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田んぼの中心で愛をさけんだねこ

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田んぼの中心で愛をさけんだねこ
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 ■青葉の香り 2



 ノアに絶賛、片想い中の奏梅 詩杏
 シェテルニテで模擬結婚式を行えるため、何とかノアと参加出来ないかと考えた結果

「ウェディングのイメージモデルにアイドルが起用されることもあるので、そのお勉強を一緒にしたいです」

 そう言って誘ったのだ。それに対しノアは

「詩杏先輩、さすがだね。憧れの存在って意味ではウェディングもアイドルも似てるし、ぼくも先輩と一緒に勉強したいな」

 と快く了承し、引き受けた。

(まぁ、僕も憧れてるのですけど……)

 そんなことを考えながら頭の中で自分とノアの結婚式風景を想像して顔を真っ赤にする詩杏。

「詩杏先輩、顔赤いけど風邪なら無理しちゃだめだよ?」

 ノアにそう言われて詩杏はどうして顔が赤いのか本来の理由を説明出来るはずもなく、四苦八苦と言葉を並べ

「だから風邪とかは全然平気ですって!」

 と言い切り、模擬結婚式の申請へと向かったのだった。





 無事に模擬結婚式の申請も終わり、二人は衣装選びにやってきていた。
 それぞれ衣装が決まった後は控え室で着替えを済ませ、式場へと向かう。

「こんなふうに着飾るのは、初めてなのです……」

 スタッフと相談し、とびっきりのおめかしをした詩杏は鏡で自分の姿を見てそう呟いた。
 ふんわりしたデザインで水色の差し色が入った白いウェディングドレスに、アップで纏めたヘアアレンジを施され、まるでその姿は自分なのに自分じゃないようですごくドキドキしたのだ。

 自分のドレスアップに満足した詩杏は選んだ模擬結婚式の会場へと案内される。
 今回、詩杏が選んだのはガーデンパーティー風の会場だ。緑溢れる草木の中、色とりどりの花が風に揺れ、小さな噴水からは絶えず水が流れて涼し気な音がしていた。

 会場には先に着替えや準備を済ませていたノアの姿があった。
 ノアは白色ベースのタキシードに身を包んでおり、ノアに片想いしている詩杏からはまるで王子様のように見えて思わず見惚れてしまって。

「いつもより、一段とかっこいいです……すごく、すごく……すてきです」

 ノアの元へと歩み寄り、詩杏は顔を赤くさせながらそう伝えると

「だよね。ぼくもそう思うもん」

 詩杏に褒められたのが嬉しかったのかノアはドヤっとした顔をしながら嬉しそうに笑った。


 二人はそのまま、模擬結婚式の一連の流れを体験し、あとは着替えて帰るだけなのだが……。

「楽しかったね。それに良い勉強にもなった気がするよ」

「ボクもとっても楽しかったです」

 と、微笑み合う二人。

 詩杏はドレスアップした自分の姿も、ノアの王子様のような素敵な装いも、まるで夢のように思えた。
だからこそジューンブライド特有の幸せいっぱいな空気にぐっと拳を握り、ノアを見つめる。
 そしていつもは出せないほんの少しの勇気を振り絞って

「ノアくん……好きです」

 と自分の想いをノアへ打ち明けた。

「あなたに、恋をしています。ノアくんの一つ一つの表情を、傍で見ていたいのです。『先輩』だけじゃ、足りなくなってしまったのです……」

 いっぱいがんばって勉強してるノアも、ちょっと人をからかったりして楽しそうに笑ってるノアも、誰かを手助けして真剣になってるノアも……全部ぜんぶ、大好きだと思うからこそ、詩杏は先輩後輩の関係ではなく、ノアと恋人になりたいと思ったのだ。

「えっ…………ええっ!? 詩杏先輩がぼくのことを、好き……?」

 告白を受け、ノアは分かりやすく驚いて、喜んで、困惑した。

「告白されて戸惑ってしまうのは分かってる、だけどあなたが好きです。返事は急がないから……どうか、欲張りな僕のことをもっと見てほしいのです」

 詩杏からの真剣な眼差しと言葉にノアはごくりの喉を鳴らし、そして

「あの、ぼく……全然気付いていなくて……。詩杏先輩のことは好きだけど、そういう”好き”かどうかはまだぼくにはわからないから……。だからちょっと待ってくれたら嬉しいな……」

 と返事をしたノア。
詩杏の気持ちが真剣だと分かるからこそ、自分も中途半端な気持ちで返事をするのは違うと思った上での答えだった。

 詩杏もそんなノアの気持ちがわかるからこそ、それでいいのだと頷いて返したのだった。





「ジューンブライドかぁ。憧れるよね」

 ジューンブライドのイベント用チラシを見た桐生 理知が呟く。
 どうせなら誰かを誘って参加してみたいと思い、白羽の矢が立ったのがイコプラ仲間でもある辻永 翔だった。

 二人が行うのは模擬結婚式の体験だ。

「翔くん、似合う?」

 真っ白のふわふわなドレスを着た理知が聞く。
いつもはしないお化粧もしてもらったからか気分はお姫様だ。

「ああ……」

 くるり、回る理知に翔は素っ気ない様子でそう言って。

「ありがとな」

 タキシード姿の翔は理知にとっては間違いなくカッコいい王子様に映っていた。


「模擬とはいえ、しっかりとやらないとな」

 そう呟いた翔が祭壇の前で待つ。そこへ理知がバージンロードを歩き、近づいて行く。

「バージンロードを歩く時はやっぱり緊張するね。
イコンに乗ってる方が緊張しないよ」

 裾を踏まないように歩き続け、翔の隣に立ち、深呼吸をしながらそんなことを言う理知に

「慣れてるかどうかの違いだな」

 と返す翔。そんな翔の横顔をちらりと見た理知はやっぱり、様になっててカッコいいね、等と思うのだった。

 式の流れは簡易的なものだが、それでも本物の結婚式でやることと変わりはない。

「ーーーーーーますか?」

 神父から誓いの言葉の問いかけをされている理知だが意識は別のところにあったようで

「えっ、あ、はい。誓います」

 慌てて言ったものの、聞いていなかったのは明らかで。

「ごめん、翔くんに見惚れてた」

「模擬とはいえ、今は式に集中してくれ」

 さらりと言った理知の言葉に翔は表情を変えずに告げる。

 誓いのキスの流れになったが今回は模擬なので二人は向かい合う形をとる。

「本当にキスしたら驚く?」

 さきほど集中してくれと言われたから、と理知が聞けば

「模擬挙式では必要ないだろう」

 翔はさも「元々ないとも」と思っていたようだ。

 同じように指輪の交換も形だけ行う。お互いに交代で手を取り、指輪を付ける振りをする。

「翔くんの手は綺麗だけどやっぱり男の子の手だね。大きくて比べてみると違うもん」

「綺麗、か? 大きさはまぁ……当たり前だな」

 戯れるように手を合わせれば尚更大きさの違いがはっきりと分かる。


 こんな感じで二人の模擬結婚式は終始緩い雰囲気のまま、無事に終わった。

「今日はありがとう。お姫様気分も味わえたし、翔くんのタキシード姿も見れて楽しかった」

「俺も楽しかったな。タキシードは少し恥ずかしかったが……」

 理知のお礼に翔は自分も楽しめたと伝える。
それならよかったと理知は笑顔になって

「お礼にこの後イコプラショップに行く? ジューンブライドセールしてたはず」

「よし、すぐ行くか」

 無類のイコプラ好きである翔は理知の提案に食い気味に即答して、今にも走り出しそうだ。
 そんな翔をちょっと待ってと引き止める理知。

「でもその前に写真撮っても良い? 記念、記念♪」

 そう言って近くの人に写真撮影を頼む。
写真には二人並んだ笑顔の写真が収められたのだった。

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