■初夏の海
いつもなら嬉しい意味でのドキドキとどう思われているかの不安な気持ちで村雲 いろはと過ごすことが多かった
クロティア・ライハ。
(いろはと過ごす6月の一時も四回目ね……。今年からは恋人だし、去年と違って不安なく行けるわね)
恋人となったことで今まで不安に思っていた気持ちの憂いはなくなってどちらかと言えば楽しみな気持ちがほぼ100%だ。
「今年は少し暑いみたいだから海で遊べるわね」
6月といえど今年は暑い日があり、少し早いが海へ行こうとクロティアはいそいそと準備を始めた。
そして当日。二人はホライゾンビーチへとやって来ていた。
クロティアはリデザイアの姿で水着を着て首からは防水袋に入れた【携帯ゲーム機】を下げていた。
(リデザイアだから色々と小さくなってるけど……まあ気にしない! これも私だからね)
そんなことを考えながらクロティアはいろはの着替えが終わるのを待っていた。
(いろははどんなスタイルや水着を着てくるんだろう? もしかしてウェディングドレス水着とか? ブライダルのキャンペーンでそういうのあったし……。でもあれだと泳ぎにくいかな?)
クロティアが色々考えてるうちにいろはは着替えを終えて出てきた。
「6月に水着を着るのは初めて、かも」
クロティアは色々と想像していたがいろはの水着はフェスタ指定の水着だった。
「いろははどんな水着も素敵だわ」
「それはあなたもよ?」
二人は見つめ合い、そう言って微笑み合う。
どちらからともなく手を伸ばし、繋ぎあってビーチへと駆けていく。
ビーチでは【サンダルフォンの洗礼】で音楽を流したり、【ライトアップダンス】を使って踊ったりして楽しく遊んだ。
「いろは、そろそろ休まない?」
クロティアが提案すると
「たくさん遊んだし、休憩も必要ね」
いろはも同意して、二人は人気のない場所で休憩することにした。
元より人が少ないビーチなので二人っきりになることもそんな難しいものでもなく、身体を休めていればいい雰囲気にもなるわけで。
クロティアはいい雰囲気になったタイミングで仮想体プライに変身し、プライ特有の魅惑的な身体をいろはの身体へと寄せた。
「クロティア?」
「ふふ、この二次元のプライの姿でも私はクロティアだから安心してね? 別に今乗っ取られるほど、二次元の私は空気読めない人じゃないからね」
いろはに名を呼ばれたクロティアそう言って【リドリーミング】を使い
「いろはともっと幸せになりたい」
と理想を口にしながら髪型を仮想体のツインテールではなくロングウェーブに、衣装をウェディングドレス風の水着へと変える。
「花嫁みたいね」
クロティアの姿にそう微笑むいろは。
いろはを誘惑するように抱き締めたクロティアだが、逆にいろはに魅力されているような気がして……。
互いの視線が絡めば自然と二人は瞼を閉じ、唇を重ねる。
好きな相手と温もりを感じ、さざ波の音に包まれながら二人は何度もキスを交わしあったのだった。
「キョウちゃーん。ビーチいこーう!」
「唐突なのはいつものことだが理由を聞いても?」
呼び出したキョウ・サワギへいつものように唐突な提案をする
紫月 幸人。
「え? なんでかって? いやね、いつもはシーズンど真ん中で人も多いじゃない?
だからあえて時期をずらして楽しもうという魂胆ですよ!!」
「魂胆まで言うのはどうかと思うが、確かに理に適っているな」
さすがにキョウへと説得の仕方も手馴れてきたのか幸人の説明に理解を示すキョウ。
「いやまぁ、あんまり露出するの好きじゃないから人目が少ない方が気楽に楽しんで貰えるかなーとかも有ったりはするけども!!」
「まぁそこまで言うならいくとするか」
こうして二人はホライゾンビーチへ遊びに行くことになったのだった。
ーーホライゾンビーチ。
「6月にしては夏のような陽射しだな」
いつもより薄着な格好をしたキョウは手で日陰を作りながら呟いた。
「もう気温は高くなってきてるし全然オッケーと判断したけど、予想以上の晴天だね!」
これも日頃の行いがいいからかな~なんて幸人は鼻歌交じり。
確かに夏のような陽射しだが空気は涼しげで過ごしやすい。人気も少ないため、一足先に海を満喫するには絶好の日と言えるだろう。
キョウが楽しんでくれればいいと幸人は特に何かをするわけでもなく、キョウが過ごすのを見守る。
とはいえ、ただ見守るだけなわけもなく
「フレッシュな野菜に刻んだ肉とさっぱり柑橘ソースを添えて爽やかランチと行きましょう!」
とサービスも忘れない。
「わざわざ準備したのか? 気が利くな」
キョウがそう言えば褒められたとばかりに幸人のテンションはMAXで。
「ホライゾンフィールに出してるウチの店から必要な物はだいたい揃えてあるし、食事の用意からかき氷、冷えた時の暖かい紅茶の用意もバッチリです!」
まるで手が届くと言うより何でも屋に近いようなサービス精神。
それもこれも全てはキョウにのんびりゆったり過ごしてもらうためだ。
二人は時間も人目も気にせず、少し早い夏のバカンスのようなひと時を海で過ごしたのだった。