●ピカピカに光るの
「これで、良いのかしら……」
納屋 タヱ子は、少し恥ずかしそうに呟いた。
見れば、彼女が操縦する無限色トランスプランターの田植え機には、浮遊電飾が付けられて、光り輝いていたのだ。
まるでパレードのように、水田を進みながら、キラキラと輝いた無限色トランスプランターが稲を植えていく。
すぐそこまで、洪水が押し寄せているのが夢のようにも感じられた。
「……ホライゾンを守るためですから」
最初は躊躇っていたタヱ子であったが、意を決しての顔面国宝を放った。
ハワァ!
オシヒカリたちは、あまりの美しさにクラクラしてしまい、タヱ子に見惚れつつも、身体を伸び縮みさせて、ビヨンビヨンしていた。
ハイカラさんで、さらに素敵に飾り……拒絶のシクレシィエンブレイスによる黒く輝く巨大な衣装を纏って、光と影の陰影を表現するパフォーマンスをしてみた。
ホワァー。
ホワァー。
さらに歓喜するオシヒカリであった。
「良かった……効果があったみたいですね」
安堵するタヱ子……実家でも田植えの仕事を手伝っていたこともあったが、今回は田植えだけではないのだ。
稲を植え付けるだけでなく、オシヒカリたちを渇水状態にもしなければならなかったのだ。
「せっかくですから、楽しんでくださいね」
タヱ子は、無限色トランスプランターを巧みに操縦して、右に進んだり、左に進んだり……その度に、稲が叩きつかれたように植えられていく。
「それでは、仕上げに入りましょう」
そう言って、【スタイル】食皇の加護による万世大漁のパフォーマンスを繰り広げていく。
「食べてみてくださいね」
タヱ子が、両手を広げて、焼き魚を見せてくれた。香ばしい香りが漂ってくる。
それだけではない。
万世大漁の大波が押し寄せ、海の幸でもある魚たち……鯛やヒラメの幻影が浮かび上がってきた。
ホワァー!
ホワァー!
オシヒカリたちは、幻影に飲み込まれて、空腹感を味わっていた。
「洪水に飲まれたらこんなものじゃすみませんよ~!! もっと長く苦しむんですよ~~!!
その時にもっともっと苦しい思いをしたくなかったら、泣いて謝って洪水を受け止められる渇水状態になることですね!!!」
タヱ子が、オシヒカリたちに見せたのは、幻影の魚たちであった。
だが……。
「え?」
オシヒカリたちが凝視していたのは、タヱ子が手に持っている焼き魚だ。これは、幻影ではなく、近所のスーパーで買った本物の魚だ。
オシヒカリたちは、空腹のあまり、焼き魚に食らいつこうと、必死になっていた。
しかし、大地に植え付けられたオシヒカリたちには届かない。
オシヒカリたちは目の前にある焼き魚を見て、空腹のあまり、泣き出してしまった。
ホワァー!
ホワァー!
ホワワアー!
無数の涙を流して、オシヒカリたちは渇水状態となった。
「……洪水が、引いていきますね」
タヱ子の活躍により、この場に押し寄せようとしていた洪水を食い止めることができたようだ。
ありがとう、地球人よ。