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ワールドホライゾン

田んぼの中心で愛をさけんだねこ

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田んぼの中心で愛をさけんだねこ
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【2】界霊ボルカデリュージを倒す

 世界のすべてが洪水によって覆い尽くされてしまったのかと思うくらい、もはや大海原と化したワールドホライゾンを【ライトクルーザー級エアロシップ】が駆け抜けていく。
 【チーム:カノープス】のアイン・ハートビーツ天城 摩耶、そしてアデリーヌ・ライアーは突き刺さるような熱風を頬に受けて黙々と針路を進んでいたが、界霊ボルカデリュージの姿を確認すると今度は近づきすぎないようにゆっくりスピードを落とした。
 まずは摩耶が【浄眼】でボルカデリュージの霊力や弱点を精査する。
 その結果を聞いたアデリーヌは頷いて、【FFキュベレー】の索敵宝珠を使った【全方位索敵】でできるだけ遠くからボルカデリュージを捕捉しようと試みた。先手を打ったアインが【インフェリアミスリルガン】を構えて【エイムショット】で狙撃する。
 しかし、硬い鱗に覆われた巨大なワイバーンはアインの攻撃が当たっても物ともせず、摩耶とアデリーヌの存在に気づいた途端、おぞましい雄叫びを上げ尻尾を振り下ろした。水面に叩きつけられそうになった摩耶は【回避行動】の後に【全速回避】でエアロシップを操作し、ボルカデリュージの容赦ない攻撃をくぐり抜ける。

「こんな所で、むざむざ界霊のエサになんて絶対なりたくないんだから……っ!」

 【マジックカタパルト】でボルカデリュージを牽制しつつ、味方のために援護の【支援砲火】を放った。だがこの程度の攻撃ではボルカデリュージを弱らせることすらできない。
 更にアインが【サイコアクチュエータ】を発動してから【サイココネクト】を使ってキャヴァルリィに攻撃をさせ、機械と精神を融合した特性を活かして命中精度を上げた狙撃術をあますことなく披露した。
 さすがに連続攻撃は効果があったのか、ボルカデリュージは荒々しく水面をのたうち回っている。

「とりあえず好きなだけ暴れさせて、どんどん体力を消耗させるですよ!」

 アデリーヌはそのまま【索敵】を続けて戦闘パターンの解析を試みる。
 さすがに水上で丸腰の状態のまま戦うわけにはいかない。【バリアオーブ】でエアロシップ自体をガードする防壁も展開した。逆にボルカデリュージからの【索敵】を妨害するべく、【マジックチャフ】を使用する。それが返ってボルカデリュージを煽ることになってしまったのか、口の中に溜めていたブレスを放ち始めた。
 アインがすかさず【サイコフォーキャスト】で軌道を読み、回避方向を指示する。

「──二時の方向っ!!」

「このままではさすがに……っ!」

 安定した足場を保つため、エアロシップの丁寧な操船を心掛けてはいたが、ずっと同じ場所にいるのは危険だと判断した摩耶。
 味方機が攻撃を仕掛けたタイミングで速やかに風下へと移動し、そこからまた攻撃を繰り返すという手法を取り続けた。いわゆるヒット・アンド・アウェイ作戦だ。
 アデリーヌがアインの【インフェリアミスリルガン】に【ウェポンチューン】を発動してくれたおかげで即座に修理機能が働き、アインは破損を気にすることなく攻撃に集中ができるので助かっていた。【メタボリズムチェッカー】を着ているおかげで動き回りやすいのか、ペースを落とすことなく攻撃を続けるアイン。
 【大地母神の浄化】でアインの精神を安定させ、【大地母神への祈り】を使って体力を回復させるのも忘れないアデリーヌ。アインの機体はどちらかと言うと短期決戦型なのだが、アデリーヌがサポートすることで能力を大幅に引き伸ばすことに成功している。全員が直接攻撃を仕掛けなくても、【チーム:カノープス】は一つのチームとしてボルカデリュージと共闘しているのだ。
 今度はそこへ【フーン】の特性で飛行してきたクロウ・クルーナッハが現れ、【無窮の探訪】で周囲の状況の確認を始めた。

「……ここは海に見えるが、元はデブリなのだよな? 或いはこの一帯そのものがボルカデリュージなのか……?」

 まずは落ち着いて、ボルカデリュージの観測と解析を行う。【ラプラスの魔瞳環】によってできるだけ正確な情報を把握してから、ボルカデリュージを覆っている融界を調べ始めた。更に融界の影響範囲と性質そのものの解析をするために、【永劫の探究】も使ってみる。
 クロウに気づいたボルカデリュージが大きく息を吸い込んでからブレス攻撃を吹き付けてきたが、クロウは咄嗟に【空虚の門】を発動してブレスそのものを消滅させてしまった。しばらくこれを繰り返せば時間稼ぎにはなるだろうが、ボルカデリュージの本体そのものを門の中へと吸い込んでしまうのはさすがに難しい。
 せめて「此処」が地上であれば、また状況は変わっていたかも知れないが。

「海の上ではこちらが不利……っ! 今は、私にできることをやるまでだ……」

 無駄に動き回って他の特異者たちまでも危険に晒すわけにはいかない。ボルカデリュージとの距離を保ちながら、クロウは様子をうかがう。
 続いてキョウ・イアハートホーク・ハインド
アントーニア・ロートリンゲンが攻撃の態勢を整えている。だが海の上では意のままに動くことができない上、ボルカデリュージの周囲には結界のようなものが張られていることが解析によって判明していた。どんな攻撃の威力も無効化してしまうのではないかという懸念すら抱いてしまう。

「あの力でもて我らが世界を蝕むとなれば、セレクターのみならず数多の脅威を引き寄せる標になりかねないでしょうや。なればこそ、ここで確実に討伐するのです。我らがカプリコーンとしての矜持も、道を歩むことと共にありましょうや!」

 ホークが息巻くのを見ていたキョウ。

「この手の荒事は、こっちでケリつけてやるのがスジってもんじゃないかね。ま、現実はそう上手くいかねえんだろうけどさ」

 【ディーペストユニゾン】でホークとアントーニアと同調したキョウは、【叫騒の鋸刀】を構えて立ち向かっていった。反対の手には【プライモーディアル】を握っている。

「こんな素敵な日に現れるなんて、界霊もタイミングが悪いですわね……ですが出てきてしまったのなら、帰ってもらうしかありませんわね。せめて転化した先で、私たちと共に歩める在り方があればいいのですけれど──」

 アントーニアもどこか余裕を見せながら、小さくため息をついた。

「それでも、今──彼らの門出を邪魔するのであれば、申し訳ないけれど、許すわけにはまいりませんわ!」

 キョウがその言葉に頷いた。
 【レビテイトシューズ】は海の上でもそれなりに戦えるが、横方向への移動はどうしてもスピードが落ちてしまうため、ボルカデリュージとの距離を今以上に詰めるのは難しい。【C】グラビティフリーを発動したホークとアントーニアのおかげで、もともと高かった身体能力は更に強化されて動きやすくなり、キョウはいったん空中から攻撃を仕掛けてみることにした。全身に纏わりついていた重力が緩和され、この状態ならばどの位置からでも攻撃が可能だ。ボルカデリュージの反撃は【ザ・ペイシェンス】でうまく吸収し、直撃されないよううまく回避するキョウ。

「世界を希釈しようが、世界を上塗りしようが関係ねえ……!!」

 【ナシラの恩寵】を発動するキョウ。ボルカデリュージがたとえこの世界を弄ぼうと、どんな攻撃も全力で食い止めるつもりなのだろう。ホークとアントーニアと共に【C】ノーボーダーを使った。これはいわばボルカデリュージを仕留めるための「眼」だ。

「世界を見通し、測るために見やりなさい。討つべき敵の姿を。その眼で捉えた敵を、数多の障壁を透過し、断つ一撃を放ちませい!」

 ホークの気合いよろしく、ボルカデリュージの本質そのものに直接攻撃しようと、【ザ・ペイシェンス】で防御しながら前進していく。

「眼と矛を繋ぎ、世界を──重なる壁を越えた一撃を見出すこの力は、融けた世界、重なる世界に止められるものではありませんことよ!!」

 ボルカデリュージの口からマグマが吐き出され、キョウは咄嗟に防御体勢を取る。
 【キュベレーナイトラス】を搭載し出力が上がった【コンツェシュ改】に乗ったジェノ・サリスと【ブルーウィング】で滑空してきたフェイシア・ピニンファリーナが到着すると、状況が一転しぐっと戦いやすくなった。

「界霊って言っても、ワイバーンのような翼で追いつけると思わないでね」

 【トップギア】で動体視力やスピード、瞬発力を大幅に高めたフェイシアは、

「アクセラレータ──!」

 高速で動き回りながらボルカデリュージからの攻撃を避ける。
 ボルカデリュージを惹きつけてから周囲をぐるっと旋回したジェノは、【レイヤーオブアバターズ】でベースの能力を高めてから戦いに挑む。強力な精神耐性を得たジェノにとって、ボルカデリュージからの攻撃は恐れるに足りない。
 その隙にフェイシアが【アクティベート・デュアルアームズ】で【DD:ヘカトンケイル】を最大六基の浮遊自走式砲台として召喚した。

「これを結婚式の祝砲としてあげます!!」

 全力で攻めても、全ての攻撃がボルカデリュージに命中することはなく幾つかは跳ね返されてしまったが、数基の【DD:ヘカトンケイル】がカウンターの攻撃の役割を果たしている。
 【DD:V】を使って実弾で狙い撃ちを繰り返し、ボルカデリュージが接近してくるとバーストモードに切り替えて高威力レーザーをソードのように見立てて振り下ろしたフェイシア。

「ヴァリアブル……END」

 【影分身】が自身の分身を生み出し、攻撃力を高めてくれた。戦闘機のように攪乱しながら囮にもなってくれるため、次の【ディメンションブレイク】を食らわせるのは簡単だった。
 ボルカデリュージを中心に、【空間歪曲】で重力異常を発生させる気でいたフェイシアだったが、ボルカデリュージをこの時点で捕えることはできなかった。

「後は任せろ!」

 ジェノが【僚機】シュナイダー×3によるビーム射撃を浴びせてから、【エアリアルレイブ】で縦横無尽に移動しつつも【悪滅砲エレオス】を発射する。その威力はボルカデリュージの纏う負のエネルギーを見事に吹き飛ばしてしまった。──耳をつんざくような雄叫びが、ジェノをはじめとする特異者たちの耳に突き刺さる。
 そしてボルカデリュージが溜めていた息吹とともにマグマブレスをジェノに向かって放った。燃え盛る熱波が襲いかかるが、【テク】チャンプムーブを使った立体的な動きで回避し、再び【悪滅砲エレオス】を食らわせるジェノ。
 真正面から攻撃を受けたボルカデリュージの動きが徐々に鈍り始め──眩い光を放ったかと思うと、視界がぼんやりとした中で巨大な人型のようなものが蠢くのが確かに見えた。
 「それ」を捕えようとしたジェノだったが、光のせいで一瞬目が眩んだ隙を突かれてしまい、結局取り逃がしてしまったのだった。

「後少しだったものを……っ!」

「人型に……見えましたね……?」

 フェイシアとジェノは互いに顔を見合わせて頷く。
 他の特異者たちも、正体を垣間見せたボルカデリュージとのここまでの戦いは不完全燃焼だったのか十分な納得がいかないようで、神妙な表情を浮かべている。
 ──だが今は、全員の無事を喜ぶ以外にどうすることもできない現実が目の前にあった。

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