■プロローグ
――シェテルニテ、チャペル。
「アドルフ・ワーグナー。
なんじ、紫藤明夜を妻とし、良き時も悪き時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、
死が二人を分かつまで、妻を想い、寄り添うことを誓いますか?」
白いタキシードを身に包んだアドルフに、境屋が問いかけると
アドルフは間を置かず頷いて答えた。
「誓う」
「では――紫藤明夜。
なんじ、アドルフ・ワーグナーを夫とし、良き時も悪き時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、
死が二人を分かつまで、夫を想い、寄り添うことを誓いますか?」
ウェディングドレスをまとう明夜は逆に、
たっぷりと間を置いて「はい」と感傷の籠った返事をする。
「誓います」
「では、誓いのキスを」
そして、アドルフと明夜がキスを交わした瞬間
遥か彼方にある火山が、まるで花火のように噴火したのだった。