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楽園シャングリラのとある日

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楽園シャングリラのとある日
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・進出と探索1

 鶏肉騎士団が申請した防衛設備について、可否の通達がされた。

 因子に頼らない早期警戒用サーチライト……可。
 ガーディアンプロトコルをベースとした、使徒AI制御による遠隔操作型防衛システム……否。ガーディアンプロトコルは恒常的な防衛設備に向いた装備ではない。
 駐屯地を取り囲む防壁……可。


 これを受けて、さっそく鶏肉騎士団は駐屯地を更に前線に近い場所へ移し、防衛設備の建築を始めた。
 最初に手をつけられ始めたのは、朝霧 垂が考案した防壁の建築作業だ。

「出入口になる門は必須だよな。あとは、壁の上を歩けるようにもしねえと。せっかく高所を確保できるんだ。活用しない手はねぇ」

 外と行き来する為の門や壁の上を歩く為の通路もあり、後々の拡張も考えている。
 防壁の材料となるのは、スタンドガレオンで運ばれてくる大量の石材や、鋼材の山だ。
 デュパンダルカスタムを操縦し、防壁を築いていく。

「拡張性も考えなきゃな……。建物に近いと苦情が入るかもしれんし、万が一防壁を抜かれたら即住民を巻き込んで戦闘になっちまう。住民が生活しているスペースとの間に、充分な余白を残しておかねーと」

 住民の視点から考えても、すぐそこに防壁があってその隣は危険地帯では安心して暮らせないだろうし、いざという時の避難にしても、全員が全員、即座に避難を完了できる状況ばかりとも限らない。
 実際に運用を始めたあとでも改善点が浮かび上がってくる可能性は多いにあるので、増築や改修を行えるようにしておいた。
 己が考案した防衛設備の案が通らなかったキョウ・イアハートだったが、そうなるとやることがなくなり手持ち無沙汰になってしまうため、ひとまず自分で試作品を組んでみて、防衛設備として問題があると指摘された理由を精査することにした。

「恒常的な防衛設備には向かない、か……。何でだ?」

 とりあえず自分のコンチネンタル2Mを分解し、小型の試作品を組み上げ、作動させてみることにした。
 バリアが展開されない。

「……ああ、そういうことか。抜かったぜ」

 何度かバリアの展開を試みたところで、展開されない理由に気付いた。
 スタンドガレオンを分解したことで、ガーディアンプロトコル<G>の使用要件を満たせなくなったのだ。
 【使徒AI】コハマも途方に暮れている。
 そして、スタンドガレオンの兵装のまま防衛設備として運用するにも、問題があった。
 まず前提として、バリアは前後左右の一方向にしか展開できないため、複数方向からの同時攻撃に対応できない。
 本来ならスタンドガレオン自身がもう片方を回避すればいい話なので問題ないのだが、駐屯地を防衛するために運用するなら必然的にスタンドガレオンを盾にしなければならず、大きな問題となる。
 さらに動かすには装置ひとつにつき使徒AIひとりを専門に割り当てる必要があるのだが、防衛に必要な数のスタンドガレオンを動員するとなると、必要な使徒AIの数も膨大なものとなる。
 本当に、駐屯地の防衛としては向いていない装備なのである。
 そんなキョウの様子を、柊 恭也が見ていた。

「……駄目だったか。っと、俺は俺の仕事をしねぇと」

 サーチライトの設置作業をしている住民たちの士気を鼓舞しつつ、恭也はカリバーンⅢで周辺を警戒飛行し、ソナーによりバルバロイの反応を探る。
 駐屯地に近付いてくる反応が三つ。
 すぐに肉眼でも確認した。
 バルバロイ・リノセロス、バルバロイ・モス、バルバロイ・グラスホッパーがそれぞれ一体ずつだ。

「全員出ろ! 襲撃に来やがったぜ!」

 味方にバルバロイの襲来を伝えつつ、恭也のカリバーンがTマギ・トリプルカノン<D>を一斉射し、ふらふらと飛んでいたバルバロイ・モスを撃ち抜いて地上に叩き落とす。
 【使徒AI】お局様が、跳躍してきたバルバロイ・グラスホッパーを接ぎ木<D>によるバスタードソード二刀流で弾き飛ばした。
 すぐに垂のデュパンダルカスタムと、組み上げ直されたキョウのコンチネンタル2Mもやってきて参戦し、残るバルバロイ・リノセロス、バルバロイ・グラスホッパーも討伐された。


* * *



 恭也、キョウ、垂の三人が駐屯地を移動させ、防衛設備を整えつつ襲来するバルバロイとの戦闘に没頭している頃、ライオネル・バンダービルト松永 焔子スレイ・スプレイグの三人は、前回調査できなかった遺跡の二階層を調査していた。
 前回の失敗を踏まえ、今回は三人とも照明を完備している。

『まだビットボマーが残っているかもしれねぇ。各自、警戒を密に。マッピングが終わっているからって気を抜くんじゃねぇぞ』
『稼働中だったものはあらかた破壊したはずですが、未稼働の個体が残っていて今回動き出している可能性もございますわね』
『この遺跡で発見したガンデッサを、この遺跡の攻略に投入することになるとは……。この遺跡を管理していた存在が仮にいるのなら、皮肉なものですね』

 誰が狙われても、残るふたりが即座にフォローに入れるよう、ライオネル、焔子、スレイの三人は、隊列の位置を調節して進んでいた。
 下手にひとりになって、そのタイミングでビットボマーに襲われてはたまらない。
 二度目の遺跡調査とはいえ、簡単にはいきそうもなかった。
 ライオネルのマランゴーニDMが放つ、ネイバースフィア<G>、焔子のシャムシールが手にするマジックトーチ、スレイのガンデッサが手から下げたマジックトーチで照らされた視界の向こう側には、暗闇が蟠っている。
 その暗闇の向こうで、光が瞬いた気がした。
 いや、気のせいではない。
 光は、砲撃の際に砲口から漏れ出たものだった。
 一瞬遅れて、砲声が遺跡内に轟く。

『避けろ!』
『さっそくお出ましですわね!』
『やはり、残っていましたか!』

 さすがに二度目の交戦ということもあって、三人とも機敏に回避動作を取った。
 大きく急上昇したライオネルのマランゴーニDMが、曲芸飛行で通過する砲弾を真下に置き去りにする。
 焔子のシャムシールが機体の尾をくねらせながら身を倒し、飛来する砲弾の軌道を読んで横回転し、機敏に砲弾の直撃を避けた。
 スレイも焔子のシャムシールとは反対側にガンデッサを回転飛行させ、上手く砲弾の軌道から逃れている。
 外れた砲弾は暗闇へと消えていき、一拍の無音の後につんざくような轟音と地響きを残す。
 すかさずライオネルがネイバースフィア<G>で光弾を放って、ビットボマーたちの姿を照らした。

『二発目を撃たせるな! 一人一殺だ! いくぜ! 右のをやる!』

 再度ネイバースフィア<G>の発射準備を進めるマランゴーニDMを追い抜き、シャムシールとガンデッサが相次いで飛び出す。

『中央を狙いますわ!』
『なら、私の担当は左の個体ですね。速攻します』

 砲撃の余韻冷めやらぬ間に、三人は反撃に出た。
 電光石火の勢いで加速し、間合いを詰めた焔子のシャムシールが、スピットファルクスを振り上げ、ビットボマーへ斬りかかる。
 ビットボマーは斬撃を避けると、シャムシールに取りつこうとする。
 しかし、それは焔子がビットボマーの行動を確実に予測するために張った罠だった。

「読み通りですわね。所詮は機械ですか」

 シャムシールの尾が地面を叩き、跳躍して壁に取りついた。
 放たれた斬撃の衝撃波が、ビットボマーに直撃し周囲に破片を飛び散らせる。
 近寄ろうとしてくるビットボマーに対し、スレイは固定武装のガトリング砲の弾丸を浴びせると、斬騎剣<D>を引き抜き飛びつきを避け、隠し腕<D>のシールドで弾き飛ばす。
 強引に間合いを開けられたビットボマーへ、すかさず追撃のかまいたちが殺到する。
 順調に戦闘を進める焔子のシャムシールと、スレイのガンデッサがビットボマーを攻めたてる一方、ライオネルは受け気味に立ち回り、狙い済ました狙撃でビットボマーを撃ち抜いていた。
 もうひとつの武装であるライトニング・ロア<G>は、見つかるであろう戦利品の破損を恐れたライオネルが使用を控えており、もう片方のネイバースフィア<G>も、暗闇に逃げ込もうとするビットボマーを捕捉するための照明として遠距離から便利に使用できる一方で、そのためにライオネル自身の攻撃頻度はそれほど高くない。
 ライオネル自身は、あくまで身を守ることを最優先し、倒すことそのものより、焔子とスレイが駆けつけてくるまでの時間稼ぎを主目的に動いていた。
 読み通りに、ほどなくして焔子とスレイがそれぞれ戦っていたビットボマーを撃破する。
 すぐに駆けつけてライオネルに加勢し、残る一体も撃破する。
 遺跡の奥には、スタンドガレオン用の兵装が眠っていた。
 

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