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機械帝国攻略戦 その後

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機械帝国攻略戦 その後
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ザンテンブルクでのしばしの日常 2


ネリーの場合>

 火屋守 壱星は片腕であるノラを失った“灰犬”ネリーの様子が気になっていた。
 なのでまず土地鑑(ヴュステラント連合国)で灰犬傭兵団の拠点にその目星を付けて向かうも、そこにはネリーの姿はない。
 いたのは傭兵団の団員だけだった。

「よぉ。なかなかの被害だったな……あの戦いは」
「ああ……思い出すのも辛いことだ」
「だよな。これ、みんなで分けて飲んでくれ。ネリーの方にも持っていくからよ」

 ネリーとはすれ違いだったが、出掛け先を経済知識(ローランド砂漠)も併せて礼儀を欠くことなく傭兵団の団員に話しかけ、琥珀亭特製ハニージンジャーを渡すと同時にネリーの居場所を聞き出しすと壱星はその場へと向かった。
 そして赴いた場所は、無数に広がる墓地であった。
 全て手作業で仲間達の墓地を作り上げたネリーはどこか心の穴が開いたかのように虚無だった。
 壱星の気配に気づいたネリーが振り返る。一体何の用だというばかりに。

「お疲れさん。俺が手を出すまでもなく墓が出来ちまってたか。これでも手伝えるように道具も持参したんだがな」
「それは悪かったな。この作業は仲間達でやりたかったからさ。もし墓が完成して無くとも断ってたさ」
「それもそうかもしれねぇな。でもようやく機械帝国との決戦を乗り越えたことだし、戦死した者の墓に手を合わせたいんだが、ダメか?」
「好きにすればいいさ。共に戦った中に偲ぶ奴がいるなら、アイツも浮かばれるだろうよ。……でも、なんでそんなことまでしてくれるのさ」
「なに、共に戦った仲間の冥福を祈りたいってだけで他意はないが、強いて言うならブロッケンでの戦いの時にノラにも世話になったからな」
「ノラ……か。いいぞ。ノラの墓はこっちだ」

 ネリーに案内されノラの墓の前に壱星が立ち止まると墓前にオータスワインと琥珀亭特製ハニージンジャーを奉納する。

「今、灰犬傭兵団はどんな感じなんだ」
「そうさね……仲間の半数をナイトロードにやられて士気も低下していた。それでも大御所との契約が結ぶことはできたといったところか」
「なるほどな。ま、人によっては気にしないみたいだが、借りっぱなしっていうのは好きじゃないからな。いつでも手を貸すと覚えておいてくれれば今は十分だ。灰犬傭兵団に入ってもいいんだが、俺は冒険者だから歓迎されないだろ?」
「なに、出入りは自由だ。こっちから手を借りたい、なんて依頼を出すことはないだろうが、来たければいつでも来るといい。クライン議長の後ろ盾も、まだあることだしな」
「意外だな。てっきり断ってくるもんだと思っていたが。ま、立場も状況も違うが、お互い心機一転して頑張るとしようぜ」
「そうするしかないだろう。しっかしやることが多くて大変だわ」
「変わらないものはない、ということだな。じゃ、献花も済んだし俺は帰るわ」
「私はもう少しここに残る」
「そうかい。そうするのも悪くないさ。じゃあな」

 壱星はネリーと別れ軽くなった鞄と共に灰犬傭兵団の墓地を後にした。

ミッチェル・コナー(ミチ子)の場合>

 ミチ子ことミッチェル・コナーは冒険者養成校の教官でもあるのは共通の認識だ。
 休日であっても訓練を願い出る者がいないでもなかった。
 今日の相手は葵 司七種 薺の二人組。
 もう一人のノーネーム・ノーフェイスは観戦とのことだった。

 ルインシーカーの本分はあくまでも探索や調査……そう考える司は護身のための力はあって困ることはない上にいつまでも戦いを避けて通れるわけでもないことを自覚していた。
 そしてたまたまミチ子姐さんが休日だったことを知った今、指導を願い出ないわけにはいかなかった。
 魔族でも機械族でも見た目のサイズは一般的な人族と大差ないのも多い……そういう意味でも訓練相手として願ったり叶ったりだった。

「うーん……本当に二対一で模擬戦をしてもいいの?」
「アタシを誰だと思っているのよ。甘く見ないで頂戴。教官というのは時と場合に合わせた訓練法なんてすぐに思いつくものなのよ。だから……全力でかかって来なさい!」

 覇気を飛ばしミチ子が迷っている様子の薺の迷いを吹き飛ばし強い意志をよみがえらせる。

「最終経歴が黄金だっていうミチ子姉さんに訓練を受けさせてもらえる機会なんてめったにないだろうし、胸を借りるしかないだろう。行かせてもらう!」
「よろしくお願いするわ!」

 まず薺はティアーバレットを一発。そしてガーナーピアスで状況を確認。
 やはりミチ子には効果が薄いように感じた。
 ならばこれをやる意味はない。
 すぐにティアーバレットを放つを止め次の機会を窺った。

 ノーネームも観覧席から、外から見ることで分かることを掴み取るためにクールアシストを心がけ人心掌握で情報を搔っ攫おうとしていた。
 今後またミチ子と協力、共闘することがないとも限らないからこそ、ミチ子の癖も掴んでおきたかったのだ。
 ノーネーム自身も戦わざるを得なくなった時、初見で動くよりははるかにマシだとも考えていた……別に弱みを握ろうとかではなく、本心で。
 人となりは戦い方にも表れるだろうという程度で模擬戦を俯瞰して見学していく。

 そして当の司だが、攻めあぐねていた。
 基本はインファイトになるわけだが、クロースコンバットはあくまでも予期せぬ遭遇戦のためのもの。
 向き合ってお願いします、と始まったこの模擬戦が異常なのだ。
 実践ではそんなことをしていられない、模擬戦のための通過儀礼でしかない。
 そもそも見合った姿勢から始まる状況でいきなりそこに持ち込むこと自体難しい上に相手は明らかに鞭使い、確実に離れた間合いから攻撃が飛んでくるはずだ。
 一歩でもその間合いに入った瞬間にジ・エンドだ。
 こちらもシェッダーロープとウィップビートがあるが本物相手じゃ分が悪い。
 牽制に留めつつ動き回って狙うは操風のペンダントの効果。
 効果を発揮させ、速度上昇とダメージ軽減を頼りに一気に間合いを詰める。

「ここだァ!」

 一度きりのチャンス。
 司は地転のルードゥスを当ててみせた。
 地転のルードゥスの存在はミチ子だったら知っているだろう。その対策も。
 決め手に欠けている武器ではあるが、地に足がついてなきゃどうしたって出来ることは限られる。
 そこで逸らずもう一発浮かせてからシェッダーロープで締め、くらいの腹積もりでいたが、そのシェッダーロープが弾き飛ばされる。
 しかもミチ子の足が地から離れている様子もない。

「薺ァ!」

 万が一ルードゥスで浮いてすらくれないならば自分が浮いたほうがいいと事前に言ってある。
 薺は司に向かってハイパーソニックを放つ。
 地面に撃ち込まれた銃身に風の術式が刻まれた弾丸は、着弾した瞬間に乱気流を発生させ司を空へと吹き飛ばす。
 一発二発と複数の乱気流で不規則に司を移動させていく。
 そしてヴァーティカルマニューバで体勢を保ちつつある程度の距離と高さをとったら迷わず司はそこからダイブした。
 訓練という甘えはあるけど、これはもう捨て身の一撃だ。

「これで、どうだァ!!」
「危ないわよ、そんな戦い方では」

 ミチ子は器用にダイブしてくる司を鞭でグルグル巻きにして宙ぶらりんの状態で絡めとる。
 これでは薺にとっても人質となってしまい次の一手を出すには躊躇いを生じさせる。
 勝負ありだった。
 外部から見ていたノーネームも今起きた瞬間は目を追えなかった。
 そう簡単に最終経歴黄金級の技量を掴むことはできない。
 気づいた時には勝負が着いていた。

 そしてミチ子は三人に今の戦いで気づいた点、危険行為の度合いの注意に話を移った。
 少しでも生存率を高めてもらえるように。

グスタフ・クラインの場合>

 グスタフは机に山となった書類の処理をしていた。
 大公国の復活よりも今ある砂漠地方をより良くするための政策を求めて。
 そこへ秘書から赤銅級のコトミヤ・M・フォーゼルランドソッソルト・M・フォーゼルランドが面会したいとアポイントが来ていると伝えられる。

「コトミヤ君とソッソルト君か。通してくれ」
「分かりました」

 グスタフは重要書類を引き出しに片付け、残りの書類も目には見えないように箱に仕舞い二人が入ってくる準備をしていく。
 その間に給仕はお茶の準備を始め、と赤胴級の冒険者を出迎えるにふさわしい準備が手早く静かに行われコトミヤとソッソルトが部屋に入る頃には何もない状態にした凛とした佇まいで出迎えた。

「今日はどうしたのだ。二人そろってアポイントを取るとは」

 そう話を切り出し、給仕にお菓子とお茶を出させて場を和らげる。
 口を開いたのはまずはコトミヤの方だった。

「クライン議長。ぶしつけで申し訳ないが機械兵、下位個体の生産について人間側はどう思いどう扱おうとしているのだ。もうすでに情報が公開されていたらすまないんだが、私の知識だとマキアシュタットでは“覚醒していない下位個体も単なる導具とはみなさず、街の一員として扱われている”らしいじゃないか」
「ふむ……」
「これに関しては私も賛成だ、覚醒した者が人、命として扱われる以上、未覚醒だからと道具、奴隷として扱われてはいけないと思う。だが道具として見ない場合、新規製造、特にブロッケンの工場の扱いはどうなるのか気になってな。人の都合や、新たな敵との戦いが起きた場合の戦力増強のためだけに製造されないか心配なんだ」
「そのことはこちらの書類にまとめてある。目を通してくれ」
「失礼する」

 書類には議会での結論はまだ出ていないが、新規製造は停止することを考えていると綴られていた。
 道具として見ないというマキアシュタットを尊重するなら、工場での量産は行わず、整備・修理を主とすること。
 機械族のための医療施設への転用、ただの奴隷、労働力が必要かといえば、連合議会としての意見はノーだと言える。
 この場合、生産するのであれば老朽化した個体の新たなボディ、ということになる。と書かれていた。
 最後の行には機械族が子を宿したい、という事態にいずれなることも考えられるものの、それは今後の課題、といった感じでまとめられている。

「なるほど。結局人は自分や周りの生き物の命を優先してしまうからな。未覚醒なら駒として使おうという意見もあるはずだ。そうなればまた人と機械族の関係に亀裂が起きてもおかしくない。そこで問いたい。少なくとも今の段階での“命の定義”に対する意見を聞いておきたい」
「命の定義……難しい議題だな。議会でも分裂している議題だ。困ったものでな。私としてはマキアシュタットが機械族を全て人として扱うなら、連合国としてはそれを尊重し、下位個体の生産は行わない。ただ、その分彼らを長生きさせられるようにし、場合によっては新しいボディにも換装できるようにする、というのが答えになるか」

 “命の定義”それはどれだけ議論を重ねても明確な答えが出ない広大な定義のひとつ。
 グスタフはそれでもひとつの答えとしてコトミヤに告げた。

「私もそうなってほしいばかりだな。人族には医療知識で、機械族にはメカニックの技術で両方を治す医者をやってる私としては特に気になることなんでね……そこでだ。簡単にでもいいから議長として製造についての意見を聞かせて貰えると嬉しい」
「私個人の考えとしては、“市民権は意思ある機械族に与える”ものだが、市民権がないからといって人として一切扱わないというわけではなく、一個の生命として扱いたい。そして未覚醒でも生まれたからには、生まれてしまったからには人として扱いたい。だが、それに賛同する者があまりにも少ない。議長派の賛同派に比べて反対派の方がはるかに多いのが現状だ。私がより良い砂漠地方にすると決めたというのに、すでに暗礁に乗り上げているよ」
「議題場ではそうなっているのか。貴重な情報、感謝する」
「いや、コトミヤ君としては気になるところであっただろう。はっきりとした答えを出せなくて済まないね」
「いえ……」
「ところで、ソッソルト君も何か聞きたくてここに来たのではないのかね」

 話を振られたソッソルトは率直にひとつ問いかける。

「ごめんなさいね議長、忙しい時とはわかってるんだけどこのクソ真面目な臣下がどうしてもって言うから。で、あたしとしてはザーレって結局どうなったのってところよ。いや決戦の時あたしらは半ば勝手にザーレで救助活動行ったんだけれど、支援を断ってたザーレ的にそれって屈辱だったりするのかしらってね」

 ソッソルトはつらつらと言葉を紡ぐ。
 曰く。ザーレ側の上層部の意見を今一つ聞かなかったため、今どういう考えがザーレに広がってるのか気になるとのこと。
 救助に向かったことは後悔はしてないが、そのせいで冒険者なり他の街なりで溝が出来たらそれはそれで複雑だということをつらつらと。

「ザーレについてはこちらの書類にすべて書かれている」
「臣下、読んでおいて」
「王様……では、王様に代わって私が読ませてもらおう」

 あっさりとソッソルトはコトミヤに仕事を振って自分では書類を読む気は全くなかった。
 ため息交じりに書類を受け取り、コトミヤが読み上げた書類には掌を返してグスタフや他の議員にも媚びへつらっている様子が詳細に書かれていた。
 本心がどうかは知らないが、今は一応機械族友好派として振る舞っているとも。
 だが、ザーレの一件で市民からの信頼は地の底まで落ちてることから、彼の再選はないだろうとまとめらていた。

「ふむ。一度失った信頼はそう取り戻せない。すでに時遅しだな」
「あ、あとこの街のお酒が美味しいところ教えてくれない? 今まではそれどころじゃなかったけれど、新しい土地といえば呑み歩きよ呑み歩き! いい店教えて頂戴よ、議長さんオススメのね!」
「あのな王様、忙しい議長に時間貰って酒場聞く奴があるか。後にしろ後に」
「何よ臣下、これだって重要なことじゃないの! 酒は万病の薬よ!」

 酒だ酒だと騒ぎ出したソッソルトを叱るコトミヤとの言い合いにグスタフも思わず笑みが浮かんでしまう。

「やはりおすすめは砂狼だね。冒険者の酒場として有名でいつも賑やかだが、あそこの店主はよく客を見ている。寡黙だが、何も言わずとも口に合う酒や料理を進めてくれるから、本当にありがたいよ」
「やっぱり砂狼なのね! 早速行ってみるわ! あっお茶もお菓子も美味しかったわ。さぁ行くわよ、臣下!」
「議長の室内で暴れるな。クライン議長、重要な書類を拝見できて感謝する。忙しなくて済まないが、これで失礼させてもらう。では」

 ソッソルトを止めきれずに慌ててそれだけ口にするとコトミヤも議長室を後にした。
 残されたグスタフは賑やかな二人の姿に未来を乗せて遠くを見ていた。
 人も機械族も関係なく、同じ酒を頼む仲間として歩める未来を。

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