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田んぼの中心で愛をさけんだねこ

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田んぼの中心で愛をさけんだねこ
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【3】結婚式を挙げる 3

 ホライゾンフィールにある妖精サーカスカフェ「オモイデの林檎亭」では、シャーロット・フルールと戦戯嘘の結婚式が始まっていた。
 ウェディングドレスを身にまとって、結婚式の真っ最中でもファッションショーを楽しむ二人。

「似合うかな」

 くるりと一回転してみせたシャーロット。

「かわいい~すごく似合ってる~~♪」

「んふふ♪ うそちゃんも綺麗だよ」

 実は、2年前に模擬結婚式をやったことがあるのだが、やはり正式な結婚式となると緊張するのだろうか。シャーロットのテンションの上がり方もあの時とは全然違っていた。

「今日からほんとにうそちゃんのお嫁さんになるんだね……戦戯シャーロットになるんだ……」

「そうだよ、よろしくね戦戯さん? 楽しくやっていこうね。やくそくっ♪」

 【リトルフルール】の皆に祝福されながら結婚するのがシャーロットにとっては一番納得ができる形の結婚式だった。お互い変に緊張して、堅苦しいスタイルになるよりはずっといい。
 ルルティーナ・アウスレーゼ紅城 リムスと一緒に今日の式にやって来ていた。

「……っとと、リムちゃん、胸元のリボンが曲がってますよ?」

 ルルティーナがリムスのリボンを直してやり、
 
「はい。可愛いリムちゃんに戻りました♪」

「あぅ……ママ、ありがとー!」

 屈託のない笑顔を見せるリムに、ルルティーナは母親のような優しい眼差しを向けた。
 普段、リムスはなかなか出かけたりしないので、今日の結婚式はとても刺激的でいい機会になっただろう。

「えへへ♪ ママと、おでかけ♪ たのっしいな~♪ ママ、りむと、ぎゅって手、つなぐの! えへへ♪ ママの手あったかいね♪」

 リムスはルルティーナの実の娘ではないのだが、ルルティーナにとっては大切な家族だ。
 一緒に手をつなぐ姿は、母子以外の何者にも見えないくらい仲睦まじい。

「リムちゃん、お料理を頂く前にシャロお姉さんに【花束】を渡しに行きましょうか」

「うんっ」

「お姉ちゃん、嘘さん。ご結婚おめでとうございます♪」

「えへへ、リムスちゃんも一緒にお祝いに来てくれてありがと。ルルちゃん、予定被っちゃってたのに……ごめんね?」

「そんなの……お姉ちゃんのためなら! ほら、リムちゃん嘘お姉さんにもちゃんとご挨拶して?」

「はーい、ママ! 嘘おねえさん、はじめまして! えと、えと、りむはリムスっていうの!9歳なの! ほんとはもっとお名前ながいけどりむは、りむなの! 嘘おねえさん、りむとなかよくしてくださいっ! あと、ごけっこ、おめでとうございますっ! おようふくも、きれいでかわいいねっ!」

 きちんと挨拶をした後、【花束】をシャーロットと嘘に渡すリムス。

「んーいい子いい子~♪ こういう子が欲しいなぁ♪」

 嘘はリムスのあどけなさに癒されたのだろう、顔がずっと緩みっぱなしだ。

「……えっと、色々お話、考えてたん、ですけど……あれ、おかしい、な? 出て、きませんね? えへへ♪」

 ウェディングドレス姿のシャーロットを目の当たりにすると、ルルティーナの中には色んな思いが溢れてきた.

「ぐすっ、おか、しいな……嬉しくても、涙って出るんですね……♪ えと、やっぱりおめでとう、ですね♪」

 ぎゅっとシャーロットを抱きしめるルルティーナ。シャーロットも、ルルティーナの背中に手を回し、背中をトントン叩いている。

「ママ? だいじょーぶ? おなかいたいの?」

「ええ、ママは大丈夫ですよ♪ 痛かったり、悲しかったわけじゃないですからね♪」

「そっか。ママが元気なら、りむもうれしいの!」

 ルルティーナはぎゅっとリムスを抱きしめると、結婚式を見届けるため席についた。
 虹村 歌音が介添え人となって【レインボウカーペット】を二人が歩くために出す。【ウェディングソング集】が流れる中、バージンロードをゆっくりと歩くシャーロットと嘘。アレクス・エメロードが【白薔薇のお節介】でロマンティックなフラワーアーチを出現させる。それを見たシャーロットの笑顔に、アレクスは満足そうな表情を浮かべた。
 【愛しき過日】によって、歌音の記憶にあるシャーロットと嘘の思い出の光景を映し出した。プロジェクションマッピングのように,二人の思い出が真っ白なドレスにも映っている。
 神父役を担当するのはウィリアム・ヘルツハフトだ。
 もう一人の介添人として歌音と共に式の進行も仕切っている。
 二人の姿を【SSSビューイング】で参列客からよく見えるように、二人の最高の姿を映し出す。ウェディングドレス姿のシャーロットは、ウィリアムからもお世辞など抜きにしてこの上なくかわいらしく見えた。
 神父の口上は【フレーズトゥユー】で、皆にもしっかりと聞こえるように発する。
 【リトルフルール】の一員として、ウィリアムは二人の希望に満ちた新しい門出を、しっかりと祝福して送り出してやりたかった。アットホームな雰囲気の中でも、神父として失敗はしたくない。

「シャーロット・フルール。汝はやめる時も健やかなる時も、戦戯嘘を夫とし生涯変わらぬ愛を誓うか?」

「……うん、誓うよ。そして、うそちゃんと一緒に、幸せを築いていく事も……」

「──よし。ではここに、二人が夫婦となったことを認める」

 ウィリアムはわざと堅苦しい言い方をしたが、すぐにニッと笑ってみせた。
 続いて、嘘が皆の前でぺこりと頭を下げる。

「今日は結婚式に集まってくれてありがとう♪ いつかこんな日が来たらうれしいなって思っていた日がついに実現したのよ! シャロのことは大好きだけど、しっかりしてそうに見えてふにゃ~ってなってしまうとことか、底抜けに明るくて強いけど根はトラウマもあったりして、独りが怖いというとんでもない寂しがり屋で甘えん坊さんというギャップがあったりとか」

「わわわわわ~~、うそちゃんてばなんでもかんでも暴露しすぎ~!」

 【リトルフルール】のメンバーなら、シャーロットの長所も短所も知り尽くしているはずなのだが、改めてこうやって嘘から自分のことをオープンにされるとシャーロットとしてはかなり照れてしまう。

「も、もぉ……この場で話されると恥ずかしいよ~」

 シャーロットは珍しく真っ赤になって、下を向いてしまった。

「でもこんなシャロちゃんだからこそ、俺の嫁になって欲しいなーって思いました。
【リトルフルール】の皆さん、シャロちゃんのことはずっとずっと、ずーっと大事にするので安心してください!」

「えへへ……」

 皆の前で宣言されたことに感極まったのか、シャーロットは真っ白なハンカチで目を拭った。自分を心から必要としてくれる人と、これからずっと一緒に歩んでいくのだ。
 祝電も届いており、それをアレクスが読み上げる。

『シャロちゃんへ!

結婚おめでと〜!!
すっごくめでたいよね〜♪
いっつも嘘ちゃんのこと聞かされて、惚気けられて、毎日お腹いっぱいで良い思い出です!!!
ちなみに、シャロちゃんには私も惚れてたんだよ〜?みんなを好きにさせるなんて〜♪このこの〜♪
あ〜!!私も早く結婚したいい!!そだ!私にもいい人ができたら会ってね!
長くなるといけないからこのへんで!幸せになるんだよ!!
――本郷総合探偵事務所 本郷聡美』

『シャロ、嘘、ご結婚おめでとー!!
ふたりが一遊んだりライブしたり
楽しそうにしてるのを
いつも微笑ましく見ていたわ。
これからは家族として
お互いの事を思いやる気持ちを忘れずに
いつまでも仲良くお幸せにね☆

――白波 桃葉』

『シャロ、嘘ちゃん、結婚おめでとう!
シャロは大好きな人と家族になれて、きっとご両親も喜んでくれてるよね……本当によかった。
そして嘘ちゃん。シャロはいつも元気だけど繊細で傷つきやすいところもあるから、嘘ちゃんの明るさでシャロを支えてあげてね。
二人の笑顔と幸せが末永く続きますように……。
Best wishes for your marriage!

――小鳥遊 美羽』


──笑いあり、涙ありの結婚式だ。 
 今日のウェディングケーキとパイは、歌音とアレクスが丹精込めて創り上げたものだ。
 ──【虹の富士山モンブラン】に、【山神へ捧ぐパイの黄金塔】。
 どちらもオーサカ覇権を取った時の【リトルフルール】にとって、まさに思い出の一品だ。
 コンテストの時は「鳳凰」を象った飾り切りを添えたが、今日は草薙 大和草薙 コロナが作った【ブライダルシャロちゃん・嘘ちゃん人形】が添えられていた。ウェディングドレスを着たミニマムの二人が手をつなぎ、歌を歌っているポーズを決めている。マジパンとメレンゲを使って作ったこの人形はもちろん食べることができるのだが、食べるのを思わずためらってしまうほどのかわいらしさだ。
 パイはアレクスが【妖包丁・國幸】と【火焔鉄鍋】の二つの調理器具を駆使し、【飾り包丁・渦潮】の後に【スープストック】を使って作り上げた。【盛り付けテクニック】でこちらにもシャーロットと嘘の小さなドールを乗せる。
 こうやって、結婚式にも参列しながら、その準備も手伝うことができるのは親しい間柄ならではだ。

「二人の仲の良さは知ってたが……いざ結婚するとなると感慨深いものがあるな」

 大和がぽつりと言った。

「ですね。結婚してからもずっと仲良しでいられるように、わたしたちも応援してあげるです!」

 こういう時は女子の方が落ち着いていられるのだろうか、大和とは裏腹にコロナのテンションは高い。

「なぜ僕が緊張しているんだ……? 結婚への責任というものを、今更思い出したからか……?」

 何だか落ち着かない気持ちで、マジパンをこねたことを思い出す大和。

「責任取るとか取らないとか、そういうのは後回しで楽しくやっていけたらそれでいいです♪」

 コロナに言われると、本当にそんな気がするから不思議だ。

「うそちゃん、一緒にWH式ケーキ入刀しよっ♪」

 ケーキ入刀をしてからファーストバイトが終了し、式に参列してくれた皆には【佳き日の福渡し】で歌音がアップルパイをプレゼントした。

「ママ、ケーキもパイもおいしいよっ!

「リムちゃん? どれもすごく美味しいのはわかりますけど、もっとゆっくり食べましょう? お口がクリームで汚れてますよ?」

 クリームをいっぱいつけたリムスの口のまわりを拭ってやるルルティーナ。

「ふぇっ? むぐ……っ……えへへ……はぁい、ママ♪ えっとねジュースもね、いっぱいでね、甘くておいしいの!」

 いくら食べてもなくならない量のウェディングケーキにアップルパイ。リムスにとってはこの上ないことだ。

「うゆ……マ、ママ……お、おといれ……! もう、でちゃいそうなの……」

「ほらぁ、やっぱりですぅ! お姉ちゃーん! ここ、お手洗いはどちらですかぁ~!」

 なかなかゆっくり食べることができないルルティーナだったが、ちょうど居合わせたシャーロットがリムスをトイレに案内しようとした。

「はぁ? おいおい駄狐、シャロの店に来んの初めてだったか? 花嫁に案内させるわけにゃいかねぇだろ。たっく、こっちだぜ」

 ぶつくさ言いながらも、結局、アレクスは誰にでも優しい。リムスの手を引き、トイレまで連れていってくれた。育児に協力してくれる人は、何人いても母親にとってはありがたい。
 ルルティーナはその様子を見て「ふふっ」と思わず微笑んだ。
 和やかな雰囲気の中、皆でスイーツに舌鼓を打った後は「お楽しみ」だ。
 シャーロットは嘘と一緒に、今日の結婚式に参加したくれた皆へライブを披露する。
 あらかじめ設置しておいた【ミニ校長すべり台】から一緒に滑り出して、【ツリーオブライフ】を展開した。
 クライマックスは【#うちでうたおう】から【フルールマーチ☆リミックス】へとつなげて、やがて皆の大合唱が始まる。ウィリアムが【リミックスアプロ―チ】の後に【ザ・ファーストデイ】で皆の歌に更なる華を添え、シャーロットと嘘の永遠の幸せを祈りつつ、最高のクライマックスを演出した。ルルティーナが【命の竪琴】で伴奏を務め、大和とコロナもコーラスで参加してシャーロットと嘘に祝福を捧げる。どんなに歌っても歌っても、祝福し足りない──何だかそんな雰囲気だ。
 アレクスも参加して、店内に備え付けているギターでルルティーナと同じく伴奏を担当する。楽しそうに歌っているシャーロットと嘘の姿を横目で見ながら、内心は複雑に思いにかられていたのは言うまでもない。

(全く嫉妬しねぇと言えば嘘になるけどよ。もともとこの笑顔に助けられた機械の身だ。最後まで仕えさせてもらうぜ……シャロ……)

 自分を選んでほしかったという本音を、シャーロットに打ち明ける時はきっと来ないだろうが、アレクスは今後も何かあればシャーロットのために真っ先に駆けつける気でいるはずだ。
 すべての思いをギターのカッティングに込めて、ひたすら演奏に没頭する。

「シャーロット、里帰りしたくなったらいつでも帰ってきていいぞ」

 ウィリアムの言い方がまるで父親のようで、シャーロットは思わず吹き出してしまう。

「シャロちゃん、嘘ちゃん、結婚おめでとう! 末永くお幸せにね♪」

 歌音がそう言うと、シャーロットはとびきりの笑顔になりドリームライトの光で美しい音を奏でながら【ベストエンディング】で最高の【フルールマーチ☆Remix】を披露した。
 【リトルフルール】による【リトルフルール】のための結婚式は、最高の盛り上がりを見せ、シャーロットと嘘は皆の祝福を受けて幸せなひとときを過ごしたのだった。

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