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異世界アイドルプロジェクト!

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異世界アイドルプロジェクト!
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【2-1】

「……ん? あれは……パラミタの「イコン」か?」

 木校長もといユグドラシルの根っこを狙って、波羅蜜多実業高等学校の良からぬ生徒たちが
フェスタに入り込んでいるという情報を掴んだ【リトルフルール】。
 チェーンソーや火炎放射器まで持ち出して暴れまわっていると聞いた草薙 大和はパトロールを兼ねて草薙 コロナ虹村 歌音ウィリアム・ヘルツハフトと共にユグドラシルの樹までやって来ていた。ノアも一緒だ。
 校長には皆が世話になっており、フェスタの生徒としても「アイドル」としても放置しておくわけにはいかない。

「ノアくんもワンダーウォーカーに覚醒したんだ。おめでとう!」

 歌音に言われて、ノアはうれしそうに頭をかく。

「異世界の力を披露し、アイドルとしての幅を広げる──なかなか面白い試みだな。俺や歌音は「アーク」でしか活動していないが、「星詩」や「星音」はアイドルにも通じるものがある。他の生徒たちのいい刺激になるだろう。しっかり見ておけよ」

「うん。楽しみにしてるね」

 ノア自身、【リトルフルール】が自分にとってどんな存在なのか、もっと知りたいと思っていた。
 ユグドラシルの根っこが大きく盛り上がった所でモヒカン頭の生徒たちを見つけたコロナ。

「……はぇ? チェーンソーに火炎放射器!? まさかそんなもの使って校長先生の本体を切って焼こうとしてるですか!?」

「ここで好き勝手に振る舞ってもらっちゃ困るんだけどな……!」

 早速イコンと対峙した大和は、【スプラッシュハーレー】の連続攻撃をメインに、炎を纏わせた【烈火一払】を繰り出す。コロナも大和と阿吽の呼吸で波状攻撃を仕掛け、雷を纏う【迅雷一閃】の攻撃。その後に二人で一緒に【シルフィード・ブレイザー】の斬撃を浴びせ、ヒノモト発祥の奥義【二閃】を使ってみせた。
 【ルミナスクリーブ】によって、光を帯びた武器でモヒカン頭たちを薙ぎ払うコロナ。
 そこへ歌音が【虹に花咲くファンタジア】を歌い始めた。
 【花の歩み】で生み出した花びらを【颯』】乗せて届けると、癒しの力と風の加護をもたらしてくれる星詩。歌音に合わせて、【ベネディクション・ド・フルール】を使ったのはウィリアムだ。【桜吹雪】の後に【花園】を展開して、歌音の星詩を艶やかに彩る。実はこれは、聴く者たちの戦意をたちまち高揚させる効果を持つ星音だ。
 【花の歩み】との相乗効果もあって、癒しと戦意高揚の効果を同時に得た大和とコロナはもはや無敵状態かも知れない。
 もちろんウィリアムは、プロデューサーとしての立場も忘れていなかった。
 【リミックスアプロ―チ】を使って曲の調整をし、たとえ相手がどんな状態でも最後まで手を抜かない。
 髪型がモヒカン頭で派手ないでたちのわりに、戦いの実力は大和とコロナが全力を出しきるまでもなく、逆に二人がどう戦ってどのように動けば「魅せる」ことができるかという点に注力できるので、すべての攻撃と技がノアにとって刺激的で新たな発見となっている。

「わたしたち二人の息の合った剣舞、なかなか見ごたえあったです?」

「うん。実戦なのにライブみたいな戦い方ってちょっと感動しちゃったよ……!」

 よほど魅せられたのだろう、ノアは惜しみない拍手を大和とコロナに送っている。

「ノアくん、この間ぶりですね!」

 ふと、奏梅 詩杏に声をかけられて振り返るノア。

「よぉ。元気だった?」

 前に会った時よりもノアの表情が何だかやさしくなっている気がして、詩杏は思わず照れてしまった。
 
「ワンダーウォーカーのノアくん……かっこいい、です……」

「ってことは、他の時はかっこよくないってこと?」

「……はっ!? いえそんなことはっ! いつもかっこいいです……」

「ふーん? 意味深な言い方だね」

「あっ、えっと、その……今のは深い意味も体調不良もないですっ! 大丈夫ですっ」

 焦る詩杏の背後から、シャーロット・フルールがひょっこり顔を出す。
 アレクス・エメロードも一緒だ。

「わーい、ノアちゃんワンダーウォーカ覚醒おっめでと~♪ 
 てか、しあんちゃんとお揃いだね~ペアルック味あるよ☆ ひゅーひゅー♪」

「あー、確かに、鎌はお揃いですっ!」

「──よろしく先輩」

「くっくっく、ノアに先輩って慕ってもらえて幸せいっぱいって感じだな。今日はさらに距離を縮めんのか? その辺の感情も教えてやれよな」

「えっえっ、ちょっ、そんなことっ」

「んふふ、ボクは応援してるからね。がんばれしあんちゃんっ!」

 ノアとお互いに【星刃アステリア・サイズ】を見せ合いながらひそかににんまりとする詩杏。シャーロットとアレクスの鼓舞のおかげか、なぜか妙な勇気が出たようだ。

「わふわふ! 詩杏さん、ノアさんもお久しぶりです~♪」

 ルルティーナ・アウスレーゼも追いついてきた。喫茶ナインテールの制服を着たその姿に、ノアが不思議そうな顔をする。

「ん? あ、わたしのこの衣装ですか? これはわたしのお仕事着です♪
 なんのお仕事かは、まだ内緒ですよ~♪」

 と言いつつ、

「わふっ。異世界のお話や力を見せるのにずっと立ち話も疲れますし、ね? せーの♪」

 指を鳴らして、【ファシネイトスモーク】を発動した。

「じゃ~ん♪ 喫茶ナインテール、出張店舗~♪ と言っても、今回は簡易のキッチンとテラス席しかないですけど♪ ささ、皆さんお席にどうぞ~♪ お飲み物や軽食も言ってくださればご用意しますっ♪」

 喫茶ナインテールのユグドラシル店ここにオープンだ。

「出張カフェみたいな感じ?」

 物珍しいのだろうか、ノアはルルティーナの格好をまじまじと見つめている。

「ふふ、当たりです♪ ノアさん♪ この服はバイナリアという世界でわたしが経営する喫茶店、ナインテールのマスターさんの衣装なのですっ」
 
「あーバイナリアか。俺も行かなかったんだよな。……駄狐、料理なんてできたのか……。
いなり寿司しか作れないものだと思ってたぜ」

 アレクスが言ったことを聞き捨てならないという感じで、

「アレクスさん!? わたしだってやれば出来るんですよ!?」

 ルルティーナが口を尖らせる。

「分かった分かった。ちゃんと認めるって……だから凄むなっての」

 苦笑するアレクスはバンバンとルルティーナの背中を叩いて、何とか機嫌を直そうとしたのだった。

「さーて、今日はホライゾンから繋がる異世界の事が知りたいんだっけ? そだにゃー、ボクもフェスタ生だし最近の世界しか分かんないんだけど。アークの星詩とかどうかな? 不思議な力を秘めた歌や舞ってのはフェスタのと似てるんだけど、襲ってくる怪物を退ける希望の歌だからより魔法的って感じ?」

 とシャーロットが言い終わったっていたところへ、波羅蜜多実業高等学校の生徒たちがやって来る。センスのないモヒカン頭は、どんな髪型よりも目を引く。

「何事です!? ふぅ……生憎、今日のわたしはオフなんですよね……それに不良の方に出す軽食もお茶もないんで、お帰り願えません?」

 ルルティーナの言うことなど、まるで聞いていないモヒカン頭の生徒たち。
 
「って何々!? 野生のモヒカンちゃんの群れが裏山から飛び出してきた!?」

「シャロちゃん、野生の不良ってそんな某携帯ゲーム獣みたいな……」

 ──その時、何やら轟音が鳴り響いた。
 
「なんだこの音は!? ユグドラシルが燃えている……ちっ、校長は無事なのか!?」

「えーー校長ちゃんの本体にチェーンソーとか火炎放射とか何してくれてんのぉぉ」

「フェスタを敵に回したこと、後悔させてやるのです」

「了解だ。シャロ、後ろに乗れ! 全力前進だ!」

 頷いたシャーロットはアレクスが出した【リッケンバッカー】に同乗して、校長ことユグドラシルに襲いかかるモヒカン頭の生徒たちの群れへとためらいもなく突っ込んでゆく。

「あっちとのゲートが開いた当初は、ホライゾンは平和な世界だっつー触れ込みだったのにな。
──ったく、こうやってフェスタが異世界から侵攻を受けんのも久しぶりだぜ。まずは火を消すぞ!」

 シャーロットは【日輪の扇】をさっと広げ、妖精舞踊【泡沫の夜】を歌いながら舞う姿はモヒカン頭たちが見とれるほど美しい。
 そしてアレクスが【妖精郷の夢桜】を使った。踊りながらシャーロットが【夜の帳】を発動すると、ユグドラシルの周囲一帯が一寸先も見えない真っ暗闇に包まれた。

「はぁ、仕方ありません。警告はしましたからね? ちょうど良いです、ノアさん! ファントムシーフのショータイム、しっかり見ててくださいね♪ レッツ、ショータイムっ♪」
 いきなり怪盗服に着替えるルルティーナ。公衆の面前だが何も気にしていない様子。
 ──なぜなら、暗闇の中であっても【リトルフルール】のメンバーたちには何も影響がないのだ。ゆえに、モヒカン頭の生徒たちの前で着替えても相手には見えていない。
 幻想的な空間に包まれたまま、モヒカン頭の生徒たちはなす術もなく──。
 
「【シャムスケアクロウ】!」

 ルルティーナが用意していた狐のぬいぐるみが自走し、モヒカン頭たちがそちらに気を取られている間に【ハスラーガントレット】をはめた手で【クラックコントロール】を使い、喪悲漢・痛にハッキングを仕掛けた。明らかに彼らの移動速度がスビートがダウンし、攻撃の威力も弱まってしまう。

「はい、終了です♪ またのご来店、お待ちしてませんよ~♪」

 そして再び、マスターの制服に着替える。
 ルルティーナのおかげで戦いやすくなったシャーロットが【人魚の涙】を使うと【舞踊水泡【星素】4】の効果もあって攻撃範囲が広がっていった。詩杏は【アシストスカイ】でモヒカン頭たちが放ってきた火炎放射器に対して向かい風の突風を起こした風圧がユグドラシルに及ばないようシャーロットとアレクスをアシストする。その結果、アレクスの放った【爆裂水泡】が火炎放射器の勢力を一気に弱めてしまった。
 続いて詩杏が【チェシャ猫ストリング】で周囲に糸を張り巡らせ、モヒカン頭たちの動きを阻んで順番に転倒させていった。反撃に出てきたモヒカン頭たちの攻撃を、アレクスが【ウォータープルーフ】の後に【ガーディアン・シールド】を使って押し返していった。
 イコンを突き飛ばし、喪悲漢・痛に至っては巨大サイズのバルバロイすら縛り上げてしまう【パラメトリック・スカイハイ】で固定してやった。これでもう自由には動けない。
 シャーロットも【エコーサテライト】の光の盾を使ってモヒカン頭たちの反撃に対して時間を稼ぎ、その後は【ノワールローブ】を纏って【妖精合唱団】と共に紡がれる星詩を披露する。脳が蕩けるくらいにキュートな悩殺ボイスは、モヒカン頭たちを無駄に翻弄していく──。

「今日からキミ達もボクのファンなんだよ~にゃは♪」

「きっともう逃れられない……」

「──んふふ。アレクちゃん、今何か言った……?」

「別に」

 シャーロットとアレクスのことは心配ないと判断した詩杏。今度はノアと二人で前方へ飛び出すと【星刃アステリア・サイズ】を振り回し、

「ノアくん、先輩だからって遠慮なんかしたら置いてくですからね!」

 【スターダストフィル】の技術で目眩しをしてから距離を詰め、【激震ビートフュージョンで】遠慮なくモヒカン頭たちを蹴っ飛ばす。 
 
「足癖が悪くてごめんなのです☆
 ユグドラシルにも、ノアくんにも傷一つつけさせないです。これに懲りたら、その元気を僕らへの推しごとに使ってほしいのですよー♪」

 クライマックスにさしかかると、ウィリアムが【シャインライズ】で夜の闇を晴らし、フィナーレをより劇的に演出する。
 【リトルフルール】が集結し、気がつくとモヒカン頭たちは正座をして整列することになっていた。

「──んで、どうでしたノアさん? わたしのパフォーマンスは♪」

 ルルティーナがノアにウインクをすると、ノアは戸惑った様子で立ち止まってしまった。

「ってルルちゃん!?ノアくんを誘惑に負けしないでなのですよー!!」

「ゆ、誘惑!? してないですよっ!?」

 自分のふとした行動が、実はかなり大胆だったことにルルティーナは気づいていなかったようだ。

「わ~い、ゆうわくゆうわく~モヒカンちゃんたちもゆうわくしちゃお~♪」

 シャーロットが言い出して、アレクスは思わず呆れ顔になる。

「シャロ……まじでシャレになんねーからそれ」

「んふふ。アレクちゃんてばやきもちやいちゃったかな?」

「だっ……誰がだっつの!!」

 無限に繰り広げられる【リトルフルール】のやりとりを、ユグドラシルこと木馬太郎校長は彼らの頭上から微笑ましく眺めていたのだった。
 ──その後、RWOのことを詩杏に教えてもらったノアは、アイ・フローラを見つけるとすぐに駆け寄って行った。

「き、来てくれたんですか?」

「うん。えーと、詩杏先輩も後で来るってさ。ちょっと【リトルフルール】の方で片づけがあるから待っててほしいって」 

「そうですか……分かりました! ではそれまで、私が魅せるプレイをしますね」

 アイが持っていた【レイス】マジカルプリーストは、演出重視でロールプレイング向きのものだ。【しぐさ】ブレッシングベルを空中に出現させ【アイドスの杖】を振りかざすと、ちょうど疲れが出始めていたノアにも癒しの効果を与えた。
 【ビッグバンヒール】は、根っこを削られていたユグドラシルにも効果があるかも知れない。

「今のところ回復しかしてないですけど……ヒーラーと言っても攻撃できないわけじゃないんですよね」

「攻撃もで回復もできたら、どこでも引く手あまただよ」

「──あら……」

 タイミングを図ったようにして、波羅蜜多実業高等学校の生徒たちが現れる。

「ちょうどいいところへ……──ホーリーライトバースト!」

 モヒカン頭の生徒たちは火炎放射器を持ってはいたものの、まだ何もしないうちからアイに吹き飛ばされてしまった。
 アイも【リトルフルール】の特別団員。そのことを後で知ったノアは、アイの戦いぶりに誰よりも大きく頷いて納得したのだった。

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