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機械帝国攻略戦 その後

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機械帝国攻略戦 その後
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マキアシュタット




 ジェノ・サリスは事前にリーラの許可を取り、未だ手つかずのマキアシュタット周辺の調査を行っている。
 探すべき場所はリーラから得た情報を元に行っているが、やはり建造物には破壊の跡が見られ、内部も荒らされ放題だ。盗賊の類による略奪は明らかであり、先を越されてしまっていた。
 ジェノもまた『家探し』を行い、盗賊が見落とした何かしらの貴重品を探る。魔力を秘めている物に対しては『プレザージュ』を頼り、目視と感覚の両面で調査を進めていく。
 また、自身が入り込めない位置には『スノーラビット』を先行させ、安全を確保してから探るなど慎重を期している。
(む、これは)
 ジェノは途中、崩れたばかりと思しき建造物を発見した。老朽化していた建造物の入口を強引に破壊し押し入った結果、崩れたと見られる。もしかしたら、崩れてしまったがために内部を調べられていないかも知れない。そう考えたジェノは『不動穿砕』の構えを取り、瓦礫を粉砕した。
 中を見るとそこにはめぼしいものなど何もない代わりに、恐らく倒壊によって取り残されたらしい若い男がいた。
「た、助かった……」
「盗賊か。運のいいやつだ」
 盗賊は安堵した様子でその場にへたり込み、自分が盗賊であることを否定もせず、逃げようともしない。
「この一帯はマキアシュタットの管理下に置かれる見込みだ。つまり、ここは法で管理される地帯になる。その意味がわかるな?」
 ここで犯罪を犯せば、追われることになる。盗賊なのだから追われる身なのは承知の上だろうが、追って来る者たちはあの機械族だと考えると、他の種族より容赦がないのではないかと盗賊は肝を冷やす。
「それがわかったら、とっとと行け。今回は見逃してやるが次は逃がさん」
「あ、ありがとよ!」
 大きな怪我は負っていなかった様子の盗賊はジェノの威圧に押されたかのように急いで建物を後にした。

 乙町 空は何をするでもなく、マキアシュタットを散策していた。
 マキアシュタットは城塞都市であった名残で複雑な形をしており、適当に歩いていたら迷ってしまうこともあり得る。そのため初めて来たのならば『位置把握』は迷わないために必要な技能となる。
(あちらこちらで、人族と機械族が一緒に働いていますね)
 今回の散策で空が見たかったものは、人族と機械族の共存についてだった。
 効率的に作業を進めるならば、同じ種族同士で仕事を割り振ったほうがコミュニケーションの面で有効なはずだ。
 しかし空が目にした作業場では特にそう言った分け方はされていなかった。人と機械が力を合わせて重い瓦礫を運び、手を取り合って一つの目標に注力できている。
 どんな仕事であっても、最終的には適材適所の人員配置が為されるだろう。しかし、今は人族と機械族共存の第一歩のような段階であり、言うなればレクリエーションの意味も含んでいる。そして長所と短所を互いに知り合えば、この街は他の大都市と比べ物にならないほどの成長を遂げるだろう。
 空も何か手伝えることがあればと構えていたが、行く先々で手は足りているようだった。多少の衝突くらいはあるだろうが、これならば間に入る必要もない。そう考え、空は散策を続行する。

 数多彩 茉由良はパートナーの精霊たち、ウダニ・マユリソーナ・マユリドゥハリトュリ・マユリヴァユニ・マユリらを伴い、マキアシュタットを見て回っていた。
 訪れた理由は彼女の持つ知的好奇心からだ。意思の芽生えた機械族という存在や、それらを許容、もしくは拒絶する他種族の心理。一つの大戦が終わった後に、それらがどうなっているかを知りたがっている。
「あ、マックスさんだ。やっほ~」
 観光客かのように色々なものを見て回っている中、ソーナがマックスを発見する。どうやらマックスは何らかの工事の現場を指揮している様子だ。自身も力仕事に従事しつつ、人族と機械族に仕事を割り振っている。
「以前聞いた、機装の整備の優先順位とか注意点とか、役立ってますよ」
「おう、そりゃ良かった」
 ウダニは以前マックスから受けたアドバイスに感謝する。
「おいそがしいところ、しつれいします……」
「なに、そろそろ小休止かな、と思っていたところだ。構わん」
 茉由良はそう話しかけておきながら、何か言うでもなくマックスの仕切る現場を見る。
「異様な光景に映るか?」
 そんな茉由良にマックスは問う。
「すこしまえまでなら……いようといえたかもですけど……」
 やはりそこには、先ほど空が見ていたのと同じ、人族と機械族が協力して作業をしている。
「いしき……って、ふしぎですよね。その“ありかた”と、いいますか……」
「在り方、か?」
「意識、な。魂とか転生者とかも、在るからな。元々在るモノが目覚めるのか、それとも作られるのか、とかな」
「そう言うことか」
 茉由良とマックスに割り込んだドゥハリトュリの言葉で、マックスは茉由良が持つ疑問に納得が行った様子だ。
「その辺は全くわからんな。だが、どっちでも同じだ。問題は、そう考えられる人間がまだまだ少ないところにある」
「他の街だと、人扱いされないこともある、未覚醒の機械族ね……」
 ヴァユニはマックスが言うまでもなく、その問題点を言い当てる。
「仮に意識の有無が先天性のものだったら、無い機械族は道具のように扱っていいのかと言えば、そうじゃない。そして意識の有無は俺たちには探れない。なら、全ての機械族を人族と同じ扱いにしなきゃならんのだが」
「いしきをさぐれないのは、ひとどうしもおなじですのに……」
 姿形の違いや文化の違いで衝突を起こすのはどの種族の内でもあり得ることだ。
 もっとも、その辺りの理解ができていれば、全ての意志持つ生命体の間で争いなど起きないのだが。
 そのことも、マックスは理解している。
「まぁ、今のところは上手く行ってる。何か起きるとしたら、落ち着いてきたころだろうな」
「そうですね……それでは、わたしたちはもうすこしまちのようすをみてまわります。おじゃましました」
 マックスとの会話を終えた茉由良一行は、再びふらりとマキアシュタットの観光を再開するのだった。

 砂原 秋良はマキアシュタットに作られた診療所を訪れていた。
 秋良は力仕事が多く行われるであろうマキアシュタットでは怪我人が続出するはずと考え、手が足りない診療所があれば手伝いをしようと考えていた。
 秋良の予想通り、診療所には人族、機械族に関わらず多くの怪我人で溢れていた。
 そんな診療所の中で、秋良は『シーレーン』の演奏をしていた。演目は『アクア・パルティータ』を組み込んだ『ラプソディア』だ。戦後と言う環境下で怪我をし、精神的に追い詰められているはずの怪我人へのメンタルケアが狙いだ。
 秋良の演奏もあってか、この診療所で順番を待つ怪我人たちは、概ね落ち着いていると言える。
(診療所を利用する人が少ないのが一番ですが……これは来てよかったかも知れませんね)
 今のところ、秋良の演奏に文句を言う者もおらず、秋良もまた耳障りなジャンルの音楽も演奏をしていないため、狙い通りだ。
「これで良いはずだ。動作を確認してみてくれ」
 一方、秋良のパートナー、ヤクモ・ミシバはより実践的な手伝いをしていた。彼はエンジニアとしての技能を活かし、破損や故障した機械族を相手に処置を行っている。
 もっとも、ヤクモ自身は機械族の専門家ではないため、できる処置は限られている。とは言えそんな彼でも、ここの診療所では無くてはならない戦力になっていた。それほど多くの怪我人が来ているのだ。
「よーし、完璧に治ったぞ。もう来るなよ!」
 また、同じく秋良のパートナーであるアリヤ・ネムレスは人族の怪我を癒していた。アリヤは人族の単なる擦り傷から骨折などの重傷まで幅広く対応し、『ウィッシュアライブ』などを施していく。本当に生命の危機に瀕している人間が運び込まれてきたときのために『ヒーリングブレス』の準備もしていたが、今のところそこまで致命的な傷を負った人族は来ていない。
(忙しいは忙しいが、来る奴らの怪我は大したことはない。現場の安全対策はそれなりのものなんだろうな)
 横目でヤクモの前にできている行列と、自身の前にできている行列を見比べるアリヤは、その数も概ね均等であることに気付く。
 それはつまり、機械族ばかりが危険な作業をさせられている状況ではないということだ。もっとも、怪我人自体は多い。作業の進行管理などには改善の必要がありそうだが。
 とは言え、人々を癒す経験を積む環境としてはこの上ない現場だ。ヤクモとアリヤは一息つく暇もなく働き、その手際は始めた頃に比べて明らかに良くなっている。その能力は大幅に引き上げられたと言っていいだろう。
 ただ、彼らは冒険者なため、いつまでもこの地にいられるわけではない。あくまでも緊急対処であり、明日以降もこれほどの怪我人が訪れるのであれば、それはそれで大問題だ。
 そのため二人とも、処置を終えたあとは可能な限り怪我をしないよう、無理をしないように告げている。怪我や無理な作業は、この街の発展を遅らせる大きな要素の一つであることを、処置を行いながら言い聞かせ、自覚させる。こうすることで、診療所の負担を少しでも減らそうとしているのだ。
 しかし、戦後の復興を急ぎたい気持ちは皆一緒だ。そのことにも理解を示しつつ、秋良ら三人は人々の心身を癒すのだった。



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