【1-2】
拠点から少し離れた場所では、先ほどから
人見 三美と
チェレスティーノ・ビコンズフィールドがゴールデンミズキの捜索を続けていた。三美は露出が高めの【フロートスイムウェア】を着ているが、この暑さの中では汗が止まらない。
更に、チェレスティーノと二人きりということで余計に緊張して発汗効果が高まっている様子。【光風霽月】を使って心の平穏を保ちつつ、捜索に集中しようと自分に言い聞かせる。
「三美先輩、今日はボクのお招きをお受け頂き、ホントに感謝感激雨あられデース!」
不意に振り返ったチェレスティーノに言われて、思わずのけぞってしまう三美。
「こここ、こちらこそ……っ!!」
「ん、何かご不満デモ?」
「じゃなくてっ……えと、あの、その、ただ、同い歳で同じ月生まれで、先輩と呼ばれるのはちょっと、むず痒い所でして……」
「Oh、生まれ月まで同じでしたカ!? デハいつか一緒にお祝い致しまショウ!
これほど近いと親近感を覚えずにはいられないデース」
「は、はい、ぜひ……!」
無意識に三美の手を取り、ぶんぶんと振り回すチェレスティーノ。
「フムフム……呼び方……なるほど」
チェレスティーノは三美の呼び方を自分なりに考えてみる。
どう呼んでもあまりしっくりこなさそうな気がしたが、最終的には、
「それデハ和風テイストで……三美殿、と呼ばせて頂いて宜しいですカ?」
近すぎず遠すぎず、程よい呼び名を提案してみせると、三美は顔を真っ赤にして頷いた。
「わ、私も、もう少し砕けた呼び方を心がけます……!」
「好きに呼んでもらって大丈夫デース! フフ……それでは今回の主要任務に取りかかりまショ~♪」
二人で岩を動かしてみたり、茂みをかき分けたりと共同作業を続けていく中で、三美は無意識に緊張が少しずつほぐれていったようだ。
「ティーノさん、今度はあっちへ行ってみましょう!」
チェレスティーノをどう呼ぶかあんなに悩んでいたはずなのに、いつの間にか自然と距離感が近い呼び方に変わっている。
「ここで三美殿に質問デス! ズバリ、三美殿の理想の男子像はいかがなものでございまショウか!? 参考までにお聞かせ願えましたら嬉しいデース」
「……あんまりそういった事を考えた事はなかったのですが……そうですね、真面目で優しくて、何事にも一生懸命に取り組む方、ですかね?」
改めて考えると、チェレスティーノは三美の理想にかなり当てはまっているのだが、まさかそんなことは口に出せない。
「真面目で優しくて、何事にも一生懸命……人としていちばん大切な事ですよネ。ありがとうございマス!」
現実的に目指せそうな理想を知ることができたチェレスティーノ。どこまで自分が当てはまっているかかなり気になったが、それ以上は聞くことができなかった。
「普段から三美殿は、控えめでまさに大和撫子!という雰囲気を纏われておりますガ……
実際にお話しできて更にわかりましタ。控えめで清楚な中にも、三美殿のお心はとても優しくて暖かく……まさに日ノ本のように輝いておられマス! だからどうぞ自信をお持ちクダサイ!」
「ありがとうございます、ここまで褒め殺しされては……照れてしまいます」
「HAHAHA、褒め過ぎと思われますか? 全部、本心なんですケドネ……ですガ、確かに少々照れますネ……イヤ少々どころじゃナイ……」
「じゃあお返しに、私からもティーノさんをお褒めします。ティーノさんも外国から、文化を学ぶ為に日本へ渡って来られた情熱と文化を学ぶ為に努力を惜しまない熱意ある姿勢、人の幸福を願う、優しい心は素敵なものだと思いますよ」
「……Oh!? まさかの三美殿からも逆に褒められてしまいまシタ! 感動と自信が溢れて溢れて……参りマス……!」
自分の良い所は、自分ではなかなか分かり難いものだ。
こうやってお互いに褒めて認めることで、尊重し合い、距離を縮めながら関係性を深めていくことができる。
「本日は三美殿とご一緒できて本当に良かったデス! また是非デス!」
「こ、こちらこそ……!」
チェレスティーノと三美は礼をして握手をしながら照れ合っているが、もはやゴールデンミズギの捜索は後回しとなっていた。
当初の目的はどうあれ、二人はゴールデンミズギよりも大切なものを見つけたに違いない。