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機械帝国攻略戦 その後

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機械帝国攻略戦 その後
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ザンテンブルクでのしばしの日常 1


――ヴュステラント連合国首都、ザンテンブルク。
 冒険者であれど彼ら彼女らにも何にも代えがたい日常というのが存在する。
 本日はそんな休日モードの冒険者にスポットを当ててみよう。

シャロン・ライトフィールドの場合>

 シャロンは星川 潤也アリーチェ・ビブリオテカリオの2名とのんびりと買い食いを楽しむためにザンテンブルクを散策していた。

「まだまだローランドには火種がくすぶってるけど……せっかく機械帝国との戦いが終わったんだ。今日くらいのんびり過ごしてもいいよな」
「そうだね。たまの息抜きもなければ冒険者は続けられないよ。だから、誘ってくれてありがとね」
「いいんだよ、そんなこと。それに、俺も砂漠地方に来てから戦い続きで、あまり街を見たことがなかったんだ」

 潤也がキョロキョロと周囲を見渡せば、いつも見ている街並みも違って見えてくるような気がする。

「へぇ……人が多いし、活気がある街だったんだな」
「ねえ、シャロン。せっかく砂漠地方に来たんだから、何か服でも買っていきましょ。ほら、 潤也は荷物持ちよ。早く行きましょ」
「へいへい」

 地球のようなウインドショッピングとはいかないが、砂漠地方ならではの呼び込み方に吸い寄せられるようにアリーチェとシャロンは服屋へと入っていく。
 潤也は荷物持ちとして、手持ち無沙汰に中に入っている。
 なんせ外は暑いのだ。

「ほら見てシャロン、あそこにかわいい服が売ってるわよ!」
「北部地方にはない通気性と可愛さの両立、侮れないわ……」
「ふぅん、砂漠地方のファッションもなかなかじゃない。シャロンはお姫様なんだから、これくらい大胆な衣装も似合うんじゃないかしら」

 いろいろ服を取っては広げ、造形や機能性、見た目にキャーキャーと花を咲かせる女子二人。
 今アリーチェが手にしたのはベリーダンスにでも出場しそうな胸元に煌びやかな装飾が施され、ベルトにスカートが一式になった衣装だった。

「ちょっとこれは派手じゃない?」
「そうかしら? あ! あたしは、この砂漠の踊り子衣装にするわ。動きやすいし、かわいくていいわね。潤也、どう? ふふん、あたしもシャロンもかわいいでしょ」
「可愛いって。二人とも良く似合っているさ。でも、まだ服を買うのか?」
「当然でしょ! 滅多にない休日よ。買い物しないでどうするのよ!」

 潤也の足元には複数の店のロゴが入った袋がガサガサとまとまっている。
 それの中身はもちろん服飾アイテムだ。
 やれ服だ、やれ靴だ、やれアクセサリーだと数えるのも面倒くさくなるほどの店を渡り歩いていた。
 それを持つ身にもなってほしいものだが、そんなことは口が裂けても言えない潤也だったが、話題を変える作戦に出た。

「俺としてはそろそろ何か口に入れたいところなんだけどな。よしっ、シャロン、アリーチェ、一緒に食べようぜ! 買い物には付き合ったんだから、食事はこっちにエスコートさせてくれ」
「仕方ないわねー。それが済んだら、また買い物に付き合ってよ」
「荷物を宿に置いてからな。これ以上は持ち切れないって」
「あら。意外と買っていたのね」
「もっと早く気づいてほしかったぜ……で、店はどこにすっかな」

 屋台が並ぶ街並みというよりも酒場街といったザンテンブルクに潤也は良い匂いのする酒場に引き寄せられるようにひとつの酒場を選んだ。
 ほどよく人も座り、食事や談話を楽しむ活気のある酒場のようだ。

「いらっしゃい。子供には酒は出せないが、飯は美味いという自負があるぞ!」
「本当か! アタリを引いたな!」
「潤也にしてはやるじゃない」

 席に着くとメニュー表が出され、ピラフといった米料理からヨウルケヴーやカリーヴルストといった定番商品からファラフェル、肉や豆、野菜を煮込んだ料理のサリード、、肉、野菜を炊き込んだ料理カブサのようなアラブ系の料理に始まり、ザワークラフトとヴルストを中心とした大皿、典型的なオランデーズソースをかけたアスパラガスとジャガイモ、ムニエルのようなミュラリン・アルトといったドイツ系料理まで手広くやっているのが見て取れた。

「なあ、店主さん。フリカデッレってどんな料理なんだ?」
「これは形状は丸形とは限らんが、挽肉につなぎと調味料を入れて混ぜ、丸く成形してから、加熱して作る料理の名称さ」
「簡単に言えばミートボールに近いものと思えばいいわ。なかなか悪くないのよ、どの酒場でも出す定番みたいだから」

 シャロンのアドバイスを聞きながらそれぞれが思い思いの料理を注文し、それを食していく。

「へぇ……砂漠地方の料理っていうのも、なかなかイケるな」
「だよね」
「さてと……まだ食べ終わっていないが、北部地方で待ってるレミとエクレールに贈る、土産でも考えておくか。なあ、シャロン。あの二人だったら、何が喜ぶと思う?」
「そうね……名物の大サソリのアヒージョあたりがいいかしら。保存食でもあるから日持ちもするし」
「それナイスアイディア。それにする! てかさ、それにしても、日本にいた頃は身体が弱くて病室から出られなかったっていうシャロンが、今や北部地方を代表する英雄か。……こんな素敵な奇跡ってあるんだな」
「それは前世の頃の話で、こっちでは生まれた時からずっと元気だからね。そう意味じゃオータス様に感謝かな」
「よしっ、今日は俺のおごりだ! もっと食べて、これからも元気に頑張ろうぜ」
「うん!」

 気前よく言い切った潤也に女子の目はキラリと輝く。
 ここの料理はおいしい。
 ならばデザートだって美味しいに決まっている。
 言質は取った。
 今日だけはダイエットはお休みだ!

ベアトリス・マリオンの場合>

 ここはベアトリス・マリオンが商売をしている商会内。
 店内には所狭しに武器や防具、冒険に必要な道具が揃えられており、人で溢れかえっていた。
 水城 頼斗がやってきた時には蒼心院 響佑の対応中であったがそれは承知の上だ。
 アポなし同士、先に対応できたのが響佑だったというだけである。
 頼斗的には他にも客を捌く中、急いでいない彼は辺りの商品を手に取ったり眺めていたりして時間を潰していくのもやぶさかではない。

「悪いな、忙しい所」
「いいのよ。今は私ではなくとも人を捌ける時間帯だから。それで」
「ああ。ひとつ提案というか相談があって声をかけたんだ」
「相談内容は」
「コイツは知っているよな。稲妻の矢だ」
「知らないはずないでしょ。マギアシューターのブリッツレイドの力を収束できる性能をもった特殊な矢、もしくは魔弾のことね。それが」
「知っているなら話は早い。特殊な矢を用いれば、戦略の幅が広がるだろ。コイツは拡散も集束もできる」

 実際に肌で感じてみたいか聞いたところ、効果を知っているモノを今更見る必要もないとにべもなく断られる。

「でも、その説明がなければ進まない相談ということね。場所を移しましょう」

 ベアトリスに促され個室へ案内された響佑は椅子に座ると一呼吸おいて、精霊魔法の運用について提案してみた。

「ブリッツレイドと同じ様に精霊魔法も特殊な矢を準備できたら、魔法の威力を収束できないのだろうか。稲妻の矢以外にも力を収束させる性質を持つ魔石や金属がこの砂漠地方には存在するとしたらどうなんだ?」
「確証は得られないけれど、確実に戦術の幅は広がるわね。その特殊な魔石や金属が本当に存在するとしたら、そして加工する技術が現存しているのなら……」
「そこなんだ。話は物を見つけてからでないとこれ以上は進めようがないがな。だが、あくまで自分の理想、目標を聞いてくれないか?」
「いいでしょう」
「……俺はウェル・テンペスタスをこの力を矢に収束させたい」

 力を凝縮することで射速と貫通力を上昇させ、矢が突き刺さった点を中心点として緑の元素の奔流で対象を揺さぶる。
 これが響佑の理想の運用法だった。

「ブリッツレイドと同様に収束させるだけでも構わない。精霊魔法の力を、フォートレンジャーの力と組み合わせることができないか?」
「どうかしらね」
「きっとそんな特殊な矢があれば需要はそこそこあるんじゃないかと思うが、商会的にはどう考える。材料の調達が必要であれば力は惜しまない。遠慮なく指名依頼をしてくれて構わない。それだけの覚悟はある」
「私は精霊と縁がなくて契約できてないから、はっきりとした答えは出せないわね。言えることは、精霊魔法の場合は人の作った道具よりも精霊自体の力次第……ってことかしら。精霊の元素への干渉は本来的には道具を選ばない。ただ、“やりやすさ”という意味では触媒になるものは存在するでしょうね」
「だろうな」
「動くときは依頼を出すわ。それが始まりの合図よ。戦場が大きく変わるわ。覚悟しておいて」

 ベアトリスはそう話を締めて響佑と別れ店内に戻っていった。
 そして手持ち無沙汰に商品を見ている頼斗を発見する。

「なにか気になる商品は見つかったかしら?」
「今、俺に話しかけても大丈夫なのか。随分と繁盛しているようだけど。俺の方は手が空いた時にでも声掛けるよ、大した用じゃないからさ」
「あら。私自ら声をかけたのに、忙しい合間を縫って」
「それはすまない。なら少しいいか」

 頼斗は背中の機装:蒼き風雷槍【機装:ライトニングランス】を取り出し、カウンターに乗せた。
 もちろんここで全ての機導式を使わないようにして。
 CC:テンペスタスコアに刻んだ機導式はどれも物騒なものばかりだから。
 そっと置かれた蒼き風雷槍と頼斗を静かに見つめるベアトリスに頼斗も真っ直ぐに見つめ返し優しく微笑む。

「ありがとう、ベアトリス。この槍のおかげで、蒼の四本槍のマリーンを討てた。それに“蒼の轟雷”なんて異名まで貰っちゃってさ。感謝してもしきれないよ」

 はにかみながら、改めて礼の言葉を伝えた。

「役に立ったようで何よりだわ。でも、武器はあくまで武器。あなたの二つ名は聞いてるけど、あなた自身にそれの真価を引き出せる力があったからこそ、成し得たことよ」
「それでも言いたかったんだ。俺の仲間共々、北部にいた頃から世話になってる。今後ともよろしく頼むぜ」
「こちらこそ、今後ともどうか御贔屓に」

 頼斗は背中に蒼き風雷槍を抱え直すとマリオン商会を後にし、ザンテンブルクを散策するのだった。

セイルの場合>

 ビーシャ・ウォルコットはセイルに会うために酒場からセイルの居場所を聞きつつ歩を進めていていた。
 赤銅勲章にウサ子バッジまで持ってれば疑われることは無く、セイルの居場所は簡単に掴めた。
 手土産に家庭料理程度だが北部のものとお酒なんかも道中見繕いつつビーシャはセイルの姿を探し出す。

「こんにちは~セイルさん」
「おっとビーシャ君か。どうしたかな」
「それはぁ砂漠地方での赤兎団としての活動や、私は参加できなかった魔王ミリアとの共同戦線について聞きたかったら探していたんですぅ。こちらは手土産になりますよ~」
「お。俺のための手料理というのは嬉しいな。この酒も気に入って最近よく飲んでいるやつなんだ」
「アタリを引いたようでなによりです~。家庭料理なんで少々お恥ずかしい限りなんですけどぉ」
「いいや。家庭料理こそ、めったにここでは食べられないからね。感謝するよ」
「それは良かったです~。あ、話を戻すのですが、個人的には命がけの運命の人探しは進捗がどうなったのか気になりますね~?」
「知名度を広げることはできたし、入団希望者も結構増えたね。地方を跨いだネットワークも形成できそうだ。魔王ミリアは相変わらずだったけど、あの白い女も相当だった。……なんでこの世界のいい女はみんな、俺より強いんだろうなぁ」

 ため息交じりにそう答えているが口調は軽い。

「あれ、セイルさんってそもそも妻帯者か、最初の五人の中で誰かと既にくっついているんですっけ? そこら辺の情報もないんですよね~」
「いいや。ウサ子もそうだが、ライラ姐ともヴァーニィともそんなんじゃないさ。ま、ヴァーニィは俺に気があるみたいだし、俺も相性はいいと思ってるけどな!」

 セイル自身としてはナンパ野郎ではあるが、何人もの妻を娶る気はなく、冒険者として色んな女の人とのその場限りの軽い付き合いを楽しんでいたいようだった。
 そのことに内心でホッとするビーシャである。
 もし盛り下がる内容だったら……と少し怯えていたのだ。
 そうなったら聞き役に徹して慰める気でもいたが余計な気遣いだったようだ。

 セイルも自分ばかり話していては何だからと口達者にビーシャから言葉を引き出してくれる。
 今回の魔王戦で大層な勲章も頂いてしまったことも話せていた。
 いつもなら酒飲みのドワーフや喋らない精霊といった仲間が代わりに話してくれていたが今回はひとりでここに来ている。
 自分のことは自分で話さないとと意気込んでいたがセイルが調子を合わせてくれるので、あくまでできる限り聞き手になるつもりが自分の方も結構な口数を話していたように思う。
 それでセイルが楽しいのならそれでよい。
 慣れない地、慣れ親しんだパーティメンバーが欠けている現状を過ごす人達の気分の晴れるような場にしたいのがビーシャの想いだったから。

クリスタの場合>

 クリスタはいつものように冒険者窓口対応の教会の受付嬢として依頼を捌いていた。
 そこにロデス・ロ-デスがやって来る。

「なにしに来やがりましたか。依頼ですか」
「んー今日は依頼を貰う予定はないな」
「なら何しに来たのです」
「まぁまぁそう警戒せずに。ようやく大きな戦いに区切りがついたんだから話せることもあるだろ」
「おめーに話す内容はねーですよ」
「冷たいなー。あ、ひとつ依頼を思い出した」
「ようやくですか。で、どんな依頼で」
「冒険者等級赤銅以上の難易度だと思うが、クリスタの彼氏に立候補する人募集中って依頼は出してないのかい?」
「ナンパはお断りですよ。人をちんちくりん呼ばわりするような男連中ばかりでたまったもんじゃねーです」

 にべもなくお断りしたクリスタ。
 傷心中のロデスをほったらかしにして自分の仕事に戻るのであった。

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