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異世界アイドルプロジェクト!

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異世界アイドルプロジェクト!
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 ──【竜の笛】と【風のフルート】の音色が鳴り響く。
 【上質なメイド服】を着たリイム・クローバーとともに、プロの仕事人に相応しいテーマ曲を奏でる【神狩りの外套】を纏った十文字 宵一
 スムーズに演奏しているように見えるリイムだったが、この曲の練習にはかなり苦労したのが本当のところだ。だがそんな様子はおくびにも出さない。

「あぁん? てめー、何者だぁ?」

 波羅蜜多実業高等学校のモヒカン頭をした生徒の一人がすぐに気づいて近づいてくる。
 宵一はその場に飛んできた愛竜の【咎竜タルア=ラル】に跨り、

「神狩りの名において、悪しき者に罰を与えん」

 【至りし者】の独特な雰囲気は、モヒカン頭たちを震え上がらせるには十分すぎるほどだ。
 リイムは【召喚獣:フェンリル】を召喚、その背中に飛び乗る。【シャイニングバードストライク】で呼び出した光の鳥を輪にすると中央部分で宵一の【応援】を始めた。
 そしてフェンリルの上でダンスを披露しつつ、【メイドインヘブン】の笑顔を振りまいて、癒しを振りまく。

「──おい、可愛いリイムはよ」

「んもー--わかりましたでふ~!!」

 リイムなりに、今持っている可愛さを全力でアピールしてみせた。

「かっ……かわいいかよ。余計にやる気なくなるだろーがっ!」

 リイムが意図していたアピールとは若干ズレがあったようだが、モヒカン頭たちを翻弄するという意味では効果があったと言える。 

「や、やっちまえぇぇぇ!!」

 B級映画のその他大勢という表現がそのままあてはまってしまうモヒカン頭たちは、何も考えずにチェーンソーを振り回した。しかしあっさりと【ウェポンガード】で宵一に避けられてしまう。火炎放射器も使ってはみたものの、タルア=ラルのブレスによって瞬時に消化されている。リイムも【クライオクラズム】で反撃し、

「僕を甘く見て貰ったら困るのでふ」

 と、自分を見くびって襲いかかってきたモヒカン頭たちを一掃。

「……火を取り扱う際は、十分に注意しろって教わらなかったか?」

 手本を示すかのごとく、宵一はモヒカンたちが乗っていたイコンに向かって【焔獄】を放ち、腕部分を溶断した。彼らが怯んだ瞬間を狙って【ラグナロクブレイク】を振るう──わずかひと振りで一直線上に並んでいたイコンは両断されてしまった。

「さーせんしたぁぁ……俺たちちょっと勘違いしてたっぽいっす……」

 モヒカンたちにはこれ以上、宵一と戦う意味がなかったのだろう。苦戦は覚悟の上でこの場に臨んだ宵一は、本来ならば決して敵の行為を許すことはない。

「まあ反省しているようですし……一寸の虫にも五分の魂でふ。許してやるでふ?」

 つぶらな瞳を潤ませたリイムの顔を見ていると、モヒカン頭の生徒たちをこれ以上痛めつける気にはなれなかった。

「【フィルムカメラ】で、記念撮影するでふ。この写真をパラ実あてに送るでふ♪」

 それだけはやめてほしい──とモヒカン頭の生徒たちは全員思ったが、誰もそれを口に出す者はいなかった。
 そして後から追いついてきたノアとルージュ・コーデュロイも一緒に写真を撮ったのだが、

「一体、どんな魔法を使って仲直りしたの?」

 ノアは真剣に、宵一とリイムにそう尋ねたのだった。
 ルージュは自分の顔がどんなふうに写真に写ったのかかなり気にしていたが、結果的に納得がいったようだった。

***

 波羅蜜多実業高等学校総出でユグドラシルの根っこを狩りに来ているのだろうか、あちこちにモヒカン頭が集まってきていた。

「ったく、パラ実ってモヒカンがデフォルトなわけ?」

 ぶつぶつ言いながらもノアは攻撃の手を決して止めない。
 ノアを援護するようにして、御子柴 瑞稀が【跳流駆】を使ってから【睦美流伍ノ型・飛石】を発動した。砂利や木片などユグドラシルの周囲に散らばるものを足場にして跳び回る。いったん加速してから【マークスマンズドクトリン】の射撃技術で【露蘭式霊子機関銃】を撃つ。

「君たちは修祓隊隊士のわたしが捕えよう」

 【黒鉤縄】を引っ掛けられそうなどこか高い所があればいいのだが、ユグドラシルの枝ぐらいしか見当たらない。ワイヤーアクションのようなものをイメージしてはみたものの、さすがに木校長に【黒鉤縄】を引っ掛けるのは気が引ける。
 神秘的で巨大な管狐を形どった【神纏】が、瑞稀を守ろうとぴったり寄り添って跳びまわり始めた。

「跳流駆という名は「パルクール」から来ているらしい。この世界では特にお誂え向きだねぇ?」

 瑞稀の銃はロディニア、神州、ローランドの技術が合わさった短機関銃だが、火力集中モードという機能が備わっている。

「喪悲漢・痛、大型マガカミを想定した相手としてちょうどいい……!」

 喪悲漢・痛を優先的に狙って、瑞稀は霊力が切れないよう気をつけながら攻撃を続ける。

「こういった、誰かに「魅せる」戦いも悪くないねぇ……修祓隊の力。如何だったかな?」

 モヒカン頭たちを追い払ってしまうと、瑞稀は【神纏】を蛍のように霧散させる。

「きれいな眺めだな……。
 ていうか、これは戦闘というよりもむしろライブだね」

「んー、どちらかというとライブの方が疲れてたかも知れないなぁ……?」

 汗を拭ったノアは、そう言った瑞稀が呼吸ひとつ乱れていないことに気づいたのだった。
 ノアも、まだまだここだけでは終われない──。

***

 ユグドラシルの根を漢方にして使うという行為は許されないとしても、アイデアとしては悪くない気がしている特異者の一人──それがリーニャ・クラフレット
 まずは【アンダー・ザ・スポットライト】でリーニャだけの「活躍の場」を作り出し、【天使の号令】をライフル・ドリルしてみせた。
 一発ドカン、波羅蜜多実業高等学校のモヒカン頭の生徒たちの周辺に向かって撃ち込むと、その場の空気が一瞬で塗り替えられた。

「えへへ、ようやくこっちを見てくれたね! 天より落ちし天使リーニャ参上っ!
 密猟不良さんたち、いざじんじょーに勝負なんだよ! 巻き込まれたくない人はあっちに行って欲しいんだよ!! 今日の私は全方位巻き込み型なの!!」

 しかし、リーニャが思っていたよりもモヒカン頭たちは冷静だ。
 実のところ彼らはリーニャの容赦ない銃撃に恐れをなし、到底近づくことなどできなかったというのが本当のところなのだが、仕掛けてこないならこちらから──という判断を即座に下したリーニャの思うままとなってしまったのだった。
 気がつくと【【夜】狂想のアリア】でその場にいたモヒカンたち全員が魅了されてしまい、だんだん理性を保つことができなくなってきた。ユグドラシルの根を掘ろうと考えた時点で理性があったとは言い難いが、それでも命は惜しかったようだ。
 
「何なの~? 近づいてこない人には、バーン!なの!」

 リーニャの攻撃からひたすら逃れようとするモヒカンたち。
 【優しき月の歌】で翼を生やしたリーニャは、ようやく近づいてきた不良生徒たちを、【カタストロフィ】で一網打尽にしてしまう。
 
「今更逃げても遅いんだよ? あなた達もみーんな落ちちゃうの!」

「えーっと、天使というよりはどちらかというと……」

 一応、助っ人に入ろうとしたノアが苦笑している。その続きは、言いかけたところで心の中に留めておいた。

「んふふ、普段とは全く違う天使さんだったけど、楽しかったー!! たまにはこういうのもいいよね!」

「ス、ストレス発散できたっぽいね……かなり」

「そだねぇー、でもでも、ちゃんと後片付けしないと!」

 【ブルースノー】で雪を降らしたリーニャ。【天使の号令】をもう一度撃ち込み、気を失っていたモヒカン生徒たちを驚かせたのだった。
 その様子を見ていたゼロ・ゴウキロデス・ロ-デス

「交流イベントを盛り上げるためとはいえ、随分派手なアトラクションでありますな。
 わざわざ波羅蜜多実業高等学校から不良生徒を招待するなんて……校長殿の本気がうかがえるでありますな」

 ズズズ……と紅茶をすする音。【お茶会セット】で和やかな【お茶会】を楽しんでいる。ルージュ・コーデュロイも便乗して束の間のゆったりとしたひととき。
 即席で作られたオープンカフェは眺めのいい場所に設置されていて、戦闘が終了した特異者やモヒカン頭の生徒たちはそこでお茶を楽しみ、疲れを癒すようにのんびり過ごしていた。

「敵も味方も、戦いが終われば全く関係なくなるのであります! 今日の敵は明日の友、昔の人はいいことを言ったものであります」

「案外、世界平和って簡単に実現できてしまうのかも知れないわね?」

 ルージュが食べているのは、本日の茶菓子であるマカロンだ。モヒカンの色に合わせて食用色素とラズベリーブランデーを使ってピンク色にしてみたが、他の色まで用意する時間はなかった。しかし、ノアやルージュといった特異者たち、そして不良生徒たちがみんな食べてくれているのを見ると、ゼロは満足そうな表情を浮かべたのだった。

「このマカロン、お土産にしてもいい? すっごくおいしいから」

 もちろん、と頷くゼロとロデス。
 ──そう、終わり良ければすべて良し、なのだ。
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