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機械帝国攻略戦 その後

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機械帝国攻略戦 その後
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油断ならぬバカンス



 クラーケンは撃破したが、二体目がいることを察知したキョウは海岸に立ち、海をねめつけている。来なければそれに越したことはないが、万が一再び襲撃があればいち早く対処するため、戦闘態勢を解いていない。
 そのほかの冒険者はクラーケンを調理したり、するはずだったバカンスに興じ始めた。
 そんな中、土方 伊織はくつろいでいたアガサに挨拶するために近付く。
「アガサさん、件のまおー様との戦闘詳報について纏めたのでご報告したいのですが」
「このようなバカンスの中でも、お仕事熱心ですね。ですが、お聞きしましょう」
 伊織は自身で感じた魔王ナイトロードについての戦力を報告する。アガサもナイトロードの力については様々な報告を受けていたが、直接戦闘した伊織から得られた情報は新鮮だったようで、感心した様子だ。
「ありがとうございます。大変なご苦労だったでしょう」
「いえ……ところで、そちらの白い綺麗なお姉さんに関してご紹介お願いしますです。教会のお客様であれば、何か粗相があってはいけないですから」
 そして、話はアガサの側にいるヴァイスにシフトする。
「この方は魔族に対する活動に目を見張るものがあったので、お力を借りようかと思いまして。えぇ、大事なお客様です」
「そうでしたか。土方伊織と申します。よろしくお願いしますです」
「よろしくね」
 ヴァイスと冒険者の間に起きたことを知る伊織だが、アガサが教会の客人と認めたため、事を荒げないことにすると決めた。
 しかし、ヴァイスは油断ならない人物だ。如何にここがバカンスの場であったとしても、目を離してはいけない。
(フリッグさん……)
(うむ、何かあったときのために構えてはおく……)
 話を終えた伊織は、パートナーの精霊、フリッグ・フェンサリルにヴァイスへの警戒を怠らないよう指示する。
「アーガーサちゃーん、あーそびーましょー」
 続いて現れたのは焔生 たまだった。気さくに話かけたたまへのアガサの反応は、非常に薄い。
「こほん、改めましてご挨拶を。赤の裁定者、ゲーヒンノムの焔生たまです。主に北部で大暴れしていました」
「赤の裁定者……ご丁寧にどうも」
「神官としての身の振りや高みを目指す上でも、本国の方とお話してみることが必要と考えた次第です」
「ふふ、正直な方ですね」
 のし上がりを狙いますと言っているに等しいたまの発言に、アガサは笑みを以て答える。
「いや、それは冗談で……単純にお友だちになってくれないかなと。あのですね、向こうにいるアイリーンって子は腐れ縁なんですけど、あれでガードがすごく固くてつれないんですよ。だから、浮気してアガサちゃんと仲良しになろうと」
 アガサはどちらが真意なのか計りかねている様子だ。
「ということでアガサちゃん、ビーチバレーしましょ。面子は用意してありますから」
 たまの指差した先では、イリヤ・クワトミリスが既にビーチバレー用のネットを張ろうとしていた。
 その隣にいる叉沙羅儀 ユウは、たまとアガサがこちらを見ていることに気付き駆け寄ってきた。
「アガサさん、ビーチバレーをされるんですか?」
「え? まぁ……別に構いませんが」
「よし、言質取った! ナイス、ユウちゃん! それじゃ私はイリヤちゃんを手伝いますか」
 そう言うとたまはイリヤとともにネットを張り始めた。
「あの、こんな機会は中々ないのでお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
「ヒュドラ・セイントクロスを使っていた英雄の事について、知っている範囲で教えていただけますか?」
「当時の聖者様が使っていたものでしょう。“超獣狩りのセレス”。当時の槌の聖者であり……“沈黙の裁定者”という異名の方がよく知られてますか」
 アガサはユウの質問に淀みなく答える。
「彼女を表す『沈黙』にはいくつもの意味が込められているといいます。静かに敵を葬る姿、声を出すことができなくなる敵対者、そしてその驚異的な力を目の当たりにした民衆もまた息を呑み、声を出せなくなる……。魔界の強大な魔獣、超獣を葬り、その亡骸を浄化して多くの道具を製作しました」
 ユウはアガサの一言一句を噛み締めるように聞き入り、目を輝かせている。
「たまさんの赤の裁定者は、元は沈黙の裁定者だったのです。同じ遺跡で見つかった事といい、これも縁なのでしょう」
 かつての槌の聖者セレス。こうして彼女に縁のある品を受け継いでるのもまた、何かの導きなのかもしれない。
「アガサさん、ありがとうございました。とても良いお話を聞くことができました」
「いえ、まだまだお話できることはありますが、どうやらあちらの準備が整ったようですね」
 たまとイリヤがアガサとユウを呼んでいる。意外にも、アガサはビーチバレーに乗り気のようだ。
 ビーチバレーはたま・アガサvsイリヤ・ユウに分かれて行われた。
 白熱した対決は、僅差でたま・アガサタッグの勝利となった。
「ふう、楽しかったですね。これでアガサちゃんと友達になれたと言えるでしょう」
「私のこと、多少は理解できましたか?」
 たまはその言葉に対して笑顔を返す。
「いつか共に戦うか、袂を別つか。どちらにせよ相手の素の顏を知っておくことが私には大事なのです。それは魔族であっても例外ではない。私はいつだって『人』を殺して生きていくモノですから、知りうる限りを知った上で裁定するのです」
 そしてその笑顔のまま、そう言い放った。
 緊張感が二人の間に走る。
「そう言う意味で、今回はその第一歩。まだまだあなたのことは理解し切れていません。願わくば、しばらくの間お友だちでいれたらと」
「……こちらこそ、よろしくお願いします。焔生たまさん?」
 最後に握手を交わし、たまとユウはその場を後にする。
「お疲れ様です。お茶はいかがですか?」
 たまたちと入れ代わりで現れたのは、納屋 タヱ子だった。タヱ子は回答を待たずに『お茶会セット』を広げ、『お茶会』を始めた。用意されたお茶は、いずれも冷やされているものばかりだ。
「まぁ、運動のあとでちょうど喉が渇いていたところです。ありがとうございます、いただきますね」
 アガサが一杯目のお茶に口をつけた直後、再び海に異常が起きた。
「二体目のクラーケンが来やがったぞ!!」
 海岸で警戒に当たっていたキョウが、他の冒険者に向かって叫ぶ。見れば、先ほどと同じように海面が上昇すると、そこからクラーケンが現れた。
「ちょっとしつこいわね。片付けちゃおうかしら」
 そう言うとヴァイスは戦闘態勢を取る。
「下がっててよ白いの。戦いに乗じて何するかわからないんだからさ」
 ヴァイスが戦おうとしているのを見て、カリンが制止する。万が一にでも、教会の目が届くところでヴァイスが下手を踏むようなことはしないはずだが、カリンはヴァイスのことを信用していない。
「邪魔なんかしないわよ。そうだ、どっちが先に仕留めるか勝負しない?」
「の、望むところよ!」
 カリンはヴァイスの安い挑発に乗り、クラーケンへと駆け出した。
(ヴァイスさんが戦いますか……)
 そんなヴァイスを見て、タヱ子はアガサにお代わりのお茶を注ぎながら、その動きを注視した上で、『色の加護』を用いてヴァイス周辺の元素を感じ取ろうとする。
 集中してすぐに、反応があった。
(神聖術とはまるで異なる力ですが、光の力ではある……何かが違うのに、白の元素に影響を及ぼしていることだけは確かですね)
 しかし、相当集中してわかったことはそれだけだ。更に詳しく調べるには、準備が足りない。そう感じたタヱ子はヴァイスの観察をやめ、お茶会に集中するのだった。
 一方、ヴァイスが動き始めたことで伊織から警戒を促されていたフリッグもクラーケンとの戦闘に入る。
 フリッグは『ウェーブライド』で水面を歩き、ヴァイスについて行こうとするが、なかなかついていけない。
(滅茶苦茶な動きをしよる……! だがまぁ、白いのを攻撃するわけではないからな、少し援護してやればいいじゃろ!)
 フリッグはヴァイスの行動を援護するためにクラーケンに『重圧力場』を実行。その動きを鈍らせる。しかし、水中での移動は素早いクラーケンは一瞬動きを鈍らせただけで、すぐに力場からすり抜ける。
 それでも、ヴァイスにとっては十分な援護だった。ヴァイスはクラーケンが力場から逃れる方向を予測し、予め移動。クラーケンが動いた瞬間に光剣で斬りつけていた。
 通常のヴァイスならば、この一撃で決着はついていただろう。しかし、そうはならずクラーケンは触手の一部に切り傷を負った程度で健在だ。
(あやつ、手を抜いておるな。海に遊びに来ておるつもりか)
 正にその通り、ヴァイスは遊んでいる。勿論、本気を出すことで教会に目を付けられることを避けていることもあるが、本人にとっては遊びでしかない。
 ヴァイスの手抜きは、フリッグと同じくヴァイスの動きを観察しようとしていたクロウ・クルーナッハも感じ取っていた。
(あくまでもこちらの戦力に合わせて戦うつもりだな。ならば、そのつもりでこちらも援護させてもらう)
 クロウは『機装:ツァオバースタープ“冥眼のイルリヒト”』を構え、『機導式【水雷】』を実行。通りやすくした電撃でクラーケンの触手末端の動きを鈍らせようとする。同時に、組み込まれた『CC:テネブリスコア』の効果で魔力を汚染していく。
 クラーケンは巨体だが、その動作は非常に素早く、且つ柔軟だ。攻撃をまともに当てることは意外なほどに難しい。
(これで少しでも動きが鈍れば……!)
 援護攻撃の後、ヴァイスはどう動くか。クロウはクラーケンを攻撃したらすぐにヴァイスに目を遣り、その一挙手一投足を注視。
 しかし、ヴァイスはクロウの行動を待つまでもなく、ほぼ同時に動いているのではないかというタイミングで攻撃している。それはまるで、クロウとヴァイスが阿吽の呼吸で連携しているかのようだ。勿論、そんなことなどなく、クロウからヴァイスには声すらかけていない。
 これほど恐ろしいことはない。こちらの動きがバレているに等しいのだ。ならば、いくらかの敵意を持って観察していることなど、バレているに決まっている。
(ここで本気は出せない、ってところか?)
 クロウが動揺し、手が縮まったのと入れ替わるようにクラーケンへの攻撃を開始したのは桐ケ谷 彩斗だ。彩斗は『リープシューズ』で空をかけ、『機装:テクノキャリバー“黒鉄塊”』を振るい遠距離から『機導【闇透波】』を放つ。『機導式【衝撃波】』と『機導式【浸透Ⅰ】』が組み込まれた彩斗の機導はクラーケンに命中するが、あまり効果を発揮できていないようだ。クラーケンは衝撃を海に逃がすような身のこなしを心得ているのか、ダメージを最小限に抑えている。
「こいつは随分経験豊富なクラーケンだな。海軍とやり合って生き残った経験がありそうだ」
 先ほどの個体も強力だったが、どうやら二体目も相当な力を持つクラーケンのようだと彩斗は判断する。
「おい、もうちょっと本気を出してみろ。本気を出せば、褒美として俺が知ってるメリッサのことを少し話してやる……」
 彩斗は自身が苦戦する様を敢えて見せた上で、ヴァイスに対して本気を出せと言う。それも、餌付きでだ。彩斗としてもダメ元での提案だったのだが、
「乗った!」
 何故かヴァイスは彩斗の提案を二つ返事で了承した。
 するとヴァイスは海上での動きを更に高速化し、触手の乱舞を掻い潜り翻弄し始めた。
(なるほど、本気は出すが仕留めるのは任せる、ということだな。了解した……!)
 ここでヴァイスが本気を出してクラーケンを一撃で葬るようなことがあれば、教会に取り入った努力が無駄になってしまう可能性がある。しかし、冒険者の援護に本気を出せば、そこまで活躍は目立たない、というわけだ。
 彩斗はその意図を察し、『機導式【輝刃】』を組み込んだ黒鉄塊の『機導【灰の剣】』を発動。更に『ドライブアーマーV2』のリミッターを解除し、身体能力を引き上げると、一気にクラーケンに肉薄した。
 そしてヴァイスの相手で大きな隙を作っているクラーケンの胴体目掛けて、『レッドサンライジング』を見舞った。斬撃は咄嗟に防御しようとしたクラーケンの触手を斬り裂き、追撃に発生した衝撃波はクラーケンの胴体を捉える。クラーケンはその場から大きく弾き飛ばされ、海中に逃げ込んだ。
「仕損じたか……!」
 手応えは確かにあったが、クラーケンは寸でのところで耐え、一度海中に逃げたようだ。
 通常のクラーケンならばこのまま戻ってくることは無いだろう。だが、今回現れたクラーケンは、どこか異常な個体だ。恐らく、ある程度傷が癒えたら再び現れる。
「約束通り、本気を出してみたけど?」
「……あぁ、そうだな。メリッサについて教えられるのは……あー、神聖武装の名前は、ニュンプハエアだ」
 ヴァイスは怪訝な表情を見せる。
「それだけ?」
「あぁ……」
「つまんな!」
 ヴァイスはそっぽを向く。彼女にとって、もっと興味深い話が聞けると思っていたのだろうが、彩斗にその用意がなかった。
「まぁ、いいわ。それより、クラーケンは諦めてないわよ」
「だろうな……」
 クラーケンはここで仕留めてしまわねば、海でのバカンスは永遠に楽しめない。彩斗は握る大剣に再び力を込める。


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