クリエイティブRPG

ワールドホライゾン

田んぼの中心で愛をさけんだねこ

リアクション公開中!

 132

田んぼの中心で愛をさけんだねこ
リアクション
First Prev  12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22  Next Last


 ■薫暑の陽射し 4



 シェテルニテで行われる模擬結婚式に山葉 涼司を誘った火村 加夜

(以前にも模擬結婚式をしましたが、涼司くんが神前で結婚式を挙げたいと言っていたので……)

 涼司が以前言っていたことを覚えていた加夜は今回は神前での模擬結婚式の予約を行っていた。

 シェテルニテへ着き、加夜が予約の旨を告げれば二人はそれぞれ別室へと案内され、着替えを行うことになった。

(パラミタでの戦いも落ち着いてきましたし心持ちが前と違います。
また次の戦いが起こりそうですが今は休息をとることも大切ですよね)

 そんなことを考えながら加夜は選んだ色打掛に袖を通す。
 白無垢も選ぶことが出来たがそれは未来に取っておきたかった。

「涼司くん、似合うでしょうか?」

 鮮やかな色合いの色打掛には青色も入っていて。
それが加夜の髪色と違和感なく馴染んでいる。

「ああ。良く似合ってるな」

 涼司の言葉にすぐに顔を綻ばせる加夜。

「俺のはどうだ?」

 涼司が着ているのは本物の神前式で着るのと同等の紋付袴姿だ。

「似合いそうと思ってましたけどすごくよく似合ってます!」

 思わず力いっぱい言った加夜に涼司は照れくさそうな顔をしながら

「ありがとな」

 とお礼を言った。


 神前式用の会場へと入場する二人。

(教会とは違った緊張感がありますね)

 どちらも厳かな空気に包まれてはいるのだが、感じるものに違いはあるようだ。
 そんな緊張感もある中、式は順調に進んでいく。

 誓杯の儀と呼ばれるのは三三九度の杯を交わす儀式の一つである。
 今回は模擬であるため、形だけの儀式に過ぎないがこの儀式は神前式において誓いのキスのようなものなのだ。
 そう説明を受けた加夜は今後の参考のためと熱心に耳を傾けていた。

 神楽奉納の儀を挟み、誓詞奏上へと移る。
涼司は儀式に参加はするが誓詞奏上は言わないので、加夜が式の流れと今後の練習も兼ねて口にする。

「今日のよき日に、私達は結婚式を挙げます。 今後は愛情と信頼をもって助け合い励まし合いながら、明るく温かい家庭を築いていきたいと存じます。
なにとぞ、幾久しくご守護下さいますようお願い申し上げます」

 丁寧に加夜が誓詞を読み上げ、こうして模擬結婚式は無事に終わりを迎えた。


「涼司くん、ありがとうございます」

 式を終え、緊張が解けホッとした表情で改めて加夜は涼司にお礼を伝えた。

「いや、俺の方こそ……ありがとうな」

 前に言ってたことを覚えててくれたんだな、と涼司が続ければ加夜は照れくさそうに微笑みながら頷いて。
 そのやり取りにきっと涼司も楽しんだのだと確信を感じる加夜。
 それと同時に思い出すのは涼司が『一緒に歩める人と結婚したい』という言葉。

(涼司くんの思う『一緒に歩める人』になれるように頑張りたいです)

 涼司の横顔を見つめながらそう思う加夜。
それはきっと一方的に想うだけじゃなくて共に支えあい、共に戦ったり同じ方向を向いて進める人だと思うから。

「あの、今度でいいので涼司くんの趣味や特技、好きな場所、苦手なこと等を教えて貰ってもいいですか?」

「ああ。それは別に構わないが……」

「ありがとうございます」

 涼司のことをただ好きなだけでは前に進めないと気付いた加夜。
 涼司のことで知らないことが多いから、まずはそこを知ることから始めようと勇気を出す。そしていつか

(私の事も興味持ってもらえると嬉しいです)

 と今は心の中だけでそう願って。





 今年もシェテルニテで結婚式や模擬結婚式を行うことが出来るジューンブライドのイベントがあると知ったスレイ・スプレイグ

(結婚式……私としては本当の式を挙げたくはありますが私達は恋人になったばかり。焦ってエーデルの気持ちを無視するようなことはしたくありません)

 お互いに同意の上であるから恋人期間が短くても本当の結婚式を挙げることは可能だろうが、自分たちの関係はそこまで進んでいないと考えるスレイ。

(ですがエーデルもウェディングドレスのモデルを引き受けていたりして結婚に興味がないという事はないでしょう)

 エーデルがウェディングドレスのモデルをするという話はスレイの耳にも届いていた。
 だからこそ、もし興味が無いのならばモデルも引き受けないだろうと思ったのだ。


 だから今回は仲を深め、エーデルの結婚に対するスタンスを確認する意味で模擬結婚式を行おうとスレイは考えた。

(将来、本当に結婚するとなった時に今回の経験が活きるかも知れませんしね)


 シェテルニテで待ち合わせをしたスレイとエーデル。
 スレイは模擬とはいえ結婚式なのでそれに相応しい礼服に着替えてからエーデルの元へと向かった。そして

「エーデル。もし良かったら私と模擬結婚式をやってみませんか?」

「ええ。構わないわ。本当に挙式でも構わなかったわよ」

 スレイの誘いにエーデルはそう言って頷く。

 エーデルの了承を得たことでスレイは早速、模擬結婚式の申し込みを行った。
 取り仕切り役は境屋にお願いすることにし、式の種類や細かなやり方はエーデルの意見を取り入れることにした。

(私自身がこういう事に疎いのもありますが結婚式の主役と言えば女性の方でしょうから)

 そんな想いもあり、エーデルに希望を聞いたところ

「ドレスのモデルをしているので、イメージ写真を撮影する必要もあるでしょうしね……」

 との呟きが返ってきた。
模擬結婚式ということもあってか意識するのはエーデル本人の希望と言うより、ウェディングドレスのモデルをしているエーデルの希望になっているのかもしれない。

 結局、特に希望などもなく、教会で挙げる標準的な式を行うことになった。
 スレイとしてももしエーデルに希望が無かった時に挙げるならと考えていたのがチャペルでの教会風だったこともあり、すんなりと話は纏まった。

「今回は模擬ですし、誰かを招待する訳でも無いですが静かなチャペルでやった方が緊張もしないかと思いますよ。
まぁ緊張してるのは私の方なんですがね」

「模擬とはいえ、結婚式なのだから緊張もするわよ」

 そんな会話を交わして、二人は模擬結婚式を行う式場へと向かう。


 用意されたのはスレイが想像していたような静かなチャペル風教会。

「あー……よし、んじゃ始めるか」

 形だけでもと神父服姿の境屋が進行する。

 柔らかな陽射しが降り注ぐ中、式は順調に進んで行く。

「じゃあ、次は指輪の交換だな。どうする?」

 境屋がそう聞いて二人を見る。今回は模擬結婚式ということもあり、結婚指輪を借りて指輪交換の振りをしたり、そもそも指輪交換はせずに進行を進めてもいい。

「本来は結婚指輪になりますが今回は」

 そう言ってスレイが取り出したのは【シルバーツインリング】。
 以前貰った眼鏡にスレイがエーデルとの絆を感じている様に、エーデルにもそう思ってもらえる何かを贈りたいと思って選んだ品だった。

「様になっているわね」

 スレイから指輪を贈られたエーデルはその指輪の嵌った手をしげしげと見つめる。

 親愛の証にしては重かっただろうかと心配していたスレイだったがそれはどうやら杞憂で済みそうだ。
 スレイのエーデルへと想い、そして未来はどうなるか分からないと承知の上で未だ収まらないテルスの戦乱を二人共無事に生きて終えることが出来るように……。
 そんな気持ちを込めた誓いの証はエーデルの左手で光を放ち続けていた。

First Prev  12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22  Next Last