っていたよりも大量に打ち上げられていましたからね」
 スレイはテーブルの上に集めてきたグミ坊主の欠片を並べ、早速グミ作りを開始する。
 作るのは紅茶グミ。どの程度紅茶を含ませるのが良いか分からないので、とりあえず一つ作ってみる。
「香りが殆ど飛んでしまっているわね。次はこちらの紅茶を試して貰える?」
 紅茶への造詣が深いエーデルにアドバイスを貰いながら、少しずつ味を変化させる。特に香りには拘り、口に入れた際に紅茶の芳醇な香りが感じられるよう、微調整を繰り返していく。
「冷やす時にどうしても香りが弱くなってしまうわね……」
「それなら、こういうのはどうでしょうか」
 スレイは一度紅茶のジュレを作り、それを紅茶味のグミの中に注入する。冷やし固めて食べてみると、表層はほんのりと紅茶の味がして、中のジュレが出てきた瞬間に口の中に濃い紅茶の香りが広がった。
 隣で試食をしていたエーデルも満足そうに頷く。
「ジュレにしたのは正解ね。食感も悪くないし、しっかりと香りが残っている」
「エーデルにお墨付きを貰えたのならグミ坊主に提出しても良さそうですね。もし気にいって貰えて量産できるなら、今後は忙しい中でも手軽に紅茶の風味を楽しめると思いますよ」
「あら、私の為に作ってくれていたの? でも正直、忙しすぎて中々ゆっくりと紅茶を飲む時間も無いから、凄く助かるわ」
 二人は浜辺に向かい、グミ坊主へグミを差し出す。闘技場から繋がるグミの先端が伸び、スレイのグミを受け取って吸収する。即座に紅茶味のグミ坊主が誕生し近くの水の上を漂い始めた。
(ほう……良い出来だ……)
 頭の中にグミ坊主の声が響く。何かしてくるのかと周囲を警戒するが特に何も起こる様子は無い。ふと、自分達が作ったグミ坊主へ視線を向けると、徐々に大きくなっているように見えた。
「気にいって貰えたのかしらね。随分とご機嫌みたいよ」
 紅茶味のグミ坊主は愉快そうに身体を揺らしながら海面を漂っている。波に揺られるその不定形な存在は、やはり着実に大きさを増しているようだった。
「どのように味が定着するのかも分からないし、暫くはここで様子を見ておきましょうか」
「そうですね。何か起きてもすぐ対処できますし……それに、調理中は立ちっぱなしだったので少し休憩もしたいと思っていましたから」
 スレイが手早くビーチパラソルを設置し、二人は椅子に座ってグミ坊主を観察する。大きくなってはいるが特に何かしてくる事もなく、その後は作ったグミを摘まみながら紅茶談義や他愛もない話をして過ごす事となった。

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